初めまして。面白そうなのでお邪魔いたします。勢いで書いたので粗いですが……
「帰り道にて、きみと。」使用お題:2番 「雨が降っていてくれて良かった」
重苦しい雲から鋭く雨は降りはじめ、ぼくの傘にぶつかって流れ落ちている。雨降りの日は、いつもの急な下り坂が少し怖い。渋々遠廻りの帰路についた。早く帰りたいけれど、走る気力も走れる環境にもない。陰鬱な雨だ。そう思い、気分はどんどん沈み込んでいく。そんな時、後ろからきみの声が聞こえた。この雨の中、かき消されないきみの声。きみは嬉しそうにぼくの名前を呼んだ。身軽に駆け寄ってくるきみは、この雨が嘘なのではないかと思うほど生き生きとしている。
ぼくの隣を自然に歩きはじめたきみは、またわからないことを言った。
「雨が降っていてくれて良かった」
きみの言葉を聞いて、ぼくは曖昧に微笑った。きみのことは、ぼくにはわからない。だって、きみはいつもおかしなことを言う。
「どうして? 雨は嫌じゃないの?」
「雨は嫌いだよ。でも、こんな日も悪くない」
ぼくが訊いても、きみはそうやっていつも何かを隠して答える。ぼくにはきみがわからない。
「ぼくは苦手かな」
ぼくが本当のことを話すと、きみはわからないと唸った。雨の音と、歩く音だけがよく耳に届く。
「うーん。そういうものなのかな。でもね」
きみはそこで言葉を切る。きみが何を言いたいのか、ぼくも少し考える。やや間を置いて、きみが話しはじめた。
「今日は丁度、一緒に帰りたかったんだ。こうやって、好きな人と帰るのは良いことだから」
そうか。急に視界が開けたような心地がした。ぼくがこの道を通るのは、そういえば雨の日だけだ。きみとの時間を得られるのならば、確かに雨の日だって悪くない。ぼくたちは、またお互いのことを少しだけ知った。