おはようございます。書いてみました。
突如、前世の記憶を語り始めた多々良。
彼の前世の記憶——それは、伊良部との切っても切れない縁の話だった。
「一回目はな、シュラベ・フォラという若い国王が治める国だったんだ」
多々良の話によれば、そのシュラベ・フォラという若い国王こそが、伊良部だったらしい。
唐突過ぎて、三殊は、多々良の話がいまいちよく分からなかった。が、それでも真剣に聞いた。それは、三殊にとって多々良が仲間だったから。同じクラスで協力しあってきた、大切なクラスメイトだったからである。
「俺はサーシェルテ・ドムという男だった。若いうちに王室に奴隷として買われてな」
「ど、奴隷っ!?」
現代人にとってはあまり馴染みのない言葉を聞き、三殊は驚きの声をあげる。しかし多々良は冷静だった。驚かれることは分かっていた、というような顔をしている。
「そうだ。王室だけあって、環境自体はさほど悪くはなかったと記憶している」
「へ、へぇ……」
「だが、ある日知ってしまったんだ。若き国王シュラベの邪悪な企みを」
多々良の話は、まるで、小説の中の話のようだった。
「企み?」
それでも、三殊はきちんと聞いた。
「そう——『全人類奴隷計画』だ」
多々良は低い声で言う。
その声は決して大きなものではなかったけれど、はっきりとしていた。
「全人類を奴隷に……?」
三殊は眉をひそめる。
多々良は静かに頷く。
「そういうことだ」
想像の遥か斜め上をゆく多々良の話に、三殊は、どう返せば良いのか分からなくなる。今は、驚きばかりが心を支配しいる。
「……それで?」
「俺は、数人の奴隷と数人のシュラベの部下を説得し、革命を起こそうとしたんだ」
少し空けて、多々良は続ける。
「だが、革命は成功しなかった」
「え!そんな!」
「わざと情報をバラし、裏切り者を浮き彫りにしようとした。それがシュラベの企みだったんだ。俺らは結局、やつの手のひらの上で転がされていただけだったんだ」
相応しい言葉を見つけられない三殊は、少し俯き、黙る。
「で、俺たちに協力してくれた者たちを除くシュラベの部下によって、俺は殺された。サーシェルテの人生はそこで終わりだ」
多々良は淡々と話す。
「あの時、俺は、死ぬ直前に誓った。『来世では絶対に殺す!』ってな」