Re: 雑談しようよ! 92!? 戯言語愛! ( No.532 )
日時: 2019/05/20 02:34
名前: 四季◆7ago4vfbe2 (ID: haw8cgqI)

 六回目、剣士としての生を終えたことまで述べた多々良は、暫し口を閉じた。が、数分経たないうちに、再び口を開いた。

「七回目の人生の話をしてもいいか?」

 多々良の問いかけに、三殊は少し戸惑いながら「もちろん」と頷く。
 七回目、まだあったのかと、思いながら息を飲む。聞かない理由など、ありはしないから。

「七回目の人生……俺は、藤岡 敬慕(ふじおか けいぼ)という暴虐無人な殿様の息子として生まれた。幼名は、藤岡 糞(ふじおか くそ)。滅茶苦茶な名前だろ」

 残念としか言い様のない名を聞かされた三殊は、ただ苦笑することしかできなかった。

「後に敬具(けいぐ)という名になったがな」
「へぇ……」

 三殊は相応しい言葉を見つけられない。

「敬具である俺は生まれた後、すぐに他の城に引き取られ、捕虜となっていた。そして、成人——江戸時代では十五歳になってから、ようやく、父親と会うことが可能となった」

 そして、また重なる。
 二つの存在が。二つの人生が。

「こうして出会った父親、敬慕。やつは、佐々木 武蔵——そう、伊良部だった」
「えっ。じゃあ、七回目は伊良部の息子だったのかい?」
「そういうことだ」
「うわぁ……えぇ……」

 何と酷なことだろう。
 自分を何度も殺めた人物が、父親になるなんて。

「『まさか息子として生まれるとは!?』と思いながら、俺は父親に歯向かった。が、敬慕の圧倒的な戦力の前には無力で、切腹を命じられた」

 三殊とて、何も知らない赤子ではない。だから、かつて切腹という行為が存在していたことは知っている。学校で習ったからだ。ただ、それを実際に見たことはないし、命じられた者に会ったこともなかった。

「もちろん拒否した。すると敬慕は、近くの手下に刀を抜かせ、俺——敬具の首を切らせた。こうして俺は、またもやあっさり殺害された」

 またしてもあっさり殺害されるという最期。
 三殊は何も言えなかった。

 こういう場面でこそ、気の利いた発言ができれば良かったのかもしれない。しかし三殊にはその能力はなくて。一応、何か言わなくてはと思ってはいたのだが、結局相応しい言葉を見つけることはできずじまいだった。

 ただ、多々良がそれを責めることはなかった。


という感じですね!
ありがとうございます!