雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 死(元猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投票期間11/27~12/27 ( No.420 )
日時: 2013/01/05 15:54
名前: 死(元:猫 ◆GaDW7qeIec
参照: やるなら終わらせろ……最近、良く思う。自分が言えたことかとも、良く思う。

第八回SS大会「黒」結果発表

一位 黒雪様作『Black Tears』
二位 メフィスト様作【絵と光と盲目少女】 遮犬様作 【暗がりの奥】 
三位 葱様作 『過去の鎖』 

随分と結果発表が遅れてしまって申し訳ありません。
今回は同率票が乱立しなかったのは良かったですね。まぁ、エントリー作品も少ないですしね。

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 結果発表 ( No.421 )
日時: 2013/01/18 20:37
名前: 桜◆oBtER7y2Sw

【僕と少女と過去と】


彼女は小さな旅人
10歳なのに旅をしている

僕は…彼女が好き

桃年 葡萄月 百合日
彼女は今日も楽しそうに他国の人と話した
綺麗な歌を歌った

でも

笑顔は少し暗かった

桃年 葡萄月 苺日

明るい朝日が僕らを照し
彼女を輝かせる

今日も彼女は楽しそうに過ごす
『僕と入れるだけで幸せ』
そんなことを言われたのは初めて
だからこそ彼女は___

「ねぇ、ねぇってば」
「あっ、何?」
横を向くと彼女の美しく輝く瞳が目に映る
「何書いてるの?」
「へ?うわぁあっ!なななな、何でもないよっ」
必死で机にある、早急までペンを走らせて字を書いていたノートを隠す
「・・・?見せてくれないの?」
「ご、ごめん、ね?」
「ううん、何かわからないけど頑張ってね」
彼女は微笑みながら言い帰っていった

彼女の後ろ姿を見るのは

辛い

彼女の背中には

<過去>

と言う重すぎる重荷が乗っている

辛いなら辛いと言ってよ

僕は君の為になら何でもする

だってぼくは君のパートナーだから

心から笑顔になれるようにしたいから

「本音を言ってよ…………」
一人ボソッと狭い部屋で呟く

僕は

小さな器の人間

そして

小さな旅人と

旅を続ける

「ぁ・・・続き書かないと」
再びペンを走らせる
狭い部屋の中に

ただひたすらペンで字を書く音が響く


ーーーーーーーー
駄作すみません!!!

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 結果発表 ( No.422 )
日時: 2013/01/20 12:23
名前: 死 ◆GaDW7qeIec
参照: あーぁ、ポケスペアニメ化しねぇかなぁ……ブラクロアニメ化しねぇかなぁ……ビィト復活しねぇかなぁ(溜息

桜様へ

申し訳ありませんが、第8回大会は終了していしまいました。
次、改めて宜しくお願いしますね!

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 結果発表 ( No.423 )
日時: 2013/01/21 21:43
名前: 死 ◆GaDW7qeIec
参照: あーぁ、ポケスペアニメ化しねぇかなぁ……ブラクロアニメ化しねぇかなぁ……ビィト復活しねぇかなぁ(溜息

第九回SS大会開始!

お題は「白」です!

小説のエントリーが少なかったら、今回で打ち切りにしようかなと検討中――……
個人的にもカキコに通い続けるのが、しんどくって……

Re: 第九回SS大会 お題「白」 投稿期間 1/21~2/21 ( No.426 )
日時: 2013/02/05 22:44
名前: 玖龍◆7iyjK8Ih4Y

「神童」


 腹が痛い。
 教室を抜け出して、校舎の端のトイレでいつもの馬鹿どもと身のない会話をするのにも耐え切れないほど。階段をふらふら上りつつ、なんでをくるくる回す。
 現在は月の終わり頃であるから、本来であれば腹が痛くなるのは当然の現象であるのだが、おかしい。血は出るのだけれど、色がチョコレートみたいで美味しそうなのだ。
 永遠に続いているような長い階段を登り終え、やっと辿り着いた灰色の重たい扉を体当たりで開く。
 解放感も糞も無い、白っぽい曇り空だった。
 倒れ込むように、扉がくっついている薄汚れた壁にもたれかかり、しゃがむ。校則を無視した短すぎるスカートが太もものそばでしわを寄せた。誰もいないところでサービスシーンをやっても、下着の見せ損だな。そう思ったとたん、急に吐き気が込み上げてきて、その場で吐瀉物をまき散らした。
 口元をぬぐって顔を上げたとき。

「…………あ」

 妊娠。かもしれない。
 ああ、でも、ちゃんと避妊具はつけていた……筈だ。お金が甘ったるい匂いをふりまいてるホテルでおっさんとしたときだって、その辺の右手が忙しいようなガキと遊び回ったときだって。つけていなかったことなんてないのに。
 妊娠したときの詳しい症状なんて知りもしないが、吐いたり腹が痛くなったり……というのは、いや、そんんなはずは。もう一度何かを吐き出そうと腹からぐぇっと声が出たが、胃の中は空っぽで、痰と唾が入り混じった透明で白っぽい液体が地面に滴った。
 もしかして、最近太ったと思ったのは、やっぱり。
 呼吸は乱れて、眩暈と吐き気と腹痛がひどくってもう、なんだか気持ち良い。ドラッグでもキメた気分だ。
 回る世界を見上げていると、今度は腹に強烈な痛みが走った。呻き、喘ぎ、腹を押さえる。痛い。何かが必死に外に出ようとして腹の中を抉っている。歪んだ顔ゆえ、狭くなった視界からスカートを見ると。
 血だまりだ。血だまりなのに。臭い、生きている人間の血のにおいが漂っているのに。
その血だまりは、白色をしていた。
その血だまりは腕を生やし、指の切り落としを浮かべていた。
 冷や汗が噴き出して、化粧を溶かしていく。悲鳴も出ない。
 なんだか視界が霞んでいる気がする。血のにおいが作り物の、吐き戻しそうな甘さに変わっていっている。私は、直感した。
 死ぬのだ。
 ぼやけた意識の中で、太ももに柔らかい、温かいものが触れた感覚がはっきりとあった。閉じかけた瞼をこじ開けて、血だまりをもう一度見る。
 ああ。君は。
 塗れた羽が生えた胎児と赤ん坊が混ざり合ったようなものが、指がいくつか欠けた小さな手を私の太ももに当てていた。
 目を閉じる。

 おかあさん。
 そう、言ったよね。


―――――――――――――――――――――

すみませんでした。本当にすみませんでした。
乏しい知識で書きました。
一応ネットで調べてみたのですが間違ってると思います。
こんな発想しか出てこない自分です、呆れちゃいますね。
しかもあんまり白くないし……。

今回は投稿ができてよかったです。

Re: 第九回SS大会 お題「白」 投稿期間 1/21~2/21 ( No.427 )
日時: 2013/02/05 22:16
名前: 白雲ひつじ

(( 課題は自分でやりましょう ))

休み明けの気だるい月曜日。学校の門をくぐる足取りも重い。
私はいつも通り自教室に入り、鞄を自分の机にどさりと置く。
そして本日の時間割を確認し、提出しなければいけない課題を用意しておく。

・・・ん?課題?

眉をひそめた。確か週末課題として数学のプリントが配布されていたような。
曖昧な記憶に首をひねりつつ、ファイルからプリントを取り出す。

目に飛び込んだのは真っ白な色。

なんということだ、私は課題をやるのを忘れていたのだった。



頭の血の気が引いてゆくのが分かる。これははまずいことになった。
数学担当の女教師は、学校内でトップを争う程の”怒らせると面倒な先生”として名高い。
私は教室に友達が入ってくるのを視界に捉えると、すぐさま駆け寄った。

「あ、おはよー。」

「おはよう!!それより数学の課題やった?」

私の友達が感じよく挨拶するのを軽く受け流し、事態を急ぐ本題を持ち出す。
数学は一限目だが、今から写させてもらえば間に合うかもしれない。

「うん?数学の課題?」

「そう!私忘れてたから、見せて欲しいんだけど」

縋る思いで両手を顔の前で合わせた。
しかし、私の希望は次の友達の言葉で崩れ去る。

「課題なんてあったっけ」

それがあったんだよ!!心の内で叫ぶと、私はがっくりと首を垂れた。
時計を見上げれば、一限目開始まであと数分。
他の誰かに見せてもらったとして間に合わないのは確かだ。

「そうだ、優等生ちゃんがいる!」

友達はぱっと表情を明るくしてそう提案した。
優等生ちゃんとは私の友人のうちの一人で、その名の通り優等生なのだ。
彼女なら課題をきっちりやっているだろう。

「だけど、写すのに時間かかって間に合わないよ・・・」

「何のために学校にコピー機があるのさ」

!?
私は驚きの発言に感嘆符を頭上に二つ浮かべた。
まさか、優等生ちゃんの課題をコピーして提出しようというのか。
そんな極悪非道な行為、私には出来ない・・・そう抗議しようとするも
時計が目に入った。残りリミット僅か。私は善の心をたやすく投げ捨てた。

***

優等生ちゃんは性格も聖人のような人なので、下衆な私達に課題を貸してくれた。
学校唯一のコピー機置き場、図書室に駆け込む。
一限目まで、もう時間がない。急げ急げ。
「コピーする」のボタンを凄い勢いで2プッシュ。
ががが、と音を立てて数式が完璧に並ぶコピー用紙を吐き出す機械。
プリントアウト完了。優等生ちゃんに感謝すると共に、安堵の溜息を吐く私と友達。

これで何とか先生に怒られずに済みそうだ。

***

そして私たちは名前が「優等生ちゃん」のままの課題を提出してしまった。
そりゃコピーしたんだから、名前もそのままのはずだ。
詰めの甘さに私たちは涙を呑んだ。
結局、課題が倍になったのは言うまでもない。



初めまして、おもしろそうな企画だったので投稿させていただきました!
方向性が周りの方々と違う内容で申し訳ないです。白の要素が足りてない気が・・・

Re: 第九回SS大会 お題「白」 投稿期間 1/21~2/21 ( No.428 )
日時: 2013/02/06 17:17
名前: 碧

【答案用紙に色がついた時】

「あー、分からない……」

私は、答案用紙の右端に、小さな花マルを書いていく。
それに、目を書いて鼻を書いて……手足をかいたら、「花マル君」の出来上がり。
今回は、うまく描けた。
私は、いつもテストで分からない時は、花マル君を描く。そしたら、なにか分かるような気がしたから。

「ねぇ、なんか分かった?」
どこかからか、知らない声が響いた。
私は、見張りの隙をみて、周りを見回した。だが、声の主はいない。
クラスメートでも、見張りの声でも無かった。
「教えてあげようか」

なにを?
なにを教えてくれるというの?
言葉で話さないと相手も分からないと知りながら、声はでない。心の中で思うだけだった。

「答えだよ、答え」

え?
私は、驚いた。それも、二重で。
まず、一つ目。私と念力で喋れたから。私にそんな能力あったかなぁ。
次に、二つ目。私にカンニングを持ちかけたこと。カンニング……そんなこと、していいことなのかな。
この問題は、本当に分からない。授業では絶対に出ていなかった。
予習復習完璧で、学年首位の私。なのに、今日は半分しか解けていない。これでは、お母さんに…先生に怒られてしまう。
どうしよう、怖い。でも、誰もみていないのなら……聞いていないのなら……

「お願いするわ」
遊び本意で答えたつもりだった。こう言えば、相手はどう反応するかなーって。
「よし、じゃあいくね」
声の主は、さらさらと式と答えを述べていった。
そうか、こうしたらいいのか。途中で、どんどん分かって来た。
そして、声の主の言葉が止まった。
最後まで言い終わったのだ。

……ありがと。
私が脳で言った。
多分、相手に届いたはず。

私は、右端に書いたあの花マルを消そうとした。
だけど、消えなかった。シャーペンで書いたのに。
まるで、マジックで書いたみたいに消えない。
その花マルは、ニコッと笑っていた。私は、笑わせたはずないのに。

「はい、終われ」

その時、見張りの声が響いた。

終わっちゃった。
花マル、消えなかった……どうしよう。
大学生が、テストの端に花マルなんて。落書き厳禁なのに……どうしよう。
私は、カンニングしたせいで狂っていて、もう普通ではなくなっていた。

終わりだ……もう、終わりなんだね。
だから、カンニングなんかしちゃだめなんだ。この落書き一つだけど、ダメなんだね。もう、いーや。全部、バラそう。

私は、ピンクの蛍光ペンを取り出した。
そして、答案用紙に、
「ありがとう!」
と大きく書くと、この紙を思いっきり大きく投げた。
この紙は、白いけどピンク色。

「ふっ……じゃあな」
誰かの声がまた響き、外で鳥が羽ばたいたような音がした。

ああ、そうか。声の主は悪魔なんだ。
私の悪事をさらけ出そうとしたんだね。悪魔だけど、天使のように優しいんだね。貴方のおかげで、今の私は真っ白だよ。周りの重圧もない今、私の体はとても軽い。

私、地獄へ会いにいくね。
私は、窓に手をかけた。

「その時は、ありがとうって目の前で言わせてね」

【END】

Re: 第九回SS大会 お題「白」 投稿期間 1/21~2/21 ( No.429 )
日時: 2013/02/16 12:00
名前: 死(元:猫 ◆GaDW7qeIec
参照: どうでも良いケド、って冒頭につける台詞って大概、言ってる本人は必死だったりするよね?

上げさせて貰います。

Re: 第九回SS大会 お題「白」 投稿期間 1/21~2/21 ( No.430 )
日時: 2013/02/21 23:46
名前: Lithics◆19eH5K.uE6
参照: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Claude_Monet_011.jpg

奇想『日傘を差す女』 

 O.Claude Monetに寄せて――



 絵画とは魔法だ。
 光もも、あるいは時間でさえも、一本の絵筆で真白いカンパスの中に閉じ込めてしまう。太古の昔から人間が描かずにはいられなかったものとは、きっと、そんな刹那に過ぎてしまう一瞬なのだろう。
 だが私は、それが時に残酷なものだとも思うのだ。

 何故なら。それはどこまでも虚構でありながら、見る者によっては真実に近すぎる。
 そこには、失われてしまったはずのモノがいつまでも鮮明に残されてしまうのだから。
 
○○○

 ふと、カリカリという音が止んだ。
 何という事はない、私が鉛筆を削っていたナイフの動きを止めただけの事だ。あまりにも無心になって削っていたからか、芯の先は針のように尖っている。ここまでやってしまうと却って折れやすく、使いものにならない。これは詰る所、数時間前からこっち、ほんの少しも構想が浮かんでいない事から逃避した結果なのだった。
 ひとつ、肺を絞るような溜息を吐いて。こんな時は、そうだ、早々と諦めてしまうのに限る。

「はぁ……そうだな。今日はこれまでにしよう」

 曰く、思い立ったが吉日だ。急くようにイーゼルの前から離れ、パレットと絵筆を放り出して。うずうずとした衝動のままに薄暗いアトリエを飛び出し、黒鉛と油絵具に塗れた両手を洗い流したなら……さぁ、私は自由だ!パリで得た画家の名声も、普仏戦争の記憶が生々しいロンドンでの日々も、このフランス北西の街――アルジャントゥイユでは意味を持たない。此処ではサロンの顔色を窺わずに好きなものを描き、それにも倦み疲れたなら、こうして気ままに筆を擱くことが出来る。どうせ暫くすれば自然と絵筆を執ってしまうのだから、思い切って休んでしまえば良い。
 そして私はこんな時、決まって我が家の小さな庭へと足を運ぶのだった。

 ――そう。光溢れる午後の庭は、きっと私の幸福そのものだ。

 初夏の薫りを胸一杯に吸い込んで、服が汚れるのも構わず芝生の上に寝転ぶ。眩い太陽の微笑みに軽い眩暈がして。思わず右腕を翳して真白い光を遮った先には、息を呑むほど高いアルジャンの青空が広がっていた。

「ははっ……」
 頬が緩むのはきっと、私が今、とても幸せだからだろう。
 セーヌの流れで冷やされたは涼しげに吹き渡り、遠い教会の鐘の音を届けてくれる。するとそれに合わせるように、妻と息子の戯れ唄が屋敷の中から聴こえてきた。妻であるカミーユの声は透き通った美しいソプラノで、五歳になる息子ジャンは勇ましくも微笑ましい腕白な声。彼女たちの不揃いな合唱は鐘の音が止んでも途切れず、次々と曲を変えて私の耳を楽しませてくれる。

 V'là l'bon vent, v'là l'joli vent
(ごらん、良きが吹いている。ほら、なんて素敵なだろう)

 そんな多幸感にほだされて、ついつい同じ唄を口ずさんでみたが……やぁ、我ながらなんと音痴であることか。やっぱり絵以外には才が無いらしいと再確認できたところで、私は苦笑したままで瞼を閉じた。
 こうして光との祝福を受けながら、ゆったりと日が暮れていくのを待つ時間は、私にとってまさに至福の時だ。敬愛するニッポンの人々は悲しいときに笑うと聞くけれど、私はやはり幸せな時にこそ笑わなければと常々思う。そうだとも、フランス人が滅多に笑わないのは、希少な幸せの価値を知っているからなのだ。思えば妻も息子も、アルジャンに引っ越してからは笑顔が絶えず、唄声は弾んでいる。ならば、この美しい街こそが私たちを幸せにしてくれているのだろうと、そんな事を思ったりもした。

 さて。心が満たされたなら、その隙を狙うように眠気がやってきた。
 日が落ちるまでには時間があるし、此処で昼寝をしても邪を引く心配はないだろう。御近所の目は気に成るが、この心地好さには到底抗えない。せめて日陰がある庭木の下まで行こうかとも思ったが、躰はもう既に動こうとはしなかった。
 そんな葛藤は一瞬だけで。不意にくらり、と意識が芝生の中へ沈み込んでいくような感覚。妻たちの唄声が遠くなっていく気がして、私は浅く微睡むような眠りに落ちていった。

○○
 
 絵画とは魔法だ。
 神が私に与え給うた唯一の才だ。その上で私自らが選び取り研鑽したのは、数ある絵画のスタイルの中でも孤立した、それ即ち『印象』を扱うものだった。色彩を操り、光を描く。世界の写実から一歩進み、画家の見る主題を強調する。そうして描かれたものには、『私そのもの』が封じられているような感覚さえ覚えるのだ。
 だからこそ私はかつて……きっと美しく、そして愛しいものだけを描こうと誓った。

Re: 第九回SS大会 お題「白」 投稿期間 1/21~2/21 ( No.431 )
日時: 2013/02/22 00:21
名前: Lithics◆19eH5K.uE6
参照: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Claude_Monet_011.jpg

 ふと、直ぐ傍に、誰かの温もりと息遣いを感じた。
 まだ日は高いのか、直視してしまった光が目の奥に赤々と残る。それでも、目覚めたばかりの胡乱な意識は直ぐには上手く回ってくれないようだった。
 誰か、そこに居るのか。仰向けのままで辺りを見渡しても、庭に人影はない。屋敷の方から聴こえていた唄声も、今はとうに消えてしまっていた。
 だが、不思議と愕きは無かった。その気配が傍にあることは、私にとってごく自然な事に思えたから。少しだけ働き始めた感覚が、頭の後ろに柔らかい温もりを認めて。くすくすと耳を擽る笑い声に誘われるように、私は視線を真上へと向けた。

 そこには予想通り、いや望み通りの、一人の女性の貌があった。
 
「ふふ、おはよう、オスカル。良い夢は見られましたか?」
「あぁ……やっぱり君か、カミーユ」

 ――その微笑みを形容する言葉を、詩人ならぬ私は持っていなかった。白く霞むような逆光の中で、彼女の笑みだけが確かな形をもって私を見下ろしている。そこには安心感と愛おしさと、そして空よりも蒼い瞳に吸い込まれそうな怖さすらあった。その眼で見つめられたなら、途端に私は愛を語る言葉さえなくしてしまうのだ。だから、私は最愛の妻に甘い言葉を掛けたことなど無い。その時も、私がやっとのことで絞り出したのは……いつも通りに不愛想な亭主然とした、あるいは私の嫌いなパリの紳士の陳腐な言葉でしかなかった。
                                         
「はい、わたしです。中々起きて下さらないから、どうしようかと思いましたよ」
「む、すまない……いつ頃から此処に?」

「ええと、ジャンがお昼寝してからですから、一時間前くらいこうしてます。ふふ、やっぱり貴方の息子ですね? 二人とも、幸せそうな寝顔がそっくりです」
「ぐ…………」

 なんて事だ。私はどうも、膝枕をされても目を覚まさず、一時間も彼女に緩みきった寝顔を晒していたらしい。愕然とした私の顔を見て、彼女はコロコロと愉快げに笑った。

「あら、そんな御顔をしないで。可愛かったですよ、ジャンと同じくらい。そうそうオスカル、貴方が眠っている間にアリス……っと、こんな呼び方ではいけませんね。オシュデ夫人がおいでになられました。エルネスト・オシュデ氏の主催する展覧会のお知らせだったようですが」

「な……! マダム・アリスが? 来たのか、此処に?」

 愕然、再び。
 エルネストは私の無二の友人であり、新進の実業家であり、画業の支援をしてくれている所謂パトロンだ。その夫人である若きマダム・アリスとカミーユも、歳が近いこともあり仲が良く、昔から家族ぐるみの付き合いがあった。
 だが、だからといって、いい歳をした大人が庭で昼寝をしている図など見せていいはずがない。ましてや、妻に膝枕されているなど……どう考えても、エルネストに知られたなら暫くは画壇の笑いモノだ。少なくとも彼だけは、あの下品な声で腹を捩って笑うだろう。
 そうなれば私としては、彼の豊かな(豊かな!なんと寛容な表現だろう)体型を主題として寸分の違わぬ肖像を描いて、パリのサロンに提出するくらいでしか報復にはなるまい。フランス人……もとい、パリ人とは自由と怠惰をこよなく愛するが、見苦しい肥満は許さない人種なのである。

 閑話休題。
 まだ見ぬ屈辱とその復讐に思いを馳せている私をよそに、カミーユは悪戯をする若い娘のような表情をして。

「あ、そうですね! 折角ですからアリスにも見てもらえば良かったのに、私ったら……」
「む、彼女には見られていないのか」
「ええ。貴方は出掛けてるということにして、ちょっとだけ二人でお茶をしました。新作を楽しみにしてると伝えてくれとのことでしたよ」
「はぁ……神よ」

 知らず、ほぅと安堵の息が漏れる。
 それが可笑しかったのか、今度は声を上げて笑い出した妻の顔を見上げながら……少しだけ、もしかしたら有ったかも知れない騒動の顛末を幻視した。私とエルネストは詰まらない喧嘩をして、飲んで忘れただろう。そして彼女たちは、こんなに笑っていたかもしれない。それはそれで楽しかったのではと考えて、やはり幸せに呆けているんだなぁと自嘲した。あぁ、なんだか可笑しくて……ガラでもなく笑みが止まらなくなった。

「……? どうしました、オスカル?」
「ははっ、なんでもない。なんでもないんだ……それよりも、なぁ、カミーユ」
「はい?」

 くい、と首をかしげるカミーユ。滅多にこうして笑わないものだから、今私が笑っている理由が解らないのだろう。その仕草がまた可笑しくて少し吹き出しそうになりながら、私は言葉を繋げた。
 

「君の……いや、今度は君と、ジャンの絵を描こう」

 ――それは私の、精一杯の愛の言葉に等しい。
 今まで幾度となく彼女の絵を描いてきたが、それは最も身近なモデルだからという理由ではなく。言うまでもないし言いはしないが、彼女が私にとって最も美しく、愛しい主題だからだ。
 もしや、その意図を知っているのだろうか。彼女は私がそう切り出す度に、珍しく照れたように淡いはにかみを見せるのだった。

「またですか? 私なんか、オスカルの絵には相応しくないって何度も……」
「そんなことはない!……ないさ、そんなことは」

 右手を上に伸ばして、彼女の頬に添える。それはまるで太陽に手を差し伸べているような温かさで……その途端、あれだけ思いあぐねていた構図のアイデアは溢れんばかりに湧き上がってきた。

「あぁ、良い季節だ、そうは思わないか? こんな陽気なら、セーヌの河畔はきっと気持ちが好いだろうな。うん、そうしよう。いいかな、河岸の草地でジャンを自由に遊ばせて、それを眺める君を描こう。君は一等綺麗な余所行きを着て――ああ、なら、この光が映える白のドレスが良いな。君は色が白いから、日焼けをしないようにしないと……」

 そうして、私はどうしてか酷く饒舌に語っていた。カミーユが珍しいものを見たように目を丸くしているのが判ってはいても、止まりそうにはなかった。その構図は見る前、描く前から目に浮かぶようで。慣れない言葉を駆使してでもその美しさを、彼女の輝くような価値を伝えたかったのだ。

「そうだ、君は日傘を差すと良い。それなら夏の光の中でも影を生かして、君を綺麗に描くことが出来る。ははっ、素晴らしい! きっと傑作になる、きっとだ、カミーユ!」

 この絵には、私の全てが込められるだろう。
 願わくは我が妻がそれを見たときに、私の想いが届きますように――
 

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