こんにちは。書いてみました。
魔法少女として伊良部と出会い、戦いによって命を散らした五回目の人生。その話を終え、多々良は次——六回目の人生のことを語り出す。
「六回目、俺の新たな転生先は、剣士だった」
またしても飛び出してきた、普通ではない、意外な転生先。しかし、三殊はもう驚かなかった。なぜなら、これまでに散々、意外な転生先を聞いてきたから。
「剣士って……剣を振るって戦うやつ?」
「あぁ、そうだ」
「何だか漫画みたいだね」
「あぁ。確かにそうだな」
もはや、何が出てきても驚きはしまい。
「俺は宮本 小次郎(みやもと こじろう)という剣士だった。まさかの剣士、呆れたよ」
「戦う系が多いように感じるね」
「またかよ!……って、感じだよな」
宮本 小次郎となった多々良は、巷で噂の剣士・佐々木 武蔵(ささき むさし)と勝負することになったそうだ。
「一体どんな奴なんだ?と思っていたんだがな、現れたのは伊良部だったんだ」
「彼が……佐々木 武蔵だったのかい」
「あぁ。そういうことだ」
まさかの相手に動揺する中、戦いは始まった——多々良は三殊にそう話す。
「あれは真剣勝負だった。少しでも気を抜けば、気を抜いた方が死ぬ。そんな、かなり際どい戦いだった」
淡々とした調子で語る多々良を見て、三殊は思わず「えぇっ……」と発してしまう。
三殊は、少しでも気を抜けば死ぬというような状況に陥ったことは、これまでに一度もない。それゆえ、その緊迫感のすべてを理解することはできない。だが、想像することくらいはできた。
「そんな状況だったのだが。見物客の中に紛れ込んでいた武蔵の部下に邪魔をされてな。結局俺——いや、小次郎は、首を刎ねられてあっさりと死んでしまった」
多々良が語った六回目の人生。その最期は、あまりに呆気ないものだった。言葉にならないくらいあっさりとした、命の落とし方である。
呆気ない死、というのは、案外世に溢れているものだ。
しかし、この多々良の死は、呆気ないという域を軽く越えている。
これほどの呆気なさを表現する言葉は、この世にはまだ、存在していないのかもしれない。