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小説好きな医師
日時: 2025/06/02 05:31
名前: 毛筒代 (ID: 41v.MpaY)

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Re: 小説好きな医師 ( No.8 )
日時: 2025/05/23 10:58
名前: ケツ郁代◆gdTWUoc1Zs (ID: KmAp6FWI)

そこは荒野だった。いや、正確には「荒れ野になってしまった場所」か。繰り返し襲ってくる、核実験に匹敵する程の爆風によってそこの風景は殆どが吹き飛ばされ、正に死の大地と化していく。
しかしそんな環境もものともせず、1人だけその爆心地へ向かっていく人影があった。絹糸のように滑らかな光沢を放つ金髪の少女......否、それは少女のような少年だった。帽子とインバネスコートが特徴的な彼は、軽々と薙ぎ払われた大木や瓦礫の山を乗り越えていく。

そして急に目の前に飛び出してきた人影に、彼は土埃を上げながら急停止した。

「ーー!? ヨハネスさん!」

「美琴......さん.......?そうか、まだ身体が本調子じゃないから、君と出会う未来が見えてなかったよ」

少年「ヨハネス」の前に現れたのは、白い忍者装束に身を包んだ黒髪の少女「美琴」だった。重力を無視して華麗に靡く長髪の彼女は、驚いた表情で彼を見ていた。
お互い「何故ここに?」なんて聞くまでも無い、彼女もまた同胞の危機を察知して馳せ参じた1人の仲間であった。

しかし安堵もつかの間、彼女が現れた直後、その向こう側から今までにない強烈な閃光と共に、津波の如し強烈な爆風が押し寄せてくる。抉り取った土砂や岩石などを巻き込み、まるで地平線が迫り上がるような光景が2人に迫ってくる。常人なら思考が停止して固まってしまうだろう、しかし両者共に引くどころか拳を構え、それに向き合った。

『でやぁ!』

そして突き出した2人の両拳のパワーは、土砂と岩石の波に風穴を開け、吹き飛ばした。あれ程の物量をも相殺するとは、2人の余力は尋常じゃない。
そしてその一瞬、辺りを真昼の様に照らした光には見覚えがあった。2人の師である「カイザー」の必殺技“太陽の拳”のそれに間違いなかった。

難を凌いだ2人は顔を合わせ、互いに頷くと再びその中心を目指す。

(いったい誰が......いや“なにが”戦ってるっていうんだ!?)

ヨハネスと美琴は急いだ。師の元へ、そして......まだ見ぬ「未知の脅威」へ......





辺りの地面は高温に溶岩のようにドロドロに溶け、灼熱地獄とかしている。
その中で平然と佇む1人の大男が居た。彼の名は「カイザー」、この異世界の危機を救うべくやってきた武芸者の1人である。金髪を後ろで束ねた碧眼の彼が見つめる先には、焼け焦げて全身が真っ黒になった人型があった。なにやら棒状のようなものを彼に向けた状態で動かなくなっていた。その構えから、つい先程までカイザーと相対して戦っていた事がうかがえる。周囲の物はあらかた溶けてしまった中、その人型だけがぽつんと残っていた。まさにシルエットの状態であり、どんな面構えで、どのような服装だったかは最早原形をとどめめていない。

「ーーまさか、この技を受けても尚、死体が残るとはな」

カイザーがその人型に向かって呟いた。もちろん返事などあるはずも無い。

「盛大な大火葬だ。君の“伝説”とやらの、最後のページとしては不足も無いだろう」

彼はそう吐き捨て、踵を返して歩み出すーー


そしてーーなにかを感じて振り返る。


そこにあるのは、あの黒い人型だったーーそう、彼のすぐ真後ろまで、それは近づいていたのだ。
カイザーはその状況を理解し、そして息を呑み、行動に移る前に......その人型は「動いた」。




カイザーがその人型に向かって呟いた。もちろん返事などあるはずも無い。

「盛大な大火葬だ。君の“伝説”とやらの、最後のページとしては不足も無いだろう」

彼はそう吐き捨て、踵を返して歩み出すーー


そしてーーなにかを感じて振り返る。


そこにあるのは、あの黒い人型だったーーそう、彼のすぐ真後ろまで、それは近づいていたのだ。
カイザーはその状況を理解し、そして息を呑み、行動に移る前に......その人型は「動いた」



振り上げられた巨大な大槍「グングニル」の矛先がカイザーに叩き付けられる。ガード越しでも伝わる凄まじい衝撃......まるで火山の噴火の如く、その攻撃によって大地が割れ、轟音と共に砕け散る。
そのパワーに耐え切れず片膝をつかされたカイザーの上から、さらに容赦なく圧力をかけてくるイクリプス。自分よりもふた回り程も体格の大きな相手を抑えつけるなんて、彼女も見た目以上に尋常じゃない力を秘めているのか......

だがカイザーも負けてはいない。押さえつけられた身体中の筋肉を解放して全身をバネのようにして大槍を押し返し、その鉄拳で反撃のボディブローを叩き込む。
イクリプスも上手く肘でそれを受け流すが、彼女の脇腹を抉って削り取るようにダメージを与えていく。
その時、カイザーは気づいた。イクリプスの黒く焼け焦げていたと思われたのは、彼女の全身を覆う「殻」のような物だったのだ。まるで甲殻類のようなそれはカイザーの攻撃で剥離していき、その下からは元の白と蒼の装甲服が露わになってきたのだ。
一瞬、イクリプスと視線が重なると、そこにはあの不敵な紅く光る瞳が待ち受けていた。


ふふっ......♪


そしてイクリプスは斬り下がりながら、またあの不敵な笑みを浮かべた。その大槍を構える彼女は、伝説と呼ぶに相応しい、まるで芸術品のように美しい姿だった。ボロボロになり、壊れかけの身体でも、その美しさに陰りはない。

「ーー見事な槍術だ」

カイザーは拳を構えながら、ため息混じりに呟いた。

「ーーそうかしら?」

「ああ......感傷だが、“太陽の拳”をも防ぐ、君の槍術は本物としか認めざる得ない。敵ながら素晴らしいよ。だがーー」

カイザーは再び技を使用すべく、全身に黄金のオーラを纏い始める。

「ここで私は絶対に負ける訳にはいかない。私の為に戦ってくれた多くの同胞のーー」


『【傲慢】ですね』


彼の言葉を遮るように放たれたイクリプスに言葉は、カイザーの虚を突いた。

「ーー己の力を過信し、他者を見下してると......“見えなくなるもの”があるでしょう」

イクリプスの紅い瞳と言葉は、カイザーの心まで見透かしてしまうような説得力のある物だった。


「ーーさあ、死合ましょうか。あなたは、わたくしを殺すのでしょう?」


イクリプスは大槍を手に前傾姿勢になり、腰を低く構える。
その時カイザーは、内なるところに流れる、冷たいなにかを感じていた......


砕けた教会の外に横一列に並ぶ人影......白い装甲を身にまとった少女達、ヴァルキュリアだ。全員がほぼ無傷であったが、その内一機は装甲が大きく破損しており、左腕も三角筋と当て木で固定してる状態だった。
そいつら相対するようにラヴォン達は前に出る。その横には黒衣を纏い大鎌を背負う死神のような少年ヴェルゼと、人間達によって生み出された人造のヴァルキュリアの少女、ユキカゼ。そして火が灯ったカンテラを片手にぶら下げ、黒いローブに身を包んだホムンクルスの女性、フィア。
3人がヴァルキュリア達に対して身体を斜めに構えて臨戦態勢である中、フィアだけはきょとんとした表情で棒立ちのまま、向こう側に並ぶ見たことのない種族の少女達を眺めていた。
ヴァルキュリアは人類の天敵であるのだが、なぜか彼女達はラヴォンへ襲ってこない。その理由は、彼の後ろにいる少女、アイギスのせいだった。
この赤毛の少女アイギスもヴァルキュリアであり、しかもあっちの面子の仲間だ。けれども色々あってラヴォンへ協力し、今こうやって再び本来の仲間たちと再会することになったのである。

ラヴォンが数歩前に出てくる。

「大人しく来た事は褒めてやる。それで、なんだ?一応要件は聞いておくぞ」

「......フフッ、フフフフッ......余はこれまでに数多の協力者を葬ってきた......」

頭に天文時計が組み込まれた帽子を被る、小柄なヴァルキュリア、インデックスが静かに笑いながら呟く。
その様子にラヴォン達は眉をひそめる。

「ーー次は、貴公らの番になったのだ」

「ああ?馬鹿かお前ら!もうお前らに大した戦力が残ってないのは分かってるぞ!諦めろ、ヴァルキュリア!」

ラヴォンの飛ばした叱責を突きかえすかのように、インデックスは再び口を開こうとするが...

「ーーお言葉ですが、インデックス様。あの人間の言ってる事は事実です。要撃となる軽歩兵団や機甲師団、更に他のヴァルキュリア部隊が全滅した今、もはや我々だけでこの盤上を覆すのは困難かと......これは実質ーー」

そう言うのは、インデックスに次ぐ地位を持つヴァルキュリア「ソル」だった。束ねても太ももの辺りまで届く銀髪が特徴的な彼女は、このヴァルキュリア部隊の参謀役だ。
ソルの言葉に、インデックスの余裕の表上が一瞬崩れた。

「ーーで? だから何だね、ソル君? “ヴァルキュリアの敗北”と言いたいのかな?
正規戦を継続できないなら、ゲリラ戦に切り替えればいいだけだろう」

それでもインデックスは「まだイクリプスも、それに“私”が残ってるじゃないか」と、ソルの言葉を突き返す。しかしもはや彼女達に勝ち目がないのは、誰にでも目が見えていた。今のインデックスは意地とかそう言うレベルではなく、本当に頭が狂ってるのかと疑うぐらい、人間の殺戮へ執着していた。もはや戦争の勝ち負けなんかどうでもいい、とにかく目の前の人間を葬ることしか考えていないようだった。
総大将にあるまじき態度に、ソルや他のヴァルキュリアも動揺を隠せない...



美琴とヨハネスは、ついに目的地に到着するも、そこは既に地獄のような光景だった。溶岩のように赤く溶け落ちた大地に燃え続ける炎、とても近づき難い......煙と蜃気楼の向こうに対峙するように佇む人影がぼんやりと見える。
1人は姿勢を低くし、前傾姿勢になって大槍を構える一機の蒼いヴァルキュリアだった。その矛先には、それを迎え撃つように両拳を高く上げた金色のオーラを身にまとった大男が仁王立ちになっていた。

ヨハネスには2人の正体がすぐに分かった。金髪を束ねた碧眼の大男は「カイザー」、彼の師に当たる。その立ち姿は遠く離れていても眩しいぐらいに勇ましかった。
対するは......カイザーとは対色的な暗いオーラを纏ったヴァルキュリア「イクリプス」だ。
そしてこの状況から、カイザーは必殺技である「太陽の拳」を使用して周囲を焼き尽くした事がうかがえる。この技を受けて立っていた者は居ない筈......しかし彼女、イクリプスはどういうわけか立っているのだ。

2人がなにかを話している。それはここからでも美琴とヨハネスの聴力、そして唇の動きから分かった。


『ヴァルキュリア・イクリプスーー推して参りますーー』


『私はカイザー軍の隊長、受けて立とうーー』


2人の言葉が風に遮られて途切れた刹那、イクリプスが灼熱の大地を蹴って飛び出した。衝撃波と共に火山の噴火の如く周囲の溶岩が吹き上がって火柱となる。
稲妻の如き閃光と共に突進するイクリプスを迎え撃つは、黄金の光をまとうカイザーだ。幾ら金塊を、例え天に届く程もの金塊を積み上げたとて、彼の今の輝きには遠く及ばないだろう。

決着ーーそれは即ち片方の死。ヨハネスはカイザーへ絶対の信頼を寄せていた。しかし、今この一瞬ーー彼の中のその確信が揺らぐ。
僕たちは、なにか、とても大事な事を忘れているーーカイザーさんへ、知らせなければーー
イクリプスの矛先とカイザーの拳が交差する......ヨハネスがカイザーへ危険を知らせようと、口を開いたその時だった。

ーー近くの丘の上で、何かが光る。それは灼熱に溶岩によって赤く照らされたここからでも、まるで恒星の如し明るさを放っており、誰もがはっきり視認できた。



レームを持つロボットのような姿になるのだ。それがさらに周囲の地層と一体化し、化石になるには相当の長い年月が必要なはずだが......

「うーん、そうだよねー。どうやったらこうなるんだろ......けれども、作り物にも見えないしなぁ」

その隣、グラエキアの言葉に続けて独り言のように呟く魔法使いの少年、リクセス。彼も少し顔を近づけながら、変わり果てたユキカゼを見ていた。

そこへ、一階から複数の人間が階段を上がってくる足音が近づいてきた。3人程だろうか。しかもレジスタンスの子分達のどよめく声も混じって聞こえてくる。

「あっ、こら!」

「なんだ、あんた達は!」

そして会議室の入り口のレジスタンス達を押しのけて、3人の人影が立ち並んだ。
1人は茶色の高級そうなスーツ姿の紳士だ。身長は優に180センチはあるだろうか。スーツの上からでもはっきり分かる、筋骨隆々とした肉体の持ち主だ。けれどもその眼差しはとても優しく、
2人目は癖のある黒い髪をバンドで束ねた青年......いや少年だろうか、白を基調とした上着の両袖には、黒い螺旋模様が、まるで蛇のように巻きついている。黒いブーツとグローブも身につけており、肌の露出がほとんどない。そして首からは大きくひし形にカットされた青い宝石のネックレスをぶら下げており、まるで水の波紋のような光を放っていた。
そして最期の3人目は......白いビニールを頭から被った人間なのだろうか......しかし傘状に広がり、縁には波にような模様のあるそれは、でっかいクラゲにも見えなくもない。表面に浮かび上がった顔は非常に整っており、鼻も高い。しかし正直、この中で一番関わりたくないのはどいつだ?と尋ねたら、ぶっちぎりの人気を誇りそうでもある。

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