Re: トンボさえ語る時代 短編夏祭り開催中! ( No.721 )
日時: 2022/09/05 17:40
名前: 坂蜻蛉 宙露 ◆FK/Mzh4Usk (ID: YH.V6.CE)

【短編夏祭り】 いざ、シェイブドアイス

「霞月、おはよう!」
現在午前十時。蝉の声が頭に響く。今日は、友達の奏芽と街のかき氷専門店に行くのだ。
奏芽は食べるのが好きだという。あまり人には言わないそうだが、二人でご飯を食べる事が多い僕には言ってきた。
「おはよう。じゃあ行こうか」
「いいお店調べてきたよ。暑い時間になったら混むっていうから、早く行かなきゃ」
聞くと、その店の売りはふわふわ削りたての氷にシロップと果実も乗せた、夏祭りを思い出させノスタルジックにさせるそれとはかけ離れたかき氷らしい。僕も流行りを少しは知らないとだな。

歩道の照り返しがきつかったが、程なくして到着した。
奏芽はマンゴー、僕は苺に練乳を追加したものをオーダーした。
「霞月って甘党なの?苺練乳って」
「まぁ……甘いものは好き。練乳のかき氷って食べた事なくて」
すると、奏芽がスマホを取り出した。
「写真撮るの?溶けちゃうよ」
「うん。すぐ食べる。私ね、美味しいものは思い出にしたいんだ。でも、共有はしない。独り占めじゃないけど、私が知る限りは私だけがこれを食べたんだ、って思いたいから」
「そっか……僕のも撮る?」
「ううん、食べてて。溶けちゃう」
そう言って奏芽は微笑み、マンゴーのかき氷を写真に収めた。
スプーンに乗せた一口分を食べる。苺そのものの甘酸っぱい味がした。
練乳がたくさんかかったところは、最早ショートケーキの味だ。
口と心の中いっぱいに冷たい苺練乳を満たし、完食した。


メッセージ性とかはないけど、夏の雰囲気とかき氷の美味しさを表現した小説です。
霞月(かづき)、奏芽(かなめ)と読みます。