ナイトフィーバークリスマス
クリスマスという文化について。私はその言葉を口にして浮かれている人間にも、ツリーやサンタクロース、その季節のための曲にも苛立ちを覚えるのだ。そもそもキリストの誕生を祝う日。それとは関係なく、御馳走やプレゼント、恋人と過ごす時間の口実に使いたいという、日本人のエゴでしかないじゃないか。
ケーキやチキンに、キラキラした炭酸飲料などの並んだテーブルなんて、私は知らない。サンタさんなんて私のもとには来なかった。それが当たり前である私にとって、クリスマスという文化はどこまでも煩わしいものでしかないのだ。
「それ、ただの僻みじゃん」
多少の交流がある人間に話したら、聞き終えた彼女が開口一番、そう言った。
「自分が可哀想だから、クリスマスを楽しむ人間が嫌いってことでしょ。いや、あんたの不幸自慢なんか知らねえよってカンジ。何、同情してほしいの? はいはい、可哀想だねー。……で? ああ、何かプレゼントでもほしいの? じゃあアタシの服に付いてた糸くずをあげるね、アタシだと思って大事にしてね。はい、これで満足?」
「…………」
絶句する私の顔を見て、彼女は鼻を鳴らす。
「自分が可哀想だからって他人の不幸を願うような奴、クソだと思うよ。良い例としてはリア充爆発しろとか、冗談でも言うやつね。あれ、面白くないし、んなこと言ってるから恋人できねえんだろってカンジでイライラする。あんたの言ってることはそのレベルのことだよ。クリスマスが楽しい人達からすれば、勝手に僻んで可哀想アピールするあんたのほうが邪魔なワケ。分かったら爆発すれば?」
「お前!! お前お前お前ーーーー!!」
衝動的に声を荒げた。そんな私を事も無げに眺めている彼女の顔をぶん殴れたなら、どんなに気分がいいことか。
「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって! 僻み? 僻んで悪いかよそうだよ、私が可哀相だからリア充死滅しろって思って何が悪いんだよ!! クリぼっちとか何が悪いんだよクッソーーーー!! バカ!!」
喚き散らして、その場に蹲って、ひんひんと泣いた。何処までも惨めだった。人の幸福を願えない自分の不甲斐なさもさることながら、自分の境遇の悪さを少しも同情して貰えなかった悲しみが大きい。この涙が、冬の寒さに凍りついて、顔が地面にくっついて、二度と顔を上げられなくなればいい。
彼女から貰った、初めてのクリスマスプレゼント。この糸くずを彼女だと思い、きゅっと握りしめた。泣きながら家に持ち帰って、パン粉をまぶして、それを鍋で熱した油に浸した。パチパチと跳ねる油はイルミネーションの光によく似ている。
カラッと揚がった糸くずに蝋燭を立てて、暗い部屋の中、一人きりのクリスマスを過ごす。いいや違う、糸くず──つまり、彼女も一緒なのだ。
糸くずの揚げ物で気分も上げて。蝋燭の灯りの周りできよしこの夜を歌い明かした。
糸くずの揚げ物をかじり、味付けが微妙だったかもしれないとか考えつつ、火のついた蝋燭を部屋の隅に放おった。
炎上。きっとこれは聖火。キリシタンじゃないのでよくわからないが、神聖な炎って感じがする。炎の暖かさで、今年のクリスマスは寒くない。
初カキコども。一生懸命書きました。感想が聞きたいです。よろしくお願いします。