雑談掲示板

徒然なるままに――。
日時: 2020/10/02 00:38
名前: 黒崎加奈(黒雪)◆KANA.Iz1Fk

*人生色々ありすぎて嫌になるね。
1年振りにサイトを開いてもスレはきちんと残っているし、自分の思考回路が歳を重ねる毎に変わっているのが気恥ずかしくなりますね。


*徒然なるままに、広がるわたしの世界観。
独り言がメインです。話しかけられたら気分で返します。怖い人じゃないよ。
Twitterでやるような短文レスの応酬は、ここでは苦手なので高確率でさよならバイバイ。Twitterでやろうな。
荒らしは参照数が増えて喜ぶだけなので意味無いですよっと。

*気まぐれに、詩やSSなども投稿してる感じです。
もはや自分の思考整理というか日記みたいな使い方の割合が強いですが。


初めまして。あるいは、こんにちは。
黒崎加奈(くろさきかな)と申します。
加奈とでもお呼びくださいな。名前でトリップ変わってますが、黒雪とは同一人物です。
ファジーに生息して、1年に1回ぐらい更新しています。

*宣伝コメントとかは全力で無視します。ので、そのおつもりで。
間違っても自薦の小説とか読みませんから。


*過去の産物たち
小説とかについてつらつらと

基本的なルール  >>23
一人称小説  >>35
三人称小説  >>102
短編小説・SS >>126
思考回路垂れ流しの考察 >>260
番外編 独創性は学べるか? >>335
鑑定  >>369


*
詩やSS

*―詩―*
グリム童話シリーズ
 白雪姫と毒林檎 >>44
 Cantarella >>322
 眠り姫 >>357

世界は廻る >>87
Maybe. >>93
Escape >>174
春風 >>182
くれいじー? >>304
大嫌い、あたしの心臓 >>344


*―SSと移花の解釈―*
Autumn Tints >>57-58
【Anthologie】 ―*この種を孕んで*― >>98  解釈的なもの >>104
操り人形(マリオネット) >>142  あとがき >>146
Sand Glass ―Another― >>213
第一部の解釈的なものを >>273
道化師の涙 >>297
第二部のあとがきと題したなにか >>354
平行世界 >>376
Kiss >>380
ドーナツ・ブーム(エッセイ) >>385
葉見ず花見ず、されど咲く >>389
白銀は満ちる >>394
わたあめ >>404

*

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徒然なるままに――。 *Autumn Tints* ( No.57 )
日時: 2013/10/11 18:03
名前: 黒崎加奈◆kcKQKURARA

椛(もみじ)にはどんな思い出がありますか――?


 【Autumn Tints Vol.1】



 秋も深まるこの頃。
 とある山奥に建てられた一軒のレストラン、『四季邸(しきてい)』では、とても美麗な紅葉(こうよう)が見られます。
 なかでも窓際の席から眺める椛は、この世のものとは思えないほど美しいと、数多くのお客様からお褒めの言葉を頂いてまいりました。

 この店、最近ではミシュランのガイドブックに掲載されるなど、各メディアからの取材も絶えませんが、なにせ山奥でして。実際にお越しになるお客様の数はあまり変わらず、いつも通り、ゆったりとした大自然の中で、料理の方を提供させていただいております。
 それもこれも、1日にランチとディナー、それぞれ1組ずつしか御案内をしていない、というのもあるのでしょうが。

 あぁ、それにしても本日は、本当に椛が見事でございますね。晴れ渡る青い空、そこに浮かぶ白に描かれた赤と黄色。気まぐれに吹く風に乗って、葉がひらひらと舞い落ちる様は、趣(おもむき)があるとでも言いましょうか。それもこれも、この山の豊かな自然が生み出した賜物です。
 そうそう、椛と言えば、この四季邸にとても美しい思い出があるのですよ。

――どうか少しばかり、私の話に付き合っては頂けないでしょうか?

 無理にとは言いません。耳を傾ける人がいなくてもこの時期には必ず話しておりますので。
ん? 聞く人がいないのに、この話をする理由、でございますか……。
 そうですね、椛のため、でしょうか。心なしか、この話をすると椛も嬉しそうにしているのです。
 開店までは時間がありますし、飲み物でも飲みながらいかがでしょうか。色々とお忙しいことでしょうし、軽く聞き流す程度で構いませんので。

 今から5年前の、ちょうどこの時期のことでした――。


「いらっしゃいませ。2名様でご予約をされていた、来栖(くるす)様でしょうか?」

 白い手袋をはめたドアマンが、ガラス扉を開けると同時に、洗練された動作でウェイターが45度の御辞儀をし、予約の確認をする。
 四季邸において、予約は必然。著名人だろうが、一般客だろうが、必ず3カ月前までに予約をしなくてはならない。尤も、最近は1年半先まで予約が埋まっているのだが。しかしそれも、最近の話。この店が開店した直後は、予約という制度は整っていなかった。

 ミシュランでは2ツ星を獲得し、今や日本のみならず、世界中から客は訪れる。これで予約という仕組みが無かったら、混乱を招くのは当然のこと。
 しかし、それよりも重要な理由に、食材の調達が挙げられるだろう。この四季邸ではその季節に合った、旬の食材を客に提供することを、最大の売りにしている。だが、ここは人里離れた山奥。当然のように、車が通れるような道はなく、山を下りるのも一苦労である。
 そのため、四季邸の裏手には小さいながらも農園があった。そこで料理に使う野菜などを育て、予約が近づき次第、魚や肉などの生鮮食品を買出しに行く……という仕組みをとるようになったことも、大きな要因である。

「はい」

 少し緊張しているのだろうか。20代後半のカップルの男性の方が、硬い声で受け答えをした。そんな彼氏の緊張に、気づいているのかいないのか。彼女はレストランの内装を見て歓声を上げていた。

 大自然に溶け込むように設計された空間は、木を基調として、全体的に柔らかい印象を与えるようになっている。入り口付近のエントランスホールも例外ではなく、真っ白い白樺を使い、丸みを帯びたカウンター、丁寧に鑢がけをされ、コーティングしたわけでもないのに艶々と光る檜の椅子。全てが辺りの自然と調和し、店の中にいるのにまだ、山奥の自然の中にいるような錯覚を起こす。
 ウェイターに、お揃いの茶色いコートと手荷物を預け、それと引き換えに『7』と書かれた番号札をもらう。

 この日、2人が案内されたのは窓際の席。窓には、曇り一つない大きなガラスが一面に張られており、そこから中庭と、山々の景色を望むことができた。上から下まで、景色を遮るような窓枠は一つも無く、そのまま中庭に歩いて行けるのではないか、と勘違いしてしまいそうになる。

「すごい綺麗だけど、なんか寂しいー。ここにも、1本で良いから木があれば良いのにねー、そう思わない?」

 時は11月の中旬、そして夕刻。夏には中庭で青々と茂っていた芝も、寒さのせいか枯れてしまっていた。春にはアネモネや薔薇、夏にはガーベラやトケイソウ、冬はポインセチアや椿など、四季折々の様々な花が見られるのだが、秋だけは何も無かったのだ。
 一通り窓の景色を眺め終えると、そこから伝わってくる冷気を遮るようにカーテンが引かれた。
彼氏は席に腰掛けながら、苦笑する。それを見た彼女は、どこか楽しそうな表情で向かいに座った。

「本日の前菜、『シェフの気まぐれ』でございます」

 2人が席に着いてから5分少々。食前酒のシャンパンと共に、少し早めのディナーが始まった。
 前菜として運ばれてきたのは、生ハムと洋梨のコンポート。生ハムの塩味と洋梨の甘さが合わさって、さっぱりとした口当たりに仕上がっている。舌の上でとろけるような食感に、思わず2人から感嘆の声が零れ出た。

「美味しい! ありがとね、拓真(たくま)」
「ん? あぁ、そうだな」

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