お題「人って死んだら星になるんだよ」
タイトル「クズの細道」
(※閲覧注意)
親は子供に無償の愛を捧げる。子供は親に無償の愛を還す。ああなんと素晴らしきかな親子愛。だがそんなものは砂糖よりも、甘ったるい。現実は泥水と雑菌にまみれた水道水よりドス黒い。親は子供を裏切り、子供は親を切り捨てる。それは至極普通のことだ。余程のことがない限りは、歳を重ねるにつれ、互いが煩わしい存在となる。
だがそれがもっと早い段階で『起きて』いたらどうだろうか。
「人って死んだら星になるんだよ」
無垢な子供にそう語りかけるのは、名も知らぬ大人。その大人は今にも命の灯火が消えかけている所だった。何を思ったか通りがかりのその子供に語り始めたのだ。
子供の服はぼろぼろで、髪の毛もお世辞に綺麗だとは言えなかった。傍から見れば『孤児だ』と言われてもおかしくはないだろう。そんな子供に、死にかけの大人は話し続ける。
「だから、今死んだとしても、夜にはお星様になっているから、怖くないのさ。キラキラ輝いて……生きてるうちに出来なかったことが、お星様になれば出来る。そう、輝くってことが」
子供は何も話さない。ただ黙ってその大人の語りを聞くのみ。目はぼんやりと、その者の瞳を見つめていた。
「これからもうじき死ぬけれど、お星さまになればみんな一緒なんだ。みんな一緒に夜空の点々になる。そこには性別も貧富も何も無い……」
やがてゆっくりと声が小さくなっていき、大人はついにその『火』を消した。何も語らなくなった大人を暫くじっと見つめた後、ぼろぼろの子供はその場からふらりと立ち去った。
子供がたどり着いた場所は、かつて暖かな家庭があったはずの家。今そこにあるのは、毎日毎日違う男を連れ込んでは事を致している『母』と、毎日毎日八つ当たりをしてくる『父』。アルコールが強い酒を無理やり飲ませたり、快楽に狂うさまを見せつけたり。まさにこの世の地獄の縮図がそこにあった。
扉を開けば父が母を殴り付ける光景。子供が入ってきたことに気づいていないのだろう、革ベルトや酒瓶で殴り続けている。母は母で嫌々と泣き叫ぶばかり。その下にころがっていたのは顔も知らない別の男。今日もまた連れ込んでいたのだろう。
だけど、それはもう今日で終わり。だって今日の夜からは、『みんなおなじ』なのだから。
子供は台所から『包丁』を手に取ると、真っ先に父を深く刺し貫いた。
1回では終わらない。何度も何度も、刺す、刺す、刺す。砂場をスコップで掘るように、刺す、刺す、刺す。刺す、刺す、刺す。そして引き抜く。
父が終わったら、今度は母も、見知らぬ男も同じように。刺す、刺す、刺す。原型など分からぬように。刺す、刺す、刺す。刺す、刺す、刺す。
ぶしゅ、ぐちゅっ、ぐちゃ、ぶちゅっ、ぬちゃ、ぬちゃ、
ずるぅり。
さて最後の仕上げだ。みんな一緒なら、そう自分も『同じ』にならなければならない。真っ赤に染まった包丁の切っ先を、自らの首に向ける。これでようやく『ぴかぴかになれる』。
「きょうから、ぼくも、おほしさま」
その日の空に輝く星は、やけに『赤く輝いていた』。
本編執筆中の息抜きに。
やっぱグロくなったり後味が悪いのはご愛嬌ってことでひとつ(コラ)。