雑談掲示板

【SS競作】鵲の短冊に天の川が誓う【第二回8月10日まで】
日時: 2014/07/10 22:14
名前: 黒崎加奈◆KANA.Iz1Fk (ID: T0sRThzs)
参照: http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?no=14864

第二回作品投稿期間【8月10日まで】


*
【Act.―0― 物書きは微笑みを】

 遠い昔、ある国の王がこんなことを言いました。

「この国で1番素晴らしい物語を書いた者に、褒美を与えよう」

 それを聞いた王女は、こう述べました。

「人の書く物語は、それぞれ作者の個性が表れ、優劣をつけるのは難しいですわ」
「しかし我が国の学者たちは、他国のような優劣を決める大会を開けと言っておるぞ」
「お父様、他国は他国です。参加したいならば、勝手に参加させておけばよいではありませんか」

 それもそうかと頷いた王に、王女は言います。

「でも確かに、そのような催しがこの国にあっても良いかもしれませんね」
「だが、学者や物書きが満足するような催しが他にあるか……」

 2人とも考えましたが、良い案は思いつきません。そこに1人の若い学者が通りかかりました。
 彼は2人の話を聞くと少し考え、それから述べました。

「他人ではなく、自分と競えば良いのでは」
「自分とは、一体どういう意味じゃ?」
「お題で物語を書くことは他国と同じですが、細かい条件をつけることによって、物語の流れを限定してしまうのです。他者と、話の流れが被ることもあるでしょう。その中で、いかに自分の文章の特徴を捉えられるか、というものです」
「なるほど、少し上の文章を目指すというわけね。それなら――、一定の参加基準を設けた方が面白そうだわ」

 王はそれを聞き、満足気に頷きました。そして、若い学者は微笑んで言いました。

「自分の文章の強みを知り、それを伸ばすことができる。また、新たな作風やジャンルにも挑戦することもできる。我々物書きには、最高の褒美ですよ」


*

初めましての方は初めまして。こんにちはの方はこんにちは。
黒崎加奈と言います。

このスレッドではSS競作という企画を行って行きます。
*参加希望者は参加条件を参照した上で、URLの雑談スレへコメントお願いします。

趣旨:限られた表現の中で、いかに自分らしい文章を書けるか。
競作、とタイトルにありますが、他人と作品の良し悪しを競うわけではありません。お題は、他人と話の流れが被るように考えています。その中で、いかに自分の文章の特徴を捉えて書くことができるか。
基本的な文章ルールが守れていれば、上手いか下手かなんて問いません。
*自分の文章は、どこが強みなのか。
向上心のある方、ぜひ参加してみませんか?


*参加条件*
先にも述べましたが、『基本的な文章ルールを守れていること』の1つだけです。行間の空け方は問いません。
基本的な文章ルールが分からないという方は、上記URLの雑談スレの目次から見ることができますので。

*参加条件を満たしているのに参加しないのはもったいないですよ!
あくまでも、他人ではなく、自分との戦い。つまりは、自分らしく小説を書く、ということが目的ですから(^^)

参加表明だけ最初にしておいて、自分が書けそうなお題のときだけ参加するのもアリですよ!

*作品の投稿期間中のコメントはご遠慮ください。
何か質問などあれば、上記URLまでお願いします。

*この企画は、管理人様に許可を頂いた上で行っております。


参加者への条件、並びに、その他の諸注意 >>1
参加者一覧 >>2

*――目次――*

第一回【悪夢の遊戯は緋の薫り】 >>3  作品一覧 >>16
第二回【鵲の短冊に天の川が誓う】 >>17

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Re: 【SS競作】悪夢の遊戯は緋の薫り【第一回7月1日〆切】 ( No.15 )
日時: 2014/06/30 17:28
名前: 黒雪◆SNOW.jyxyk (ID: 0dn3.3CE)
参照: http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?no=14864

*GL・R18チックな描写があります。
苦手な方は読まないことをお勧めします。


――甘いあまーい緋の薫り。

【百合の花は満月に】


 真夜中に目が覚めた――何かが倒れるような大きな音が、森の静けさに響き渡った。
 カーテンの向こう側には、光を最大限に放った月が佇んでいる。魅せられたように窓の外を眺めていたら、目が冴えてしまった。
 靴を履き、少し身だしなみを整えると、屋敷の中を見て回る。黒光りする甲冑や、鈍い銀色に輝く長剣、弾倉庫や猟銃など、興味をそそられるものが色々あった。
 しかし、誰1人いない。昼間に案内させた時は、メイドや使用人、料理人……など、多くの人が働いていたにもかかわらず、誰もいないのだ。
 昼間に会った少女の部屋を覗いて見たが、まるで少女は最初から存在していないかのように、生活感のない部屋だった。白い壁、人が寝た形跡のないベッド。クローゼットの中に、洋服は1着も入っていない。
 なのに、官能的な香の薫りが部屋に満ちている。ふわりと鼻孔をくすぐる、甘い薫り。そして――微かに聞こえる、女の声。
 声の方向へ、ゆっくりと歩いていく。静かな廊下に、小さな足音を響かせながら。

 屋敷の奥深く、2階の廊下を突き当たったところに、古びた扉があった。滅多に開かれないためか、蝶番は錆びて赤茶色に変色している。
『図書室』と書かれていたプレートの文字は剥げ落ち、微かに文字の名残りを残しているだけだ。

「はぁっ……んあ、あっ……」

 開けた扉の隙間から、艶かしい嬌声が漏れた。軋まないようにそっと開けた扉を、勢いよく閉めてしまい、ギィーという大きな音がした。
 その音に驚き、取っ手から慌てて手を離す。そのため、扉は閉まりきらず、覗き見ができる程度の位置で止まった。誰もいないのに、咄嗟に辺りを気にして無駄に安心する。
 他人の情事を覗く趣味は無いが、やはり好奇心というのは抑えきれず、結局は覗いてしまったのが間違いだった。

「あぁっ?! お、お姉ちゃん……だ、ダメッだめッ!」

 真っ白なドレス、艶やかに光るショートカットの黒髪。溢れ出る蜜が、ドレスを緋色に穢していく。
――昼間の少女だ。
 少女は、絨毯の敷かれた床の上に押し倒され、恍惚とした表情を浮かべている。
 その上に覆い被さった黒い影。漆黒のドレスを身に纏い、白珠のような肌を際立たせている、もう1人の少女。ショートカットの黒髪からチラリと覗いた顔が、とても美しかった。
 黒の少女は白の少女の乱れた長い髪を慈しむように梳くと、細く白い首筋を露わにする。

「リザ、可愛いわ……っん、最初だけ……我慢して、すぐ……気持ち良くなるわ……っ」

 赤い舌が、首筋を這う。ペロリと舐められるたびに、昼間の少女――リザの身体が跳ねた。
 ふと、違和感に気づく。リザと瓜二つの少女は、昼間はいなかったのだ。リザも姉がいるとは口にしてないし、屋敷に案内された時も1人娘だと紹介されていた。
――どこから現れたのだろう。
 その時、少女の唇の端から鋭い牙が一瞬見えたかと思うと、リザの首筋に飲み込まれた。

「いやぁぁああッ! はぁ……アァ、んうぅッ!!」

 お姉ちゃん、と呼ばれた少女が、リザの首筋から紅い液体を啜る。

「ぁっ……甘いわ……。もっと、もっとちょうだい……!」

 真夜中の図書室に、少女たちの声が響く。覗いてはいけないと思いつつも、見てしまう。禁忌を犯す彼女たちは、とても美しい。まるで金縛りにかけられたように、この場を動けなかった。
 昼間に聞いた話を、今さら思い出す。彼女は、ドラキュラなのだ。それなら、昼間は姿がなくても納得がいく。
 リザは、警告してくれていたのだ。早く、ここから立ち去って、部屋に戻らなければ――。

「ねぇ何を見ているの……?」

 真っ赤に口元を染めた少女が、首だけこちらを向いた。目が、怪しく光っている。
 逃げようと思っても、指一本、瞬きひとつ出来やしない。ゆっくりと脚が動き、おぼつかない足どりで少女たちの元へ向かっていく。
 2人の前まで来ると、今度は急に力が入らなくなり、立つこともままならない。膝から崩れ落ちて、絨毯の上に座りこんだ。

「あなたも……私たちと遊ばない……?」

 リザが、微笑みながら近づいてくる。首筋は元通り白かったが、赤黒い小さな傷がついていた。彼女の唇からも、白い牙が覗く。

「はぁっ……アァ、あぁっ……!!」

 首筋に感じた鋭い痛み。背筋をかけてゆく甘い痺れ。緋の薫りが、理性をドロドロに溶かす。
 痛みは一瞬、快楽は永遠。服が、どんどん濡れていく。首筋を舐められ、傷口からは体液を吸われているのに、感じてしまう。

「もっと吸われたい……? まだ……お腹空いてるの……」
「あぁ! はぁ、もっと……! もっと……してっ」

 少女たちの妖しい微笑みが、最後に見えた。

「うわああぁっ!?」

 まだ、夜は更けていなかった。天蓋付きのベッドの中で、荒い息を吐く。
 大きな物音がして驚いたのだろう。隣の部屋からリザが様子を見にきた。

「大丈夫? 悪い夢を見ていたのね……まだ真夜中よ……」
「ありがとう、リザ。また寝ることにするよ」

 黒髪のショートカット。黒いドレス。

「ねぇ、お客さん……。私、リザじゃないの」

 笑った唇に、白い牙。

「リザは、あそこ。お父様や、メイドや、屋敷のみんなも、あそこ」

 部屋の鏡を指差して、妖艶に微笑む彼女。鏡の中の彼女は、白いドレスを着ていた。
 満月の夜だけ、私とリザ達は入れ替わるの。そう言って、ゆっくりと彼女の唇が首筋に近づく。
 ちらりと鏡を見ると、窓から満月を眺めている、白いドレスのリザと、その父親がいた。視線に気がついたのか、申し訳なさそうに笑っている。
 2人のそっくりな少女は、美しい。夜はまだ始まったばかり。
 悪夢の遊戯は、まだまだ続く。

「あぁ、今夜は、なんて綺麗な満月なのでしょう」

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