雑談掲示板

新しい小説
日時: 2018/08/24 16:25
名前: 雛風 (ID: RPq3z/iI)

2018.08.24 16:25 pxy008.kuins.kyoto-u.ac.jp一部UNKsメモ

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Re: 新しい小説 ( No.12 )
日時: 2018/09/02 15:38
名前: ルナルナ (ID: T1n3Hgt2)

あ、しってまーす。
知っててやってるので。
目当ての人が動いたら、ちゃんと消しますよ。安心してください。
以下、小説です。
・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚
 おそ松の突飛な図らいで庭に夏祭りのセットが組まれた。セットとは言いつつも、出店では本物の食べ物や馴染みの遊びが出来るらしい。手ぶらで来ていいよ、と言われたから、普段着にスマホ程度で外に出た。
 一定間隔に祭と書かれた提灯が並び、遠くからは太鼓と笛の音が響いてくる。雰囲気は流石、楽しいことが好きなおそ松がプロデュースしただけのことはある。
「あれ、カラだけ?」
 開いた扉から顔を覗かせたのは一松だった。一松も普段と変わらない服を着ている。
「あぁ。十四松とトド松は先に行っちまったよ……待つこともできねぇのかアイツらは」
「まあ、いいんじゃない? 最初に揃っても結局はバラバラになるんだし」
 扉横の壁に凭れ、一松が言う。
「お前は行かねぇのかよ」
「カラがここに居るってことはまだチョロが来てないってことでしょ」
「……」
「せーかい」
 ふ、と目を細めて得意気に笑う一松に、ひとつ舌打ちをする。目敏いヤツだ。
「俺だけだったらカラも先に遊びに行ってるはず。薄情だね」
「お前だってそうするだろ」
「うん」
 素直過ぎるのも腹が立つ。苛立ちが募りかけていた時、また扉が開いた。ゆったりとした動きで出て来たのは浴衣に身を包んだチョロ松だった。
「あ、僕が最後ですか?」
 浴衣の黒地に濃い緑の帯が映え、チョロ松の白い肌を際立たせている。
「浴衣着て来たんだ」
「ええ、てっきり皆も着て来るのかと……」
「衣装じゃあるまいし、わざわざ動きづらいもん着ねぇよ」
 小さな段差を前に、一松はチョロ松へ手を差し出した。チョロ松は驚いたように目を見開くと、そっと手を取り支えられながら降りて来る。
「似合ってる」
「あ、ありがとうございます……」
 チョロ松は照れたように視線を泳がせた。
「でも、その、僕だけはしゃいでるみたいで……恥ずかしいです」
 そう言いながら、手に持っていた団扇で口元を隠す。普段より広く開いた首元がほんのり紅く染まっていて、思わずごきゅりと喉が鳴る。
「き、気にすんな! 俺らしかいねぇんだし」
 帯を崩さない程度にぽん、と腰を叩いた。
「こういうのは楽しんだもの勝ちだよ」
 両隣の俺らを見回し、それから安心したようにチョロ松は笑った。
「それじゃ、行こうぜ」
「それじゃ、行こうか」
「「真似すんな」」
「あはは!」

***

「わぁ……」
 感嘆の声が出るのも無理はない。ずらりと一本道を挟むように並ぶ屋台の数は圧巻だ。向こうの端が見えないんだが、一体どれだけ用意させたのやら。
「流石おそ松兄さんですね」
 ふふ、と笑う横顔を見て、兄貴もきっと弟たちのこんな笑顔が見たかったのだろうな、と頭の隅で思う。当の本人はまだやることがあると朝からあっちへこっちへ駆けまわっているが。
「何か食べる? それともゲーム?」
「うーん、これだけあると迷ってしまいますね」
「あ、俺ラムネ」
 氷水の中で冷える瓶のラムネが目に留まった。カラッとした暑さは嫌いじゃないが、喉が渇く。
「お前らは?」
「僕も」
 タオルで水気を拭き取り、栓を空けたラムネを気の良さそうな顔をしたおっちゃんに二本手渡され、一本を一松に渡した。チョロ松の困ったような顔を見てふと思い出す。確かコイツ、炭酸はあんま飲めないんだっけか。
 しゅわしゅわと音を立てる瓶を差し出すと、チョロ松はきょとんとした顔で俺を見た。
「一口くらいが良いんだろ?」
「……よく覚えてましたね」
「お前の飲み残し処理班は俺だったからな」
「処理班って……」
 チョロ松は眉根をぐっと寄せる。うわ、ブサイク。
「いらねぇの?」
「……欲しいです」
 瓶を受け取ったチョロ松は、ゆっくり傾けて喉を鳴らす。薄い皮膚が上下して、音を立てる。ずり落ちた裾からは、白く細い腕が見えた。
「は……久しぶりに飲むと美味しく感じますね」
 本当に一口二口程度減っただけでラムネは戻って来た。
「ありがとうございます」
 にこりと微笑み、先を歩いて行く。じとりと突き刺さる視線を手で払い、後を追う。
「…………」
「……視線がウゼェ」
「ずるい」
「残念でした」
 空になった瓶をゆらゆら振ってゴミ箱に放った。喉は潤ったはずなのに、体はまだ渇きを訴えている。

***

「ひとつくれ」
「はいよー」
 香ばしい匂いに釣られてイカ焼きを買った。噛み付くと程よい弾力と磯の香りが広がる。一口噛み千切り、柔らかな身を咀嚼した。
「あちっ、」
 小さく声が聞こえた方を向くと、たこ焼きと格闘するチョロ松の姿が。はふはふと息をしながら美味しそうに大粒のそれを食べている。
「チョロ、いっこ」
「イカにタコって」
「いーだろ、人のモンは余計美味そうに見えるし」
「それはそうですけど」
 かつお節の踊るそれに爪楊枝を刺し、ふーふーと息を吹きかけ、「ん、」と差し出してきた。手首を掴み、口の中へ誘う。爪楊枝を引き抜くと舌が火傷しそうな熱さに襲われ、思わず上を向く。
「あっひ!」
 あまりの熱さに涙も滲む。さっきのチョロ松みたいにはふはふと息を荒らげ、ようやく冷めてきた粒を噛んだ。とろっと溢れる中身に大ぶりのタコが主張して美味い。
「あ、いいな、僕も」
 あーん、と一松が口を開ける。チョロ松はまたふーふーと冷ましてやっている。が、俺の時より長い。
「一松は猫舌だからね」
「チョロ……」
 優しい! と目を輝かせる一松もまたたこ焼きを食べさせて貰い、ゆるゆると頬を綻ばせた。
「お返し」
 一松は手に持っていたチョコバナナを差し出す。確か甘いものが好きだったな。さっきもあんず飴とか食べてたし。
「え、と、僕、あまり甘いものは……」
「……僕の食べられない?」
「うっ……」
 コイツのしょんぼりした顔にチョロ松は弱い。それをわかってやっているのだからタチが悪ぃ。
 ぐいっと押し付けられたそれにチョロ松は顔を顰めた。が、弟の頼みを断ることも出来ず、顔に掛かる横髪を耳に掛けて小さく口を開けた。
「っ……」
「あ、ん……」
 小さめの一口だった。控えめな歯型が付いたそれをじっと見つめる一松のケツを蹴る。
「いっ……!」
「ムッツリ」
「……カラだって眼がやばかったし」
「は!?」
「ケモノ、っていうかケダモノって感じ」
「な、っ」
 生意気に笑う一松の顔にイラッとする。同じ顔のはずなのに、なんでこうも抱く感情は違うのだろうか。
「どうしたんですか?」
 チョロ松が声を掛けてくる。口端にはチョコをくっつけていた。俺の手が伸びるよりも先に、隣の影が動いた。
「チョコ、付いてる」
 ちゅ、と吸い付いた唇からちろりと赤い舌が覗いた。カッ! 体温が上がり、体中の血液が逆流する感じがした。
「もう、普通に言ってくれればいいのに」
 チョロ松は気にせず持って来ていたハンカチで口を拭う。一松はすこし悔しそうに眉を寄せている。俺がやったら殴られるぞ。それよりはマシだろ。
「おい、チョロ」
「はい?」
「お返し」
「んぐ!?」
 不意をついてイカ焼きを突っ込む。もごもごと膨らむ頬と睨みつける鋭い目つきを見て、何故だか安心した。

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