追記:宵はく書いてる方の名前はライターですが、先に投稿したもの(永遠に後輩。)が心名義ですので表記は心でお願いしますすみません。こちらのミスです(汗)
お題⑤ 「人って死んだら星になるんだよ。」
タイトル 「星を造るひと」
「なあ、お前知ってるか?」
「何をだ?」
師匠が珍しく酒場に飲みに行くと言うから、そのキーパーとしてついてきたオレは早々に暇を持て余していた。大体そうなのだ、あの人は老体のクセによく飲む。会計はオレが払うことになる。だったら着いてこなければいいのだが、酔い潰れた師匠を迎えにくるのが普通にだるい。困ったものだ。
ちょっとロマンチストな同業者、シオンはオレにそう問いかけてきた。会うと何故か常に絡んでくる奴だ。
「人はさ、死んだら星になるんだってな。」
「死んだら……星になる?」
オウム返しにそのまま問い返してしまった。スツールに座るオレの目の前に、シオンは椅子を引き寄せて座る。カウンター席で酒を飲んでる師匠に目を向ければ、まだまだ終わりそうな雰囲気ではなかった。
「そそ。この間殺した女が言ってたの、死の間際ってやつに。『星になって貴方を見てるから』、ってさ。それってそういうことだろ?」
やたらと声真似が上手い。でも、話の内容はバカバカしくてオレは明後日の方向を向きつつ生返事を返した。
「ふーん?」
「お前絶対本気にしてないなおい!」
ムッとした顔を向けてきたシオンへ、ひらひらと手を振りつつオレは笑った。
「半分くらいはしてるよ。まあ……オレたちには無縁みたいなものだろう?」
オレがそう言った途端、シオンがすっと真顔に戻った。まずいことを言った、という自覚は無かった。当然だからだ。手を血に染めるオレたちに、そんな死後が望めるはずもないだろう?
「そうだけどよ。お前もーちょっと夢見ねえの?」
「さあ。」
夢を見る、という表現がよくわからなかったオレは、適当な返事を返して立ち上がる。
「ほんと現実的なヤツ。リアリスト、っての?」
「知るかよ。」
□ △ □
オレは酒場から帰ってきて、師匠の家の庭に座り込んだ。考え事とか、昼寝とか。庭の中心辺りに生えてる木の下が、オレは好きだ。空が見えるように倒れ込んで、星を見上げる。いつも葉が落ちているのだが、今は夏だ。昼間は暑苦しく晴れ渡っていたから、夜空も星が瞬き続けていた。掃き溜めの如く溜まる星、模様を作って輝く星。
死ぬと星になると言うなら、オレたちは星を造っているという事だ。それは、つまりオレたちが人の役に立ってるってことなのか? 星明かりは誰かを照らし得るのか? どうやら深夜というのは、どうしようも無いことを考えたがるらしい。背中から、ボロボロの石畳の硬さが伝わってくる。
こんな、こんなことで。己の行為を正当化していいわけなんてない。
そう思って、オレは手を伸ばす。
【意外とリアリストなトワイさんとシオンの話。外伝スレの方にも載せます。】