雑談掲示板
- 新しい小説
- 日時: 2018/08/24 16:25
- 名前: 雛風 (ID: RPq3z/iI)
2018.08.24 16:25 pxy008.kuins.kyoto-u.ac.jp一部UNKsメモ
全レスもどる
Re: 新しい小説 ( No.2 )
- 日時: 2018/08/24 16:42
- 名前: 雛風 (ID: RPq3z/iI)
2018.08.24 16:42 pxy008.kuins.kyoto-u.ac.jp hgEメモ
Re: 新しい小説 ( No.3 )
- 日時: 2018/08/25 00:13
- 名前: 雛風◆iHzSirMTQE (ID: Hdj2lGGs)
雛風さん
こんにちは雛風さん。雛風という者です。この度はハンドルネームが被っているため少しご相談、質問させていただきに参りました。
まず、失礼なことを言うようですが私のなりすましでしょうか? 以前なりすましをされてこの掲示板を荒らされ、濡れ衣を着せられたことがあります。なりすましでなければ本当に申し訳無いです。
親記事に「お久しぶりです」と書かれていましたが以前からいらっしゃった方でしょうか? でしたらこちらが名前を変えます。なりすましでないかどうかの確認さえ取れれば構いません。最初に来たコメントがこんなもので本当に申し訳ありません。ご迷惑をお掛けします。
お返事がもらえ次第このレスは消させていただきます。
Re: 新しい小説 ( No.4 )
- 日時: 2018/08/31 18:35
- 名前: 紫桜 (ID: N1c9ycLY)
雛風さん ( No.3の方ではございません )
こんにちは。紫桜と申します。
単刀直入にお聞きしますが、私のスレッドに小説を投稿していらっしゃったのは、貴方でしょうか?
間違っていたら、大変申し訳ございません。
もしそうであるならば、非常に迷惑ですので、早めに消していただければと思います。
よろしくお願いいたします。
Re: 新しい小説 ( No.5 )
- 日時: 2018/08/31 18:38
- 名前: 雛風 (ID: ERmEiGlY)
2018.08.31 18:38 pxy002.kuins.kyoto-u.ac.jp bbAメモ
Re: 新しい小説 ( No.6 )
- 日時: 2018/08/31 18:41
- 名前: 紫桜 (ID: N1c9ycLY)
いりませんし、非常に迷惑ですし、だったら少なくともここに書いてください。
他の方々や私のスレッドに書き込まないでください。
Re: 新しい小説 ( No.7 )
- 日時: 2018/09/01 00:08
- 名前: (ゝω・)イッチャンダヨ! (ID: Gm9BTMyc)
あの、部外者の私が言うのもあれなんですけど紫桜さんのスレに書き込むのやめてあげてください。リア友って書いてるじゃないですか。なんでそのことを無視してあんたが小説書き込むの?おかしくない?紫桜さんあの、もしダメだったらもうしないです。あなたのリア友さんとのスレ。勝手に見て申し訳ないです。雛風さんあなた自分が人に迷惑をかけてるってこと分かってるんですか?紫桜さん嫌がってますよ?ここに書き込まないでくださいって言ってましたよ?なんで無視してんの?なんであそこに書いた小説消さないの?ここに自分のスレ建てたんだったら紫桜さんのスレッドの小説も他の人のスレッドの小説も削除してここに全部書いてください。他の方々の迷惑です。部外者の私が口を挟んですみません。
Re: 新しい小説 ( No.9 )
- 日時: 2018/09/01 01:00
- 名前: (ゝω・)イッチャンダヨ! (ID: Gm9BTMyc)
いえ、お礼を言われることなんて何も。
ただ、見てて嫌気がさしたので。
嫌だって言ってるのに同じことをされ続けるのって腹が立つので。その怒り?をぶつけたようなものなので。
Re: 新しい小説 ( No.10 )
- 日時: 2018/09/02 15:27
- 名前: ルナルナ (ID: T1n3Hgt2)
翌日、寝不足と腹痛につき
(副管理人1が編集しました。 2018.09.04)
「しあわせだ……」
「……そうだね」
すこし早くなった鼓動を聞きながら、意識はゆったりと闇に落ちた。
Re: 新しい小説 ( No.11 )
- 日時: 2018/09/02 15:33
- 名前: 霧滝味噌ぎん◆uVPbdvNTNM
>>10
内容がR18突っ込んでるんで通報されてもおかしくないですよ
Re: 新しい小説 ( No.12 )
- 日時: 2018/09/02 15:38
- 名前: ルナルナ (ID: T1n3Hgt2)
あ、しってまーす。
知っててやってるので。
目当ての人が動いたら、ちゃんと消しますよ。安心してください。
以下、小説です。
・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚
おそ松の突飛な図らいで庭に夏祭りのセットが組まれた。セットとは言いつつも、出店では本物の食べ物や馴染みの遊びが出来るらしい。手ぶらで来ていいよ、と言われたから、普段着にスマホ程度で外に出た。
一定間隔に祭と書かれた提灯が並び、遠くからは太鼓と笛の音が響いてくる。雰囲気は流石、楽しいことが好きなおそ松がプロデュースしただけのことはある。
「あれ、カラだけ?」
開いた扉から顔を覗かせたのは一松だった。一松も普段と変わらない服を着ている。
「あぁ。十四松とトド松は先に行っちまったよ……待つこともできねぇのかアイツらは」
「まあ、いいんじゃない? 最初に揃っても結局はバラバラになるんだし」
扉横の壁に凭れ、一松が言う。
「お前は行かねぇのかよ」
「カラがここに居るってことはまだチョロが来てないってことでしょ」
「……」
「せーかい」
ふ、と目を細めて得意気に笑う一松に、ひとつ舌打ちをする。目敏いヤツだ。
「俺だけだったらカラも先に遊びに行ってるはず。薄情だね」
「お前だってそうするだろ」
「うん」
素直過ぎるのも腹が立つ。苛立ちが募りかけていた時、また扉が開いた。ゆったりとした動きで出て来たのは浴衣に身を包んだチョロ松だった。
「あ、僕が最後ですか?」
浴衣の黒地に濃い緑の帯が映え、チョロ松の白い肌を際立たせている。
「浴衣着て来たんだ」
「ええ、てっきり皆も着て来るのかと……」
「衣装じゃあるまいし、わざわざ動きづらいもん着ねぇよ」
小さな段差を前に、一松はチョロ松へ手を差し出した。チョロ松は驚いたように目を見開くと、そっと手を取り支えられながら降りて来る。
「似合ってる」
「あ、ありがとうございます……」
チョロ松は照れたように視線を泳がせた。
「でも、その、僕だけはしゃいでるみたいで……恥ずかしいです」
そう言いながら、手に持っていた団扇で口元を隠す。普段より広く開いた首元がほんのり紅く染まっていて、思わずごきゅりと喉が鳴る。
「き、気にすんな! 俺らしかいねぇんだし」
帯を崩さない程度にぽん、と腰を叩いた。
「こういうのは楽しんだもの勝ちだよ」
両隣の俺らを見回し、それから安心したようにチョロ松は笑った。
「それじゃ、行こうぜ」
「それじゃ、行こうか」
「「真似すんな」」
「あはは!」
***
「わぁ……」
感嘆の声が出るのも無理はない。ずらりと一本道を挟むように並ぶ屋台の数は圧巻だ。向こうの端が見えないんだが、一体どれだけ用意させたのやら。
「流石おそ松兄さんですね」
ふふ、と笑う横顔を見て、兄貴もきっと弟たちのこんな笑顔が見たかったのだろうな、と頭の隅で思う。当の本人はまだやることがあると朝からあっちへこっちへ駆けまわっているが。
「何か食べる? それともゲーム?」
「うーん、これだけあると迷ってしまいますね」
「あ、俺ラムネ」
氷水の中で冷える瓶のラムネが目に留まった。カラッとした暑さは嫌いじゃないが、喉が渇く。
「お前らは?」
「僕も」
タオルで水気を拭き取り、栓を空けたラムネを気の良さそうな顔をしたおっちゃんに二本手渡され、一本を一松に渡した。チョロ松の困ったような顔を見てふと思い出す。確かコイツ、炭酸はあんま飲めないんだっけか。
しゅわしゅわと音を立てる瓶を差し出すと、チョロ松はきょとんとした顔で俺を見た。
「一口くらいが良いんだろ?」
「……よく覚えてましたね」
「お前の飲み残し処理班は俺だったからな」
「処理班って……」
チョロ松は眉根をぐっと寄せる。うわ、ブサイク。
「いらねぇの?」
「……欲しいです」
瓶を受け取ったチョロ松は、ゆっくり傾けて喉を鳴らす。薄い皮膚が上下して、音を立てる。ずり落ちた裾からは、白く細い腕が見えた。
「は……久しぶりに飲むと美味しく感じますね」
本当に一口二口程度減っただけでラムネは戻って来た。
「ありがとうございます」
にこりと微笑み、先を歩いて行く。じとりと突き刺さる視線を手で払い、後を追う。
「…………」
「……視線がウゼェ」
「ずるい」
「残念でした」
空になった瓶をゆらゆら振ってゴミ箱に放った。喉は潤ったはずなのに、体はまだ渇きを訴えている。
***
「ひとつくれ」
「はいよー」
香ばしい匂いに釣られてイカ焼きを買った。噛み付くと程よい弾力と磯の香りが広がる。一口噛み千切り、柔らかな身を咀嚼した。
「あちっ、」
小さく声が聞こえた方を向くと、たこ焼きと格闘するチョロ松の姿が。はふはふと息をしながら美味しそうに大粒のそれを食べている。
「チョロ、いっこ」
「イカにタコって」
「いーだろ、人のモンは余計美味そうに見えるし」
「それはそうですけど」
かつお節の踊るそれに爪楊枝を刺し、ふーふーと息を吹きかけ、「ん、」と差し出してきた。手首を掴み、口の中へ誘う。爪楊枝を引き抜くと舌が火傷しそうな熱さに襲われ、思わず上を向く。
「あっひ!」
あまりの熱さに涙も滲む。さっきのチョロ松みたいにはふはふと息を荒らげ、ようやく冷めてきた粒を噛んだ。とろっと溢れる中身に大ぶりのタコが主張して美味い。
「あ、いいな、僕も」
あーん、と一松が口を開ける。チョロ松はまたふーふーと冷ましてやっている。が、俺の時より長い。
「一松は猫舌だからね」
「チョロ……」
優しい! と目を輝かせる一松もまたたこ焼きを食べさせて貰い、ゆるゆると頬を綻ばせた。
「お返し」
一松は手に持っていたチョコバナナを差し出す。確か甘いものが好きだったな。さっきもあんず飴とか食べてたし。
「え、と、僕、あまり甘いものは……」
「……僕の食べられない?」
「うっ……」
コイツのしょんぼりした顔にチョロ松は弱い。それをわかってやっているのだからタチが悪ぃ。
ぐいっと押し付けられたそれにチョロ松は顔を顰めた。が、弟の頼みを断ることも出来ず、顔に掛かる横髪を耳に掛けて小さく口を開けた。
「っ……」
「あ、ん……」
小さめの一口だった。控えめな歯型が付いたそれをじっと見つめる一松のケツを蹴る。
「いっ……!」
「ムッツリ」
「……カラだって眼がやばかったし」
「は!?」
「ケモノ、っていうかケダモノって感じ」
「な、っ」
生意気に笑う一松の顔にイラッとする。同じ顔のはずなのに、なんでこうも抱く感情は違うのだろうか。
「どうしたんですか?」
チョロ松が声を掛けてくる。口端にはチョコをくっつけていた。俺の手が伸びるよりも先に、隣の影が動いた。
「チョコ、付いてる」
ちゅ、と吸い付いた唇からちろりと赤い舌が覗いた。カッ! 体温が上がり、体中の血液が逆流する感じがした。
「もう、普通に言ってくれればいいのに」
チョロ松は気にせず持って来ていたハンカチで口を拭う。一松はすこし悔しそうに眉を寄せている。俺がやったら殴られるぞ。それよりはマシだろ。
「おい、チョロ」
「はい?」
「お返し」
「んぐ!?」
不意をついてイカ焼きを突っ込む。もごもごと膨らむ頬と睨みつける鋭い目つきを見て、何故だか安心した。
Re: 新しい小説 ( No.13 )
- 日時: 2018/09/02 16:28
- 名前: ルナルナ◆fnkquv7jY2 (ID: T1n3Hgt2)
嫉妬
四宮のそんな顔を、初めて見た気がした。
無口で大人っぽくて。僕にとっての四宮は、少し年上みたいな雰囲気があって、落ち着いている印象だった。それは付き合ってからも変わらず、四宮はいつも僕の手を引いてリードしてくれる。恋愛初心者な僕とは違って、きっと以前にもそういう相手がいたのだろうと推測できてしまうほど、彼はいつだって格好良かった。一々、赤くなってどきまぎしてしまう僕を優しく宥めてくれる。でも、と。遊園地の時の彼を思い出す。
「きゃー、蛍介さんっ!」
「……っ!」
目の前で繰り広げられる攻防に、僕は呆然とするしかない。茜が伸ばした手を弾き、僕に触れる前に叩き落とす。その一連の動きに無駄はなくて、グラグラと揺れるアトラクションにも拘らず二人は微動だにもしていなかった。アクション映画のワンシーンみたいな気迫を感じて、僕はごくりと息を呑む。
「蛍介さんっ」
「……」
駄目だ、と言わんばかりに四宮が茜の手を遮る。その遠慮のなさに、ふたりは兄妹だったっけなんて今更なことを思い出してしまう。思えば目の前の光景から、現実逃避しようとしたのかもしれない。その時は目の前の動きに目がいって気にならなかったのだけど、思い出してしまえば子供っぽい欲が首をもたげた。
茜に対する気安さが羨ましいなんて、呆れられてしまうかもしれない。けれど、僕も四宮に感情をぶつけられてみたいと思ってしまった。君の特別な表情を、僕だって見てみたい。
* * *
四宮を怒らせるのは、想像以上に難しかった。
出店を指さして、あれが食べたいと言ってみたり。突然、四宮の家に訪問してみたり。街中で手を繋ぎたいと我儘を言ってみたり。自分の思いつく限りのことをしてみたけれど、四宮は微笑みながら聞いてしまうばかりだ。元々、友達と喧嘩すらまともにしたことがなかったから、少しだけ怒らせる我儘の加減がわからないせいもある。僕はいつだって上から押さえつけられる関係しか築いてこなかったから、対等に向き合ってする喧嘩の仕方を知らなかった。
「四宮」
呼びかけると、四宮が繋いだ手に力を込めてくれる。優しく口許を緩めて、「何かしたいなら、寄り道して帰ろうか」なんて甘やかすことばかり口にするから。僕の胸は高鳴るばかりで、四宮の周囲がきらきらと輝いて見えてしまう。自分ばかりが慌てている気がして、四宮の調子を崩してみたいのに上手くいかない。
どうしたら良いかと悩む僕とは裏腹に、最近の四宮はとても機嫌がいい。「次は何したい?」なんて自分から聞いてくれるぐらいで、僕の方が狼狽えてしまう。今までの我儘なんて気にもしていないようで、優しく微笑んで手を引いてくれる。恋人の欲目を差し引いても、こんなにも素敵な彼氏はいないんじゃないかなんて。熱で茹でられた思考で、ぼんやりと思う。
不意にするりと頬を指先で撫でられて、くすぐったさに目を細める。
「ふふっ、くすぐったいよ」
「……」
四宮も優しく微笑んでくれて、ゆっくりと顔が近づいてくる。ぱちぱちと目を瞬かせながら、綺麗な顔だなぁなんて四宮を見つめていた。
「四宮?」
「……」
吐息が混じってしまいそうな距離で、四宮が微かに笑った気配がした。今にも触れそうだった唇を離して、僕の前髪を上げると額にキスを落とす。ぼっと燃えるように頬が熱くなった僕を見て、四宮は困ったように微笑むとくしゃりと前髪を撫でてくれた。そんな何かを堪えるような表情に、僕は首を傾げてしまう。それが何かを聞く前に「行こうか」と手を引かれてしまって、結局聞けずじまいになってしまった。
***
「いや、お前ら中学生かよ」
四宮との関係を知っているからと流星に相談してみたら、返って来たのはそんな一言だった。
「え、そうかな? でも、手も繋いだよ」
「いやいや、キスぐらいしろよ。付き合ってんだろ」
「えぇっ!!」
四宮とのキスなんて想像するだけで恥ずかしくて、とてもじゃないけど出来そうにない。熱くなった頬を押さえて、机に突っ伏する僕の上から呆れたような流星の溜息が聞こえる。
「まさか、それすらまだだったとは思わなかった。あいつ我慢強いな」
「我慢させてるのかな……?」
「まぁ、してるだろ。でも、お前にも嫉妬って感情あるんだな」
「……え?」
何のことだか分からなくて首を傾げると、流星が「おいおい」と驚いたようすで僕を見てくる。
「自分の知らない顔を知ってる奴がいるの嫌だったんだろ?それって嫉妬じゃねぇのかよ」
思ってもいなかった言葉に、じわじわと恥ずかしさが頬に昇ってくる。もしかして、僕はとんでもない惚気を流星に溢してしまったんじゃないだろうか。今さら気付いたところで、一度口にした言葉は戻ってきてはくれない。
うわぁと顔を両手で覆って、足をばたばたと動かして気を紛らわせる。いっそ、このまま消えてしまいたいぐらいだった。
付き合っていられないとばかりに、流星が席から立ち上がる。それに自分でも何を思ったのか、咄嗟に離れていく流星の服を掴んでしまった。言い訳するためだったのかもしれないけれど、そのせいで流星が体勢を崩してしまって僕たちは縺れ合うように床に倒れ込んでしまう。椅子やら机やらを巻き込んで、大きな音が教室に響いた。
「ご、ごめんね。大丈夫?」
「……いいから退け。見下ろしてんじゃねぇ」
どうやら押し倒す形になってしまったらしく、物凄く顔をしかめた流星の圧に慌てて身を起こそうとする。タイミングが良いのか悪いのか、ガラリと教室の戸が開く音がして。振り返ると茫然とした様子の四宮と目が合ってしまった。四宮は僕たちを見下ろしながら、身じろぎひとつすらしないで固まっている。
「あの、これは。えっと」
「変にどもるな! 誤解が深まるだろうが!!」
「ごめんっ」
僕たちのやり取りすら聞こえていないみたいで、茫然と立ちすくんだままだ。その隙を見逃さずに流星は僕を突き飛ばすと、「誤解すんなよ! 俺には瑞希だけだからな!」と叫び声を一つ残して廊下の先へと消えていった。寧ろ、その一言で誤解が深まった気がしないでもない。
教室に残されたのは僕と四宮だけで、僕は恐る恐る四宮へと近づいた。誤解されていたら嫌だったから声をかけると、腕を掴まれて引き寄せられる。噛み付くように唇を押し付けられて、僕は驚きに肩を跳ねさせてしまった。反射的に逃げようとする腰に腕を回されて、ぐっと身を寄せられる。
溺れるような口付けの嵐に、僕の思考は疑問符に埋め尽くされている。呼吸もうまくできなくて、酸欠のせいか視界が白くぼやけていく。
「ま、待って」
言葉すら飲み込むように上から押さえつけられて、身動きがとれない。「嫌だ、やめない」なんて普段の彼から考えられない強引な物言いに、僕の思考は混乱するばかりで。
唇が離れると、息苦しさから咳き込んで酸素を求めてしまう。
「あいつは大丈夫だと思っていたのに」なんてゾッとするほど冷たい声に、背筋がぴんっと張った。
「え、あの、四宮……?」
目の前にいるのが四宮なのか疑わしくなるぐらい、刃物のような鋭さが心臓を撫でる。
茜に向けるような、馴れ合いに似た喧嘩がしてみたかった。親しさゆえに交わす軽口を、四宮としたかっただけだ。でも、これは違う。茜に向ける感情よりも、ずっと暗くて冷たい。
唇を噛んで俯くと、四宮がハッとしたように僕の腰から手を離した。四宮の前だと僕は子どもみたいになってしまう。思い通りに行かないと駄々をこねて、拗ねては彼を困らせてしまう。
「ごめん、怖かったか?」と四宮の掌が慰めるように、僕の頬を何度も撫でていく。どうして流星を押し倒していたのかと問われて、僕は口をつぐんだ。経緯から話してしまったら、途轍もなく恥ずかしい思いをするのは目に見えていたからだ。どうしようと逡巡している間にも、四宮の誤解は突き進んでいく一方で。「好きだからか?」と言われてしまえば、反射的に「違うよ!」と言い返していた。僕の言葉にほっとしたような表情を浮かべたけれど、すぐに「じゃあ、どうして」と聞き返してくる。その声音に微かな険が宿っていて、抑え込んでいるようではあるけれど嫉妬の感情が滲んでいた。
「四宮って僕の前だと大人っぽいけど、茜ちゃんといると少し雰囲気が変わるよね」
脈絡のない言葉に、四宮が僅かに首を傾げる。でも、口を挟むことなく、静かに先を促してくれた。
「それが羨ましくて。四宮の違う顔が見てみたくて、我儘ばっかり言ってごめんね。流星にはそのことで相談しただけなんだ。転んだせいで、変な体勢になっちゃったけど」
がっくりと肩を落としてしまう。そもそも四宮を怒らせた後のことすら考えていなくて、こうして感情をぶつけられたら途端に心臓が竦み上がってしまうなんて情けない。
四宮に待てをかけられて、ゆるゆると顔を上げる。珍しく目に見えて困惑している四宮を前に、次は僕の方が首を傾げてしまった。
「え、いつ我がまま言ってたのか? 手を繋ぎたいとか、あれ食べたいとか。いっぱい言ったけど……?」
「……」
「えっ! あれぐらいは我が儘に入らないの? じゃあ、僕がしてたことって……」
無駄だったのか、と愕然としてしまう。
「甘えられてるみたいで嬉しかった……?」
ぶわりと昇ってきた熱が頬を染めて、顔から湯気が出てしまいそうだ。そんなつもりはなかったけれど、四宮からは甘えているように見えていたなんて。
先刻から調子を狂わせているのは僕ばかりで、やっぱり四宮には敵わないのかと少し落ち込んでしまう。熱くなった頬を押さえたまま俯いた僕に、四宮が手を伸ばした。そのまま頬を両手で包まれて、そっと持ち上げられる。
「どうしたの?」
無理やりキスしてごめん。なんて謝ってくれるけれど、そもそも僕が勘違いさせるようなことをしたせいだ。
「気にしないでよ。それに、その、僕は嫌じゃなかったから」
自分で口にしたくせに、頬の熱が増した気がした。恥ずかしさからぎゅうっと瞼を閉じると、少し間をおいて四宮が大きく息を吐く。そのまま額を擦り寄せられて、そろそろと目を開ける。
頼むから、あまり煽らないでくれ。
唸るように吐き出された言葉には熱がこもっていて、切実な響きが宿っていたけれど、その澄ました表情を壊したかったのは僕の方で。
僕は勢いをつけて、四宮にキスを送る。
「我慢しないでよ」
その一言に、前髪に隠れた瞳が熱を孕んだ気がした。
あ、やっと見れた。
Re: 新しい小説 ( No.14 )
- 日時: 2018/09/02 16:28
- 名前: ルナルナ◆fnkquv7jY2 (ID: T1n3Hgt2)
雪合戦
空が薄っすらと橙色に染まっていた。夕方でもないのにと不思議に思っていたのだけど、昼頃にはふわふわと雪が舞い落ちて、校庭を白一色に塗り替えてしまった。染みひとつもない雪景色に、蛍介は思わず感嘆の声をあげてしまう。柔らかな雪がふんわりと降り積もっていて、雪遊びをするには打ってつけの日だ。雪遊びといえば思い浮かぶのは雪合戦で、蛍介は隣に座る流星に期待の眼差しを向けてしまう。
「流星、雪積もってるよ!」
「あ? あぁ、そうだな」
「ね、あのさ、雪合戦しようよ」
「……お前なぁ、子供じゃ」
「いいね! 皆でしたら楽しそう」
「おう、やるぞ」
傍にいた瑞希たちも興味を持ってくれたらしく、話に交じってくる。先刻まで渋っていた流星も、なぜか突然立ち上がりやる気を見せていた。なんで行き成り乗り気になってくれたのだろう、と首を傾げてしまう。それでも、蛍介は雪合戦ができることで頭がいっぱいになってしまって、そんな疑問はすぐに吹き飛んでしまった。
弾む心のままに教室を出て玄関口まで行ったところで、同じようにわくわくとした様子のバスコと鉢合わせた。目が子どもみたいにキラキラと輝いている。
「蛍介も外で遊ぶのか?」
「うん。せっかくだから雪合戦しようって」
どうやらバスコも雪景色を前にしたくなったらしく、校庭にでるところだったらしい。ちらりと視線を後ろにずらすと、苦笑いの翔瑠と目が合った。輝かんばかりの笑顔を前に根を上げたのか、バスコの後ろで寒そうにしながらも教室に戻る気はないらしい。
いつの間にか大所帯だが、雪合戦は多ければ多いほど楽しいだろうから、バスコたちも一緒に校庭に出て、グッパーでグループを分けることにしたんだけど。
「瑞希に雪玉ぶつけられっかよ!!」
「え、わぁっ!?」
「……!!」
同じグループだったはずの流星が雪玉を投げてきて、なぜか敵方だったはずの四宮が庇ってくれたぐらいからグダグダになってしまった。誰が敵で味方なのか入り乱れて、ただの雪玉の投げ合いになってしまっている。
「ごめん、冷たかったよね? 大丈夫?」
制服に雪の結晶がついてしまっていたから軽く手で払うと、四宮は大丈夫だと頷いてくれる。そのうえ、蛍介は大丈夫だったかと逆に聞かれてしまった。四宮って本当に優しいなぁ、なんて自然と頬が緩む。
「僕は大丈夫だよ。四宮が庇ってくれたから」
良かった、なんて安心したように笑ってくれるから、蛍介も「ありがとう」と口にしようとして。背中に冷たい塊がぶつかった。
「わ、わっ!」
「油断してんじゃねぇ! 瑞希は渡さねぇからな!」
何故そこに瑞希が出てくるのかはわからないけれど、背中の冷たさからして雪玉をぶつけられたらしい。負けてられないなと振り返ると、既に流星の顔面に雪玉がぶち当たるところだった。一体どこからと視線を彷徨わせると、四宮が蛍介を庇うように前にでる。その手には既に別の雪玉が握られていた。
流星の顔から雪がずるずると滑り落ちていく。その下から怒りに吊り上がった目が見えて、蛍介は思わず「ひぃっ」と声を上げかけた。
「四宮ぁ、てめぇ後悔すんなよ」
「……」
むっ、と引き結ばれた口元が動いたかと思えば、蛍介の目前で雪玉が凄まじいスピードで交差した。まるで弾丸のような速さで、呆気にとられたまま飛び交う雪玉を見ていることしか出来ない。
「おぉ、俺も混ぜてくれ!」
「ま、待てってバスコ!」
そこにバスコも加わり、続いて翔瑠もその後を追って行ってしまう。バスコが参戦したせいか、雪玉が凶器と化した。偶に凄まじく痛そうな音がするのは気のせいだと思いたい。
女の子たちは飛び交う雪玉の中に突入するのは諦めたらしく、少し離れたところで雪だるまを作り始めている。もはや思い思いに動きすぎて、めちゃくちゃなのに、蛍介は緩んでいく口元を抑えることができなかった。
だって、すっごく楽しい!
「僕も!」
蛍介は雪を掬って丸めながら、乱闘と化した雪合戦へと飛び込んだ。
* * *
雪合戦が落ち着いた頃には、みんな制服が真っ白になっていた。雪まみれにはなってしまったけれど、動いていたせいか寒さは感じない。
荒れた息を整えていると、四宮が慌てた様子で近づいてきて、服についた雪をぱたぱたと払ってくれる。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。え、いいからって?」
冷やしたら風邪を引くなんて、心配し過ぎだと思う。そんなことを言うくせに、四宮の制服も雪まみれで蛍介よりも真っ白になってしまっている。実は蛍介を庇っていたからなのだが、あの入り乱れた雪合戦の中では気付けなかった。
「四宮だって真っ白だよ?」
「……!?」
俺はいいから、なんて逃げようとするから「駄目だよ」と引き寄せて、肩に乗っていた雪を払ってあげる。四宮はうっすらと頬を染めると、俯いて大人しくなってしまった。暫く向かい合って雪を落とし合っていると、遠くから声が掛けられる。聞こえてきた方に視線を向けると、美玲と瑞希が雪だるまの隣で手を振っていた。
「翔瑠、雪だるまだ! かわいいな!」
バスコが今にも抱き着きそうな勢いで雪だるまに駆け寄って、興奮したように頬を赤く染める。その目はきらきらと輝いていて、まるで宝物でも見ているみたいだ。
流星も近づいて「さすが瑞希だな」なんて言って、美玲に「私も作ったんだけど」と軽く小突かれている。
「蛍介、どうかな? 可愛くできたでしょ」
「うん、すごいね!」
くりっとした丸い目が可愛くて、思わず滑らかな表面を撫でてしまう。
「でしょ? でも、晴れちゃったから、明日には溶けちゃうかも」
「な、なんだと」
雪だるまを夢中で眺めていたバスコが、物凄く残念そうな声を上げる。「こんなにも可愛いのに」なんてバスコが言うものだから、隣にいる翔瑠がしょげた背を撫でてやりながら慌てていた。
「ならさ、写真撮ろうぜ。それなら何時でも見られるだろ?」
「翔瑠……」
ひどく感激した様子で、バスコが翔瑠を見上げる。
流星が「こいつら頭おか……」と言いかけて、瑞希にジェスチャーで静かにと言われて黙りこんでいた。そのとき流星の口元が「……可愛い」と動いたのには、気づかなかったみたいだ。
傍を通りかかった生徒に頼んで写真をお願いすると、快く引き受けてくれた。そうして雪だるまを囲うようにして集まると、カメラのシャッターが何度か切られる。「ありがとう」と言ってカメラを受け取ってから、みんなで揃って覗き込んで思わず笑ってしまった。
みんな揃って雪まみれの上に、バスコなんて緊張のし過ぎで顔が強張っている。思い思いに動くせいでぶれているのすらあって、みんなの“らしさ”が写真から感じられて胸がほっこりしてしまった。
写真は美玲が現像してくれることになって、後から配ってくれるらしい。友達と雪遊びなんて初めてで、今から写真が楽しみで仕方がない。わくわくと疼く気持ちを抑えられず、「また雪降らないかなぁ」なんて空を見上げた。
Re: 新しい小説 ( No.15 )
- 日時: 2018/09/02 16:41
- 名前: ルナルナ◆fnkquv7jY2 (ID: T1n3Hgt2)
俺が君を誘ったら
一歩踏み出せば、辺り一面に広がった紅に圧倒された。今が盛りと言わんばかりの燃え上がるような紅い紅葉が、一面に敷き詰められている。踏み締める度に、ぱりぱりと乾いた音が響くのが面白い。
「僕、紅葉の絨毯なんて初めて見たよ」
画面越しに見たことはあっても、こうして実際見たのは初めてだった。燃えるように鮮やかな赤色が、地面を覆い尽くす様は圧巻に尽きる。
ほぅ、と息をつきながら、少し後ろを歩く四宮を振り返った。
「でも、良かったの? せっかく当たったペア旅行が僕とで」
こくんと頷いた四宮がいつもより楽しそうに見えて、蛍介の口元も緩んでしまう。
「僕と来たかった? 嬉しいなぁ、僕も今日の旅行すごく楽しみにしてたんだ」
友達と計画を立てて、遠出するなんて初めてだ。わくわくと浮足立つのを押さえられなくて、昨日は中々寝付けなかった。楽しみで目が冴えるなんて経験も、この旅行がなければなかっただろう。そのせいで起きていようと決めたバスで寝てしまったのは、少し悔しい気もする。トランプとか他にも色々出来そうなものを持って来ていたのに。
いつの間にか四宮の肩に寄りかかって寝てしまって、気づいたら既に目的地に到着していた。なぜか四宮は上機嫌だったけど、蛍介は帰りこそ起きていようと決めている。
「ねぇ、あっちも見てみよう!」
石階段の先には、立派な寺院がそびえ立っていた。気持ちがはやるのを抑えられなくて、駆け足で階段を上がっていく。
蛍介、と不意に名前を呼ばれた気がして振り返ると、パシャリとシャッターを切る音が響いた。わっと驚いて、目を丸くする。
四宮はにこりと笑って、カメラを掲げた。
「四宮って写真撮るの好きだったんだね」
バスの中でも、着いてからも、四宮の手にはカメラが握られている。そんなに写真が好きだったなんて、今まで知りもしなかったから何だか意外だ。
四宮が慌てたように“嫌ならやめる”というから、蛍介は少し照れくさい気持ちで薄く色づいた頬を指で掻いた。
「嫌って訳じゃなくて……せっかく二人いるんだから、一緒に撮りたいな」
ね、と手を差し出せば、四宮はぱっと表情を明るくさせて駆け寄ってくる。その肩を引き寄せて、携帯を上に掲げた。
「じゃあ撮るね」
そのままパシャリとシャッターを切る。
二人で携帯の画面を覗き込んで、思わず“あっ”と声を上げた。
「見切れちゃったね」
どちらともなく顔を見合わせて、二人そろってクスクスと笑ってしまう。
「もう一回撮ろうよ」
四宮が頷いてくれたので、もう一度撮りなおすことにした。先刻よりも体を寄せて顔を近づけると、今度はきちんと二人とも写れたみたいだ。
上手く撮れてよかったね、なんて言いながら四宮の携帯に写真を送信する。四宮は携帯を両手で握りしめたまま、幸せを噛み締めるように緩む口元を必死に抑えていたのだけど。それに気づきもしない蛍介は小首を傾げて、立ち止まったままの四宮の腕を引くと、にっこりと微笑む。
「行こうよ、四宮!」
四宮は呆気にとられたようにぽかんとしていたが、口元を緩めて蛍介の手を握り返してくれた。
境内は圧倒されるような美しさに満ちていた。水面に映る鮮やかな紅葉や、深緑の苔が彩る庭園。蛍介は始終はしゃぎっぱなしで、気づいたら四宮の手を引いて、あっちへこっちへと歩き回っていた。
「凄かったね、あんなに綺麗な景色初めて見たよ!」
声を弾ませて話す蛍介に、四宮は相槌を打ちながら口元に笑みを昇らせる。
次はどこに行こうか、なんて。ガイドブック片手に四宮を見上げた。
「僕が行きたいところでいい? 四宮は行きたいところないの?」
「……」
「ここ? いいよ、僕も食べ歩きしてみたかったんだ」
四宮の指先が、おずおずとあるページを指さす。そこには古い街並みそのままに景観を保存した名所が載っていた。食べ歩きや買い物もできるらしく、よく賑わう人気のスポットらしい。
紅葉に彩られた石階段を下りていくと、その下で待ってくれていたタクシーに乗り込む。
「旅館だけでも十分なのに、タクシーまで使えるなんて贅沢だよね」
四宮は一体、どんなチケットを当てたんだろう。それとも、景品のペア旅行チケットというのは、こんなにも至れり尽くせりのものなのだろうか。
凄いなぁ、と考えを巡らせていると、肩をそっと引かれて隣に目を向ける。
「外が綺麗?」
うんうん、となぜか焦ったような四宮に促されるまま、視線を窓に移してわぁっと感嘆の声を上げた。
上から覆い被さる様な紅葉が、道路沿いを彩っている。赤や黄色の色とりどりの紅葉も、空気に溶ける様で先刻とはまた違った美しさだ。
「ほんとだ、綺麗だね!」
窓ガラスにかじりつく勢いで、外の景色に目が釘付けになる。ついつい子供みたいにはしゃいでしまうけど、四宮は呆れもしないで頷いてくれる。
大切な友達と二人きり、こんな風に旅行ができるなんて夢みたいだ。楽しくて、楽しくて。蛍介と四宮は弾む気持ちのまま、次の行先でしたいこと行きたい店を話し合った。
参道の両側に連なるようにお店が並んでいて、どこも活気にあふれて賑わっていた。
物珍しさにきょろきょろと辺りを見渡してふらつく蛍介を、何気ない仕草で四宮が引き寄せてくれる。そのすぐ横を人が通り過ぎていって、漸くぶつかりそうだったことに気づいた。
「ありがとう、四宮」
左右に首を振って、気にしないでと言ってくれる。優しいな、なんて思いながらも笑い掛けると、四宮がハッとしたように肩から手を離した。頬を真っ赤にして謝る四宮に、蛍介は首を傾げる。助けて貰っただけで、謝られるようなことはされていないと思うのだけど。
首を傾げつつも、蛍介は視線を参道に向ける。
「……人がすごいね」
「……」
流石、有名な観光地だ。先刻の場所と打って変わって、参道を埋め尽くす人の波に二人そろって足踏みしてしまう。気を抜けば流されて、はぐれてしまいそうだ。
「あ、手を繋いでいこうよ」
誰かと手を繋ぐなんて、小学生の時に母と繋いで以来かも知れない。
ぼぼぼぼっ、と火が出るかと思うほど顔を真っ赤に染め上げて、四宮が首を左右に振る。
「え、死んじゃう?」
よくわからないけど、手を繋ぐのは恥ずかしいらしい。いい案だと思ったのにな、と少し残念な気持ちと共に手を引っ込める。
「ねぇ、あそこの人。格好良くない?」
「わぁ、ほんとモデルみたい」
ふ、と視線を感じて目を向ける。すると、彼女たちは顔を赤くして、じっとこちらを見つめてきた。その熱のこもった目に、思わず四宮を見上げてしまった。
四宮はスタイルもいいし、格好いいから目を引くのだろう。そう思うと同時に、微かな痛みが胸を刺した。
変なものでも食べたかなと胸を押さえると、その手を四宮にとられる。
「四宮……?」
四宮はちらりと女性を一瞥したかと思うと、自分を真っ直ぐ見つめてくる。何処か緊張した面持ちで、蛍介の方がドキドキしてしまうほどだ。
薄く唇を開いたかと思うと、躊躇いがちに“手を繋ぎたい”というので思わず小さく笑いが零れてしまった。
「ふふっ、駄目なわけないよ」
手首を握っていた四宮の手を解いて、ぎゅっと繋ぎなおす。握った掌は蛍介よりもずっと熱くて、火傷してしまいそうだ。
ホオズキみたいに赤くなった顔を隠すように、四宮が少し強引に手を引いた。朱を注いだみたいに赤くなった項が見えて、蛍介はゆるゆると緩む頬を抑えられなかった。
抹茶パフェや大福、おいしいものを沢山食べながら参道を進んでいく。四宮が行きたいと溢した雑貨店にもよって、お揃いのストラップを買ってさっそく携帯に付けた。陽にかざしたとんぼ玉がキラキラ光って、どんな高価な物よりも輝いて見えた。そんなお揃いの言葉が嬉しくて、口元がにやけるのが止められない。
「大事にするね」
この日のためにバイトを頑張ってきたかいがあった。
自分で買った友達とのお揃い。初めての経験に胸が躍って、嬉しさを抑えられない。緩んだ顔のまま四宮を見上げれば、彼もまた口元に優しい微笑みを浮かべてくれた。
「お腹いっぱいだー」
ぼすん、と既に用意してある布団に飛び込む。家の布団と比べられないぐらい柔らかく受け止められて、そのまま目を閉じてしまいたくなった。まだ、寝ちゃだめだ。と、今にも落ちそうな瞼を擦りつつ寝返りを打つと、木目調の天井が見える。
夢みたいに幸せで寝たくないな、とぼんやりしていると、四宮が微笑みながら見下ろしてきた。眠たいのか、と聞かれて、こくんと小さく頷く。
「眠たいけど、まだお風呂入らなきゃ」
体を起こそうとすると、四宮がすっと手を差し出してくれる。
「ありがとう」
引っ張り上げられて、少し四宮に寄りかかってしまった。四宮はびくりと身体を震わせて、蛍介の肩をそっと押し返す。
「お風呂先に入っていいって?」
うんうん、と頷いてくれる四宮に、蛍介は唇をまごつかせた。
「……あのさ」
お風呂に入ったら、きっともう寝るだけだ。
少しでも楽しい時間を長引かせたくて、四宮の浴衣の袖をぎゅうっと握り締める。寝てしまったら、またもう一つの体でバイトに行くだけだ。それまでは、もっと四宮と居たかった。
「一緒に入ろうよ」
「っ?!」
手を振って明らかに狼狽えている四宮に、なんだか哀しくなってくる。そんなに自分とお風呂に入るのは嫌なのだろうか。
「……だめ、かな?」
駄目押しとばかりに見上げれば、四宮はわなわなと唇を震わせて。今にも湯気がでそうなほど真っ赤な顔で頷いた。
ヒノキの香りが漂うお風呂からは、ライトアップされた紅葉が見える。昼に見たのとは、また違った顔だ。
「ねぇ、四宮」
「っ!」
くるりと身体ごと振り返ると、四宮が驚いたように肩を跳ね上げた。ぱちゃん、とお湯の跳ねる音がして、波紋が蛍介の方まで流れてくる。
「もっとこっちに来てよ。景色見えないでしょう?」
お風呂の端っこで身を縮こませていたので手招きすれば、四宮は何度か迷うような素振りを見せながらもそっと近づいてくる。四宮が隣に並んでくれたのを見て、視線を景色に戻した。
「今日はありがとう。友達とこんな風に出かけたことなかったから、すっごく楽しかった」
改めてお礼を伝えるのは少し照れくさくて、熱くなった頬を誤魔化すように口元を緩ませる。
そんな蛍介の言葉に四宮はじわじわと口角に笑みを浮かばせると、噛み締めるように“また”と呟いた。上手く聞き取れなくて、耳を寄せると。
また、誘ってもいいか?
期待と緊張が入り混じった声音に、蛍介は目を柔らかく細めた。
「うん、楽しみにしてる!」
友達とまた次の約束ができる。それが、こんなにも嬉しいなんて知らなかった。
さっきまで目を閉じる事さえ嫌だったのに、四宮と色々な場所を巡ることを考えたら明日が楽しみになってくる。
また明日。その言葉だけで、わくわくと心が弾んだ。
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