雑談掲示板

徒然なるままに――。
日時: 2020/10/02 00:38
名前: 黒崎加奈(黒雪)◆KANA.Iz1Fk

*人生色々ありすぎて嫌になるね。
1年振りにサイトを開いてもスレはきちんと残っているし、自分の思考回路が歳を重ねる毎に変わっているのが気恥ずかしくなりますね。


*徒然なるままに、広がるわたしの世界観。
独り言がメインです。話しかけられたら気分で返します。怖い人じゃないよ。
Twitterでやるような短文レスの応酬は、ここでは苦手なので高確率でさよならバイバイ。Twitterでやろうな。
荒らしは参照数が増えて喜ぶだけなので意味無いですよっと。

*気まぐれに、詩やSSなども投稿してる感じです。
もはや自分の思考整理というか日記みたいな使い方の割合が強いですが。


初めまして。あるいは、こんにちは。
黒崎加奈(くろさきかな)と申します。
加奈とでもお呼びくださいな。名前でトリップ変わってますが、黒雪とは同一人物です。
ファジーに生息して、1年に1回ぐらい更新しています。

*宣伝コメントとかは全力で無視します。ので、そのおつもりで。
間違っても自薦の小説とか読みませんから。


*過去の産物たち
小説とかについてつらつらと

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*
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*―詩―*
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*

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Re: 徒然なるままに――。 *礼儀は尽くして然るべき*【SS掲載】 ( No.142 )
日時: 2014/03/15 14:56
名前: 黒崎加奈◆KANA.Iz1Fk (ID: 9KzEZZ9I)
参照: http:

――狂おしいほど狂わされて。
 時計仕掛けの歯車は、くるりくるりと心の中を。


【操り人形(マリオネット)】


 体の奥で刻まれている鼓動が、だんだんなだらかになっていく。聞こえているのに、手が届きそうなのに、自分で制御することもできない、もどかしさ。
 時計仕掛け、なんてものは欲しくなかった。ただの操り人形なら、動きが止まることを恐れずに済んだのに。
 時計仕掛けの操り人形は――貴方の意のままに操られて。


 初めて見た景色。それは、たくさんの人。そして、貴方の手。
 初めて聞いた音。それは、私の鼓動。そして、命を知らせる音。

 私は、特別。
 他の人形は貴方がいないと動けない。細い手首足首に、幾重にも巻きつけられ、あるいは直接素肌に埋め込まれた、細いテグス。そう、糸を引かれて、動かしてもらえるのを待ってるの。
 命を吹き込む貴方がいないと、ただの空っぽの容器(うつわ)ね。意思を持たずに、都合よく手のひらの上で舞い踊って。なんて残酷なのかしら。なんて可哀想なのかしら。
 私は、貴方がいなくても動ける。そう作られたから。
 私の鼓動は、時計が時を刻む音。この時が止まるまで、私は動く。人間が心臓の鼓動で動くように、私は時計で動くの。
 カチリカチリと時計仕掛けは今日もまわる。歯車がくるくると回る音が、貴方からの愛の証。
 私だけ、特別だから。他の人形にはない、時計仕掛けの命。
 でも、所詮は操り人形なのね。私は、貴方がいなくても動くことは出来るけれど、自分の意志で自由に動くことは出来ない。貴方がいなくなった部屋の中を、ぐるぐると回るだけ。

 いつ、貴方は帰ってくるのでしょう。
 からっぽになったベッドの上で私は、ひとりぼっちで考える。ベッドの中に手を伸ばせば、貴方の温もりがこの冷え切った身体に流れ込んでくるかしら。
 夜、貴方が私の身体を丁寧に調べて調節してくれる時間が、たまらなく好きなの。言葉で伝えることは出来ないけれど、貴方はきっと分かってくれている。
 ガラスで作られた眼を貴方にむけて、ほんの少し首を傾ければ、花に吸い寄せられるミツバチのように、貴方は唇を重ねてくれる。私は、こんなに冷たいのに。貴方の熱を、私はいとも容易く奪い取ってしまう。
 たりないわ。もっと、もっと私に熱をちょうだい。貴方と同じ熱を感じたいの。
 でも、言葉が唇から零れ落ちることは、永遠にない。私には、貴方への感情を伝える手段がないから。どんなに、この心の中で叫んでも、貴方に届くことはない。ただ、貴方を見つめ続けることしか出来ないなんて、これ以上の悲しみはあるかしら。
 私が、貴方に聞かせることのできる音なんて、この歯車が回る音しかないわ。
 でもこのチクタクと時計の針が進むような音を、貴方は飽きるほど聞いているというのに、これ以上何が聞かせられるというのでしょう。観客からの歓声も、拍手も、貴方はいつも聞いている。

 そう、所詮、私は操り人形。貴方から時計仕掛けという命を与えられ、感情と意思を持った人形なの。私がいくら悩んだところで、貴方には伝わらない。
 行き場のない想いは、くるりくるりと心の中を、廻り廻って痛みを生む。
 痛み。それこそが、生。
 死は、叫び。
 だから、私は叫ばない。どんなにこの想いが私を狂わせても。嫉妬に狂って、他の人形を壊しても、貴方の制作の邪魔をしても、この痛みは止まらない。
 私の、この時計仕掛けが止まるまで永遠に続く痛み。
 でも、そろそろ限界みたい。歯車が、ギシギシ言っているわ。1つ、歯が噛みあうごとに壊れそうな音を立てるの。毎晩、貴方が難しそうな顔をしているのを、私は知っている。もう、直せないほど壊れかけているんでしょう。
 立っているだけで、胸が痛いの。動くだけで、身体が壊れそうなの。バラバラに、崩れ落ちてしまいそうなの。

 もう、おわかれ? そんなの、いや。

 願っても、届きやしない。時計の針は、もうすぐ止まる。そんなのは私が一番わかってる。
 貴方は、私が動かなくなっても愛してくれるのでしょうか。今まで通り、優しく口づけてくれるのでしょうか。私は、また元のように、ただの操り人形に戻ってしまうのでしょうか。

 わたしは、とくべつじゃなくなるの? ぜったいに、いや。

 どうして感情を、私に与えたの。こんな感情、最初からなければ、歯車が止まることを恐れなくて良かったのに。
 貴方のことを、愛せずに済んだのに。
 鼓動が、滑らかに、


 虚ろな目、からっぽの身体。
 細い手首に、華奢な足首に、さぁ糸をつけましょう。
 私の思うまま、この子の動きは、私次第。
 気ままに感情を与え、奪い、気まぐれで命を吹き込む。
 私の手の上で、踊りなさい。すべては、人形師の思うままに。


Fin.

*

あとがきは近いうちに掲載。
時計仕掛けの操り人形は、何を望んだのかしら?

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