もやもや―っと面白そうなネタが思いついてはいるんですが形にするまでが難しい。
なので久しぶりにモチベ上げ。過去に書いた小説あさりに行ってきます。
(数分後)
なんかすっごい甘々な小説が出てきました。途中までしか書いてないけど。
これ本当に私が書いたのかなあ?
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【過去作:streamer】
0★プロローグ
「い、妹役~~⁉」
街の中心部から遠く離れた、郊外のとある横断歩道の前。
素っ頓狂な声を出したわたしに、横を歩いていた男の子がロコツに顔をしかめた。
黒いマスクで隠した口元をモゴモゴさせながら、彼は言う。
「しっ。あんまりでかい声出すな! バレたらこまんだよ」
「ご、ごめん」
とがめられて、わたしはとっさに、開けたままだった口を自分の手でおおう。
そうだよね。人通りが少ないとはいえ、ここも町。人が一人もいないわけじゃない。
どこかで誰かが、この会話を聞いている可能性だってあるってことだもん。
「で、でも、妹役ってどういうこと? 嘘だよね?」
幼稚園からの長いつきあい。一人っ子の自分にとって、今となりにいる幼なじみはま
さしく、『お兄ちゃん』のような存在。
ホントのお兄ちゃんだったらいいのになあと考えることもあるけど、きっとわたしに
はつりあわない。
わたしはこの子みたいな特技も才能も、なんにもないからさ。
幼なじみというポジションでさえ、もったいなく感じているんだよね。
「…………」
顔の前で手を振るわたしを、男の子はジロリとにらんで、そして。
「嘘じゃない。ただの冗談だ」
自分の手で、わたしの右腕をつかんで、そのままグイッと手元に引き寄せた。
だから、こっちは相手の胸に飛びこむようになっちゃって。
胸が内側から強く押されたように痛み出して、カッとホッペが熱くなる。
「言葉通り。おまえがオレの妹になるんだよ」
切れ長の目が、わたしを正面から見つめる。
風が吹き、彼の癖のない黒髪がなびく。
髪と同じく黒々とした瞳の奥は、透き通っていて、どこかはかなげで。
吸い込まれそうなくらい、キレイだったんだ。
1★演者とファンと妹と
日にちは変わり、一週間後。モダンな一軒家の広いリビングで。
「え、妹なの? その子」
ターゲットその一は、のんびりした口調で応えた。
櫻色に染めたミディアムヘアの男の子で、白色のカーディガンを羽織っている。
身体が細いからなのか、単に服が大きすぎるのか、指は袖口に隠れてほぼ見えない。
確かお名前は、〈まのくん。〉だっけ? ふ、普通に呼んでいいのかな……?
まのくんは正面に立つわたしたちを値踏みするかのように、目を細める。
「ホントなの莉都。ドッキリとかじゃなくて~?」
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わたしの名前は御船いろは。小学五年生。
動画を見ることと、音楽を聴くことが趣味。
それ以外はどこにでもいる、いたって普通の女の子……と言いたいところだけど、実
イッコだけ、クラスメートに内緒にしているヒミツがある。
動画投稿サイトで活動する、四人組の学生エンタメユニット・〈scissors〉。
歌い手、絵描き、ゲーム実況者、美容系ユーチューバー。様々な分野で自分の個性を
発信する子どもたちで結成された、今もっとも熱いグループ!
実はね。わたし、そのメンバーのひとりと幼なじみななんだ。
ちっちゃいころ、よく面倒を見てくれた近所の莉都おにいちゃんは、いつの間にか有
名なゲーム実況者になっちゃった。
彼がグループに入ってからかな。お互いが距離を置き始めたのは。
一緒にいたらいけない。おにいちゃんの邪魔になったらいけない。わたしは一ファン
として、陰で応援できるならそれでいい。
なんとなく、そう思った。根拠はないけれど、それで全てが上手くいく気がしたん
だ。だけど、あのとき、横断歩道で告げられた言葉に、うまく返事を返せなかった。
「大丈夫、ドッキリだから」
「みんながあとで笑ってゆるしてくれる」
自己主張が苦手なわたしは、気づけば、「わかった」ってオッケーしてしまっていたのです。
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まのくん。は、ハンドメイドを動画にあげている、「手作り系」のユーチューバーさ
ん。手先が器用で、ラメたっぷりのスライムから、瓶の中に偽物のお花や草を入れてレジンを流しこんでつくるハーバリウムまで、全て自作。
他にも演技が得意。たまにその動画もあがるけど、とにかくすごい。あざとかわいい
ちっちゃい女の子の声から、艶のある声まで出せるんだもん。
「まのくんって、男の子だったん、ですね」
「ん~? そーだよー」
「年齢も、性別も、非公開だったから」
動画で使われているキャラクターも、男の子のようにも女の子のようにも見える、中
性的な子だったし。
「性別を決めつけられたくなくてさ」
まのくんは、座っていたソファから腰を浮かし、わたしたちが立っている部屋の中央へと方へとゆっくり足を運ぶ。
「女の子みたいだねって幼稚園から言われてきたけど、別に女の子になりたいわけじゃないんだ。かといって、男の子をやめたいわけじゃない。男子っぽさはナッシングだケド」
わたしは思わず感嘆しちゃった。
自分とそんなに歳も違わないのに、表現の幅がひろい。自分の意見をしっかり伝えるだけの、語彙力がある。
言いたいことがあるのに、なかなか言えないわたしとは大違いだ。
「なんか、すごい。かっこいいですね」
ちょっと、声が上ずる。こんな立派な生き方をしている子とリアルで会えるなんて。
ドッキリの名目で参加させてもらってる身としては、喜んじゃいけないんだろうけど。
でもやっぱり、しびれるなぁ!
「ふふふ。ありがと~。でもいいの? 動画出演」
「?」
なんのことだろう、とわたしが首を傾げるのと、まのくんがからだをわたしの近くに寄せたのかほぼ同時だった。
右耳に彼の吐息がかかる。
「ふえっ」
「………かわいい声が世間様にばらまかれるよ」
ど、どどどどど、どういう意味ですかっ?
か、考えたらわかるかな?
だ、ダメだ、頭がグルグルして、ちゃんとはたらかない。心臓の音が徐々に大きくなっていく。心なしか身体も熱いような……。
「おいてめえ! いろはをからかうなよ!」
「うわ、この反応はマジの可能性あるかなあ! 対戦相手のことも『おい』とか『おまえ』って呼ぶ、あのRITO様が、名前呼びするなんてめったにないもんね! お兄ちゃんかっこよ~!」
「あんなカマのかけ方、いったいどこで覚えて来た」
「マンガとユーチューブ」
……じ、時代って怖い!
莉都兄ちゃんの苛立った声と、まのくんの喜々とした声に、わたしのか細い悲鳴はあっさりとかき消されたのでした。
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これはあれですね。溺愛コンテストにあげる小説を模索してた頃に書いたものですね。なんか納得いかなくてボツったやつだ。
今読んでみたら意外と面白いんだけどな。続きが出てこなかったのかなあ。
小説って、作者が続き書けなくなったらアウトだもんね。ムズカシイ……