雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 風死(元風猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(風猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波風を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第十回SS大会 お題「罪」  ( No.464 )
日時: 2013/05/09 09:40
名前: モッチリ

 世間はヘズルには同情的だった。誰からも愛されたバルドルを手にかけたのは間違いなく彼だが、手引きをしたのはロキだ。悪評は彼に集まった。
  しかしヘズルが出歩くことは二度となかった。部屋にこもりきりで、誰が尋ねても返事すらしない。
 それでもしつこく彼を訪ねるのはかの雷神だった。扉越しに、長いことヘズルに話しかける。情の篤い彼が半分だけとはいえ血のつながった弟を放り出すことはできなかった。

「――兄さん」

 その日も雷神は弟を訪れていた。呼びかけられたのは、いつものように彼に話しかけ、反応がないのをみて立ち去るところだった。

「兄さんの槌で、俺を殴り殺してくれ。俺のこの目じゃ一人では死ねない」
「お前!」

 しばらくぶりに扉があいた。立っているのはやつれはてた弟。高い頬骨も健康的に肉がついていればこそ美しい。今の彼ではただ痛々しいだけだ。

「酷く、殺して。手足の先から骨を砕いて、筋を残らずすり潰して。歯も鼻も全部叩き折って、誰が見ても俺だとわからないようにして、頭を叩き潰してほしい。忌々しいこの目は俺が生きているうちにくりぬいて、そこら辺の犬にでもくれてやって――」
「よせ! ……俺はそんなことはできない。弟を殺すだなんて」
「もう俺は死んでいるよ、死んでいるんだ。バルドルと一緒に俺の心は死んだ。心が死んでいるのにからだが生きているなんておかしいだろう?」
 
 雷神は言葉に詰まった。ヘズルの目は本気だ。一度言い出すと聞かないのがこの弟だ。それは雷神もよく知っている。

「あの日流れたのは俺の血だ。バルドルと俺は同じ血が流れていたはずだ。一緒に死んでなければいけないんだ、俺たちは」

 雷神は耐え切れなくなって弟を掻き抱いた。筋肉も脂肪も落ちたからだは薄っぺらく、少しでも力を入れれば折れてしまいそうなほどだった。
 すすり泣く声が聞こえてくる。雷神は何もできず、ただ弟を抱きしめるだけだった。


 
 ヘズルが落ち着きを見せるようになったのは、父王に呼び出されてからだった。雷神は疑問に思いながらも、一応元気を取り戻した弟に安堵を感じている。
 近頃は父王の側女の一人のもとにいるらしい。この側女というのが妊娠をしたらしく、それがわかったときからずっと通っていると聞く。
 下のきょうだいの誕生を心待ちにしているその姿はなにかほほえましいものがある。雷神は、彼についてこの女を訪れることにした。
 もうじき出産のようで、彼女の腹部は大きく膨らんでいた。そっとふれるとなかの赤ん坊がうごくのが手のひらを通して伝わってくる。
 ヘズルは床に膝をついて赤ん坊の動く音を聞いていた。彼の優れた聴覚はわずかな音も拾い上げる。赤ん坊が母親の胎を蹴り上げると、それを聞いてヘズルは小さく笑う。
 雷神は妙な違和感をこの空間に持っていた。部屋に足を踏み入れた瞬間からの感覚で、雷神は一人首をかしげていた。
 ふと、女の顔に目がいった。それで、違和感の正体はつかめた。

「お前、うれしくないのか」

 雷神は女に問うた。女はびくりと表情をひきつらせ、雷神を見上げる。

「子を得る喜びで、女たちは幸せそうに笑うぞ。俺の妻もそうだった。それなのに、お前はなぜそう浮かない顔をする?」

 女は下を向いた。膨らんだ腹を見て、彼女は顔色を蒼白にする。女に代わって答えたのはヘズルだった。

「この人はね、俺を殺してくれる子を身ごもっているんだ。その子の名前はヴァーリ」

 ヴァーリ――復讐者。雷神は全身の血が下がっていくのを感じた。

「素敵だろ。この人のなかで俺の罪が育っていくみたいだ。大きくなった罪はやがて、俺自身を殺すんだ。……弟から殺されるだなんてバルドルと同じで気に入らないけど、まあいいや。だってこの子はきっと俺を酷く殺してくれるだろうから!」

 ヘズルは、双子の兄とよく似た笑顔を浮かべた。いくらか肉付きのよくなった頬には朱が差している。

「私は、こんな子を産みたくありません。人を殺すことが最初から決まっている子供なんて!」

 側女が絞り出すような声で言う。おそらく、彼女の夫であるオーディンからきつく言われているのだろう。
 雷神ははた、と思い当った。確か、父王はすべてを見通す力を持っていたはずだ。そうなると、この度もうけた子供が復讐者となるのは知っているはず。
 雷神は片手で顔を覆った。

「親父……っ」

 父の厳しさは知っていたはずだ。それでも、雷神は打ちひしがれる自身を慰めることはできなかった。



 子供は無事に生まれた。彼は一日で成人し、兄を死に至らしめるという。
 ヘズルは生まれた子をいとおしそうに撫でる。

「可愛い俺の弟。俺の罪。ああ、早く俺を殺してくれ! 生まれてきたことがすでに罪であったと俺の愚かなからだに刻み込んでくれ!」

 赤ん坊は無垢な瞳で兄を見上げる。
 ヘズルは己の『罪』を抱きしめずにはいられなかった。この『罪』はあの日の兄の血と同じ香りがするのだ。


『The Sin』


 はい、長くてすみません。ぜんっぜん短編じゃない。字数制限ないからって調子に乗りすぎました。
 私自身が双子というのもあって、この話には思い入れがあります。ついでに妹もいるので、なんでか現実味のある話に思えてしまいます。
 今回採用した話はあくまで一説ですし、かなり私自身の考察(人はそれを妄想とも言う)もたっぷりとはいっているので、みなさんの知っている神話とは大きく違う箇所もあるかと思います。これを頭から信じちゃだめですよ、っていないだろうけど。
 字数制限のせいで三つもレスをするはめになりました、ごめんなさい……。おつきあいありがとうございました。長々すみませんでした。

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