雑談掲示板
- 第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
- 日時: 2014/02/27 20:57
- 名前: 風死(元風猫 ◆GaDW7qeIec
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247
第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介
始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!
題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(風猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^
では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。
意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波風を立てたりしないように!
~今迄の質問に対する答え~
・文字数は特に決まっていません。
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?
――――連絡欄――――
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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。
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Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.37 )
- 日時: 2011/12/25 16:34
- 名前: コーダ◆ZLWwICzw7g
「ふぅ……」
男は岩場の上で一言呟く。
もうこれ以上移動できる岩場がない。つまり、ここが1番沖にある岩場だった。
「相変わらず、この風景は何度見ても癒される」
男の瞳に映っていた物。それは綺麗なサンゴ礁である。
綺麗な海は底まで見えるくらいなので、肉眼でサンゴを見るのも容易である。
サンゴのある海はとても良い海と言われている。その理由として、サンゴはとてもデリケートな生き物。
少しでも水温や水質が変われば途端になくなってしまう。
「さて……」
男は白いコートのポケットからある試験紙を取りだす。
それを海水につけては、取り出し試験紙を見つめる。
「……問題ないか」
そう一言呟き、男はさらにいろいろな道具を取りだす。
「――やっぱり……あなただった……」
ふと、背後から聞き覚えのある声が響く。
男は首だけを振り向かせ、声の主を確認する。
「なんだ?まだ居たのか?」
声の正体は先程の白いワンピース姿の少女。
可愛らしい表情を浮かべながら男を見つめていた。
「この海を見てくれているのは……あなただった……」
少女の言葉に、男は首を戻し作業を続ける。
今度は水温を測る。
「俺はこの海からサンゴをなくさないようにしている。ただ、それだけだ」
そう、この男はこの海のサンゴを管理する人だったのだ。
先程の試験紙はペーハーを測る試験紙。
そして、水温を測ったのはサンゴにあった海かどうかのチェック。
次に、男は試験管を取りだし海水を入れる。
「優しい人……」
「当たり前のことをしているだけさ」
ぶっきらぼうに答える男。
少女へ背中を向け、ずっと作業を続ける――――――
「……ありがとう」
突然のお礼の言葉。男は手を止めるが少女の方へ顔は向かせなかった。
「どうした、いきなり」
「ううん……嬉しくて……」
なぜお礼を言われているのか疑問に思う男。
だが、悪い気はしなかった。
「……君、名前は?」
男は何を思ったのか少女の名前を尋ねる。
そして、同時に止まっていた作業を再び続ける。
「私は……コーラル……」
コーラル。少女はそう名乗る。
男はしばらく無言になりながら、頭の中で考える。
「これからも……優しく海を見てね……」
少女の言葉を聞いた瞬間、男は何かに取りつかれたように体を振り向かせる。
――――――だが、そこにはもう少女の姿はなかった。
変わりに、少女が立っていたと思われる場所にピンク色のアクセサリーが落ちていた。
男は、そのアクセサリーを拾う。
「このアクセサリー……サンゴで出来ているのか……」
とても珍しいサンゴのアクセサリー。男はそれをコートのポケットにしまう。
「――ん?」
ふと、男は海を見つめ頭の中に疑問符を浮かべる。
「こんな所にサンゴは生えていたか……?」
男は長年海を見続けているので、どこにどんなサンゴがあるのかもだいたい把握している。
だが、今日初めてみるサンゴが自分の瞳に映る。
――――――ピンクと赤色が混ざったようなサンゴ。
「(コーラル……つまり、サンゴか……)」
男はどこか不思議な気持ちになり、薄く笑う。
そして、何事もなかったかのように作業を再開させる――――――
~完~
一言:はい、少し長くなってしまいました。ですが、けっこう良い作品になったと個人的には思います。
こんな雰囲気も好きです。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.38 )
- 日時: 2011/12/25 18:49
- 名前: とろわ◆DEbEYLffgo
【海なんてくそくらえ!】
「えー、冬なのに海ぃー?」
私は唇を尖らせて露骨に抗議したが、両親は全く聞く耳を持たず。
旅行パンフを見ながらキャッキャウフフと話に花を咲かせていた。くそう、この万年新婚バカップルめ。ここは離婚大国ニッポンポンだというのに。
――私は高校二年生。……んあ、名前じゃないよ。職業と年齢なんだからねふふふ。一応花(?)のJKなのよ。
そんな私は来年受験生だから、呑気に何処かへ出かける機会は皆無となる。
だから、旅行でも行こうかという事になったのではあるが……。
「なーんで海なんかなー」
夏ならまだしも、何故この吹雪くシーズンに海にGo toせねばならんのだ。
折角の冬なんだからスキーとかしたいのに。絶好調真冬の恋したいのに。彼氏いないけど。
大体、私魚介類食べられないんですケド。あの臭みとは一生かけても仲良くなれないと思う。
と、ぶつくさ呟きながら(ただし脳内で)私は旅行準備をしていたのであった。
◆
「つーいたー!」
たーまやーと似たような感じで叫び散らす私。
うげ、腐れ弟が養豚場の豚を見るような目で私をガン見してきた。最近の小学生って怖っ。
……まあ、そんな事はいいのだよ。ははははは。
「海だー。……やばいコメントが思いつかない特に感動も無い」
母なる海を目の前にビビってんのかあアン? ……いや、そんな事は無いはずだ。
でも、本当に何か特筆すべき事とかは無い。あえて言うとすれば糞寒いよ馬鹿!!
「うべー、早く帰りたいぎぎぎぎぎぎ」
だが残念、二泊三日なのだよ! 言ってて自分がめげそうだよ!
「くそー、太陽に向かって吠えてやるー!!」
なんかムシャクシャしたので叫び散らしながらももあげをしてみる。
……弟に舌打ちされた。もうなんかほんとにこんな姉ですみません。
「うおー! ニャン美ー!!」
段々何もかもがどうでもよくなりはじめたので海に向かって全力疾「ぐばぼへっっ」
絶妙なタイミングで波が襲いかかってきた! 私はどうする事も出来なかった!
「やばい……おにゅーの服塩水まみれん……」
すまないユニクロ。私にお前を守りきる事は出来なかったッ……!!
んま、洗えばいいんだけどさ。服と友情を確かめ合うなどしたくないのだよ。人間だからねフホハホホ。この間弟に「なんか姉貴ってプレーリードッグと似てる」とか言われたけどね! なんてまたマイナーなチョイスなのだ弟よ。
「もう濡れたものはしょうがない、いっその事水浴びしてしさぶっっ」
指先がクレイジークレイジーよ! クレイジーの意味忘れたけど。あれ、タイアドだっけ? まぁいいや。英語の成績2だしねフヘヘヘ。
そうして私は、小一時間マイナス三十分ほど海と戯れておりましたとさん。
私に残ったものは、愛と勇気とずぶぬれのユニクロのジーンズと、そうして一番は虚無感なのであった。
……残りの二日間? 勿論風邪ひいたからスリープしてたのさ! アメリカンなコメディアンの私にはピッタリな結末だよねHAHAHA。
「っべ、宿題大漁節じゃんかい……」
海なんてくそくらえ! 一番は自分にくそくらえ!!
【漢。……じゃねえや完。】
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.39 )
- 日時: 2011/12/25 20:21
- 名前: 瑚雲◆6leuycUnLw
【貴方と出会った海を。】
聞こえるのは、波の音と鳥の声。
蒼い地平線の向こうには、瞬く光。
そんな海を眺めながら呆然と座っていたのは、1人の女性だった。
茶色の髪が風に遊ばれている。そんな事にさえ気付かない。
女性は、震える体をぐっと抱きしめた。
『好きだよ…、愛夏』
途端に、彼の声が聞こえた。
でもそれは幻聴で、決して2度と聞こえる事のないものだった。
愛夏、それは彼女の名前で、“まなか”と読む。
茶髪の女性は、そんな名前を嫌っていた。
『ぁ…あたしは……別、に……』
嫌いだった。
素直じゃない自分。ちゃんと言えない自分。
そのせいで、最後まで彼の気持ちに応えられなかった。
好きだったのに。
好きで好きで…夜も眠れないくらい好きで。
意地っ張りな自分が嫌いだった。
“好き”の2文字も言えない自分が、世界で1番憎かった。
「バカ……あたしのバカ……」
愛夏は呟く。
バカ、バカ…バカ、と。
伝えたいのにもういない。彼はもう、何処を探してもいない。
世界中探し回ったって、彼の優しい笑顔はもう何処にもない。
彼は、この海に呑み込まれた。
蒼くて澄んだこの海の底へ…沈んだ。
海が彼を連れていった。自分への罰なんだと今更気付いた。
「海なんて…嫌いよ……っ」
彼と出会ったこの場所を嫌った。
愛夏はもう1度自分の体を抱き締める。
熱い砂の上にいたって、乾いた風を受けたって。
思い出すのは彼の笑顔だけ。思い出すのは彼と築いた思い出だけ。
自分のくだらないプライドのせいで、失ってしまったモノ。
彼が自分の名前を呼ぶ事はもうない。
そんな事、愛夏本人も分かっていた。
『愛夏って…良い名前だね』
『どうして……?』
『“夏を愛する”って……素敵だよ』
今の自分は到底自分の名前を愛せなかった。
夏に、この海で、彼を失ったから。
途端…彼女の視界は霞んだ。
何もできない無力な自分を噛み締めて、彼女は震えた。
流れたのは…そう。
海と同じ味で、海と同じ色をした雫。
会いたい、会いたい。
彼に…伝えたい。
「好きだよ……ホントはね…ずっとずっと……好きだったの…」
もういないのは分かってる。
もう伝わらないのは、分かってる。
「え…っ」
ふと…彼女の背中が熱を帯びた。
彼が後ろから抱き締めていた…あの温度と同じ。
愛夏は咄嗟に振り向く。
「…そ、っか……」
当たり前だよね。
彼の姿は何処にもなかった。
然し…それでも熱がそこにあった。
彼が後ろから抱き締めてくれたあの感覚と…同じだった。
それは太陽の熱じゃない。
愛夏は断言する。あり得なくても、信じてもらえなかったとしても。
錯覚なのかは分からない。
然し愛夏には聞こえた。
『僕も好きだよ…愛夏』
そう言った彼の声が。
気が付けば、愛夏の涙は乾いていた。
それどころか…優しく微笑んだ。
表情が綻んだのは、きっと海のおかげなんだと。
愛夏はそう思う。
そしてもう1度…海を眺めた。
蒼い地平線。瞬く光と鳥の声。
波の音が彼女の耳を、何度も何度も通る。
澄んだ水の奥に、沢山の色が見える。
貴方と私が愛した夏。
彼女は誓う。
この海を忘れないと。
彼と出会い、彼と愛し合ったこの場所を。
忘れない――――――、そしてもう1度貴方に恋をする。
愛夏はゆっくりと立ち上がる。
潮の匂いが彼女の鼻をくすぐった。
海の匂いが、彼女の心をくすぐった。
蒼い海、白い光。
紅い太陽と…黄色い砂。
全ての色を覚えておきたい。
彼女は裸足で、熱い砂の上を歩く。
1歩1歩…ゆっくりと、思い出を踏み締めて。
彼女が振り返る事はなかった。
彼女が涙を流す事もなかった。
それはきっと…この海を愛していたから。
この海と、それと。
優しい彼を――――――、愛していたから。
*end*
な、なんか…前作と同じ感じになってしまいました。
それと長い。何故こうなった。
読むのが辛いよ…うん。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.40 )
- 日時: 2011/12/25 21:28
- 名前: 陸上バカ
タイトル「海辺の記憶」
拝啓 A様
残暑が厳しい頃となりました。A様はいかがお過ごしでしょうか。
こうしてお手紙を差し上げたのは、もうお分かりでしょう、あの海の日のことです。あなたは思い出したくないかも知れませんが、どうか最後までお付き合いください。
まず、初めに妹のBのことを書いておきます。
Bは、お世辞にもいい子とは言えませんでした。小学生のくせにわがままで意地悪で、性格が悪い上に、外見も最悪でした。亡くなった人の、しかも唯一の肉親の悪口を言うのは気が引けますが、褒めるところが見当たらないのです。
今思えば、Bが妹ではなく他人だったら、わたしは近寄りもしなかったのかもしれません。わたしの彼氏というだけで、Bの面倒を見てくれたあなたは、素晴らしい人間です。
あの日、海へ行こうと言い出したのはBでした。
そのとき、わたしは何も考えていませんでした。鬱陶しいな、とは思いましが、反対をしませんでした。居候させてもらっていた親戚の人が、わたしたちにあまり家にいてほしくない、と言ったからです。
だけどBと二人で出かけるのは気が引けたので、わたしはあなたを誘いました。
そして三人で海へ出かけました。その日は天気がいいわりに人が少なく、わたしたちは自由に海辺で遊びました。
Bは一人、海の中で泳いでおり、わたしとあなたは海辺で初めてキスをしました。あのときのことは今でも忘れられません。とても幸福でした。
そのときだったと思います。Bの悲鳴が聞えたのは。
わたしは驚いて、唇を放し、Bのほうを見ました。「おねえちゃん」と叫びながら、海の中でもがいています。
わたしよりも早く、あなたが立ち上がりました。わたしも助けなきゃ、とわかっていたのです。
だけどなぜか、わたしはあなたの手を掴み、引き止めてしまっていました。なぜかではありません。このまま助けなければ、Bはわたしの前からいなくなってくれるのではないか、と思ったからです。
Bの性格が悪かったのは、本当はBのせいではありません。いえ、性格が悪いという言い方はおかしかったですね。Bは障害を持っていたのです。
周囲は障害になんて理解を示してくれないから、Bを守れるのはわたしだけだったのです。
それがわたしには苦痛だった。理解できない小さな妹、Bが怪獣のように思えてしまっていました。もう、楽になりたかったのです。
しだいに「おねえちゃん」とわたしを呼ぶBの声が小さくなり、海上に浮かんでいた顔は沈み、小さな手も見えなくなり、Bは完全に海の泡と消えました。
あなたとわたしは微動だにせず、それを見ていました。
Bの死は、完全な事故として処理されました。
ええ、あれは事故です。
しかし、Bを殺したのはわたしです。
それから一週間ほどは、清々して毎日を送っていました。実際、Bのいない生活はとても楽でした。
しかし一ヶ月経った頃からでしょうか。毎夜、海の音が聞こえるようになったのです。
ざざーん、ざざーん、と波の音がして、「おねえちゃん」とあの日のBの声が聞こえてきます。
わたしは不眠症になりました。罪悪感にさいなまれ、食事を取ることもままならなくなりました。
心のどこかでは気付いていたのです。Bを殺したのはわたしだ、と。
そしてわたしはBだけでなく、あなたの心まで殺してしまいました。
あの日わたしは、あなたを共犯に仕立てあげてしまった。
お願いですから、そのことを気に病まないでください。自分のことを殺人者だと思うのは止してください。あの日のことは、すべてわたしが悪いのです。
無責任だと思いますが、わたしはもう、自分の犯した罪に耐えることができません。
わたしは今から、あの日三人で行った海へ行ってこようと思います。そしてもう戻ってくるつもりはありません。
最後にこうしてあなたに手紙を書くことができてよかった。
短い間でしたが、わたしを愛してくれてありがとうございました。
かしこ
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.41 )
- 日時: 2011/12/26 10:30
- 名前: 旬◆RL8K06i5bw
タイトル「日本海のクリスマス」
冬の日本海の空は、どんよりとした厚い雲に覆われている。
私はそんな景色を見るのが好きだ。どこが好きか聞かれて答えられるわけじゃないけど、私は感覚的にこの景色を好きだと思う。
それは隣にいる世良も同じこと。感覚的に、この景色が好きなのだ。
「よかった……ホワイトクリスマスになったね、ユリ。海に雪が降っている景色は、僕が一番好きな景色なんだ」
「私も、この景色が一番好き。でも……」
「でも?」
……でも、今の世良と海を見るのは楽しくないよ。本当は、世良と一緒にいることが辛い。一番好きな景色を一番好きだった人と見るなんて、辛すぎる。
その理由となった出来事は先週のこと。私が世良に想いを伝え、砕けたという最近の過去があったから。
「いや、なんでもない」
「そう?」
「……うん」
世良には彼女がいた。それも、よりにもよってユリが妹のように可愛がっている、世良より一つ年下の真希だった。その事実が、今は何より重い。
「……世良、本当は真希と来たかったんじゃないの?」
誘ってきたのは世良のほうだったけど、それでも納得がいかない。私は彼女でもなんでもないのに、どうして彼女の真希を誘わないの?
冷たく聞くけれど、世良はいつものように優しい答えをくれた。
「いいの。ユリと来たかったから」
「嘘。本当は私より真希のほうがいいくせに。……好きなくせに」
泣きそう……。
涙を堪えているのが分からないよう、私は世良に背を向けた。
「どうしたの? ユリ」
「……真希が、世良の彼女なんでしょ? 私なんかより真希と来なよ。どうして私を誘ったりしたの?」
「…………」
後ろを向いたままでも分かる。世良は言葉を選んでいるんだ。
私なんかにかける言葉なんかきっと、探しても見つからないよ……?
「……ごめん。でも、この景色をユリと見たかった」
世良の言葉を聞いた瞬間、私の身体がになにかが回された。涙でよく見えないけど、ぼんやりとわかる。
……世良の、腕?
「真希ちゃん、どうしても別れてくれなかったんだ。だから多分、これからも真希ちゃんとの関係はしばらく続くと思う。でもあの日、ユリが僕に好きって言ってくれたとき、本当は僕でよかったらって言いたかった。だけど……」
「真希とまだ付き合ってたから、って? 世良、それ言い訳のつもり?」
耳元から聞こえる世良の声。吐き出される暖かい言葉が、息が、耳にかかって背筋が伸びるような感覚がする。
「言い訳、か……。うん、そうかもしれない。だけどユリ、僕はユリが好きなんだ。それだけは言い訳じゃない」
……分かってる。好きだなんて言葉を言い訳に使う人なんて、どこにもいないもん。
世良がいつになく真剣だって、声音がそう教えてくれてるんだもん。
「……その言葉、信じてもいいの?」
身体に回された腕を掴み、世良を振り返る。私を真っ直ぐに見つめた瞳の誠実さといえば、後にも先にも見ることがなかった。
「うん、僕を信じて。真希ちゃんに納得してもらえるまで時間はかかると思うけど、必ずユリの元に来てみせるから」
「……ありがとう世良」
クルリと腕の中で回り、私も世良を抱しめた。
「ねえ、また来ない? ……海」
「うん、いいよ。でも今度は夏に来たいな。やっぱり冬は寒い……ウブブッ」
奇声を発しながら震える世良が、なんとも可愛い。
「じゃー、夏ね! 夏にまた来よう!」
自然に手を取り合って、二人は砂浜を歩き出した。
そのぎゅっと強く結ばれた手は、二人の未来を示しているかのように解けることはなかった。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.42 )
- 日時: 2011/12/26 14:28
- 名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10920
このビキニは、“彼”の好みに合わせて急いでアウトレット・モールに買いに行ったモノ。 体を隠す面積が少ない、超色っぽい黄色の三角ビキニ姿で、砂浜の波打ち際に立ち、「う、 うー……ん」と大きく伸びをしてみる。
小さな波が、あたしをさらおうと足首をつかむ。
こんなところにあたしを一人っきりにしてると、ホントに誰かにさらわれちゃうぞ…………なんてね、 いひっ。 ……ちょこっと言ーすぎた。
タイトル『素直になるから 抱きしめて』
あれは、ちょうど今から一週間前のこと……だっけ。
「……ねぇ、ちょっと香……
お願いがあるんだけど…………」
お風呂上がりのあたしを待ち伏せていたかのように、バスルームのそとの廊下に立っているお姉ちゃん。 彼女の顔色を見ると、どうやら深刻な悩みごとがあるようだ。
美人で頭のいいお姉ちゃんが、外見も性格も全然似ていないこんな妹のあたしに相談なんてめずらしい。 あたしは首に掛けたバスタオルでショートカットの髪をゴシゴシと拭きながら彼女の話を聞いた。
話によると、お姉ちゃんは一週間前に付き合い始めたばかりで、まだ一度もデートをしたことがない彼氏に、海のそばのホテルで“お泊まりつきデート”に誘われたらしい。
「しっかりしてよ! お姉ちゃん!
初めてのデートでいきなり“お泊まり”だなんて! 何考えてんのよっ!!」
まだ話をしている途中なのに、あたしは思わず口をはさんだ。
お姉ちゃんは真面目すぎて世間知らず(オトコしらず?)なのか、なぜかココだけはしっかりしていない。
「わかってる。 わたしだって……断ったんだよ…………
でも……彼が……強引すぎて…………」
あきれてものが言えない…………
「自分でなんとかしたら?」
冷たい言葉を吐き捨てて、あたしは自分の部屋へ向かった。
――――お姉ちゃんは、あんなに“ひかえめ”なのに小さい頃から男の子にモテている。 ファッション雑誌を穴が開いちゃうくらい見て“モテる研究”をしても全然モテないあたしと違って、今まで何人の男の子に告白されたことか分からないくらい……。 ……で、告白されたら、あんな性格だし、うまくことわることもできなくて、結局付き合っては「なんか違う」と言って、すぐに別れちゃう……のくり返し。
あたしなんて 生まれてからまだ一度もデートなんてしたことないのに…………
やっぱりおとなしくって可愛い女の子は得なのかもしれない。
さっき、あたしが吐いた言葉のなかには 半分以上“ひがみ”と“八つ当たり”がこめられていた。
「お姉ちゃん…… ごめん…………」
自分の部屋へ向かう足を止めて、ふり向いてあたしはお姉ちゃんの悩みを聞いた。
“やっぱり旅行は断りたい” の話。
しかも聞くとコレもますますあきれる話だが、彼との交際のことも知らないうちに勝手に決められていたことのようで、そのことも白紙に戻したい、ということだった。
(ホントまったく どーゆー事じゃ……な話。)
――――それをどうして妹のあたしに頼むこと、なのかって?
お姉ちゃんの話によると、相手の人は歳下の彼氏で……あたしと同じ学校に通っていて、しかも同学年らしい。
(同じ学校で同学年なら、名前聞けば知ってるひとだな…………)
花園――――範人(はなぞの はんと)
――――あたしと同じクラス……しかも今、あたしのとなりの席の男の子だった。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.43 )
- 日時: 2011/12/26 14:29
- 名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10920
木漏日高校 一年B組。 ――――ここはあたしの通う学校、あたしのクラス。
今は授業中。 あたしのとなりで先生の話に全く耳をかたむけずに 机の下で顔をニヤニヤさせて携帯電話をいじる…………花園範人がいる。
「範・人・くーん……
もしかして……愛する彼女がいるくせに、他の女とメールしてんの かなっ?」
あたしは範人くんの手からスッと携帯電話を取り上げ、ディスプレイ画面をのぞき、送信先を確認した。
これで浮気の証拠を発見したら…………お姉ちゃんとの交際を白紙に戻せる…………
宛先:梅原 瞳
題名:海デートのことで。
本文:宿泊先のホテルの予約、なんとか取れましたー。
今のところ天気もよくなるみたいデス。
ではでは、予定通り約束の時間に駅前で待ってるよ。
瞳ちゃんの可愛い水着姿、めっちゃ楽しみにしてるから!
範人より。
あたしはメッセージを見て、携帯電話を彼にサッと返した。
(なーにが“水着姿、楽しみにしてる”だよ……。 このバカップル…………)
……本当は 返す前に真っ二つにバキ折ってやりたい気持ちだった。
花園範人……こいつはクラスで一番……いや、学年一といってもいいくらいの女好き。 もうすでにクラスの半分以上の女の子にナンパをしているらしく、大胆にもその中の何人かに“手をつけた”というウワサで有名な男だ。 ……まぁ、ウワサだからね……一応は…………
こんなにナンパなやつなハズなのに、あたしはまだ彼に声をかけられたことはない。
まぁ……ヘア・スタイルがショートカットだし、振る舞いが男っぽいし、話し方も少々キツいからなのかもしれない。
……とくに こいつに対してだけ、だけどね。
(はぁ……)
あたし、胸は結構あるほうなのにな……
(なんでだろ……)
自分で自分の胸を両手でつかんでうなづいていると、
「何やってんだよ 梅原……」
となりの席で眉間にシワをよせている範人くんがいる。
(げっ! 見られた!!)
あたしは「何にもしてないよ!」と返し、机の上に手を置き、ピアノを弾くマネをした。
「おねーちゃん……」
家に帰ったあたしは、お姉ちゃんの部屋で……告げた。
「やっぱりあいつ……最っ低!
お姉ちゃんの気持ちも知らないで勝手にホテルの予約なんか取っちゃってるし、
今日もね、エロい顔してお姉ちゃんの水着のコトばっか話してんだよ。
あたしも“ずっと大っ嫌いだった”んだ、あいつのこと。」
マシンガンを放つように話すあたしの顔を見て、口に手をあてながら聞いているお姉ちゃん。
あたしの“範人を想う、本当の気持ち”をさとられる前にこっちから攻めこんだ。
「でね、あたしもね、あんな女ったらし気にいらないからちょこっと懲らしめてやろうかな、と思ってさ……
…………お姉ちゃんのかわりに、“あたし”が 花園範人と 海……いっちゃう!!」
「おい……何ニヤけてんだ 梅原……」
――――あたしは今、“ずっと前から好きだった”花園範人……くんと一緒に海にいる。
生まれて初めてのデートを大好きなひとと経験できるなんて……ニヤけるに決まってんでしょ?
「えー! イチゴー?」
あたしはわざとほっぺたをふくらませて 範人くんが手に持っているかき氷を受け取った。
「……なんだよ。 さっき“何でもいい”って言ってたじゃんかよ…………」
困っている範人くんを横目で見ながらかき氷を一口、口に入れた。
「うふふっ。 冷たくって おいし。 ありがとね、範人っ。」
あたしの水着姿を見て、おもいっきり顔を赤らめている範人くん。
こんなモンじゃない。
今夜 もっと赤くしてやる……範人め…………
《おわり》
お姉ちゃんになんか…………まけない。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.44 )
- 日時: 2011/12/27 01:02
- 名前: 僕◆Tk6b/XHvA2
詳細ヘッダー
『海』
夜明け。
朝日の光をキラキラと反射してゆっくりとうねる海の前に僕は立っていた。波がゆっくりと音を立てながら砂浜にぶつかり、ゆっくりと海の中に戻っていく。
僕は潮水で湿った砂を踏みながら海の中に入っていく。刺すような冷たさが僕の太もも襲い、それが段々と上に昇ってくる。ジーパンが水を吸って重くなっていくのを感じながら、それでも僕は海の中に入っていく。ついに頭まで海の中まで沈んだ。潮水が目を刺激して目を瞑りたくなるけど、それでも目を開いてぼんやりとした自分の足下を見つめる。これが最期に見る景色なのだから、しっかりと見ておきたいと思った。
ずっと好きだった人に振られた。いや、振られたというのは少し違うか。ずっと鬱陶しかった。もう話し掛けないでくれ、とハッキリと言われてしまった。友人はもっといい女見つかるさ、と励ましてくれたけど僕にはそうは思えない。彼女は僕にとってのすべて、と言っても過言じゃなかった。
ああ……。こういう所が重くて鬱陶しいのか。僕は唇を歪めて苦笑する。その隙間から潮水が入り込んできて舌がピリピリするけど我慢。
息が苦しくなってきた。肺が酸素を求めて大暴れし、心臓が早く海から出ろと言わんばかりに大暴れしている。息を吸うために頭を海に出そうとする体を押さえ込め、僕はもっと深いところに沈んでいく。
苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。
でも生きている方がもっと苦しい。
ふとした瞬間に思い出す、彼女との会話。何をしていても頭の隅をちらつく彼女の声。関係が完全に断絶した訳ではないから手が届かない訳じゃない、だけど拒絶される苦しみ。
好きだったんだ。本当に。
ある人は恋に恋しているだけだ、と言っていた。だったらさ、何で僕はこんなにも彼女に依存してるんだよ何で離れられないんだよ何でこんなに苦しいんだよ。恋に恋なんかするわけねえだろうが。だって僕は本当に好きだったんだよ。相手にはそれが気持ち悪かったんだろう、好きだとか言う言葉が鬱陶しかったんだろう。ごめんなさい。
もう二度とそんな事は言わないから、友達でもいいから、たまにでいいから、少しでも良いから、昔みたいに僕と話して下さい。お願いします。辛いんです苦しいんです哀しいんです。思い出すと涙が出てきて思い返すと胸がギリギリと締め付けられて気が付くと君のことを考えてて。
毎日君と居られることが本当に楽しかった。忘れられない。お願いだから、僕と前みたいに話して下さい。
好きになれなんて身勝手なことは言わないし、振り返ってくれなんて身の程知らずな事は言わない。だけど、お願いします。
前みたいに、話して下さい。
次第に頭が朦朧としてきて息苦しさが引いてきた。体がフワフワと浮かんでいる感覚。
結局僕は、最初から最後まで独りぼっち。
世界が死んだ。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.45 )
- 日時: 2011/12/28 14:41
- 名前: トレモロ
『馬鹿と照れ屋と寒い海と』いちー
「……何故だ。何故こんな事に……」
俺こと長良 久幸(ながら ひさゆき)は、今海に来ていた。
繰り返そう、【海】だ。
海と言えば常人はどんな発想をするだろうか?
真っ青でどこまでも続く水面?
輝かしい太陽と、白い砂浜のコントラァストゥー?
あらぶる男共の海パンと、いけてるコギャル達のビキニ姿?
まあなんだっていい。
海にロマンを求めたり、出会いを求めたり。
また、出店をだして売り上げを求めたりする者も要るのかもしれない。
だが。
だが、だっ!
【海】と言ったら、人々は本来次に何を想像するだろうか?
先程言った事柄。それよりもまず、何か大事な事が来ないだろうか?
そう、その大事な事というのはまさしく。
≪海というのは夏に来るもんだ≫。
という事である。
これに異論がある人類は存在せんと思う訳だ。
どんな欲望……もとい希望を海に求めていたとしても、それは矢張り【夏】という前提が最初に来ると思う。
照りつける太陽。痛いくらいの紫外線。最近気になる地球温暖化!
とにかくそういうイメージだ。
そりゃあ、漁師や何か、仕事なんかで海に携わる人間はそんな事は無いかもしれない。
また、日常茶飯事海と顔を突き合わせる様な立場の人間の考えも違うかもしれない。
だが、少なくとも遊びや息抜き目的の人間は、矢張り『海に行く!』となったら、その季節は夏だと思う。
これは普通に考えて、自然の思考の元の帰結の筈だ。
そんなに間違っていないだろう?
だが。
だが、だっ!
「どうした久幸! 浮かない顔してぇ!」
隣にいる女が無駄に元気に叫びながら、俺の肩をばしばし叩く。
俺は何気に痛い肩への攻撃に顔をしかめながら、睨みつけるようにしてその不快な存在へと顔を向けた。
スクール水着だ。
そう、完璧なスク水だ。藍の鮮やかな色に、胸元には四角く白いスペースがあり、そこに≪ながら≫と平仮名で書いてあるのがミョーに子供っぽい。
いや、まあ、スク水が子供っぽくなかったら、何だという話なのだが。とにかくガキくさいのだ。
勿論ガキがガキくさい恰好していたら、俺だって何とも思わない。
スクール水着を小学生が着ていたら、『にへらっ』とほほ笑む事は有っても、『へっ、チチくせぇ―ガキが。帰ってしょんべんしてろ』と思う訳がない。いや、例が極端すぎたか?
まあ、とりあえず、相応の年齢が相応の格好をしていてもなんとも思わない訳だ。小学生がスク水着てたらハッピー! になっても、ダムシット!! とはならん訳だ。
だが、ソレを着ている隣の女はどう見てもスク水が似合って無かった。
まず年齢が俺より上という時点で駄目だ。
俺はもうすでに十八歳である。
十八といえば、高三か大学一年といった所か? ちなみに俺は高三だ。
しかしてそれ以上の歳を喰っている奴がスクール水着である。
そして次に、スタイルが駄目だ。
スラリとした長身に、腰のあたりまで届きそうな綺麗な黒髪を二つに纏めたツインテール。
豊満な胸元に、出る所は出て、締まる所は締まっているモデル体形。
おまけに顔のつくりは上々で、どことなく活発そうな雰囲気の表情が、動のオーラとして健康的な印象を与える。
少女が大人の女性へのクラスチェンジする手前の様な、艶っぽい瑞々しい魅力に溢れているとでもいおうか。
つまり、着飾って街を歩けば、ナンパな男共が言いよってくる感じの美人さんという事だ。
なのに、スクール水着。おまけにサイズがぴっちぴち。
もはやこれはギャグだ。喜劇だ。
俺に笑えと言っているのだろうか? いや、多分本人は大まじめだろうから、笑った瞬間俺は問答無用で殴り飛ばされるだろう。中々に理不尽である。
まあいい。
海に来て水着を着る、そしてその水着がどーみても十八歳以上が着る様なものでなく、幼稚すぎる雰囲気がまた倒錯的な魅力を出していたとしてもそこには一切触れないでおこう。
いや、もう触れてしまったがそれもいい。どうでもいい。
今俺が置かれている現状に比べたら至極どうでもいい。
そう、俺は今。これまでの人生でも類を見ない、意味不明な事になっていたのだ。
「浮かない顔して海に立つ何ぞ笑止千万!! 海の神様に怒られるわよ! アマテラスとか!! アレ? アマテラスは太陽神だっけ? どっちだっけ!!」
「……どっちでもいいわ、そんなん」
「良くないわよ!! 日本神話ファンに怒られるでしょうが!! あ、じゃあここはギリシャ神話からポセイドンちゃんにしましょう! それで丸く収まるわ!! 流石ジーザスクライスト!!」
ジーザスクライストは多分関係ない。
という突っ込みも口から出てこず、俺は何もかもをあきらめたかのような表情で。水着ではなく、至って普通の服装で砂浜に立っていた。
目の前にはいまどきあまり見ない、澄み切った蒼の海面が見える。海水汚染とか何とかが騒がれている時期に、ここまで綺麗な海も珍しいのかもしれない。
確かに、来るべき時に来ればそれなりにいい景色だろうし、泳ぎたくもなる。
そう来るべき時に来れば……。
「ではでは、ミスターキリストの奇跡と共に、早速海水ダイブをエンジョイしましょう!! レッツらご―、我らが母なるうみへぇ~♪」
「歌うな。ウザったいなお前は。何でそんな暑苦しいんだ? 某テニスプレイヤーさんかお前は」
「世間はさぁ~、つめてえよなァ!。皆俺の想いを、感じてくれねぇんだっ!」
「俺の心が今最もつめてぇよ馬鹿野郎」
いや、正確には心だけじゃない。体も冷たい。
いくら服を着ているとしても、海のそばに来ていればそりゃ体も冷たくなる。
まあ、当然のことだ。今は夏ではないのだから。
そう、夏ではないのだ。いままで言って来た通り、海に来る季節と言えば夏なのに、今は夏ではないのだ。
ならばどの季節かって?
もう察しの良い人間……いや、どんな鈍感阿呆鳥でも分かっているだろう。
そう、今現在の季節。
それは――
「心が冷たい!? それは心不全の可能性があるわね!! 大変大変至極大変。でもそんな危険な状態も気合と熱さで乗り切ろう!」
「どんな馬鹿でもこんな寒い日に海にくりゃあ、心臓の一つや二つは悪くなるわボケェい!」
――冬だ。
しかも今年最低気温の冬だ。
なにこれ拷問?
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.48 )
- 日時: 2011/12/31 17:12
- 名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6
『シークレット オブ オーシャン』
今日はオフだというのに、やっぱり今日も、腕時計型通信機から、エマージェンシーコールが鳴り響いた。
「全く、ゆっくり休む暇もないってか」
思わず毒ついてしまうが、仕方ない。
浦和までツーリングを楽しもうと思っていたが、予定はキャンセルだ。
ヘルメットを被りなおすと、俺はバイクのエンジンを噴かした。
『ナオト、遅いわよ!!』
ヘルメットの内側から、パートナーのユキの甲高い声が響いた。
ちなみにヘルメットにも局からの通信ができるようになっている。
「仕方ないだろ。出かけてたんだからな。で、近いところは?」
『E-32地区。そこからもう、間もなくだから、開いたハッチから入って』
「了解」
と、言っている間に目の前の道路がせり上がり、誘導口が顔を出していた。
俺はそこに愛用のバイクを滑らせると、そのまま飛ばしていった。
後ろの方で、どすんとせり上がった通路が閉じた振動を感じた。
もう少し進んでいけば。
ふわっと軽くなった。
下は奈落……ではなく、バイクごと収納するコックピットが現われる。
レーザーワイヤーが俺のバイクを捕捉。そのままゆっくりと収納された。
「ナオト、敵は海からよ」
隣には既にユキがスタンバイしている。
「海から? 面倒なことしてくれるな。まだシースタイル完成してないんだろ?」
「明後日に出来るって」
思わずため息が零れてしまう。
まあいい、閉じた天井から飛び出してきたレバーを、おもむろに握って前に滑らす。
「ダイサンダー、発信します!!」
ごおおおという轟音と共にコクピットに、凄まじい振動が伝わる。
けれど、これも慣れたもの。
かれこれ1年ほど耐えれば、こんなものどうってことなくなっていく。
「ユキ、敵のタイプは?」
「マーメイド型、ちょっと厄介よね」
「マジかよ」
マーメイド型は、外見が人魚の形をしているエイリアンのことだ。
しかもその口から発する歌というか、奇声は、人体に影響する。影響が及ぶ前に何とかしなくてはこっちがやられるって寸法だ。
「で、ソングシールドは出来たのか?」
「今日導入予定だったんだけど、その前にエマージェンシー」
「最悪だな……」
そんなことを話している内に、目の前が明るくなってきた。どうやら、出口のようだ。
ずばーん!
と、海から勢い良く飛び出した、俺たちの乗る巨大ロボット。
案の定、マーメイド型のエイリアンが、漁船を狙っている。
「そうはさせるかっ!! ダイサンダー、ウェーブスラッシュ!!」
どうやら、今日も戦わなくてはならないみたいだ。
この最低な状況下の下で。
「まあ、それも悪くはない。そうだろ、ダイサンダー?」
巨大ロボットの瞳が、青く光った。
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