雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 風死(元風猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(風猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波風を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第十回SS大会 お題「罪」 投稿期間4/28~5/28 ( No.468 )
日時: 2013/05/19 13:58
名前: Lithics◆19eH5K.uE6


 それはまるで岩窟のように息苦しい、しかし不思議な安心感のある空間だった。

 五人も座れば一杯になりそうな長椅子が、左右に三列ずつ並んでいる。その中央に空いた通路を視線で辿ると一段高い演壇があり、簡素な銀十字があしらわれた卓が置かれて。そして何より目を引くのは、背後の壁に嵌め込まれた小さいながら見事な造作のステンドグラス。

「あれは、聖ゲオルギウス……? 珍しいデザインだな」
「そうなの? ふぅん、でも綺麗だね」

 ハルカを抑えるのも忘れて、ふらふらと吸い込まれるように中へと入る。淡い月灯りを透すガラスの芸術は、確かに美しかった。が、そこに描かれているのは雄々しく巨槍を掲げ、醜い竜を踏みつけにする騎士の姿。英国を中心として有名な聖ゲオルギウスの征竜譚は、しかし、この日本では決してメジャーなものではない。ステンドグラスと言えば、聖母子像や三賢人が描かれるのが普通だろう。
 
 と。二人して魅せられたようにそれを見つめている、その時だった。

「竜は『悪』、そして『罪』の象徴。ゆえに、聖ゲオルギウスは原罪克服のモデルとなりうるのです」
「っ……!」

 良く通る、穏やかな声。
 不覚にも心底から驚いて、きょろきょろと狭い教会の中を見回すと。月光の陰になっていた隅の方から、その声を練って形にしたかのように優しげな男がぬっと現れた。黒衣にロザリオ。長身にメガネ。

「ようこそ、神の家へ。あれかな、迷えるなんとかって奴でしょうかね」

 ――結論。教会は廃墟に非ず、ちゃんと主がいた。
 謎解きの答えは実に簡単で、つまり、噂はデタラメだったという事らしい。
 



 トオルが鬼籍に入ったのは、三年前の五月の事だった。
 自宅マンションからの転落死。警察は不審な点は無い事故、もしくは自害と結論づけたが、僕らにしてみれば分からない事は多い。彼の自宅は四十階建ての高層マンションで、それの『何れの位置から落ちたか』は不明のままとされた。零時を挟んだ真夜中に転落したらしい事から、おそらく自室の窓からだろうと言われてはいるが――
 
 遺書もなく、事件の跡もない。
 その実感は酷く曖昧で、トオルはなんで死んだのだろうと、今でも考える事がある。





「なるほど。そんな噂があるとは……」
「すみません、信じていた訳ではないんですが……興味本意で」

 苦笑する神父に、事情を説明して頭を下げる。まかり間違えば不法侵入であるから、それも当然ではある。まぁ、なんで僕がと思わないでもないが、傍で仏頂面をしている某に任せておけるはずがなかった。
 神父が現れてからハルカは口数が妙に少なく、視線も下がり気味に思える。怯えている?いいや、ただ「外れ」が確定した事で拗ねているだけだろう。

「構いませんよ。しかし、こんな夜に森を歩いてきたというのは感心しませんね」

 若き神父はそう言って、耳に手をあてる仕草をしてみせた。

「このあたりには野犬が出るんです。なので、今夜は朝になるまで此処にいるのが良いでしょう。狭いですが、ひとつだけ客間もありますから」
 
 ハルカと顔を見合わせ、僕らも息を詰めて耳をそばだててみると。確かに、大して遠くもなさそうな距離で遠吠えをする野犬の声が聴こえる。背筋がぞっとする思いがした。僕らはその中を能天気にも、懐中電灯ひとつで歩いてきたのだから。
 腕時計を確認すると、もう一時を回っている。夜明けには、まだ五時間近く待つ必要があった。

「その……ご迷惑では?」
「いえいえ。ご覧の通り、此処は半ば山小屋のようなものですから。お気になさらず」
「いい、ハルカ?」
「うん。お願いします、神父さん」

 ハルカが呟くように肯うと、神父は微かに口元を歪めて。
 暗く沈んだ聖堂の左隅にある扉を指差しながら、さも愉快そうに言った。

「では、あちらへ。ベットは一つなんですが、別に構いませんよね?」





 瑣末な事ではある。が、僕は女性と同衾した事なんて一度も無かった。

「と、いう事で。僕は礼拝堂の長椅子を借りることにするから」
「えぇ~。別に、わたしは気にしないんだけどな」

 こんな時だけ上目づかいで、何かを期待するような。そうして尻すぼみになっていく台詞は、ひどい反則だ。ともすれば足を留めてしまいそうになるのを堪えて、ひらひらと手を振ってみせる。僕にしたら、かなり頑張ったと思う。

「冗談は胸のサイズだけにして。じゃあね、寝坊しないでよ」

 飛んでくる枕を躱して、客間を出る。
 昔なら、同衾するのはともかく同室にいるくらい、僕だって気にしなかっただろう。だが、今はそれが『怖い』。これ以上はハルカを意識してはいけない。それはつまり――『約束』を反故にしてしまうという事なのだから。

「ねぇ、イチロー」

 だが静かにドアを閉めた時、中から掛かった言葉の声色が気になって。僕はドアに背を預けた体勢のまま、その声に耳を傾けた。

「今日、トオルの命日だよね。覚えてる?」
「っ……あぁ、もちろん」

 トオルの名を聞いただけで、自分の肩が震えるのを感じる。ドア越しでハルカに見られていないのは幸いだった。流石に疲れて眠いのだろうか、その声は囁くようで力がない。ドアに耳を当てるようにしなかれば、聞き逃してしまいそうだった。

「あんな所から落ちるなんて、トオルらしいよね。いつも無鉄砲で、無茶な事ばかりやってた」
「あぁ、そうだね」
「朝になったら、お墓参りに行こう? 去年は二人で行けなかったし」
「あぁ……うん。そうしようか」

 なぜ今、そんな話をするのか。トオルの事を話すのは、二人とも暗黙の内に避けていたはずだった。殊更に彼の死を意識してしまうのは、今のバランスを崩すきっかけになりかねなかったから。
 そうして生返事を返していると、暫くのあいだ沈黙が続いて。それを破ったのは、情けない事に僕ではなく彼女の方だった。

「おやすみ、イチロー。寂しくなったら、いつでも来ていいんだからね?」
「バカ言え……おやすみ、ハルカ」

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