雑談掲示板
- 徒然なるままに――。
- 日時: 2020/10/02 00:38
- 名前: 黒崎加奈(黒雪)◆KANA.Iz1Fk
*人生色々ありすぎて嫌になるね。
1年振りにサイトを開いてもスレはきちんと残っているし、自分の思考回路が歳を重ねる毎に変わっているのが気恥ずかしくなりますね。
*徒然なるままに、広がるわたしの世界観。
独り言がメインです。話しかけられたら気分で返します。怖い人じゃないよ。
Twitterでやるような短文レスの応酬は、ここでは苦手なので高確率でさよならバイバイ。Twitterでやろうな。
荒らしは参照数が増えて喜ぶだけなので意味無いですよっと。
*気まぐれに、詩やSSなども投稿してる感じです。
もはや自分の思考整理というか日記みたいな使い方の割合が強いですが。
初めまして。あるいは、こんにちは。
黒崎加奈(くろさきかな)と申します。
加奈とでもお呼びくださいな。名前でトリップ変わってますが、黒雪とは同一人物です。
ファジーに生息して、1年に1回ぐらい更新しています。
*宣伝コメントとかは全力で無視します。ので、そのおつもりで。
間違っても自薦の小説とか読みませんから。
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Re: 徒然なるままに――。*夢の続きは夢の中で* ( No.404 )
- 日時: 2019/06/19 19:08
- 名前: 黒崎加奈◆KANA.Iz1Fk (ID: 4c/l6FSY)
【わたあめ】
「お嬢ちゃん、わたあめ作らんか?」
にいっと、欠けた前歯を覗かせた老人が、屋台の奥から呼んでいる。年季の入った、今どきにしては珍しい、木組みの屋台だった。声をかけられなければ、間違いなく気づかないだろう。売り物は飾られておらず、使い込まれた綿あめ機と、割り箸だけが置いてある。足を止めた私に、もう一度老人は言う。「わたあめ、作らんか?」と。
千本鳥居のふもとには、異形の屋台が立ち並ぶ。お代は全て店しだい。例えばこの、鬼の涙で作られた硝子玉なら、対価は己の涙。面なら他人になれる代わりに、被った者の一生を要求する。そして、またそれが商品として、店に並ぶことの繰り返し。そんな奇妙な等価交換で成り立つ屋台だ。みな覚悟を決めてここに来て、己の身体や生涯を切り売りする黄昏時。
しかし人の形をした者は、運が良いか、店主に導かれて辿り着くことが多いらしい。大半が覚悟もなく迷い込むものだから、都では『神隠の屋台』などと呼ばれていた。というのが遠い過去の話で、今は一種の御伽草子として、広く親しまれている。
だから、現代社会でこんな場所があるとは、思ってもみなかった。七年付き合った男には浮気され、親が作った借金を背負う羽目になり、挙句の果てに稼ぎ口も失った。ああ、詰むとはこういうことか、と、どこか冷めた感情で眺める私の頭が下したのは、死という人生の幕引きで、その場に選んだのが、この伏見稲荷の山中であった、というだけなのだ。三ツ辻を越えた所で、ぼんやりと夕暮れを眺め、先への鳥居をくぐった先は別世界。呆然と物の怪に混ざって彷徨う私を、彼らは物珍しく眺めていた。
「お嬢ちゃん、死のうと思って来たんだろ。でもその前にわたあめ作っていってくれんか。お嬢ちゃんみたいな娘がおらんと、商売上がったりなのさ」
だから、ちょいとこちらに呼ばせてもらったんよ。と、鼻の長い老人はカラカラ笑う。困り果てて咄嗟に見上げた空は、不気味なまでに橙色だった。
「わたあめを作ったら、どうなるの?」
「わしは儲かる。お嬢ちゃんはスッキリする。死ぬのも考え直すかもしれんなあ」
異形の者と違い、人間の感情は繊細で、色彩が多いらしい。強ければ強いほど、濃く、強い輝きを放つ欠片に変わるそうで、それをわたあめにすると見栄えがするから、高値で売れる。そんなようなことを言っていた。
「キラキラ虹色に光る、わたあめになるんやぞ。夕暮れの陽射しにかざした時の、ひかり具合がちょうど良いのさ。少しは見てみたくなったかな?」
「全然。虹色のわたあめなんか嫌いだし。元の場所に帰して」
映える、とか軽い一言で、奇抜な色の食べ物が売れる世だ。鳥居の手前にある人間の屋台でも、『レインボーわたあめ』は見かけた。
どこの場所でも、結局見た目が一番大事なのか。元彼が選んだ可愛い歳下の女と、借金を抱えても生活を変えない両親と、リストラした事実が欲しい企業と、『レインボーわたあめ』の姿が重なる。
――どいつもこいつもベトベトに溶けて、醜い姿に変わってしまえ。
そう念じたら、辺りは真っ暗になって、異形の屋台も千本鳥居も、何もかも消えてしまった。真っ暗な場所に、私は一人。手の中の真新しい割り箸を、バキッと力任せに折ったのち、元の三ツ辻から身を投げた。
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