ちょっと書き直してました
お題③ 「花、童話、苦い(三題噺)」
タイトル「ヒマワリ」
昔々ある国に、一人の女の子がいました。彼女は、ある日一冊の本を貰いました。
その本には、素敵な花のタイトルがついたたくさんの童話が納められていました。赤薔薇、スズラン、ポインセチア───その話の中では、素敵な男性が現れて、ヒロインを救ったり、真実のキスであったり……。幼い少女にとって、それは憧れ夢見るものであったでしょう。
そのなかでも、一番少女の心に残ったのは『アサガオ』というタイトルの童話でした。
童話集のなかで、その話だけが異彩を放つかのようにバットエンドだったのです。
その物語の中では、ある少女は一つ年上の少女に恋をしています。その少女の願いは叶い、彼女とやがて結ばれました。でも、神や周りの者たちはそれを認めません。怒った彼らは、二人の仲を引き裂いてしまいました。
それを読んだ少女は、その事に疑問を抱きます。何故女の子同士で恋をしてはいけないのか。そして彼女は、母親にこう尋ねました。
「どうして、女の子どうしで恋をしてはいけないの?」
と。そう尋ねられた母親は少し戸惑ったような顔をして、少女に言い聞かせるように答えます。
「あのね、それはいけないことなの。ずーっと昔から、決まっていることなのよ。」
そう答えられた少女は、いまいち納得していないような顔をしながらも頷きました。
月日が経って、あの時の少女は可憐な年頃の娘になりました。彼女は幸福でした。素敵な彼氏も、幸せな家族も、優しい友達も、そして自分自身の美しい容姿も持っていたのですから。
ある日、少女は彼に求婚されました。少女は、喜んでそれを承諾しました。彼は笑うと、そっと唇を重ねました。
その時、彼女は不意に『アサガオ』というタイトルの物語を思い出したのです。女の子同士の、叶わぬ恋の物語───彼とのキスの味が、いきなりとてもとても苦くなりました。
何故だろう、と思っているうちにかれは唇を離しています。
そのことを、娘は女友達に話しました。彼女は面倒見も良くて、ヒマワリのような昔から仲の良い友達の一人でした。ずっと彼との仲の面倒を見てくれていて、男にも女にも好かれる性格をしています。けれど、昔から誰一人として彼氏と付き合ったりしないことを娘は不思議に思って居ました。
それを相談された友達は、悪戯っぽく笑うとこう言います。
「ねぇ……なら、あたしとキスしてみない?」
そう言われた少女は動揺しました。かつて、女の子同士で恋をしてはいけない、とは母親に言われたことを思い出したからです。恋が駄目ならキスもダメなのでしょうか。でも、少女は気になっていました。なぜ彼とのキスの味が苦くて仕方なかったのか、が。
それに、きっと「友達」なら問題ないよね、と彼女は思います。
「うん……良いよ。」
その言葉とともに、二人の乙女の唇がそっと重なりました。
ああ───どうしてこんなにも、女の子とするキスは甘いのでしょうか。背徳的なことをしているということが、こんなにも甘い理由なのでしょうか。彼とした時の苦さが嘘だったかのような甘さに、少女は頭がクラクラしてきます。
永遠とも思える数秒が過ぎて、友人はそっと唇を離します。
「ねえ……甘かった?」
「うん……とっ、ても。」
蠱惑的な笑みを閃かせた友人は、そっと少女の肩を抱くと耳元で囁きます。
「もう、離さないから。」
【百合初挑戦です。なんか…………三題の要素、薄くないですか?】