どうも、ご無沙汰しております。
受験勉強の合間に気分転換で書いていきたいと思います。
ちなみにこの小説は、私の体験をもとにして書いてるノンフィクションです。
お題制覇目指して頑張るぞ―――!
お題⑤「寂しい夏」
タイトル「保健室クラブ ~私の居場所~」
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―2017年 七月。
小学6年生のとき、私は多くの傷を抱え、多くの宝物をもらった。
キーンコーンカーンコーンと授業の開始を告げるチャイム。
6年2組の教室の一番真ん中の列の一番前の席で、私は算数の授業の準備をしていた。
他のクラスメイトたちが数人化のグループで話しているのを見やる。
『ねえねえ、昨日のドラマ、面白かったよねー』
『○○○○が主役やってるやつでしょー。めっちゃ可愛いよね』
『それなー』
「それな」とか「おけ」とか、私は一度も使ったことがなかった。それに、勉強熱心な塾長をしている父の経営する塾で中学勉強対策の授業を受けていたので、ドラマを見る時間もなかった。早い話が、それらの話題に乗れる要素はどこにもなかった。
でも、ドラマなんか見なくても、話題に乗れなくても死にはしない。
今は六時間目、これが終わったら超特急で家に帰って勉強をする。今日は塾は休み、好きなことをして過ごせる。
そんなワクワクした気持ちは、あっという間に吹き飛ばされてしまうのだ。
こんな事件があった。
算数担当のH先生という女の先生が、授業時間にプリントを落としてしまい、それを前列の席にいる私に拾ってほしいと頼んだ。
別に断る理由もなかったので、私は廊下に落ちたプリントを触ろうとし―――。
「あー、あー、やめろって! ブツブツ菌がうつった!」
「ブツブツ菌―ブツブツ菌!」
私は奥歯を噛んだ。
小学6年生に進級したのと同時に、私は一部のクラスの男子からいじめを受けるようになった。他の子はいじめられている私を守ろうともせず、ただ黙って男子たちの行動を見ていた。
「プリント、どうぞ」
「ありがとうね、むうさん」
「ブツブツ菌ー! ブツブツ菌ー!」
「こら!」
…………家族には何も言えない。迷惑をかけさせたくない。
………兄弟に相談もできない。だってまだ幼稚園児なんだから。
でも、学校で抱えるストレスは胸の内に溜まって、睡眠障害まで引き起こすようになった。
苦しい、辛い。泣きたい。死んでしまいたい、いなくなりたい。
そんな私が、ついに起こした行動は……。
逃走。
説明はそれだけで十分だ。つまり、学校から自宅に向かって逃走を実行したのだ。
トイレに行くふりをして、三階から一階まで駆け足で階段を降り、昇降口の鍵が開いているのを確認して外に出る。そして必死で走ったのだ。
これで何かが変わるかなんてそういうことは考えず、がむしゃらに走り続けた。
そして泣いた。泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いた。
怒られても良かった。学校に連れ戻されても良かった。
ただ、今だけは、今だけは。
そして。
私は、保険の先生と相談して、登校手段を変えることにした。
保健室登校。その名前の通り、教室に直接上がらずに保健室で過ごすやり方だ。
保健室登校を始めた初日、カーテンで仕切られた部屋の奥で私は初めてイチゴちゃん(仮名)と話した。
イチゴちゃんは今年初めて同じクラスになった女の子で、小学2年生からずっと保健室登校をしていた女の子だ。
「え、むうちゃんッ?」
「え、っと、今日から、保健室登校になって……」
「え、先輩?」
「Mちゃん」
そこには、近所に住んでいる一つ下の後輩のMちゃんもいた。さらに、去年学校に転校してきた女の子もいたのだ。
そこでの生活は、とても楽しかった。
私が別室登校になったことを機に、友達になれた子もいた。
クラスメイトのキノコちゃん。声優が好きだと言うことを最近知ってから、更に話題が弾んだ。
モモちゃん。おっとりした性格とは裏腹に、グロいものが好きというギャップがある。
思えば、この辛い一年間があったおかげで、私は友達の幅を広げることが出来たのだ。
学校に、保健室という居場所を見つけることが出来たんだ。
寂しいと思っていた夏は、保健室登校という機会で、こんなに楽しい夏に変わってしまった。
『ねーねー。このみんなのグループ名って何にする?』
『保健室クラブって言うのはどう?』
『いいねそれ。流石むう!』
私の人生は、あの時、あの時間から、リスタートしたのです。
まるで、今まで止まっていた時間が動き出したみたいに。
この先、色んな楽しいことや辛いことがあったけれど、もう私は大丈夫。
新しい友達や、転校後に知り合った後輩や先生に囲まれながら、私は生きている。
ありがとう、保健室クラブ。