Re: 【合作】アンドロイド大戦2020【完結】  ( No.7 )
日時: 2024/02/04 20:46
名前: アロンダイト (ID: 6nKXkMq.)

次の日朝ーー筋肉痛による重い腰を上げて、ペコとホライゾンは通学路を進む......
が、早速異変に気付いた。他の生徒の数が物凄く少ないのだ。ペコは「これは何かやらかしたか」と思いつつも、その理由を確かめるべく学校へ足を向かわせる。
そして、半分閉じられた正門の前まで到着すると、昨日の熱血体育教師がタンクトップ姿のまま、暑苦しい程の元気の良い声で挨拶活動を行なっていた。

「むっ! おおー! ペコにホライゾンじゃないか! もしかして、また俺との“特訓”に来てくれたのか!?」

「お、おはようございます! そういう訳じゃ無いんですけど......あの、今日って......?」

ペコを見つけるや否や、猛スピードで駆けてきて絡んでくる教師。

「うむ、それがだな......通達が遅れたんだが、今朝また“アンドロイド”が電気街に出没したらしくてだな。今日も残念ながら休校になってしまったのだ......だがな」

体育教師は続ける。

「俺との“特訓”だったら365日いつでもOKだぞ!」

「そ、そうだったんですかー? 分かりました、ありがとうございますー!」

サーっと教師から逃げるように後者の方へ逃げて行くペコと、教師に一礼してからそれを追うホライゾン。
そんな2人の背中を見送る体育教師は、ちょっぴり寂しそうな表情をしていた。

「オーナー、逃げるなら校舎とは反対側の方向へ行った方が良かったのでは?」

「まあ......確かに学校に用事は無いもんね......でも折角だし机周りを整理してから帰ろう」

2人は校舎へ向けて歩き出す。そして花壇が並ぶ通学路に差し掛かった時、そこで何やら作業をしている黒い短髪の少女が居た。ピンクに花柄の可愛らしいエプロンを身につけ、脇に置かれた車輪付きカートから苗や道具を取り出しては、それを花壇へ植えていく......
ふとそんな彼女が気になったペコは足を止める。休校し静かな校舎の前でポツンと居る少女だが、その手つきや視線の動きから、ペコはアンドロイドオタクとしての勘が働いた。

「ーー彼女、アンドロイドなのかな? でもオーナーの姿はないな......」

何故だろう、ちょっと気になったペコは、そろそろと彼女の横から近づくと声をかける。

「あのー、こんにちはー。君ってアンドロイドだよね?」

「......?」

少女と目が合うペコ。少女はややツリ目で赤い瞳をしており、アンドロイドと分かっていても、本物の人間のように眼力が強い。
変わった雰囲気の少女アンドロイドに、ペコは一瞬びくりとする。

「......何か用?」

「えっ? あ、いやー......なんか珍しいアンドロイドさんだなって思って、声をかけちゃった」

自分から話しかけておいて、戸惑うペコ。

「そう、じゃあ邪魔だからあっち行ってて」

そう吐き捨てると、彼女はペコを無視するようにまた黙々と花壇の作業に戻る。
ペコは少女アンドロイドの意外な反応に戸惑いつつもそこから離れ、後ろでその様子を見ていたホライゾンの所にまで戻ってくる。

「ほえー、アンドロイドにあんな事言われたの初めてだよ」

2人はその場を後にした。

Re: 【合作】アンドロイド大戦2020【完結】  ( No.8 )
日時: 2024/02/04 20:48
名前: アロンダイト (ID: 6nKXkMq.)

更に翌日、ペコ達は教室で朝のホームルームが始まるのを待っていると、勢いよく扉が開いていつもの体育教師が入ってきた。特にこの学校はゲームは漫画は全て自己責任で自由に持ち込めるものの、流石に絡まれるとめんどくさいので、皆各々の私物をゴソゴソと机の中にしまい始める。

「おーし、お前ら聞いてくれ。今日は転校生の来る日だから、紹介すっぞ」

「おおー、もしかして可愛い子!?」

「いやどーせ“ビックマム”だろ!がっはっは!」

「男子サイテー!」

相変わらずペコのクラスはいつもテンションが高い。まあ特に問題児が居る訳でもなく、至って平和でいいのだが。
そして教室の扉が開き、金髪を肩までで切り揃えた碧眼の少女が入ってきた。意外なルックスの転校生に、一瞬教室は静まる。そしてクラスの面子と正対する彼女の視線は真っ直ぐで、中々眼力があった。可愛らしい容姿だが、結構気も強そうだ。

「初めまして。私はリシェル。リシェル=ブラッケンハイムよ。よろしく」

そして彼女が澄んだ声で自己紹介をすると、どっとクラスから声が溢れる。

「うわー留学生!? よろしくー!」

「リシェルちゃんメアド教えて〜」

「男子臭すぎー!」

あわわ......こりゃジャパニーズ動物園だと思われても仕方のない光景......ペコが苦笑いしながらその光景を見ていると、その横を涼しい表情のままリシェルが通り過ぎていく。そして彼女が指定された自身の席に着くと、いつも通りのホームルームが始まった。



その昼、ペコはホライゾンと同じ席で昼食の準備をしていた。ペコはカップ麺、ホライゾンは自宅から持ってきたお弁当だ。彼女の弁当箱は女の子らしからぬ、保温効果のある金属製のゴツいものだった。黒光りする弁当箱は、まるで秋葉原で売ってる、おっさん達が好みそうなガジェットみたいだ。あまり見た目は気にせず、性能だけをとことん追求していく、ホライゾンらしい選択だ。
そしていざ食べようと2人が箸を付けようとした矢先、いつもの体育教師が入ってきて、ペコ達の元へやって来た。
ペコが本当によく動き回るなこの教師は......と思っていると、彼は手に教科書一式を持っていた。

「ようペコ元気か? ちょっと悪いんだけど、リシェルさんが見当たらないから、後でこの教科書を渡してくれないか?」

「ああ、いいですよ!」

ペコが素直に教科書を受け取ると、教師は「よろしく!」と言い残して教室を出て行った。
そして丁度それと入れ替わるように、今度はリシェルが教室へ入ってくる。
彼女がペコの机に近寄ってきた辺りで、彼は声をかける。

「あのー、リシェルさん。これ、君の教科書......」

「え? ああ、ありがとう」

ちょっと驚いたように立ち止まり、ペコから教科書を受け取るとリシェル。
だがそこで、ペコは彼女の“異常”に気がついたのだ。

「ーーあれ? 君“アンドロイド”じゃないか?」

「なっ!? 何言ってるの?」

きょどるリシェル。

「いや、だって君の瞳、それカメラだよね? レンズが見えるけど......」

「オーナー、リシェルでしたら、先程校舎の裏口に居ましたよ。恐らく今もそこに居ると思われます」

「ええー? じゃあ、この人は一体......誰なの?」

リシェル(?)とホライゾンの顔を交互に見るペコ。

「さあ? 私は知りません。とりあえずこれ以上オーナーの手を煩わせないよう、私がこの教科書をリシェル本人にお届けしましょう」

そう言い残し、大胆にもホライゾンは教科書を持って窓から校庭へダイブして、そのまま駆けていく。

「ちょ! ちょっと待ってください!」

その後を、同じく3階の窓から飛び降りて追いかけていくリシェル(?)。この時点で彼女が人間じゃないのは明らかだ。

「うわー!? なんだなんだ!?」

ペコもカップ麺が伸びると困るので、速攻で食べ終えてあとを追う。

Re: 【合作】アンドロイド大戦2020【完結】  ( No.9 )
日時: 2024/02/04 20:49
名前: アロンダイト (ID: 6nKXkMq.)

ててーっとリシェルの教科書セットを持って駆けていくホライゾン。そして校舎裏口にてリシェルを発見するが......何やら様子が変だ。こちらに背を向けて誰かと話をしている。リシェルの前には黒塗りの高級そうな車が数台停車しており、更に黒服の男が数人居る。
突然走ってきたホライゾンに、黒服の男達がリシェルを庇うように前に出てくる。しかもポケットに手を伸ばし何やら物騒な物を取り出しそうな勢いだ。

「なんだお前はー!?」

「私はパルヴァライザー型アンドロイドのホライゾンといいます。リシェルに教科書を届けに来ました」

ーー教科書......? 一瞬固まる黒服の男達。だが直ぐに手前の男が「後にしろ!」と吐き捨ててきた。
が、その後ろからリシェルが出てきた。そして教科書を受け取る。

「ありがとう、ホライゾン」

「お嬢様!? 相手はアンドロイドですよ!」

「大丈夫、彼女はクラスメイトよ」

リシェルは相変わらずいつも冷静で落ち着いてる。
しかし凛々しいリシェルの表情が、その後少し曇った。ホライゾンの後ろから彼女のオーナーである少年ペコと......なんとリシェルに姿形が瓜二つの謎の少女が駆けて来たのだ。

「“ミッシェル!”。影武者が主人の所へ来たら意味ないでしょ!」

「あれれ!? リシェルさんが2人? 一体これは......?」

キョロキョロと2人を交互に見るペコを見て、先に来ていた方のリシェルが何か諦めたように溜息をつくと。

「2人とも、ちょっとこっちに来て」

ペコとホライゾンを一人でどこかへ連れて行く。

Re: 【合作】アンドロイド大戦2020【完結】  ( No.10 )
日時: 2024/02/04 20:51
名前: アロンダイト (ID: 6nKXkMq.)

校舎の裏に連れてこられたペコとホライゾンは2人のシェリーから事の事情を聞くことに。
何でもこの片方のシェリーは、実はアンドロイドで、しかもミッシェルという名前まであるそうな。
そしてこのシェリー、今は何でも英国マフィアの首領らしいのだ......

「なんだって? 君はヤクザ者だったのーー」

ペコが言いかけた刹那、彼の目の前で交差する剣戟。ホライゾンのレーザーを纏った手刀とミッシェルが抜いたロングソードがぶつかる。
腰を抜かしたペコにミッシェルはーー

「リシェル様に無礼な言葉......許しませんよ」

「いや、あの......カタギにいきなり剣を抜くもんじゃないと思うよ?」

尻餅をつき、両手を上げながら言うペコに、ミッシェルも自分が少し熱くなっていたことに気づいたような。「そうですね......失礼しました」と言いながら剣を収める。

「まあ、とにかく私達の秘密が皆んなにバレると困るのよ。だからこの事は暫く黙ってて貰える?」

「う、うん......」

尻餅をつくペコに対して、片膝を折って顔を近づけるリシェル。金髪が眩しく、青い瞳が宝石のように人そ誘い込む輝きを放っているのだあ。
ペコの言葉を聞くと、リシェルは安心したようににこりと笑みを浮かべると立ち上がり。

「ありがとう、ペコくん。でもーーもしも約束を破った時は......分かってるわよね?」

振り向きざまにそう言うリシェル。

「ああ、分かったよ......誰にも言わないよ」

その笑みの裏に隠された、彼女の微かな殺意。見た目は可愛いけど、恐ろしい女の子なのだ......