雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 死(元猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第十回SS大会 お題「罪」 投稿期間4/28~5/28 ( No.469 )
日時: 2013/05/21 22:56
名前: Lithics◆19eH5K.uE6

 わざと足音を鳴らし、客間の前を離れる。
 正直、僕も疲れている。身体が重く、心はもっと重い気がした。狭い教会だが、出来るだけ離れた場所に座って眠ろうとして……その途中、演壇の前に神父が佇んでいるのを見つけた。

「眠れませんか。いや……そうではなさそうですね」

 神父はこちらを振り向き、やはり穏やかな声で言う。僕はただ頷いて、その隣へ歩いていって肩を並べた。何か話がしたかった。ステンドグラスを見上げる神父の目は全てを見透かすようではあるけれど、今は不思議とその感覚が不快ではない。
 しかし、ふと彼の口から囁かれた言葉は、まるで本当に心を読んでいるようなものだった。
 
「そんなに己を縛っていたのでは、さぞ辛いでしょう」
「え……?」

 神父は笑っている。それは聖職者の笑みというより、悪戯な子供の笑みのように思えた。

「罪は心に在るもので、行為に付随するものではありません。ましてや、いまだ為していない事に罪がある道理はないんですよ」
「…………」

 その言葉の意味は解るが、意図が解らない。僕が何とも応えられずにいると、神父は更に言葉を繋げていった。

「この教会には時折、貴方たちのような人が訪れるんです。逆に、そういった方々以外には、こんな所を訪れる者はおりません」
「それは……『罪』を持った者?」
「お分かりでしたか。お若いのに、敏い御仁だ」

 くすくすと笑う神父。僕としては冗談のつもりだったのだが、やはり彼の真意は分からない。

「噂というのは怖いものですね。半分は当たり、半分は外れです」

 ――どんな『罪』でも赦してくれる、深夜の秘蹟。

 そう。まるで、かの都市伝説の再現だ。森中の教会、いないはずの神父、そして罪人。その教会に辿り着く条件として相応しいのは、無論、『罪』を持っている人物という事になる。
 不意に。頭上で月に煌く硝子の騎士が、その蒼い眼で僕を睨んでいる気がして。思わず自分で自分の肩を抱いて震えに堪えた。

「まさか。あんまり、からかわないで下さいよ」
「ふむ、そうですね。冗談という事でも別に構いません。貴方の『罪』は、はっきり言って微笑ましいほどに軽いものですから。……と違って、ね」

 神父が演壇に上がる。
 そして硝子の騎士を背に、彼は槍を掲げるように右手でロザリオを天に突き上げながら言った。

「告解の秘蹟を、ここに。一夜に一人だけ、その『罪』を滅しましょう」
「え、ちょっと待っ……」
「一人だけ、です」
「あ、」

 それは、あまりに強い誘惑だった。
 僕の罪。ハルカを愛し、トオルが死んだのを良い事に『しんゆう』の枷を外してしまおうと望んだ事。
 まさか信じた訳ではない、と自分に言い訳をして。

「僕の、『罪』は」

 それが赦されるのならば、と。僕は心に秘してきた全てを、神父に語った。




 ――残ったのは、ざらりとした奇妙な違和感。何か忘れているような、整合性のない感覚。
 しかし、そんなものは瑣末な事だ。今からでも間に合うなら、ハルカの所に行こうか。そう、何か、とても軽い。今まで背負っていたものが、すっかり無くなってしまったかのように。

(了)

 



・あとがき

 こんにちは。またお前か、とでも言われそうですが、お目汚し失礼します。
 なんだか妙に長くなった上に、『罪』のテーマからは段々離れていったような気もします。申し訳ありません。ちょっとした違和感を仕込んでおいたのは、ご愛嬌で。深く考えても決定的な描写はないので、後味が悪くなる前に読み流してしまってください(汗

では。この文が読んで下さった方の心に、読後一分でも残りますように。

 

Re: 第十回SS大会 お題「罪」 投稿期間延長 6月上旬 ( No.471 )
日時: 2013/06/03 19:52
名前: 死 ◆GaDW7qeIec
参照: 最近、忙しいなぁ……久しぶりに来れたけどまた一ヶ月来れない可能性たかいですし……(精々来れてもやれることは高が知れてるだろうし

あげさせて貰います。
お願いです、書ける人書いて欲しいです(涙

Re: 第十回SS大会 お題「罪」 投稿期間延長 6月上旬 ( No.472 )
日時: 2013/06/10 00:46
名前: 涼奈◆CZEdiBTcA6

 「 天使と悪魔、天国と地獄 」

 ──天界と魔界の狭間で

    悪魔の少年と天使の少女は

          出会ってしまった。


          †


 天界と魔界の狭間を両者を踏み入れさせぬが如く、

 間に大きく深くて。清らかに、美しく可憐なる清水が流れ、あらゆる傷を癒やし力を与えると言い伝えのある大河にて彼は狭間の向こうに佇む彼女の姿を垣間見た。

 たった一人。自身も一人。その距離の差はあれど二人が気付かぬはずはなく。少女は無言で睨み付け嫌悪を表した。

 しかし──

  少年は違った。


 その日から悪魔の少年はあらゆる勉学、武術、社交を学ぶ。血反吐を吐き自らを徹底的に追い詰め血眼になり全ての知識を身体に覚え込ませ。

 ──美しく強き悪魔へと成長した


 そこまでして自らを厳しく成長させた理由はただ一つ。


          「あの人と一緒になりたい」


 少年は少女へ逢いに行く。河辺で少女と同じ可憐な花畑に、花冠を作る少女を──

 悪魔の少年は呼びかけた。


   「ずっと好きでした」

   「汚れし悪魔よ。近寄らないで、永久に……」


 花冠は、美しく、壊れる。同時に少年も────



          †



 悪魔の少年は魔王となった。そして数多の天使を気ままに、残虐、冷酷、非情、妖艶の限り、

      ─────惨殺した。



  それを

   嘆き悲しんだ神により

    天使と悪魔は互いを愛し合うようにした…………




 しかし、魔王ルノアールは違った。




 どんなに懺悔し悔いて神に慈悲を乞うても神は魔王がかつて愛した天使の少女と結ばれないようにした。

 天使長マリーもかつて忌み嫌った悪魔の少年への暴言を悔い改めて赦しを乞うても、魔王ルノアールと結ばれることはなかった────





 この二人は永遠にお互い愛し合うけれども



         「結ばない。神の怒りで」









END

イヤー拙い(笑)
くっだらないお話し暇つぶしにどーぞ(笑

Re: 第十回SS大会 お題「罪」 投稿期間延長 6月上旬 ( No.473 )
日時: 2013/06/10 03:03
名前: 蝶崎結愛

題<<いじめ、その裏は、殺人。>>

少女はやってきた。ある初夏の日に。


     ★★★


少女の名は美羽(みう)といった。

美羽は身長は低かったが、前の学校では天才少女と呼ばれていたほど勉強もでき、スポーツもでき、そしてなにより、
可愛かった。

けれどそれは、アイドルとか、美少女とか、そういうのではなかった。
魅力的、というのが一番合っている。
笑顔がよく、男子とも女子とも仲良く接していた。


     ★★★


いつしか美羽は、クラスの中心となっていた。

それを良く思わなかった人物がいる。

優奈(ゆうな)、だ。前までのクラスの中心人物。
ブロンドの髪、碧眼、色白の肌。
ふつうにかわいいのに、金持ちお嬢様だということを鼻にかけていて、嫌われていた。

これまでにも優奈や取り巻きは色々な子をターゲットにしてはいじめていたが、
美羽がターゲットになったのは、言うまでも無い。
ある日は上履きをトイレに投げ込み、
またある日は教科書の表紙に落書きをしたり、
またある日は着替え終わった制服のスカートを引き裂いたり。

しかし、本人は気づいていなかった。取り巻きが、少しもいじめに参加していないことに。




     ★★★



ある日の調理実習が終わって。美羽は、なにやらごそごそしていた。
何かに、使い終わったエプロンを巻きつけている。

「美羽、さん。・・・いいかな。」

美羽はそれを、さっ、と服の中に隠した。

「・・・いいですよ。」


美羽は学年の人気者、瑠華(るか)に呼び出された。正確には呼び出してもらった、なのだが。


「いいです。」少しはなれたところで、瑠華が言う。

すると。


上から、美羽に向かって。誰かが、落ちてきた。


優奈だった。


「永遠の眠りにつくがいい!」屋上で誰かが叫ぶ。

「美羽!助けなさい!」落ちてくる優奈が叫ぶ。


だが、美羽はこう言った。


「グッバイ、フォーエバー。  永遠に、さようなら。」


そして、笑った。


上から落ちてくるモノに、目を細め、


先ほどの何かを、・・・ナイフを、突きつけた。


     ★★★


もちろん、この学校は、廃校になった。あいにく、天才少女・美羽によって、犯罪者は捕まらなかった。



     ★★★











~あとがきじゃないあとがき。~

読んで下さり、ありがとうございました。 完。なのです。

Re: 第十回SS大会 お題「罪」 投稿期間延長 6月上旬 ( No.474 )
日時: 2013/06/22 21:40
名前: 03◆bizc.dLEtA

折りたたみ傘



 雨が降りだしたことに自動ドア越しに気づいて、本を持ったまま手を止めた。傘は持っていない。朝から怪しい様子ではあったのだが、昨晩の夜更かしのせいで寝坊してしまい慌てて飛び出してきたためである。雨粒は大きくないようだが、しとしとと降り続いている。家からここのバイト先まではそう遠くないため自転車で来ていて、雨が降りそうなときなどは傘を持って歩いてくるのだが、今日は天気予報すら見てなかった。これは濡れるなあ。

 俺は外から手元に視線を戻し、本棚の整理に戻った。こんな日は客足も少ないので、普段人の多い場所にも手をつけてみようか。

「降りだしましたね。今朝はだいぶ慌ててましたけど、傘は持ってるんですか?」

 同じくアルバイトをしている女子高生が話しかけてきたので目を向ける。髪も黒いしそう派手な格好はしていないのだが、近くで見るとまつげは長くしているし頬はナチュラルに赤く染められているし、抜け目がないなと思う。担当場所が違う上普段なら仕事中に雑談をすることは少ない子なのだが、今は近くに客もいないからであろう。

「それが持ってないんだよ。これはずぶ濡れルート確定だ」
邪とか大丈夫ですか?」
「部活帰りに濡れたときに、それを何度願ったことか」
「あはは。体強そうですもんね」

 彼女はそう言って笑いながら立ち去った。しっかり者だからやはりしっかりと傘は持っているのだろう。あわよくば相合傘なんて申し込まれてイベントが発生してみないだろうか、なんて悲しい一人身の俺は考えてみるけど、ないない。まず高校生である彼女は俺より先に帰らなければならないし。

「……よし完璧。さすが俺」

 目の前の棚がきれいに作者順に並べられた様を見て、独り達成感に浸りながら次の本棚へ向かおうとした。そして一瞬動きが止まる。視線を向けた先には常連客の女子大生がいた。週に二、三度は来店してほぼ毎回本を買っていくのに、雑誌はほとんど読まないらしい読書家だ。彼女の探している本が見つからないときに何度か話したことがあるが、気品があって感じのいい人だった。雨の中来たのだろう、足元が濡れている。
 次は彼女のいる棚を整理しようと思っていたのだが、隣でがさごそとされるのもいい気分ではないだろう。他の場所へ移ろうと体を反転させると、誰かにぶつかりそうになった。

「あ、す、すみませ……って君かい」

 客かと思って謝りかけたら、俺の後ろに立っていたのはさっきの女子高生だった。

「あの方、美人ですよねえ。この前話したら、先輩と同じ大学に通ってるそうですよ」
「マジで。ていうか君あの人とそんなことまで話すのか」
「同年代の女性店員は私しかいませんからねえ。あ、羨ましいんですか?」

 彼女が意地悪そうに笑う。今あの女子大生を見ていたのを見られていたのか。俺は恥ずかしくて早口になって言った。

「いや違うって。つーか話してばっかいないで仕事しろよ」
「はーいすみませーん」
 彼女は楽しそうに笑いながら歩いていった。年下にからかわれるなんて、俺もさすがの情けなさだ。


 しばらくしてから、俺はレジに移った。少しは客も増えたがやはり暇。しかしそうやって気が抜けているときに、例の女子大生が本を持ってきたので驚いた。結構長く店内にいたんだな。彼女がカウンターに置いた本を手にとって、カバーをつける。

「雨、やみませんね」

 彼女が話しかけてきたので、心臓が活発になったのをなるべく無視して冷静に答える。

「そうですね。実は僕、傘を忘れて自転車で来てるんですよ」
「えっ、大丈夫ですか?」
「ご心配ありがとうございます、でも健康だけが取り柄なので平気ですよ」
「そうなんですか、でも気をつけてくださいね。それでは」

 彼女は笑顔を浮かべながら本の入った紙袋を手にとってかばんに入れ、その手で折りたたみ傘を取り出しながら外へ出た。


 そうやって彼女と話せたから、俺は一日気分のいいままバイトを終わった。とうに高校生の帰らなければならない時間を過ぎ、店長に挨拶をしてから真っ暗になった外へ出る。しかし外の土砂降り具合に、さっきまでの気分は吹っ飛んだ。辺りの音を完全にかき消して水が地面にぶつかっている。梅雨の雨らしく雨粒は細かいのだが、だいぶ量があり、これは自転車で駆け抜けたとして帰ってからが大変そうだ。

 誰かがビニール傘を置いていたりしないだろうかと、勝手に使ってはいけないと思いつつも傘たてに目を向けてみた。するとそこには一本の傘がぽつんと残されているではないか。女物の傘だが、こんな日に忘れて帰るなんてあるのだろうか。
 そこで俺は、傘の柄に小さな紙が貼り付けられているのに気がついた。近づいて見てみると、きれいな字でこう書いてある。

『女物ですが、よければ使ってください。』

 ……これは、誰に向けた言葉なのだろう。もしかしてもしかしたら俺だろうか。店の中にはもう店長しか残っていないし、その店長は車で出勤している。これを使ったとして、ばちは当たらないんじゃないか。
 しかし女性らしい傘をさして歩くのは恥ずかしいからやはり自転車で駆け抜けようと思いもう一度顔をを上げて、雨のひどさを再確認して、俺が使うなんて見当違いだったらごめんなさい、と傘の主に謝りつつお言葉に甘えることにした。


 次の日も雨だった。俺は玄関に干していた傘をたたみ、今度はちゃんと自分の傘をさして店に向かう。昨日の晩よりは雨脚はましになっていて、たたんでいる傘を濡らさず持ってくることができた。店に着くと、『ありがとうございました。濡れずにすみました。』と書いたメモ用紙を傘の柄につけて傘たてに置く。これで持って帰って気づいてくれるだろうか。
 見知らぬ人と秘密の会話をすることにわくわくしながら仕事をしていると、俺より少し後に来たバイトの女子高生が話しかけてきた。

「こんにちは。昨日、濡れませんでした?」
「それが、誰かが傘を置いていってくれたみたいで、しかもどうぞ使ってくださいってメモまで残してくれてたから、ありがたく使わせてもらって濡れなかったんだよ。いったい誰なんだろ」
「あ、気づいたんですね。よかったです」
「え……もしかしてあの傘って」
「なんでもないでーす」

 そう言いながらまた彼女はすぐに去っていく。あの傘を残してくれたのは彼女なのか。俺が昨日傘を持っていないなんて知っている女性なんて、彼女と例の女子大生くらいしかいないはず。ほとんど交流のない人が、まさかあんなことをしてくれるとも思えないし……。
 女子高生が、ただのバイトの先輩にがわざわざこんなことをしてくれるものだろうか。しかし一度そうやって考えてみると彼女はよくバイト中に俺に話しかけてくる気がしないでもない。

 いや馬鹿か俺。自意識過剰もほどほどにしないと、一人身暦がさらに長くなるぞ。つーかバイト中だろ仕事しろ。

 そう自分に言いきかせて意識を目の前に戻す。しかし視界の隅で自動ドアの開いたのが分かったのでそちらに視線を向けると、あの女子大生だった。濡れた折りたたみ傘を手に持ってこちらの方へ歩いてくる。目が合ったので会釈をすると、向こうは笑いかけてくれた。

「こんにちは。体調は大丈夫ですか」
「ああ、昨日の雨ですか? それが、同じバイトの子が傘を置いていってくれたみたいで助かったんですよね」

 俺が若干照れ隠しでそう言うと、

「――そうなんですか。よかったです」

 彼女は微笑を浮かべてもう一度会釈をしてから、よく行く本棚へ歩いていった。


*********


上旬に締め切りってなってますが大丈夫かな、とびくびくしながら。
皆さんが凄く深いものを書いている中で、私にはやっぱり日常の小さな罪の方が性に合ってるみたいです。
語り手の男が一番罪な気もしますが←

Re: 第十回SS大会 お題「罪」 投稿期間延長 6月上旬 ( No.475 )
日時: 2013/07/30 19:53
名前: 碧◆ExGQrDul2E

支援あげします!

Re: 第十回SS大会 お題「罪」  ( No.477 )
日時: 2013/10/27 10:37
名前: 死 ◆GaDW7qeIec
参照: 進撃の巨人の圧倒的進撃力……凄い。

 『犯罪者達のワンダーランド』

 そこは退廃的な場所だった。
 死の臭いがそこかしこから香ってくるような地獄。
 
 廃ビルと廃工場が折り重なった、複雑で起伏にとんだ地形。
 下水が湧き出る泉には、薄汚い襤褸(ぼろ)切れを羽織ったゾンビみたいな負け犬達が、蟻みたいに群(むら)がっている。 

 「イやアァァァァァああぁぁあ嗚呼アアああアッッツッツ」

 今日もまた悲鳴が空を劈(つんざ)く。
 ここは“犯罪者達のワンダーランド”

 名をアンダーグラウンド・ジ・アリス。


 7月22日、シャツも汗で黄ばむほどに暑い40度近い日。
 悪党たちの脳みそは蕩(とろ)け、崩壊していた。
 その酷暑は元々安っぽい自制心などないに等しい、彼等の理性が決壊(けっかい)するには十分な衝撃だろう。
 最初の殺人はG-7と名付けられた東部区で起こる。

 狭いビルの隙間。
 吹き抜けるビルが生温くて苛立たしいという下らない理由で、殺人を犯した男が立っている。
 男の身長は185cmより少しある程度。
 一般的には背が高いががっしりとした偉丈夫が多いジ・アリスでは普通程度だ。
 銀色の無造作な髪型と紫と碧のオッドアイ。
 漆黒の軍服然としたここに住む者達にしては小奇麗な服装をしている。
 一見すれば美形貴族のような殺人とは無縁な甘いマスクの持ち主。
 
 そんな美男子を絵に描いたような男の目下。
 ブロンズの長髪をした体格の良い女性の遺体。
 真っ二つになって内臓や骨が丸見えになっている。
 血は水溜りのごとく広く遠くまで流れていて……

 その女性の遺体を抱きかかえながら、細身の黒髪ショートカットをした露出度の高い服装に身を包んだ女性が泣き喚く。

 「ユーリスたん!? ユーリスたんが死んじゃったあぁぁぁぁっ! 悪魔っ、人でなし」
 「何言ってんだ? ここにロクデナシじゃねぇ人間なんているのか?」
 
 呂律(ろれつ)が回らないのか泣き喚く女は“ちゃん”という愛称部分をきっちり発音できていない。
 涙ぐむ女性に殺人を犯した男は素っ気無く冷たい口調で告げる。
 そして少しニヤニヤして見せた後、また口を開く。 

 「なぁ、お前。ここに来て何年だ? いや、何ヶ月……何十日?」
 「昨日だよっ!」
 
 どうやら目の前にいる女は最近ここに送られてきた新人らしい。
 道理で知り合いが死んだ程度で随分と取り乱すわけだ。
 納得したと同時に男は笑い出す。

 「くっくくくくっくくくっ、はははははっ! そうかそうか、悪かったな。やっぱりそうか。お前魔女にだまされて食われそうになっていた所を俺に救われたのさ!」
 「魔女?」

 “魔女にだまされる”とはどういうことか、本気で疑問に思う女性。
 しかし質問しようとすると男は手袋で覆われた手を突然向けてきた。
 握手の振りをして何をするつもりだといぶかしんでも、女性は条件反射的に手を出し男の手を握ってしまう。

 「まぁ、魔女の話は後にしようか。俺の名はサイアス。サイアス・マクヴァール。てめぇは?」
 「ハルヴィ。ルシアス・ハルヴィ」
 
 血に染まる路地裏で自己紹介など狂ってると思いながらも女性は名乗る。
 サイアスと名乗った男に対して、ルシアスと。
 
 ………………

 一旦区切ります。

  

 

Re: 第十回SS大会 お題「罪」  ( No.478 )
日時: 2013/08/15 11:16
名前: 死 ◆GaDW7qeIec
参照: 進撃の巨人の圧倒的進撃力……凄い。

 「しっかし、ユーリスたんねぇ? たった1日でこのババァ、どうやって新人誑(たら)し込んだんだか」
 「なっ、何を言っているんですか! 彼女は良い人で……昨日僕を助けてくれたんだ!」

 口角を上げ馬鹿にしたような口調でつぶやくサイアスにルシアスは本気で食って掛かる。
 彼女もここがまともな場所などではないことは知っているが、たった2日でこんなことになるのは想定外らしい。
 相当取り乱していて、言葉遣いが定まっていない。
 昨日のことを脳内で思い描きながら、必死でユーリスだった遺体の擁護をする。

 「そうか。で、絡んでいた男の数は10人程度で赤髪の尖りヘッドが居たな?」
 「なっ、何でそんなこと」
 「そして、多分赤髪尖りの左横に居る黒い怪しげなフードつけた無精ひげ野郎が最初に声かけてきたはずだ」
 「そっそうです! 全て当たって……」

 しかし男は何よりも冷たい声で冷静に言う。
 サイアスの予想は全て昨日の情景と一致していて。
 恐怖すら覚えるほどだ。
 まるで有名な話のように。

 「分るよ、有名だ。そいつの手口だからな。いい加減殺すべきだと思ってた所さ」
 「そっ、そんな……」

 驚愕して上擦った声を出すルシアスを面白そうに見つめながら、男はぽんと両手を合わせにこりと猫のような笑顔を見せる。
 そしてユーリスがジ・アリスでは有名な新人狩りであることを明かす。
 絶句するルシアス。

 「大丈夫だ僕っ娘。俺は親切だからな。このジ・アリスで1番っ、いっちばん……親切な男だ」
 「1番……? 1番!」
 「そう、1番だ」

 ルシアスに人懐こい笑みを浮かべながらサイアスは目を大きく開く。
 そしてルシアスの黒曜石のような瞳を見詰める。
 1番大切という言葉はルシアスに異様に強く刻まれて。
 かのじょはすっかりサイアスに依存するようになった。

 催眠術。
 サイアスがジ・アリスにて手に入れた力。
 それを行使したのだ。
 勿論ルシアスを自らの手駒として使うために。

  
 ………………

 一旦区切ります。

Re: 第十回SS大会 お題「罪」  ( No.479 )
日時: 2013/08/15 12:15
名前: 死 ◆GaDW7qeIec
参照: 進撃の巨人の圧倒的進撃力……凄い。

 ルシアスがサイアスの催眠を受けてから10日が過ぎた。
 ルシアスはサイアスの根城に連れて行かれ、10日間全く外から出ていない。
 ルシアスはこのアンダーグラウンドでも最高クラスの実力者らしく、根城は途轍もなく広くどうやったのか電気や水も通っていて相当暮らしやすいのだ。
 外に出る理由がない。
 そもそも、サイアスに外に出るなと命じられている。

 深夜、サイアスの城3階にある1室。
 ルシアスの部屋と書かれた札が張られている個室。
 あえぎ声と衣擦れのする音が僅(わず)かに響く。

 「なぁ、ルシアス。ここは罪を罪とも思わない屑どもしか居ないから怖いだろう?」
 「はい、ごひゅじんしゃまぁ……」
 「俺も心配なんだ。君みたいな純粋な娘がなんでこんな所に送られてしまったんだろうなぁ? 俺は君を護るよ。分るね、ここで君の見方は俺だけだ」
 「ひゃい。ごひゅひぃんしゃまぁ」

 巨大なシャンデリアに赤い絨毯(じゅうたん)。
 調度品の全てが贅沢で華美(かび)な目に優しくない部屋。
 ベッドのシーツや布団の色はピンクだ。

 そんな部屋の中ではルシアスとサイアスの裸体が重なり合っている。
 10台半ば程度の控えめな体つきをしたルシアスを犯しながら、サイアスは自分の行っている行為からは全く伴(ともな)わない言葉をルシアスに掛ける。
 いつの間にやらルシアスは彼のメイドであり彼なしではいられない体にされてしまったようだ。
 
 ――――――――

 G-7地区。
 とうにユーリスの遺体は処理されていた。
 赤髪の尖りヘアの男が立っている。

 「許さねぇ。許さねぇぞユーリス姉さんの敵だ!」

 ――――――――

 アンダーグラウンド・ジ・アリス。
 そこは犯罪者達のワンダーランド。
 警察達が匙を投げた凶悪な犯罪者。
 彼等は皆一様に人間として一線を画した身体能力と夫々固有の能力を有していた。
 サイアスは催眠術、ユーリスは特定の性質を持つ人物をひきつけて話さないホルモン。
 そしてルシアスは――

 アンダーグラウンド・ジ・アリス。
 そこは人類を超越した悪党達の培養所にして、罪有る者達に対する居住区。
 政府も逃げ出す化け物達の楽園。

 悪は勝つ。
 正義などない。
 罪は……その者が罪と認識しなければ罪になり得ないのだ。

 ここは殺戮も窃盗も破壊も許される咎人(とがひと)達の楽園(シャンバラ)。
 あぁ、誰もが何の意味もなく死んでいく。
 それもまた罪なのなら何と罪とは安いことか。

 怒りを買い自壊するのも自由。

 「死ねよサイアス。てめぇの時代は終りだ。間抜け野郎」
 「あぁ、間抜けだな……俺はな、ユーリスの腰巾着(こしぎんちゃく)どもが嫌いでね」
 「何が言いてぇ!?」
 「俺が何でアイツを懐柔(かいじゅう)したか分るか?」
 「…………」
 「あいつは罪の世界を全て崩壊させる力だからさ」

 ルシアスの力。
 それは歪んだ最高の安堵(あんど)により呼び寄せられる。
 彼女の父親は狂っていて、飴と鞭を使い間違えた男だった。
 飴の使い方は間違っていなかったが、鞭の使い方が間違っていたのだ……
 男は娘であるルシアスが初潮を迎えると執拗(しつよう)に狙うようになった。
 それは最初は苦痛だったがいつの間にか快楽となり、ルシアスは依存するようになっていった。
 普段は優しい父親の闇に接すたびにルシアスは崩れていく。
 そして力は発動されやがて1つの町が砕け散ったらしい。
  
 「あぁ、無意識とはいえ町をぶっ壊すようじゃ世界から排斥されるよなルシアス」

 ルシアスは喋らない。
 すでに腕と足を捥ぎりとられギリギリで生きている状況だ。
 最初から知っていたことがある。
 ユーリスの敵(かたき)と部下達は怒るだろうこと。
 
 そして、このジ・アリスはいつか滅ぼさならないということ。
 彼は自分が嫌いだった。
 この肥溜めのような腐った場所も。

 ――――――――サイアス・マクヴァールは罪を罪として認識していて、償(つぐな)いたいと。

 「ゴメンなルシアス。俺の勝手に付き合って死んでくれ」

 ルシアスの町が吹き飛んだときよりはるか膨大(ぼうだい)な爆発により、ジ・アリスと呼ばれたゴミ捨て場は地図から消えることとなる。
 
 催眠術・爆発・ホルモン、これらの異常能力をアリスと総称していたからこそ、アンダーランド・ジ・アリス。
 不思議なことにアリスの力を持った者達はその後現れない。

 これは名もない咎人が名もない英雄になった物語。


 Fin
 


Re: 第十回SS大会 お題「罪」  ( No.480 )
日時: 2013/08/15 12:41
名前: 死 ◆GaDW7qeIec
参照: 進撃の巨人の圧倒的進撃力……凄い。

――――あとがき

久しぶりに書くことができました。
そして、随分遅くなってしまいすみません。
Up主の勝手が過ぎて本当にすみません(涙

どうでしたでしょうか犯罪者達のワンダーランド!
どの辺が題名通りだって言われると僕も?です(オイ
そして、物語の造りが変則的過ぎて分けわかめですよね(涙
正直、後一レスいやいや、500文字位多く書けば少しは分り良かったのかもですが、力尽きました(オイ


お目汚しごめんなさい。

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