『君の花』
お題③(コメディライト板の『神様の会話』の裏話です!)
清浄な鳥の神、カルラは一人幻想郷で仕事合間の休憩をしにきていた。
カ「いつ来ても、ここはいい場所だなぁ。」
軽く深呼吸をして、低く飛ぶ。
するとカルラは、或る物を見つけた。
カ「うわぁ!」
カルラが感嘆の声をあげた場所は、とても綺麗な黄色い花が咲き誇る花畑だった。
そこに花の女神、サクヤがいた。
カ「サクヤさーん!このお花って何の花ですかー?」
カルラに気付いたサクヤは、カルラに笑顔で手を振る。
サ「カルラくん!もっと近くで見てみましょう!」
サクヤに呼ばれたカルラは、彼女の元に飛んでいく。
カ「ここ、すっごく綺麗!このお花、何処かで見たことがあるんだけど……?」
サ「あら!カルラくんは記憶力がいいわ!そうよ。神様なら皆が一度は読む『幸福を与える神』っていうお話の元になった、『福寿草』よ!」
もちろんカルラは、その本を読んだことがある。
カ「『福寿草』、か。ねぇ、ここのお花、一本貰ってもいい?」
サ「勿論、いいわよ。ここら辺の花は私が管理しているからね。ただ、何に使うの?」
カ「福禄寿さんにあげるの!名前似てるし、最近仕事ばっかりで、疲れてるからね!」
カルラは笑顔で飛んでいく。
サ「待ってカルラくん!福禄寿さんには…………!」
サクヤは慌てて止めたが、カルラはもういない。
サ「福禄寿さんだけにはダメ…………」
一人でぽつんと呟いた。
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カ「福禄寿さん!」
福「カルラや、どこに行ってたのか?」
福禄寿はいつもの笑みを絶やさず、カルラに問う。
カルラは、福寿草を懐から取り出した。
カ「じゃじゃーん!これ、福寿草っていうんだって!なんかね…………」
カルラが言葉を止める。何故なら。
福禄寿がカルラの手にある福寿草をもぎ取ると、花を粉々にちぎったのだ。
黄色い花びらが散ってゆく。
カ「なんで…………!?」
福「…………二度と、その花をワシの目に入れるな。」
福禄寿の表情は、笑みを浮かべていたが、目と声は笑っていなかった。
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カ「福禄寿さん…………なんであの花をちぎったんだろう……………」
サ「…………福禄寿さんにとってあの花は、毒みたいなものよ………」
カ「え?なんで?」
サ「実はね、福寿草が元の『幸福を与える神』のお話、覚えてる?」
カ「えーと………」
『幸福を与える神』
或る幸福を司る神が、餓えている人に幸福を与える物語。
ある人に出会い、いつものように幸福を与えようと、杖を掲げた瞬間、その人の命の灯火が尽きた。
その人は、楽になりたかったのだ。
そのことで、神は酷く自分を嘆き、墓の前で涙を流した。
その流した涙が、一輪の黄色い花、福寿草が生まれた。そんな話だった。
サ「あのお話の神は、実は福禄寿さんなのよ。」
カ「………え」
彼女は重々しく語る。
サ「つまり、福寿草を福禄寿さんが見ると、そのことを思い出してしまうんじゃないかしら………?」
カルラはじっと福寿草を見る。
今まで綺麗にみえていたはずが、何故か萎れているように見えた。
福寿草の花言葉は、『永久の幸福』。
でももうひとつの花言葉がある。
それは、『悲しき思い出』。
これは、或る幸福を司る神のお話___。