メモ『 香り 』
少し背の高い、君は甘い柑橘系の匂いがする。
汗が伝った色気漂う首元に薄い唇、とても胸を締め付けられるの……。
「待った?」
君に誘われて、ずっと、待ってる私は何だか、蜜蜂のようだ。
君は高嶺の花で私はただの寄り付く虫。
この格差が________辛い。
「……」
けど、君はどんな子に言い寄られたって私を選んでくれる。
こんな、お邪魔虫の私を。
物好きな奴、そう彼は噂されているのを知っているだろうか。
知らなくて私を選んでくれるのか。
「あ、のさ……何で、私の隣に居てくれるの……?」
この言葉を伝えたら幸せな夢が醒めてしまいそうで言えなかった。
けど。
彼が噂をされるなら話は変わってくる。
彼を好きな子として傷付いて欲しくない。
理由がなかったら離れてもらえばいいんだ。
__________たとえ、私が苦しくなっても。
「……お前は?俺の隣に居ようとして毎日、校門で待っててくれるの?」
そう質問に質問で返されてしまう。
気まずくなり視線を横へと泳がす。何て言えばいいんだろう。
“君の事が好きだから”?
フラれたらどうしよう。
変なところで乙女心が不安を叫ぶ。
……煩い。
言えない。だから、目をギュッと瞑った。
嗚呼、私は意気地なしだ。
彼の為にって離れようとしたのに。
止めようと思ったのに。
「俺がお前の隣に居るのは_______好きだからだよ」
「ぇ?」
ごぉっと送迎バスが走り去る音がした。
バスに手を掛けたのに、私は何故か彼の目の前に立ってる。
引き戻された?
甘い、柑橘系の香水が鼻孔をくすぐる。
少し背の高い、貴方に恋した私は……まるで蜜蜂。
離れられない、離れたくない。
不安と心配、恋慕を叫ぶ乙女心が叫ぶ。
まだ、熱い青い夏の事。
「……、……好きだよ」
私の通り過ぎたはずの春は、突然にしてやってきた。