雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 死(元猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.189 )
日時: 2012/04/07 10:09
名前: 刹那◆V48onzVAa6

初めまして、もしくはこんにちは。
今回初めてSS大会に投稿させて頂きます。

タイトル:狂愛毒ニヨリ苦シ

「僕と、付き合ってくれない?」
 そう幼馴染みの優人に告白された高一の夏から、二年が過ぎた。
(もう付き合い始めてから二年かぁ……)
 と感慨に浸りつつ、ギシギシ軋む廊下に体重増えたかな、と佐和子は不安を覚えながら旧校舎の廊下を歩いていた。
 窓の外では、蝉が必死に求愛行動に励んでいた。それが夏の気だるさを余計に増す。今にも空気が蒸発して水蒸気になりそうな猛暑日真っ只中の今日、佐和子は優人を呼び出したのだ。自分でも何でこんな猛暑日に呼び出したのだろう、と後悔しているがもう腹を括るしかない。
『話があるから、大鏡の前に来て』
 そんなメールを、朝佐和子は優人に送った。旧校舎は一応封鎖されているが、封鎖しているのがすっかり錆び付いた南京錠の為、左右に捻るだけで簡単に取れてしまうのだ。勿論佐和子も、南京錠が簡単に外れることは知っていた。生徒は、教師の目を盗んでは大鏡のジンクスを試しているのだ。
 その大鏡のジンクスとは、旧校舎の二階にある大鏡の前で告白すると付き合える、というものだ。
 二年前の夏、佐和子はその大鏡の前で告白された。幼馴染みの優人と恋人という関係に変わり、最初の一年はとても楽しかったのだがだんだんと優人に会うのが億劫になってきた。所謂、倦怠期というものだろうか。最近は会ったら挨拶を交わす程度までになり、別れたのかと誤解されることもしょっちゅうだ。
 大鏡の前に辿り着き、佐和子は外を眺める。
 夏という季節は不思議なものだ。暑いと思いつつ、その日射しに微睡み、溶けていきたくなる。
(もう戻れないのかな……)
 今日、佐和子はこの機会に別れようと決意していた。
 今の二人を締め付けているのは、恋人という鎖だ。もう会うことすら面倒なのに、恋人だからということが二人の願いを邪魔している。そう思ったからだ。
 恋人には戻れなくとも、せめて幼馴染みに。そんな淡い期待もしたが、恐らくそれは無理だろうという結論が出ていた。
「……お待たせ」
 階段の方から、優人が現れた。急いで来たらしく、息を切らせていた。
「久し振り、優人」
「久し振り」
 眩しい向日葵のようにはにかむ優人に佐和子の胸に切なさが滲んだ。
(そう、私は優人のこの笑みが大好きだった―――――)
 でも、それはあくまで幼馴染みとしてだった。
 今になると、そう思える。
 優人は、愁いを帯びた瞳で無人のグランドを眺めて、
「……二年前、僕はここで佐和子に告白したよね。好きだよ、付き合ってって」
 ―――――佐和子は、それで察した。
 優人も、別れようと思っているのだと。
 だが、呼び出したのは自分だ。佐和子は、
「―――――別れよう?」
 と呟くように告げた。
「……え?」
 優人の間の抜けた声が響く。佐和子は無理に作り笑いをして、
「ほら、優人も私も。お互い疲れちゃったじゃない?だから、別れよう?」
「……」
 優人が黙りになる。
 佐和子は、溢れる気持ちを飲み込んだ。
 本当は楽しかった時もあった。だが、それを告げたら両方の為にも別れた方がいい、という決意が揺らいでしまう。もどかしい。そんな感情が佐和子の中を占めていた。
「優人も、それを言おうと思ったんでしょう?」
 長い、気まずい沈黙が流れた。
「……それが、佐和子の気持ち?」
 そして、その沈黙を破るように優人が俯きながら尋ねてきた。
「……うん」
 だが、佐和子は偽らなかった。
「そっか」
 優人は俯いたままで、そう言った。
「ごめんね、呼び出して」
「ううん。こっちも待たせちゃって悪ィ。飲み物買ってきたから、飲む?」
「あ、うん。ありがと」
 佐和子は優人からペットボトルを受け取り、開けた。
 簡単に開いたな、という印象があった。
 そして、ペットボトルの中の緑茶を一口。
「―――――ッ!!」
 途端、形容しえない吐き気のようなものが佐和子を襲った。
 体の全ての細胞が激しく警鐘を鳴らす。
 喉が、胃が、細胞が。体全体が熱い。それは夏のせいではない。恐らく、先程の緑茶のせい―――――。
 佐和子の体が、ぐらりと横に倒れる。体中の力が抜け、立つことすらできない。
「ガハ……ッな、何が……」
 次第に、喋ることもままならなくなる。
 何が起こったのか、佐和子には理解できなかった。
「ゴメンね、佐和子。だって別れようとした佐和子が悪いんだ。佐和子は僕だけのものなのに―――――」
 佐和子の口から激しい咳と共に零れたのは、鮮血。
「ちなみに、それは理科室から盗み出した薬品。毒になるのかな。嫌な予感がして、持ってきて正解だったよ」
(―――――毒?)
 佐和子は察した。
 自分は、優人に毒を盛られ、死ぬのだと―――――。
(なん、で……)
 そこで佐和子の意識はブラックアウトした。

「佐和子、ゴメンね。苦しかった?」
 優人は人形のように動かなくなった佐和子にキスをする。
「あのね、佐和子。僕は君と別れようなんて、これっぽっちも思ってないよ。僕は君を愛してる。君は、これで一生僕のものだよ―――――」
 全ては、ある夏の刹那的な幻。
優人は満ち足りた笑みを浮かべ、佐和子の頬を自分の頬に擦り寄せた。
 その表情は恍惚とした―――――罪悪感など微塵も感じていないというようだった。
「ねぇ、佐和子、僕だけを見てくれるよね?僕の傍を離れるなんて言わずに、ずっと、僕だけを見て―――――」

 ―――――ねえ、知ってる?旧校舎の大鏡の噂。
 ―――――告白すると成功するっていうジンクス?
 ―――――違う違う。昔ね、そこで告白された女生徒が数年してから別れ話を切り出したんだって。そうしたら、彼女を狂愛していた彼氏に毒殺されたんだって。自分だけを見るように、って。それで、それからその大鏡には、その女生徒が口から血を流した様が映るんだって―――――。


.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。  

猫様

素晴らしい大会を開いて下さり、有り難う御座いました。
大会の存在を知り、ネタから執筆まで一日で実行したのは初めてです。
文才の欠片もない拙作ですが、ここに載せることをご容赦ください。
お礼が遅くなり、申し訳ありませんでした。

.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。  

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.190 )
日時: 2012/03/23 11:18
名前: ピアニッシモpp◆8NBuQ4l6uQ
参照: http://www2.x-feeder.info/aosilove/

『怪談』

「なぁ、怪談しようぜ!」

この一言が始まりだった

今日は8月13日、夏休みの宿題がようやく終わって遊ぼうとしていた
そうしたら、快たちが来て、俺の家で遊ぶことになった
あ、俺は如月優衣。一応男

未来「ねえ、ゲームとか置いてないの?」
優衣「捨てた」
秋「暇なんだけど」
優衣「知らん」

とまぁ、全員暇していたらあの言葉だ

優衣「ハァ?怪談?」
陸「いいな!涼しくなりそう!」
快「じゃあやるぞ!」

なぜか怪談をすることに
この後俺はカーテンを閉め、ろうそくを用意させられた

快「じゃあまずは俺からな」

と話を切り出したのは案を出した快

快「昔、この近くの神社で殺人事件があったんだ。それで狙われていたのは小学校高学年ぐらいの子達。まぁ俺たちぐらいの子だ。その犯人は捕まったのになぜかまだ事件は起きていた。これは何故か?そう思い高校生の男女が神社に行ったんだと。そうしたら神社の奥に祠があった。前までは無かった祠が。その男女は悪戯で祠を空けた。でも何も怒らなかったから男女は自分達の家に帰った、…はずだったんだけど。その二人は帰る途中に行方不明になった…。専門の人によるとそれは幽霊の仕業なんだってさ」
未来「快の話、怖い…」
陸「俺、寒気してきた」

この話は俺も聞いたことがある
なんたってその神社はここから一キロ以内にあるからな…って近くじゃないか…

未来「じゃあ次は優衣ね」
優衣「は!?」
陸「作り話でいいし」
優衣「ハァ…」

結局俺は話すことに

優衣「話す前にこれだけ言っておく。この話をしてから何かが起きても責任はとらない。本当の話だからな」
秋「え?」
陸「ちょっ!」
優衣「ついこないだのことだ。大学生5人が廃病院に行ったらしい。それで面白半分にビデオを取り始めたんだと。んで、ここはこんな部屋です。見たいなことを言いながら歩いてた。そうしたら3回に繋がる階段の途中で懐中電灯が切れた。電池はまだあるのに何故か切れたんだ。不思議に思った一人が後ろの子に聞こうと振り返ったら、血まみれの男がこっちを見ていた。そして振り返った少年は階段を下りて逃げたら他のメンバーも一緒になって逃げた。だけどその男は追って来なかった。安心して5人は家に帰った。が、次の日一人の女性が原因不明の高熱にかかり、振り返った少年は行方不明になった。撮っていたビデオを見ると、たくさんの人が映っていた。そしてこの話を聞いた人の前にそいつは…現れる」

俺が言い終わった瞬間急に棚の上の花瓶が落ちた
陸「――!?」
秋「やっぱりやめない?」
快「そそそそそうだな」

怖がりだな…
まあ俺は体験したからなれてるけど…
…ん?
何か窓に一瞬何かが見えた様な…

未来「優衣?どうかした?」
優衣「…逃げるぞ」
陸「は?」

陸がそう呟いた瞬間

ドンドンドン
とドアがなった

優衣「お~来たぞ~」
快「なななんで!」
優衣「最初に言ったぞ、俺は何が起きても責任は取らないと」

ガチャ
とドアが開いた

未来「いやあああ!」
??「――?」
陸「…幽霊!?」
??「違うよ~」
優衣「ドッキリ大成功~」
??「涼しくなっただろ?」
快「は、はははははは」
秋「もう!遊びに行くよ!」
優衣「あいよ」

とまあこんな感じの一日だった
え?何も起きてない?何言ってんの?来たじゃないか。
名前を顔も知らない謎の人が。え?ドッキリだって?
違うよ、みんな気付いてなかったけどあの人、足が無いよ
怪談、楽しかったなぁ。
ああ、夏だなあ。
あ、もしかしたら幽霊がそちらに向かうかもしれませんが、こちらは責任を取りません

         ~END~



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

お題の「夏」から離れて行っちゃったけど…怪談といえば夏ですよね?
ついでにこの話は私オリジナルですので。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.191 )
日時: 2012/03/25 14:08
名前: さくら
参照:     涙の匂いがした海に、ふわり。人魚姫の泣き顔が映る 


「海が、綺麗ですね」


無造作に伸ばした金髪を振り乱しながら、彼は振り向いた。
この海の蒼にも負けない、清い瞳がとても眩しかった、




              。゚
               o
              ○
                 o
                o ○
              O。゚
             o
              。




家族と旅行で来た沖縄。綺麗な海、大嫌いだ。蒼い海、大嫌いだ。
空のブルーが反射してる。日光を浴びてキラキラキラ。人魚姫はこんな綺麗な海で泡になったのだろうか。
ところで此処の海は本当に綺麗だ。海は嫌いだけども、「綺麗」そう感じる感覚という物はちゃんと持ち合わせていた。本当に、綺麗で、憎い。

夏。白いワンピースが浜辺に咲いた。
さらさらと柔らかい砂は、裸足で歩いても全然痛くない。白、青、赤、緑、桃…数々の色が映えて見えた。凄く良い経験だ。


「海は何で蒼色なのか知ってます?何やら、太陽光の影響なんだそうですよ。海中に太陽光線が入ると、青以外の色は吸収されてしまい、青い光だけが海中に浮遊する微粒子に当たって跳ね返るため、青く見えるのです。本当、神秘的な話ですよね。」

「…変な奴、」


浜辺に一人佇む一人の少年。高校生で同い年位だろう。
ただじっと海を見つめていただけの彼に興味本心で、少し語ってみた。が、逆に集中を煽っただけだったらしく眉間に皺を寄せて睨まれては、また海に視線を泳がせた。

ふぅ、長い髪を靡かせ近寄ってみる。


「こっち来んなよ」

「私の身体なんですから、私が何処に動こうが私の勝手です。其処にたまたま貴方が居ただけ」

「…ったく、」


何か、無愛想な人だなあ。口調や見た目は何処かの不良の様だが、内面は凄く冷めている男子だと思った。否、ギャップと言えば良いのだろうか。だがしかし、こうしてまでヤンキー外見の癖にこれじゃあまるで勉強しかしない、世の中全て金、だと信じ込む男の様にしか見えない。

私は病気で、普段は吐き気がする程真っ白な病室から出られない。勿論暇というものが出てくる訳で、何時も本を読んでいた。ほら、TVをずっと視ていても、視たい番組ばかりでは無いし、お金も掛かるから。
本を読むだけあって、それが凄く熱中してしまい、本から得た知識が頭の中で疼いている。

外に出るのを許されていない訳ではない。外には散歩がてら出る場合もある。時間制限はされているし、何時も看護師や付き人の人が着いているが。
だから、自由に遊ぶ学生や仕事に走るサラリーマン、家族で外食しに行く親子達を見ると激しい嫉妬に見舞われる。私は出たくても出られないのに。もし仮に出れたとしても、制限された自由。だから、海も嫌いだった。空も、無限大に広がるもの全て。自由なもの全て。

ふざけた話だって思ってる。こんなの、只の醜い嫉妬だって。
でも、妬かずにはいられなかった。すんなりと自分の死を受け入れて、病室に閉じ篭り外を見ようとしないのは何か、私が私で居られなくなるみたいで、嫌だったから。


「海は、特に嫌いなんです。」


海は、怖い。あの大海原を越えたら何があるのか。深海の底には何があるのか。人魚姫が泡になった海は、どんな味をしているのか。どんな色をしていたのか。知りたい。
何故過去系なのかは、この際深く問わないで頂きたい。

だが、海に吸い込まれそうで。私の少ない命が吸い込まれそうで、とても怖いのだ。
人魚姫が泡になった様に、この深くて綺麗な海に融けて無くなってしまいそうで、怖い。

だから、海が嫌い。


「お前なぁ、怖いのは、知らないから怖いだけなんだよ。知ってしまえば全然怖くねぇ。」

「知るって、でも、海の事なら知ってます。本で読んだ事あるから」

「それは、自分でちゃんと確かめた事なのか?自分で身を持って確かめ無いと、その情報が嘘って事もあるからな。」


それは、確かに。
今の、発達した科学でも突き止められない事がある。宇宙だって、数え切れない星がある中、発見されているのはごく一部の星だ。
この様に、幾等本に書いてあったとしても、自分で調べない限りその情報が偽りだと言う事もある。

だから、身を持って調べる事が大事。怖いのは、知らないから怖いだけ。怖いなら、知れば良い。本当に怖いものなのかは、知ると分かってくる。
勿論、身体で調べられる事に限るが。


「お前、泳いだ事ねえだろ。海の事を知ろうとしていないから、当然だけどな」

「…、」

「海がどんな味なのかも、知らないだろ」


―――怖いのは、知らないから怖いだけ。怖いなら、知れば良い。

海の味は、しょっぱい。
彼はそう言って、自らの指を海につけた。そして私の前に着き立てた。は、舐めろ、と?


「はむ、」

「ちょっ、噛むなよ?」


しょっぱい。一つ目に思う。涙の味がした。



 ×



海は、人魚姫の流した涙だ。幻想的な思考が頭を駆け巡る。
人魚姫は、王子様を殺す事が出来なくて悲しくて悲しくて悲しくて。

最初から、海が塩辛いとは知っていたけど、涙の味がするなんて知らなかった。
涙なんて、悲しくて嫌だ。


「何で、海は甘くないのでしょうか。」

「は?海は塩辛くてナンボだろ」

「ですけれど、海が涙の味なんて、悲し過ぎます」


海は嫌いだ。涙の味がするし、私の少ない命が吸い込まれそうで、とても怖いのだ。
大嫌いな海、この浜辺で見た海は、とても綺麗で、とても涙色で蒼かった。

そんな海の奥で、一匹の海豚が空を跳ねた気がした。


「それにしても、海が、綺麗ですね」





(( 涙の匂いがした海に、ふわり。人魚姫の泣き顔が映る ))


240324
素敵な小説大会を有難う御座います。
とても楽しめました。「夏」というテーマに合っているかは分かりませんが、私なりに「夏→海」という感覚で書きました。
上記の何か変な○が沢山並んでいるのは、泡をイメージしました。見えるといいですが。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.192 )
日時: 2012/03/26 23:57
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw

まさかの題名で賞を取るとは…。
投票してくださった皆様、有難う御座いますっ!



【Our summer】 1/2


 「夏だぁーっ! 海行こうぜ、海!!」
 「やだー! 絶対虫取りっ!!」
 「夏と言ったら祭りじゃないかなぁ~?」
 「…あ、あのー……っ」

 僕等4人は、教室の中で騒ぐ。
 僕と、加奈と、純也と、藍子。
 小さい頃からの幼馴染で、今は同じ学校で。
 終業式が終わった途端、教室で何をするか討論を始めた。

 「だーかーらー…海は男の“ろまん”ってやつなんだよっ!!」
 「はぁーっ!? あたしと藍子は男じゃないしっ」
 「まぁまぁ…順番に行けば?」
 「え、えと…」
 「おい悠人はどこ行きたいんだよっ」
 「僕は…皆に合わせようかなぁ…なんて」
 「……何それー…これだからヘタレは嫌なのよっ」

 純也と加奈は結構スポーツタイプの元気系で、僕等のムードメーカー。
 それと対するように、僕と藍子はそれを見守る係り。
 これは昔から変わらない。

 小学4年生、10歳の僕等はまだ何も気付かない。
 大事な事に気付かない、淡い年頃だった。

 

 「…んじゃ、明日は海で明後日は虫取り。それからお祭りプール山登り街探険…てな感じだけど、おけーっ?」
 「賛成ーっ! 明日からもう遊べるのねっ!!」
 「藍子はそれでいい?」
 「あ……う、うん」 
 「浮かない顔するのね。あ、行きたい所あるとかっ!」
 「藍子、遠慮すんなよー?」

 1人俯きながら、藍子は口を閉じる。
 僕等は幼馴染で、間に遠慮ないてない。
 だから言って大丈夫なのに。

 「…、したいな」
 「え?」
 「み、皆で…天体観測が……したいな…」

 ぽかん、とする僕等一同は、1度互いに顔を見せ合わせて後に頷く。
 可愛いところあるじゃん、ってそう思った。

 「良いじゃねぇか!! こうなったら新しい星を見つけっぞーっ!」
 「あぁーっ! あたしだって負けないし!!」
 「はは…新しい星って……」
 「……楽しいね」
 「え?」
 「皆…そう言ってくれて嬉しい…」
 
 藍子はいつもの優しい顔で微笑んだ。
 僕はそんな藍子を見て、張り切るあの2人を見る。
 あぁ、やっぱ僕等は“4人で1つ”なんだ。

 



 ※続く

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.193 )
日時: 2012/03/26 23:50
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw

 【Our summer】 2/2


 海水浴、虫取り合戦、夏祭り、区民プール、山登り、街探険…と。
 僕等は宿題も忘れて夏休みに没頭していた。
 漸く、1週間が経とうとした頃だ。
 街探険を終えた僕等は公園でアイスを食べながら楽しく会話をしていた。

 「にしてもお前、虫取りうめーんだなぁーっ」
 「甘く見ないでよねーっ! こちとら虫オタクなんでっ」
 「でも純也だって夏祭りの金魚すくい、異常に上手かったような…」
 「あれはな悠人! コツってもんがあってーっ」

 楽しい4人の時間。
 の筈…だったんだ。
 
 藍子は静かに、それも途端に立ち上がった。


 「ごめんね…皆」


 いつもの優しい声と入り混じった、
 怯えるような震えた声。

 我慢しきれなくて、掠れながらにも絞り出したような、声。

 「ど、どうしたの…、藍子」
 「具合でも悪いのかぁー?」

 藍子は小さく首を横に振る。
 藍子に一体何があったんだと思うと…彼女は言葉を紡いだ。


 「私…都会に引っ越す事になった、の……」


 田舎育ちの僕等にとっては、一度は行ってみたい世界。
 都会。藍子の口からはそんな単語が生まれた。

 「な、何で…」
 「今までそんな事、一言も…!!」
 「藍子…?」

 藍子の声が震えていた。
 藍子の体が、震えていた。

 藍子は走り出した。

 夕日を背に、掠れた声を出して僕等に背を向けたんだ。


 藍子が引っ越す。
 藍子がいなくなる。

 
 僕等はそれだけで、夏の色を失った。








 僕の耳には何の音も響かない。
 やかましいセミの声。暖かいで揺らぐ草の音。
 僅かに聞こえる自転車のベルの音も、水の音も。

 音じゃない、なくなったのは僕等の夏だ。


 「…藍子の家、行ってみたけど返事がなかったよ」
 「俺もそう。つか、『泣いてる顔を見せたくない』って、藍子のかーちゃんから伝えられた」
 
 あの元気な2人が、こんなにも気を落としていた。
 当たり前だ。大事な幼馴染がもうすぐこの街からいなくなる。

 「…藍子、いつ引っ越すって?」
 「確か…明日の朝にはもう発つって…」

 僕はそんな会話に混ざる事もできず、公園から歩き出した。

 「ち、ちょ…っ、悠人!?」

 加奈の声が響く。でも何故だか僕の耳には残らなかった。


 『私…都会に引っ越す事になった、の……』


 こだまする藍子の声。
 僕等に残された時間はもうないんだ。



 「藍子?…ごめんね、本当に会いたくないって…」
 「じゃあ、伝えておいて貰えますか?」
 「…?」
 「僕のマンションの屋上に、夜7時集合だ、って」



 もうこれしかないと思った。
 最後はやっぱり笑ってほしいから。
 あの優しくて柔らかな笑顔を、もう1度見たいから。




 「何するのよー、悠人?」
 「…僕等の夏は、こんなんで終わりにしたりしないよ」
 「はぁ? それどういう意……」

 満天の夜空の下で、僕は思った。
 絶対来てくれるって。
 これだけで終わりにするなんて嫌だったから。
 
 「お前、まさか…」

 がちゃり、と屋上の扉の開く音がした。
 申し訳なさげに入ってくるのは、あの優しい僕等の幼馴染。
 僕等にとって、かけがえのない存在。


 「藍子…」
 「……悠人君、ここで何をする…つもりなの?」


 未だ不安げな藍子は、扉から半分身を乗り出す。
 僕はにこっと笑って、ゆっくりと腕を上げた。
 そして、指でそれを指し示す。




 「やろうよ…“天体観測”を。……――――僕等の夏は涙なんかで終わらせないよ」

 

 
 藍子は、夜空に散りばめられた宝石を見つめる。 
 点々とするその宝石を人は、“星”と呼んだ。
 満天の空の下、僕等はもう1度離れない絆を創り上げるんだ。



 「あれ見ろよ! めっちゃ赤い!!」
 「ちょっとちょっと!! 大きい星見つけちゃったぁーっ!」
 「藍子は全部知ってるの? この星達」
 「……うん、星は好きなの…」


 火星を見つけるんだとか新しい星を発見するんだとか、尽きない話題で盛り上がる僕等。
 やっぱりこうでなくっちゃ、僕達の夏は。

 
 「あの…皆…っ!」


 藍子の力強い声に反応する。
 こんな声も出るんだと、そう思った時だった。

 
 「私…こんなに楽しい時間を過ごすのは初めてで、それも皆で、この4人で過ごせて…本当に、本当に…っ!」

 「藍子…俺達だって楽しかった」

 「また皆で、この4人で集まろうよっ!」

 僕もうんと頷く。
 藍子は溢れる涙を止められずに、それでも綺麗に、



 「ありがとう…本当に嬉しい…―――っ!」



 暖かくも優しい笑顔を、いつもの笑顔を、僕等に向けてくれたんだ。






 僕等4人の夏は終わってしまったけれど、決して消える訳じゃない。
 もう1度、もう2度だって。
 きっと巡り合い、笑い合う。

 それがどれだけ先の事でも、どれだけ偶然な事であれ。


 ――――――"Our summer isn't to vanish eternal"


 *end*

 なんか仲良し系の青春系の爽やか系を書きたかった…みたいです←
 前回はちょっとコメディで思う存分ふざけたので、今回はわりと真剣に書きました(((
 と言ってもこれで真剣かよというレベル。
 もっと精進したいと改めて思いました。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.194 )
日時: 2012/03/27 15:45
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

1>

――――僕の名は高樹純平。
    純平の純は“純粋”の『純』。
    女の子に全く興味が湧かない……なんてコトはないけれど、生まれてからいままで一度も“恋”というものをしたことがない。
    やっぱりみんなにいつも言われてるように理想が高すぎるのかな…………


 僕の両親は下着会社を夫婦で経営していて、海外に出かける事が頻繁にあってめったに家にいることがない。 家政婦のおばさんを一人雇ってはいるが、住み込みではないので、夕ご飯の支度を済ませると帰っていってしまう。 広い家に僕ひとり。 小さかった頃は淋しかったけれども、もう慣れた。
 先日父さんが久しぶりに家に戻ってきた。 父さんの横にもうひとり……僕がたぶん初めて会う男の人がいた。 父さんいわく彼は幼馴染で占い師らしい。 見た目は色黒で、土木作業員のような貌。 とても暗い部屋で毎日水晶玉に手をかざしている、というイメージはわかないけれども、彼の占いはとてもよく当たる、と言っていた。 主に“事業経営”や“景気の流れ”を占う人だった。 おそらく父さんのかたわら、お世辞を言ったのだと思うけれども、僕の手相を見た彼に、“将来、父をも超えるほどの人間になる”と言われた。
 僕は“ついで”に彼にお願いをしてみた。


「恋愛面も占ってください」
                ――――と。


 一瞬曇った彼の表情を僕は見逃さなかった。
 “恋愛占いはしたことがない”と彼は言っていたが、絶対ウソだと思った。 彼には“僕の恋愛の良くない結果”が見えたんだ。 「自身はないが……」 彼は父さんのとなりで言いにくそうに答えた。


タイトル『一晩かぎりの月下美人(シンデレラ)』


(今夜七時から花火大会……か……)
 僕には“健”という幼少時代からの“くされ縁”の同級生の友達がいる。 見た目だけではなく中身までも、今はやり(?)の“チャラい”男だ。 彼には“由季ちゃん”という、誰がどう見ても釣り合いがとれないくらいの美人の彼女がいる。 小学生時代に(もちろん)健のほうから“ダメモト”で告白したら奇跡的にOKをもらえた事がきっかけで付き合いだした。 小さな事でちょこちょこケンカは絶えないけれども、なんだかんだいっても続いている仲良しカップルだ。
 健と由季ちゃん……。 あいつらのことだからきっと今夜、花火と一緒に“フィーバー”でもするのだろう。
「高っちに彼女ができたらダブルデートしような!」
 余裕な顔で健のやつはエラそうに言う。 そんな事言って僕の彼女も一緒に“ダブルフィーバー”でもする気……
――――って、友達の事をこんなに悪く言っちゃイケナイ……
 なんかひがんでるみたいでカッコ悪いな 僕…………
 最近熱帯夜が続くからなのだろうか。 身体が熱い……
 部屋の窓を開けて夜を浴びた。 暖かいの味を感じながら目をつむる――――


 今年の夜もひとり寂しく花火の音をBGMに“未来の僕の恋人とのラブラブデート”を想像しながらくつろぐとするか…………
 僕はキングサイズのベッドの上にゴロンと横になり、枕元に置いてあるファッション雑誌を手に取り、パラパラとめくった。
(ん? そういえば健のやつ、最近やけに浮かれてたな……)
 彼いわく、由季ちゃんとデートなんて……“お泊りデート”まで何回もこなしているはずなのに……。
 あの健のテンションはまるで“初めてデートをする”ような感じ――――


 “彼女にバレない浮気の方法”


 偶然にも読んでいる雑誌のなかのこんなコーナーに目が止まった。
 もしかして健のやつ…………
(――――なーんて ね……)
 だから友達の事、こんなに悪く言っちゃイケナイって。 やっぱりひがんでるのかな 僕……


「 !! 」
 外から女の子の泣く声が聞こえる。 しかもその声は“僕のよく知っている女の子”の声にとてもよく似ていた。
 窓からそっと顔を出してのぞくと、やっぱりそうだった。――――由季ちゃん だった。
 浴衣姿の由季ちゃん……。 彼女はずっと泣きながら僕の部屋を見上げていたのだろうか。 呼び鈴も押さずに……
 僕の姿を見た彼女はあわてて走り去った。
 彼女は僕に助けを求めている――――そんな気がして僕は部屋を飛び出した。
――――放っておけない!!
 玄関を飛び出し、彼女のもとへ向かった。


>2に続きます。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.195 )
日時: 2012/03/27 16:21
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

2>

 僕の部屋のベッドの上に腰をかけて……僕の淹れたジャスミンティーの入ったカップに口をつける由季ちゃん。
「――――やっぱり“合わんかった”んだぁ…… わたしたち……」
 震えた声で大粒の涙をこぼしながらジャスミンティーをすする。
(もう何も話さなくて いい……)
 ベッドの上のちょうど“彼女にバレない浮気の方法”のページで開かれっぱなしになっている雑誌をあわてて閉じて、僕は彼女の小さな肩に手を乗せ……ようとして止めた。
(由 季 ちゃん……)
 信じられない……。 由季ちゃんがひとりで……“健の付いていない”由季ちゃんが僕の部屋のベッドの上に――――
 普段は細いウエストと長い脚を強調したスリムジーンズでクールにビシッとキメている彼女がしっとりと女の子らしいブルーの浴衣姿で……。
 普段は下ろしているつややかな腰まであるロングヘアーを今夜は一つにまとめておだんごにして……。
 僕は視線でゆっくりと彼女の首すじを撫でた。 少し着崩れた浴衣の後ろ衿の中からセクシーにのぞく彼女の背中。 その奥はいったいどうなっているんだろう……
 健が宝物を見せびらかすように僕に話していた“由季ちゃんの裏の顔”が僕の頭のなかにぼんやりと浮かぶ。
(何 思い出してんだ!僕っ!!)
 健のせいでよけいに由季ちゃんの顔を見ることができなくなってしまった。
 カタカタと由季ちゃんが手に持っているカップが震えている。
 僕はおそるおそる彼女の手から視線をのぼらせてゆく。
 普段はいつも…… 言っちゃ悪いけど“男らしい”、誰に対しても対等で、媚びない、さばけた、強い“はず”の彼女が真っ赤な目で僕の顔をまっすぐ見て震えている。
 今ここで…… 僕が抱きしめたらバラバラにこわれてしまいそうに――――


 ドドドドーン!
 夜空全体に響きわたる音とともに窓から降り注ぐ眩しい光。 花火大会のオープニングが始まった。
「相手が“僕”じゃあ、全然もの足りないかもしれないけれど……今夜は一緒に楽しんで みる?
 綺麗でしょ?  ここからでも充分に見えるんだよ、花火。」
――――本当はこんな台詞を言いたいんじゃなかった。
 僕の本心は……  もしも由季ちゃんが健の彼女じゃなかったら――――


3>に続きます

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.196 )
日時: 2012/03/27 17:11
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

3>

「やさしくしないで!!」


 今度こそ彼女の肩に手を乗せようとしたら大きな声で思いっきり弾き飛ばされた。
「男なんて大ッ嫌い!! 健も!高樹くんも! みんな大ッ嫌いッッ!!」
 そう言いながら由季ちゃんは――――――僕の胸に飛び込んできた。
 窓の外で一発づつ上がるイタズラな花火が、僕が必死で眠らそうとしている欲望を覚まそうとする。
 震えている由季ちゃんの背中に手をまわし、僕は彼女のくちびるを奪った。
「ねぇ 由季ちゃん……
               この浴衣…… 自分で着たの……?」
 由季ちゃんの浴衣の掛衿をつかんでいる僕の手も震えている。
「――ごめん。
 僕も健とおなじだね……。  今、“チャンス”だっておもってる……
 “やられたなら やりかえせばいいじゃないか”……って……
 由季ちゃんが“いや”なら、僕 すぐにやめるから…………」


     ☆     ★     ☆


 僕は“気まぐれ”で由季ちゃんを抱いた。
 “嫉妬”でも“愛情”でもない。 ただの“興味本位”で。
 彼女には悪いけれど、アレは“ひと夏の過ち”だと思っている。
 生まれて初めての盛大な“花火大会”が終わり、家に戻っていった彼女は今、何を思っているのだろう。


――――あの時は半信半疑でまともに聞いていなかった占いの結果を今頃になって思い出した。
「近いうちに恋に落ちるでしょう。
 落ちる……というか溺れる、と言ったほうがいいですね。
 純平くんのほうから夢中になってしまうくらい、あなたの心を惑わす女性が現れます。
 ――――しかし、その恋の前にはとても大きな障害の壁が立ちはだかっています。 覚悟をしておいてください。
 欲望にまかせて 突っ走らないように…………」


《おわり》

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.197 )
日時: 2012/03/30 18:30
名前: 夕凪旋◆PQzQy5g.72
参照: 初投稿です。よろしくお願いします。

 『休暇』

 ――私は、ずっと貴方を待っていたいのです。
 そう言って泣き崩れた彼女の姿を、私は生涯胸に抱いて生きていくのだろうか。

 時間とは実に不可思議で、そして残酷なものだと思う。十年という巨大な時間の壁によって、私はあの時、私を思って涙を流した彼女の姿しかまともに頭の中に思い描くことができないのだから。他にも、例えばたくさんの笑顔を見せてくれたはずなのに、その中の一つすら思い出すことができない。あの泣き崩れた時の映像のみを残して、他のものはさっさと荷物をまとめて頭の中から出ていってしまったかのように。
 それ故に、だ。もう彼女に会うことができないのだと知った時はそう、体中から力が抜け、情けなくもその場に崩れ落ちたのを覚えている。が、一滴の涙も頬を伝い落ちることが叶わなかった。“悲しかった”のではなく、ただただ無念でならなかったのだ。
 私は閉じていた目をそっと開き、実家からそう遠くはない河原の草むらに腰を下ろしたまま、頭上に広がる澄んだ空を仰いだ。久しぶりに見た故郷の空は悲しいほどに青く、ほんの少しの間とはいえ、ここに帰ってきた私を温かく迎えてくれているようにも見えた。じっと見つめていると急に胸の奥が熱くなったので、少々躊躇ったが、私は再び目を閉じた。何故か、暗闇の方が心底落ち着くのだった。

 どこか遠くから聞こえてきた、子供たちの無邪気な笑い声が耳を通り抜けていく。

 待ち望んでいた夏を歓迎するようにして鳴く、蝉たちの声に混じって。

 嗚呼、どこにいても見れそう、聞けそうなその全てが愛おしくてたまらない。

 できることなら暫くの間、実家で伸び伸びと暮らしていたいものだと切実に思う。しかし、あまり時間が取れず、今日中にはもうここを発とうと思っていたので、「残念ね」と項垂れる母に向かって謝罪の言葉を繰り返して家を出てきたわけなのだが、今更ながらにそれを後悔した。恐らく、明日の早朝に発っても滑り込みで間に合っただろうに。とはいえ、彼女の話を聞いた後にあの家にいても、ただ気まずいだけなのだろうとは思うが。

「もう、行くか」

 あまり長居すると、それこそ向こうに戻れなくなりそうなので、私は目を開けると、ゆっくりと腰を上げてズボンについた草を払い落とした。自分でもどうしてなのかよくわからないのだが、その行動すら、大切な思い出を払い落としているようで何だか無性に切なくなる。思いを振り切るよう深く息を吸い込んでみると、空気は爽やかな夏の味がした。


「……さよなら」


 ふっと頬を緩めてそう呟いた時、先程まで私を取り巻いていた子供や蝉たちの声がはたりと止んだ。突然誰かにスイッチを切られてしまったかのように、何の前触れもなく。
 私は急にそれが恐ろしくなり思わず身を固めて辺りを見渡した。実際に目にしてみて気がついたのだが、私が今体験していることは非常に不可思議なことであった。それはただ音がないだけで、周りの景色は今までと何一つ変わらずに動きつづけていたのだ。例えるならそう、音量をゼロにしたままテレビを眺めている時と同じ。
 どうすれば直るのか全く見当もつかないので、耳に手を押し当ててみたり離してみたりを繰り返していると、やがて、すぐ近くから草を踏み締める音が聞こえてきた。それと共に、先程まで姿を消していた音たちが雪崩れ込むように私の耳に飛び込んでくる。
 思わず勢いよくそちらへ顔を向けてしまう。音の主は驚いたらしく、少々後ずさった。

 しかし、正直、相手の顔を見た私の方が驚いたと思う。

 白いブラウスにこげ茶色のスカート。背中に届く長さの黒髪。大きな麦わら帽子。

 この女性は驚くほど、“彼女”にそっくりだった。

 しかし、彼女にしては様子が変だ。彼女だったら、真っ先に私の名を呼んでは嬉しそうに駆け寄ってくるはずなのに、この女性はまるで私を恐れるかのように距離を取り、不安げにこちらを見つめているだけ。私が今、身につけているのが軍服だということもあるのだろうが、彼女だったらそんなことは絶対に気にしない。
 別人か。胸の奥で広がった期待を粉々に粉砕された私が肩を落とした時、

「――あのう、」

 ふいに女性が口を開き、驚きのあまりに固まっていた私を見上げてくる。真っ白い手には、向日葵によく似た黄色の花が握られていた。……いや、恐らく向日葵なのだろう。が、私がよく目にする向日葵と比べて、それはとても小さかった。

「この近くに、公園はありますか?」

 心細げなか弱い声であった。しかし、とても心地よい声でもあった。
 そして、やはり聞いたことのある声だった。

「確か、……茶色の遊具のある公園なのですが」

 女性はちらちらと私の様子を窺いながら、躊躇いがちにそう付け足す。心なしか、きゅっと手に力が込もっていた。
 確かにこの近くにはこの女性の言う公園があったような気がする。まあ、それも私の記憶に間違いがなければ、或いは今も例の場所にあるのならばの話だ。今の私には自信を持って、十年も昔に住んでいた地を案内することはできなかった。
 しかし、一人で心細げな彼女を安心させてあげたくて、

「ええ、そうですね。確かにありました」

 と、私は自信ありげに頷いてみせた。
 そして、よかったと言わんばかりに安堵の表情を浮かべる女性に近付いて微笑みかける。

「私も丁度、その近くを通るところでした。一緒に行きましょうか?」

 そう訊ねると、女性は「ありがとうございます」と頭を下げた。

 素敵な方だ。で揺れる黄色の花がよく似合う、素敵な女性だと思った。顔を上げた時にふっと浮かべる笑顔には、守ってあげたくなるような愛らしさも感じる。これを世は一目惚れだと言うのだろうが、きっと、いや絶対にそうではないはずだ。その前に私は、この女性にそっくりな女性を好きになっているのだから。
 まず先に私が歩きはじめると、慌てて彼女も私にくっ付くようにして歩きはじめた。私に合わせるように少し急ぎ足で。少し歩調を緩めてみれば、彼女もそれに合わせて少しだけ足を動かすスピードを落としはじめる。隣ではなく、ずっと影一つ分ほど後ろを着いてきていた。
 ――それが、無性に切なかった。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.198 )
日時: 2012/03/30 21:21
名前: 夕凪旋◆PQzQy5g.72
参照: 続き。

「……とても、綺麗な花ですね」

 互いの沈黙に息苦しさを覚えはじめた頃、ふと思いついた話題にすがるように背後に声を掛けてみると、女性は「はい?」と疑問符の飛んだ声を返してきた。さては、聞いていなかったのだろうな。私は足を止めずに首をそちらへ向けて「それ」と顎で花を示し、再度「綺麗な花ですね」と言い、微笑んでみせた。すると、女性は嬉しそうに顔を綻ばせる。

「そうでしょう? 私も大好きな花なのです」

 何という花なのか教えてもらおうと思ったのだが、どう訊ねればよいのかわからないまま、結局、私は前を向きなおしながら「そうですか」とだけ言って口を閉じてしまった。彼女の大好きな花でいいじゃないか、それだけでいいじゃないか。そんな気がした。
 それから、何の話題も見つからず、ただ黙々と二人で歩きつづけた。
 十数分ほどひたすら歩きつづけていると、茶色の滑り台が見えはじめてきた。
 ――あそこだ。私は額の汗を手で拭ってから、公園のことを伝えるべく女性の方へと視線を滑らせてみた。
 すると、彼女は先程とは打って変わって何やら悲しそうで、口を真一文字に結んで俯いている。綺麗に切り揃えられた前髪が、彼女の目元に暗い影を作っていた。見方によっては、泣いているようにも見える。花の話題に触れた時に零れ落ちた笑顔を、知らぬ間に壊していたのではないかと自分の行動を確認してみるが、どこに落とし穴があったのかはわからなかった。また、何て声を掛けてあげればよいのかもわからなかった。

「……ます」
「え?」

 微かに聞こえてきた声に思わず足を止める。声は確かに震えていた。
 体を女性の方に向けた時、胸に先程まで彼女が持っていたあの花を押し付けられた。
 甘いような苦いような香りが鼻孔をくすぐる。花を手にしたまま再度「え?」と声を上げる私に向かって、女性は眩しすぎる笑顔を浮かべてみせた。頬には一本の涙の跡が引かれており、涙で濡れたまつ毛はきらきらと輝いていた。

「この花を差し上げます」

 受け取ってはいけない。頭にはそのような命令が出されたのだが、

「……受け取って、ください」

 彼女には、勝てなかった。
 受け取った花を見下ろしてみると、逆にその花は私を見上げてきた。それを見て、この花、実は生きているのではないだろうか、という錯覚に陥る。に好き勝手に揺らされているだけだというのに。そう思うと、今度は首を傾げてくる。実に可笑しな花だ。そして、それでいて――

「本当に、綺麗ですね」

 素直にそう思った。

「……向こうに公園があるのがわかりますか?」

 私は体を正面に向けなおして先程見つけた滑り台を人差し指で指し示しながら、「あそこです」と付け足してみる。女性は私の隣に立つと、目を細めて私の指差す方を見つめていたが、その一拍後にはどうやら見つけたらしく、「あっ」と小さく声を漏らしては無言で何度も頷いてきた。笑みが零れ落ちる。

「あ、あの公園です。どうも、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」

 こんなに綺麗なお花を頂いてしまって。そこまでは言葉にすることができなかった。だから、言葉の代わりに、花を大事に抱きかかえたまま頭を下げた。夏の物詩とも呼べる蝉の鳴き声が私たちの間に落ちてくる。一生懸命に羽を羽ばたかせて鳴く蝉。その声をひどく鬱陶しがっている人もいるのだが、メスを呼ぶために必死なオスを想像すると罵声を浴びせるのが可哀想に思わないのだろうか。

 ――そういえば、名前。顔を上げた時にはもう、そこに女性の姿はなかった。

 生温いが頬を、汗ばんだ前髪に触れていく。引き寄せられるように花に視線を落としてみると、茎には小さな紙が巻きつけられていた。先程までは巻かれていなかったような気がするが、そういえば茎などあまり気にせずに花ばかりを見ていたので、ひょっとしたら気付かなかっただけで最初からあったのではないかという気もしてくる。よく見てみると、その紙の端には小さな文字で『啓介さん』と。私はその紙を解いてみた。
 少々黄ばんだその紙には綺麗に整えられた文字で二言。『ありがとう』と『行ってらっしゃい』。上の方にはやはり、私の名が記されてあった。『啓介さん』。

 どこか遠くから聞こえてきた、子供たちの無邪気な笑い声が耳を通り抜けていく。

 待ち望んでいた夏を歓迎するようにして鳴く、蝉たちの声に混じって。

 私は再び紙を花に巻きなおして、頭上を見上げた。
 空は相変わらず真っ青で、優しく微笑んだままこちらを見下ろしている。雲はやたらゆっくりと空の中を泳ぎ回っており、大きな羽を広げて舞い踊る影はすうっとその中に姿を消す。自分の口元が緩んでいることに気が付くまで、そう時間は掛からなかった。

 私は静かに目を閉じて、暗闇の中に“彼女”の姿を思い浮かべてみた。

「……ほら、やっぱり」

 できるじゃないか。
 私には眩しすぎる笑顔を浮かべる、“彼女”の姿を思い浮かべることが。


「――ありがとう。行ってきます」


 再び目を開くと、目に入った手元の花が微笑んだように見えた。

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