こんばんは。書いてみました。
三殊は、多々良と二人、歩き続けた。
死ぬまで歩き続けることになるのでは、と不安になるほどに、長い道。三殊は、一人だったなら、とうに歩くことを止めていたかもしれない。永遠に続くような気さえする道に、心を折られていたかもしれない。だが、今の三殊は一人ではない。だから、迷うことなく絶望することもなく、足を動かし続けることができた。
「まだあるのかい?多々良くん」
「あぁ。俺と伊良部の縁は、そう簡単には切れなかったからな」
「聞かせてくれる?」
「もちろん」
こうして、多々良は三回目の人生について語り始める。
三回目、多々良は、とある国のとある街に、一般市民として生を受けた。その名はカッツェロ・マルドム。彼もやはり『前世の記憶』を持っており、「今度こそユベを殺そう」と考えていた。だが、二回目の時とは世界が違う。それゆえ、ユベはいない。カッツェロはそのことに絶望していたと、多々良は言う。
「確かに、再会できなかったら、殺すも何もないもんね」
「あぁ。……だが、やつはまた現れた」
「え!」
ユベがいない世界に絶望していたカッツェロの前に現れた一人の男性。名をクゥロ・フォラと言うが、彼の見た目はユベとほとんど同じだった。
「あの時は思ったな……『まさか目の前に敵がいるとは!?』と」
「急に再会したらびっくりするね」
憎しみ殺そうと思い続けてきた敵と瓜二つの男性が、目の前にいる。そのことに、カッツェロは戸惑う。そんな彼に対し、クゥロは「君、何でそんなに出会うの?」と、素で言い放ったらしい。
「素なんだ……」
「まったく、感じの悪いやつだよな。俺は『知るか!!』と思っていた」
「同感だよ」
三殊は段々、多々良に共感できるようになってきた。
いや、もちろん、すべてにおいて共感できるようになってきたというわけではないが。
「そうしたら『気になるんだよねぇ?だって、何度殺しても、あの奴隷と同じような見た目だし?』なんて言って、ナイフで刺してきやがった」
急展開に戸惑う三殊。
「まさかの攻撃には愕然とした」
「同感だよ。いきなり刺すとか……」
「刺されたことによる出血量は、予想外に凄まじくてな。俺はすぐに『死』を理解した。そして、その場で『死』を覚悟し、倒れて死んだ。それが三回目だ」
あまりに呆気ない最期。
三殊は何も言えなかった。