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- 小説コンテスト《結果発表!!!レスNo.22参照》
- 日時: 2016/05/16 13:52
- 名前: 詩勉強家 (ID: pZjy9NNY)
皆様、こんにちは。
このスレッドでは、「小説コンテスト 参加募集スレッド」に応募してくださった方々による、短編小説コンテストになります。
なお、投票期間になりましたため、皆様のご投票をお願いします。
《投票方法》
・参加者による投票は、自分以外のどなたか1作品に投票ができます。
・参加者以外の方は3作品に投票ができます。
・氏名と、投票したいレス番号を記載の上、投票ください。
・投票の際には、必ずしも全作品に目を通した上でお願いします。
・投票期間は2016.05.15までとします。なお、投票数が少ない場合には期間を延長いたします。
応募者の皆様へ
このスレッドには小説のみを投稿してください。
質問等ございましたら、「小説コンテスト 参加募集スレッド」の方にお願いいたします。
小説投稿の期限は2016.05.05までとさせていただきます。
遅れることのないよう、お願いいたします。
投稿の際には、題名と作者名を明記してください。
作品の種類は基本問いませんが、二次創作はご遠慮ください。
また、小説カキコに載せていい内容でお願いします。
下記のルールにのっとってお書きください。
投稿期間が終了後、投票期間といたします。
その際にはまた詳しい説明をいたします。
小説ルール
・1レス以内に収めるてください
・文字数は自由です
・題名は自由です
・「恋」、「時計」、「てのひら」、「りんご」という単語が必ず本文中のどこかに含ませるようにしてください
・投稿期間中は修整は何度しても良いです
以上のことを守って、ご投稿ください。
よろしくお願いします。
- Re: 小説コンテスト ( No.3 )
- 日時: 2016/04/18 03:11
- 名前: 金愚 (ID: 9w13DJbg)
『シングルファーザー』 作者 金愚
今年のりんごの収穫終わり!
今年はよく取れたし、味も格別。
桜が天国からなにかしてくれてるのかな?
と、考えながらもいつも通りりんごを切って、桜が大好きなりんごと玄米とお供えして、遺影の前に座る。
桜…君が病気で死んでもう半年が経ったよ。君にこうやって話すのも久しぶりかな?
正人が起きてたら変な風に見られるよね。だって喋らない遺影の桜相手に話し掛けてるんだもん。
…桜は最後に正人の為に新しい母親を作って。って言ったよね。あの願い叶えられそうにないよ。だって僕には桜しか居ないから……
あ、正人はね、最初は悲しんでて大変だったけど今は元気にしてるよ、もうすぐ入学式なんだ。
君とは産まれた時から近所だった幼馴染みで結婚したけど、正人がね今は恋してるんだ。近所の雅ちゃんに。
雅ちゃんと正人って同じ日に産まれて近所でずっと仲良し。まるで僕と桜だよね。正人と雅ちゃんは結婚するかな?
しなくても正人の初恋だから思い出には残るよね。
あと僕って料理下手でさ、肉じゃがとか作っても味濃かったり…正人の口に合うようにはどう作れば良いんだろう。
包丁も使いなれてなくて、もうてのひらがボロボロだよ。
そんなことを一人で遺影に向かって話してると、
目覚まし時計が鳴り響く
「えっ、もうそんな時間?!」
目覚まし時計の音で僕は驚く。
正人を起こして入学式の準備しないと。
「正人、起きて!入学式だよ!」
「ん……あ、ほんとだ!きょう…にゅうがくしきだ!いそがなきゃ!」
眠そうな顔でもテンションは高いようだ。
そして、別に急がなくても間に合うのに急ぐ。桜そっくりだね。
桜も結婚して初めて旅行行くとき飛行機には全然間に合うのに、急いでたよね…。
「おとうさん!じゅんびできたよー!」
「そっか、じゃあ入学式に行こう!」
準備を終えて出発する。
そしたら、正人の初恋の子。
雅ちゃん親子と会った。
「みやびちゃんだ!おはよう!」
「まさとくん!おはよう。にゅうがくしきたのしみだね!」
「うん!」
楽しそうに話す二人。
僕と雅ちゃんのお母さんは何も喋らない。というより喋れない。
なぜなら、昨日、雅ちゃんのお母さん……違った昨日会ったときは相沢さん。
相沢さんに逆プロボーズをされた。
同じシングルマザーとシングルファーザーだから。
でも僕には桜しかいないし、僕と相沢さんが結婚したら、正人の恋の邪魔にもなるし、断った。
だから今、気まずい。話にくい。
そのまま相沢さんとは話さずに学校に行き、入学式を終え、家に帰ってきた。
正人は疲れたのかすぐに寝てしまった。
これから毎日通うのに大丈夫かな?
と、思いながら僕はまた、遺影の前に座った。
桜、これで正人は小学生。大人の階段を登り始めた。
桜、僕は再婚出来ないけど、シングルファーザーとして、正人を育てていく。
正人は雅ちゃんへの恋が実らないかもしれないし、母親が居ないからいじめなれるかもしれない。
なにがあるかわからないけど、僕は正人を守ってちゃんと育てて立派な大人にしてみせるから!
天国から見ててね。
そして、僕が天国に行ったとき、また一緒にりんご食べようよ。
桜…僕は君の事を愛してる。
勿論、正人の事も。
だからさっきも言ったけどシングルファーザーとして、頑張って行くから。
桜の優しい目で見守ってて…。
自然と僕の目から涙が溢れ落ちる…。
なんで、半年経った今、涙が出てくるんだろう……。
- Re: 小説コンテスト ( No.4 )
- 日時: 2016/04/19 05:13
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
『サクラになったら』 紫音
付き合っていた彼女が交通事故で死んだ。
「ぅっ…望愛ぁ…なんで逝ったんだよぉ……」
彼女の大好きだった桜の木の下で男が一人で泣いていた。
「その望愛とやらもその木の下で眠っているかもしれぬな。“桜の木の下には死体が埋まっている”と言われているしな」
決して大きな声ではない。でも良く通る少女の声が後ろから聞こえた。
ひゃっひゃひゃ、という不気味な笑いとともに。
涙を拭いながら後ろを見るとそこにいたのはサクラのような薄ピンク色にサクラの模様の入った着物を着た中高生位の女の子。
「む。そんなに見ないでよ。恥ずかしいでしょ」
そう言って赤くなった顔を着物の袖で隠す。
こういうときの表現で“りんごのように赤い”とかあるけどそこまで赤くはない。“ほんのり赤い”程度。
「えっと……どちら様?」
「君、まずは自分の名前から言おうか。人の名前を聞くのはそのあと!」
不機嫌そうに頬を膨らませる少女は俺の恋人だった望愛に似てる。
「…藍坂、藍坂 志郎。俺は名前を言ったんだからあんたも言えよ」
「私は…んー、そうだなぁ…櫻崎と名乗っておくとしよう!」
本名教えろよ! なんだよ、“名乗っておくとしよう”って!と心の中でツッコみつつ口には出さない。
「詳しく言うのであれば私は桜の本体、とでも言っておこうかの」
“桜の本体”これはまた変な単語が出てきたな…。つーか本体ってなんだよ。
「で、志郎くん。だっけ?君の言ってた望愛ちゃんってどんな関係だったの?」
妾に吐き出してみよ。と上から目線に言ってくる。
そんなところも望愛にそっくり。だから態度にムカつきつつも自然と、口が開いて「付き合ってた」と声が零れた。
「望愛は俺の死んだ彼女」
「…死んじゃったんだ…それは気の毒に」
ホントに、気の毒だよ…弱々しい声が自分の唇から洩れだす。
彼女の事を思い出したらまた涙が溢れだす。つい数秒までまで止まっていた涙が。
「あ……サクラ…」
ひらり、と桜の花弁がてのひらに舞い落ちてきた。
「望愛好きだったんだよな……サクラ」
春とサクラが大好きだった彼女。でも花粉症だからあんまり満喫できないって嘆いてたっけ…。
「望愛……のあッ…!」
キミとの思い出がどんんどん蘇ってそれに比例するかのように涙が止まらない。
『泣かないで。しろくん。泣いてるのは見たくないな』
俺の目の前に立っている櫻崎の口からさっきと違う声が聞こえた。
生前とは全然見た目は違ったけど大好きな_大好きだった望愛の声
「の、あ…?」
『えへへ、死んでね何でか桜になってたんだ。何でだろうね』
どこか照れくさそうに笑う。照れたときに服の袖で口元を隠すのは望愛の仕草そのもの。
あ、さっきもやってた…。
そう思うとあの上から目線なところも、望愛と同じ。
「え、ってことは…櫻崎って…望愛。なの?」
『そう言ってるじゃんー、信じてくれないの、しろくん』
むぅと不機嫌そうに頬を膨らませる櫻崎改め望愛。
『ふふ、でもそんなところがしろくんらしい』
頬を緩め目を細めて笑う彼女の姿を見るときゅぅと胸がしまる。
『あ、そうだぁ。しろくんにこれあげる!私の形見として持ってて!』
望愛が取り出したのは彼女が生前愛用していた時計。
もっと詳しく言えば懐中時計。あの不思議の国のアリスに出てくるような懐中時計。
「いいの…?」
『うん!しろくんが持ってる方が私としても嬉しいよ!』
手を伸ばし、懐中時計を受け取る。
『あ、そろそろお別れの時間かなぁ』
そう言った彼女の身体は透けて来ていた。
『じゃあね。しろくん。またいつか、会えたら嬉しいな!』
いつものような笑いを残し、完全に消えてしまった。
「また、会えるよ…」
消えてしまった彼女に返事をするように空に向かってそう言った。
- Re: 小説コンテスト ( No.5 )
- 日時: 2016/04/22 20:30
- 名前: リュー (ID: 1Fvr9aUF)
『あの日の“コタエ”』 作者:リュー
「助けて、楓ちゃん!」
「ど、どうしたの!?」
春。
もう桜が散り始め、気温も段々暖かくなってきたとある日のこと。
今日は、先生たちの出張の都合により、14:30に下校することになっていた。
早帰りだし、家で本でも読もうかと思い、教室から出ようとしていた私、八雲楓のもとに、突如幼馴染みの斎藤日和が泣きながら抱きついてきたのだ。
「どうしたの、日和!?」
あわてふためいて、つい大声を出してしまう。
「楓ちゃん。私………私………」
そのまま床に、ちょこんと座り込む。
「取り合えず、立とっか………話は、家来てから。それでも良い?」
床に座り込んだ日和の顔を覗き込む。
日和は、無言で頷く。
「じゃあ、行こうか」
そう言って差し出した私のてのひらには、日和の、私よりも少し小さな手が乗せてあった。
教室から出て、校舎から出て。
校門を潜り抜け、家へと向かう。
ここから家までは、大層な距離は無い。
「ねー、楓ちゃん」
「なにー?」
家から徒歩数分で着く距離に、小さな公園がある。
その公園の前を通ったとき。
「懐かしいねー、ここ。よく三人で遊んだよー」
と、唐突に日和が呟いた。
「三人?二人じゃなくて?」
私たち二人は、小さい頃ここでよく遊んでいたけど………
でも、三人なんてこと、あったっけ?
私は、頭の上にはてなマークが浮かぶくらい、不思議な気持ちになる。
言われてみれば、三人………だったような気もするが、そうじゃない気もする。
そんな私の気持ちがわかったのか、日和が話始めた。
「ほら、小さい頃、楓ちゃん家のお隣さんの、『幡寺』って名字の子がいたでしょ?今はもう引っ越しちゃって、家は違うけど………」
幡寺───何処かで聞いたことあるような………
その時、私は不意に思い出す。
“明日、また待ってるからね”
そんな、言葉を。
小さい頃───幡寺───
「あっ!」
私は思い出す。
そっか、幡寺だ!
「思い出した?楓ちゃん」
「うん」
私は小さく頷く。
そっか…………
もう、あれからこんなにたつのか…………
幡寺とは、保育園の時のこと、よく遊んでいたのだ。
この公園で。
もちろん其処には日和もいた。
「木登り、楽しいだろ?」
「怖いよー」
木登りが苦手だった私は、何時もそう言って泣きわめいていたっけ。
そして、あの日。
幡寺が引っ越す前日のこと。
私は言った。
「幡寺ー、好きー!」
幡寺が公園を出ようとして、そのときの私は、小さいなりに好意を持っていたのだ。
幡寺に。
すると幡寺は
「どうせ、明日会えんだろー?その時ー!!」
と言った。
私は
「うん!」
と、元気よく頷いて
「明日、待ってるからね!」
という。
幡寺とはそれっきりだった。
「あ、でね!たいへんっていうの、幡寺君のことなんだけど………」
「まさか、幡寺がこっち来てるとか?なわけないよねー」
私は冗談半分で言う
すると日和は
「正解!よくわかったね、楓ちゃん!」
と言った
そっか。
幡寺が帰ってきてるのか………
「今度こそ、あのときの答え聞きたいな………」
私は呟く。
あの日、あの時、ごまかされた答え。
今度こそ聞きたい。
止まっていた私の時間が動き出す。
止まっていた私の恋心が動き出す。
その時、時計の針が動き、ちょうど15時になった。
「まんじくん、そろそろくるよー。行こ!」
日和が私を呼ぶ
「うん!」
私は、早く幡寺に会いたくて、走って日和のもとへ行った。
あの日のコタエを聞くために。
終わり!
- Re: 小説コンテスト ( No.6 )
- 日時: 2016/04/22 00:06
- 名前: 陽炎 (ID: dD1ACbVH)
『愛しい君は』 陽炎
君はまるで、秒針のような人だ。
秒針は、時針と違って常に動き回っているし、分針と違って活発に稼働する。
自然を駆ける、元気で朗らかな君はまさにそんな秒針だ。
それに秒針は、時針や分針からはしない音が聞こえる。
それは僕にとっての君と同じで、君はいつも存在を主張する。
秒針がチクタクとまめに時間の経過を知らせてくるように、僕の頭には四六時中君がいる。
目を閉じるとなおさら頭に入ってきて、忘れることなどない。
僕と君は、きっと世界で一番愛し合っている恋人同士だ。
そんな僕たちは世界で一番、恋人であることを楽しんでいる。
僕は君のことを心の底から愛しているし、君も僕のことを愛してくれているだろう。
その根拠に、僕たちは毎日会って毎日笑い合っている。
──約束も交わさずに。
約束なんてしなくても、また明日同じ時間この場所に来れば、僕たちは会えるのだ。
それは、僕たちはお互いにまた明日も会いたいと思っている、という証だ。
この場所に来れば、会いたい人に会える。
それを僕たちは知っている。
僕は君のすべてが好きだ。
無邪気な顔も、こどもみたいな性格も、垣間見える魅惑的な仕草も、微笑ましい癖も……すべて。
愛しい君、愛おしくてたまらない。
僕が頭をなでると、君は子犬がしっぽを振るように喜んで。
僕がからかうと、君はみるみる、おいしいりんごのように真っ赤に顔を染めて。
僕が紙飛行機を飛ばすと、君は鳥のように野面を駆け回った。
いつも笑い声が絶えなくて、いつも表情がまぶしくて。
踊るように、舞うように。
君はいつも明るく快活だ。
僕は、そんな君を静かに眺めている。
見ているだけでも楽しめるのだ。
そうやって、僕はいつも君に恋をしている。
新しい君を見つけるたび、幾度も恋に落ちた。
君といると、あっという間に1日が終わった。
楽しくて仕方ないとはしゃぐ君のそばにいれば、24時間なんて一瞬だ。
僕の身体に息づく時計は、ぐるぐるぐるぐる目まぐるしく針を回した。
──僕の中でこの恋の記憶が消えることは、一生ないだろう。
ある日君は、僕の前から忽然と姿を消してしまった。
空の彼方くらい遠く離れた君が僕のもとに戻ってくることは二度とない。
あのとき繋いだ君の温かな手の感触が、僕のてのひらにまだ残っている。
目を閉じれば体温さえも、このてのひらに蘇ってきそうだ。
──僕の中にある時計は今、動いていない。
あの日を境に、僕の時計の針は止まってしまった。
- Re: 小説コンテスト ( No.7 )
- 日時: 2016/05/05 22:58
- 名前: 河童 ◆PZGoP0V9Oo (ID: DxRBq1FF)
『カーネーションと初恋を』 河童
今日は母の日。デパートやスーパーマーケットには、でかでかと『母の日セール!』と書かれた看板が貼られている。
「ねえ、待ってよ夏目!」
と、私を呼ぶのはお母さん。父と離婚してから私を女手1人で育ててくれた、かけがえのない人だ。
「今日はせっかく母の日とお母さんの仕事の休みが合ったんだから、一日中出かけるって言ったじゃない! 凄く楽しみだったんだよ!?」
「私も楽しみだったけど……。まったく、せっかちなのは誰に似たのかしら」
そう。お母さんはいつも忙しいから、今日くらいは羽目を外してもらおうと、私が企画したのだった。今のところ羽目を外しているのは私の気がするが、まあいいだろう。家の近くにショッピングモールがあってよかったとここまで感謝したことは無い。
そして、人混みに流されながら、私たちはショッピングモールの前に着く。お母さんの顔が赤いのは、きっと走って息が上がったからだろう。
「ふう、夏目も体力ついたわねえ。昔は私の方が走れたのに」
「成長期だからねー」
ウィーン、と自動ドアが開く。
とりあえず、最初はお母さんの好きなところに行って、その次はお昼ごはんをどこかで食べる。その後はまだ決めてないけど、どこかに行く。
そして最後には注文しておいたケーキを買わなくちゃ。そしてどこかでお母さんにプレゼントをあげなくちゃ。まだどんなプレゼントを渡すかは決まってないけれど。カーネーションでもあげようかな。
予定が決まった所で、お母さんの方を見る。
お母さんは自動ドアの前でいつもは付けない腕時計を見ていた。どうしたのだろう? と思い、私はお母さんに駆け寄り、聞いた。
すると、
「な、なんでもないわよ! 早く行きましょ?」
と、言った。どことなく汗ばんでいる気がするが、多分気のせいだろう。
そして、私はお母さんの手を取る。少しごつごつした硬い手。女らしい手とはお世辞にも言えないけれど、私はこの手が大好きだった。
手を繋いだまま、お母さんに、行きたいところがないか尋ねた。まず食品売り場に行きたいらしい。こんな時までか、と思ったけれど、お母さんらしいから良いか、とも思う。
しかし、この入口から食品売り場までは結構遠い。せっかくなら近くから行けばいいのに。まあお母さんが決めたことだし、良いんだろう。私達は、売り場まで歩き出した。
しかし、早く行きましょう、と言っていたお母さんの歩幅がかなり小さい。それを指摘すると、「何のことかしら?」みたいな態度でスタスタ歩き出したが、それでもすぐに元に戻ってしまう。
調子でも悪いのだろうか?
「それにしても、少し行かない内に、ここも変わったわね」
「そうだねー。服屋や美容院が2、3個減って、フードコートとかが増えたね」
「ふうん」
「ほら、こことか。前まで美容院だったけど、文房具屋になってる」
「ほんとだ」
なんて話をしながら、食品売り場に着く。お母さんの歩く速さも元に戻ったので、手も離した。
「ねえお母さん、何買うの?」
と、私が声をかけると、お母さんはまた腕時計を立ち止まって見ていた。
もう一度呼びかける。反応はない。更に呼びかける。やはり反応はない。どれだけ集中して時計を見ているのよ。
すると、後ろからお母さんに向かって走ってくる子供。こちらに気づく様子はない。
「お母さん、ちょっと!」
私はお母さんの手首を掴み、引っ張った。ぎりぎりぶつからなかった。危ない危ない。
しかし、お母さんの反応がない。いつもなら、「何引っ張るのよ」といってくるよう場面なのに——。お母さんの方を見る。
彼女は——息を荒くし、青ざめた顔で私にもたれかかっていた。どう考えても体調が悪い。
「大丈夫!? ねえ、お母さん!?」
やはり反応なし。喋るのにもつかれるのだろう。私はお母さんを背負って走りだした。ケーキとか、今日の予定とか、そんなのは関係ない。早く家に帰らなきゃ。お母さんが、危ない。
「風邪だったんなら言ってくれればよかったのに。別に今日じゃなくても良かったんだから」
「夏目に心配かけたくなくて……」
あの後、私達は無事に帰ってきた。お母さんは正直軽くなかったが、そこは火事場の馬鹿力、すごい勢いで帰ってこれた。そして、布団を一分で敷き、お母さんを布団に寝かせた。
お母さんは風邪だったらしい。医者にも2、3日安静にと言われていたのに、今日私と出かけたかったから黙っていたらしい。
まったく、言ってくれたっていいのに。私はもう子供じゃないのに。
りんごを剥き終わる。やっぱり風邪にはりんごだよね。
「ほら、手、出して」
「ん」
と、お母さんがてのひらを差し出す。私は差し出された手のひらを見る。女らしくない、ごつごつした手。私を育ててくれた、かっこいい、やさしい手。昔は私風邪を引いた時、りんごを剥いてくれたなあ。
「りんご、まだ?」
「あ、忘れてた」
りんごを渡す。「わーい、りんご」なんて子供みたいに喜んじゃって。わたしの気持ちも知らないで。
「心配、かけてくれたっていいんだよ?」
「え?」
「私だってもう、子供じゃないんだから。高校生なんだから」
私が言うと、お母さんはにやりと笑った。
「あんたなんてまだまだ子供よ」
「なっ……!」
「だって、恋もしたことないでしょう?」
喧嘩を売るようにお母さんは言う。こうなればもう売り言葉に買い言葉だ。
「恋くらいしたことあるわよ! ……あっ」
「ほう?」
墓穴をほってしまった。これはやってしまった。お母さんもニヤニヤしながらこっちを見てるし。
こうなったらもう言うしか無い。今までの恋も、思いも全部。
「わたしの初恋は小学2年生の頃——」
「あら、なかなか早いわね」
「うるさいよ、もう」
母の日のプレゼントは、私の初恋の話。
- Re: 小説コンテスト ( No.8 )
- 日時: 2016/04/24 10:56
- 名前: てんとう虫 (ID: Wz7AUOMy)
『ある日の私の奮闘記』 作者:てんとう虫
喧嘩しているわけではない。
……と、そう思いたいのだけれど、朝から彼は一言も話しかけてくれない。
私が何かしたか、と考えてみる。
この間、彼のお気に入りの本にハチミツを垂らしてしまったのが原因だろうか。
それとも、お菓子づくりの時に砂糖と塩を間違えてしまったのを怒っているとか。
彼の嫌いなりんごをちゃっかり料理に混ぜた時のこととか。
うどんを作った時に、油揚げの代わりに食パンを使ったのはまずかったかな。
そういえば、昨日、彼のかけているメガネが曇ったとき、お腹をかかえて笑ってしまった。
……それだ。
それに違いない。
彼はプライドの塊だから、悔しかったんだ。
それなら、彼を笑わせるまでだ。
何か、お腹をかかえて笑うほど面白いことをやって、昨日のことを忘れてもらおう。
思い立った時には、私は彼の部屋のドアの前にいた。
ノックもせずに勢いよく部屋に入ると、背を向けて本を読んでいた彼は、少し驚いたように肩をびくっとさせて、振り向いた。
「どうしたの」
表情筋を動かさずにそう言う。
「少し見て欲しいものがございまして」
「どこに」
「ここに」
私は綺麗に整えられた彼の部屋の床に正座で座った。
すると彼も本を置き、私の前に正座で座る。
彼と目が合ったのを確認して、両てのひらを見せる。
「ん?」
彼が首をかしげた。
私はそのまま手を目元にもってきて、人差し指で目尻を横に引っ張った。
「笑った時の優太」
彼は笑うと目が線になる。
絶対笑うでしょ、と得意げな顔で彼の表情を確認すると、真面目な顔。
「僕、そんな顔になる?」
「うん」
あまりに真剣に聞くものだから、思わず真剣に答えてしまった。
次の手段だ。
両手で頬を押さえつける。
「小太郎」
我が家で飼っている金魚のことである。
どうだ、と彼を見ると、やはり無表情。
二回目にして心が折れそうだ。
「友香っておもしろい」
「……え?だったら笑ってくださいよ」
「あ、いや、芸とかは面白くないんだけど」
その場に崩れ落ちた。
何をしたら笑ってくれるんだ。
「僕が怒っていると思ってるんだろ」
図星です。
「い、いやいや」
「話しかけなかったから」
「……」
「怒ってないよ」
「……え?」
では何故、どうして。
「一日ほっといたらどうなるのかなと思って」
さらに崩れ落ちた。
悔しい。
彼は部屋の時計を指さす。
「午前十時十七分、ギブアップ」
そう言って、目を線にして笑った。
やっぱり私はこの人が好きだ。
私の旦那さんで、あんまり笑わなくて、それでも優しくて、私が初めて恋に落ちた人。
- Re: 小説コンテスト ( No.9 )
- 日時: 2016/05/07 23:35
- 名前: さきいか (ID: bOxz4n6K)
『隣のあいつ』 作者:さきいか
いままでたくさんの人と付き合ってきた。
別に好きだったわけではない。
ただのなりゆき。
でも、いまは違う。
好きなのだ。
あいつが…
高校に入って一年がたった。
よく噂で聞いた、「佐々木」の名前。
学年首席の人。
同じクラスになるまで、仲良くなるまで、頭が固い奴だと思っていた。
でも、いつかその考えは砂時計の砂のようにさらさらとこぼれ去った。
佐々木と私は隣同士の席だった。
授業中もよく話して怒られた。
でも、楽しかったからよかった。
お互いに学力には自信があったしよくテストの点数を競ってた。
野活の時期が来た。
クラスのスタンツでミュージカルをすることに決めた。
私は脚本を書きたかったのだが、希望した人数が多く辞退した。
そこまではいい。
問題はその後だ。
佐々木が聞いたこともないような優しい声で
「よかったの?やりたかったでしょう」
なんていうから。
優しいまなざしで見つめるから。
恋に落ちてしまった。
ただの友達だったのに。仲がいい男子だったのに。
好きになっちゃったじゃないか。
でも、私の恋はかなうはずがなかった。
佐々木には片思いの相手がいて、いつもハーレム状態で周りには可愛い女の子がたくさんいる。
告白して今の友情を壊せばもう、佐々木の隣にいることはできなくなるだろう。
私の淡い初恋は時間がたった林檎のように黒く、酸っぱくなっていった。
卒業式。
あれから二年。
今も私の恋は続いている。
しかし、それももう終わり。
今日告白してきれいさっぱり諦める。
頑張れ私。
「二年のころから好きでした。今日、これでけりをつけるつもり。はっきり振ってほしい」
しばしの沈黙。
だよね。
友達がそんな目で見てたんだもん。
そりゃ、引くよね。ああ、はずかしい。
するんじゃなかった。
告白なんて。
緊張と恥ずかしさで、てのひらが湿っていくのが分かった。
お願い。
早くして。
何分間、いや、秒かもしれない。
時間が長く長く感じられて。
どんどん自分が惨めになっていく。
「…なんだよ。二年のころかよ?しかも俺振るの決定してる?」
ん?どういうことだ?
「だからさ、おれ、一年から好きだった。」
「それ、まじ?」
「うん。」
「早めに告っとけばよかった。もう、お別れじゃん。」
「そうでもない。おまえ、T大でしょ?俺も」
どうやら、時間がたって黒ずんだ林檎はまた、種となり芽生えたようだ。
- Re: 小説コンテスト ( No.10 )
- 日時: 2016/05/05 12:54
- 名前: どみの (ID: 99568qQj)
『再開はアップルパイと共に』 作者:どみの
「ただいまぁ!」
日が沈もうとする頃、
学校から家に帰りリビングに行くと、キッチンから香ばしい匂いがした。
(あれ、この匂いは…もしかして!!)
匂いだけで、それが美味しいのが伝わってくる。
キッチンに行くと、お母さんが夕飯の支度をしていた。
「お母さん、ただいま!」
「あら、友紀お帰り。帰ってきてたんだ。」
「今、帰ってきたばかりだよ。それより今日の夕飯何?」
「今日の夕飯はステーキよ!」
「やったぁ!!お肉!!」
ステーキは私の大好物だ。
「そして、デザートにアップルパイを作ったの。昨日、実家からリンゴが届いたからそれを使おうと思って。」
「本当!!家に帰って来た時、美味しそうな匂いするなぁって思ったけど、これだったんだ!!」
お母さんの実家は青森でリンゴ農家を営んでいる。
だから、うちにも度々リンゴが来る。
そのリンゴは、もの凄く甘くて美味しい。
このリンゴを食べたら他のリンゴは食べられない。
今日の夕飯は私にとって最高の夕飯。
今から楽しみだ。
「夕飯が出来る前にテーブル拭いといたりしてくれる?あと、急だけどこれから孝が来るから着替えておいてね。少し、だから夕飯食べるの少し遅くなるけど許してね。」
「今日お兄ちゃん来るんだ。はーい!宿題でもして待ってるよ。」
お兄ちゃんが家に来るなんて珍しい。
何でまた急に…。
8歳年上の兄は、記者として出版社に勤めている。
今は一人暮らしをしている25歳だ。
普段は仕事が忙しく、取材などで様々な場所を転々とすることもある。
会うのは随分久々だなぁ。
最後に会ったの何時だろう…一年以上前かもしれない。
******
ピーンポーンーー。
午後8時を回った頃、家のチャイムが鳴った。
「あっ、孝かな!はーい、今開けるね!」
そう言って、お母さんがドアを開けると、玄関にいたのはお兄ちゃんと……。
誰…?
お兄ちゃんの隣にいる女の人?
その人は、軽くウェーブした黒髪、背が高く色白で清潔感がある。
お兄ちゃんの知り合いなかぁ…?
何で、うちに来たんだろう…。
「おかえり、孝。いらっしゃい、舞さん!狭い家だけど上がって。お話は夕飯食べながらゆっくりしましょう。」
舞…さん…。
そして、久々に会ったお兄ちゃんは急にお洒落に気を遣っている気がするし…。
「いただきます!」
四人でテーブルを囲み、夕食会が始まった。
「舞さん、うちの孝を宜しくお願いします。」
「いえいえ、舞さんにはいつも励まされてばかりです。」
話に付いていけずきょとんとしていると、お母さんが話かけてきた。
「友紀。この人は池田舞さん。同じ会社の方で孝の婚約者よ。とても、美人でしょ。」
「そんなことないですよ。友紀ちゃん、高校生だっけ?宜しくね!」
「は…い…宜しくお願いします」
婚約者…!?
それって、もしかして…。
「お兄ちゃん…結婚するの?」
「あぁ、今年の夏に婚約届けを出すつもりだ。」
それを聞いた時、脳天をハンマーで打たれるような衝撃を受けた。
お兄ちゃんは、恋愛に無縁な仕事人間だった。
というより、興味なさそうだったのに…。
だから、勿論彼女いない歴=年齢。
いつも、不思議の国のアリスのウサギのように時計を見ながら忙しく動いてた人だったのに…。
なんだろう…。
お兄ちゃんが結婚する…。
それを認めたくない自分がいる…。
本来なら、おめでたいことなんだけど…。
お母さんもどうして、今日まで私に教えてくれなかったのだろう…。
異性の兄弟って、中学生くらいになるとあまり話さなくなると聞く。
だけど、私達はそんなことなかった。
とても仲良かったし、お兄ちゃんに相談に乗って貰ったことは星の数ほどある。
ステーキの味はショックで全然分からなかった。
食事会は進んでいき、皆アップルパイを食べ始める。
横を見ると、3人が楽しそうに会話をしている。
その中で、一人浮かない顔をしている私。
他の人に気付かれないように気を付けた。
舞さんの、手のひらで包み込むような暖かい笑顔が見える。
悪い人ではないんだろうけど。
今日のお兄ちゃんはいつもと違う気がする。
お兄ちゃんが遠くに行ってしまう気がして寂しかった。
サクッ。
私もアップルパイを食べ始める。
その味はいつもより、酸っぱく感じた。
「ごちそうさまでした」
アップルパイを食べ終え食器を片付けた後、私は足早に自分の部屋に戻った。
- Re: 小説コンテスト ( No.11 )
- 日時: 2016/05/05 20:56
- 名前: こん (ID: LL/fGGq1)
『すりおろしりんごの優しさ』
作者:こん
ーーーチュンチュンーーー。
あの日、俺は雀の鳴き声とともに爽やかに目覚めた。
風がどこからか心地よく吹いていき、微かに花の匂いがした。
日差しが穏やかに顔に当たり、小学生が登校していく声が聞こえる。
なんて良い朝なんだ。
こんな素敵な朝がかつてあっただろうか。
どことなく夢のような気分に浸っていた。
「やあ、おはよう。」
突如、聞きなれない野太い声が耳に入ってきた。
そこで、俺は我に返った。
おかしい。
おかしいのだ。
だって俺、一人暮らしだぜ。
俺は瞬時に起き上が…ろうとした。
しかし、体中が痛かった。
あちこちがヒリヒリ、ズキズキ、ジンジンして、散り散りに引き裂かれる思いだった。
「あーあー、ダメじゃん。重傷だねえ。」
野太い声が耳障りなことを言った。
この時の俺は、わけもわからず、この野太い声に嫌な気分を覚えた。
けれど、その姿を見るともっと嫌悪感が増すことになるのだった。
首をねじろうにも痛みが響き、やっとの思いで声の主を見た。
「やっほー。」
「……。」
そいつは、俺のお気に入りの一人がけソファにゆったり座り、足を組み、ワイングラスを揺らしていた。
40くらいのおっさんで、なぜか俺のTシャツと短パンを履いている。
サングラスをかけ、デザイン性のあるヒゲをたくわえ、…ドレッドヘアだった。
「誰、おっさん…。」
声がカスカスにしか出なかった。
喉が乾いているのだとそこで気付いた。
「あ、これ飲む?結構おいしいよ。」
おっさんがワインを勧めてきた。
…というか、それ、ウチにあったワイン。
「いや、ダメか。なんかジュースの方が良いよな。」
おっさんはなぜか手馴れた手つきで冷蔵庫を開け、グラスを用意し、りんごジュースを注いだ。
「はいよ。」
差し出されたコップを見た。
この間別れた彼女とペアで買った物だった。
ずいぶんと奥の方にしまっていたはずなのに、どうしてこのおっさんはこれを引っ張り出してきたのか。
「ほれほれ、礼くらいくれよ。」
俺が無言でグラスを受け取り、手荒く中身を飲み干すと、おっさんはそんな事を言いながらグラスをまたキッチンの方へ運んで行った。
「…おっさん。ほんとに誰。」
おっさんを睨んだ。
本当なら、その胸ぐらを掴んでさっさと家の外に追い出したいものだが、身体中が痛くてそうもいかなかった。
「なあなあ、お前さあ。これペアカップの片割れだよなあ。彼女いるんだ?」
おっさんは案外丁寧にグラスを洗いながら、余計な質問をしてきた。
「…いたら、何だよ。」
相変わらずおっさんを睨んだまま、俺は一応は反応した。
「ああ、その反応。彼女に振られたとみた。」
ほんと、このおっさん、カンに触ることしかいいやがらない。
体の自由が上手く効くなら、一発ぶん殴ってやりたいと思った。
「まあ、さ。恋なんて人生の一端でしかないんだよ。」
洗い終えたグラスを満足げに眺め、キュキュッと子気味良い音を立てて磨いた。
「で、何々。振られた勢いでヤケになって喧嘩か?」
どうでもいいところで勘のイイヤツだ、と思った。
いや、今一番どうでもあることでもあるのだが。
なんだか力が抜け、窓の外に視線を向けた。
「でーもなあ、酒が入った勢いで殴り合いなんて、駄目だよ。シラフで本気の時にやんなきゃ。」
このおっさん、喧嘩自体は責めて来ない。
なんか少しだけだが、ホットした。
「昨日は派手にやられたなあ。相手はヤクザかあ?」
俺は窓の外を見ながら、何も答えなかった。
「よいしょっと。」
綺麗に磨きあげられたペアグラスの片割れが、また元の場所に収められた。
そこで俺はあることに気が付いた。
外の音が、しない。
起きる寸前…いや、おっさんの声がする寸前までは確かに聞こえていた、鳥の声や子供の声。
そういえば、風も吹いてこない。
アパートの1階。
窓の外に見えるのはアパートを囲むフェンスや木だけ。
その奥の世界は、なぜこんなに静かなのだろう、と。
時計をちらりと見た。
なんとなく、予想通りに、そいつは止まっていた。
この時の俺は、この違和感のある空間に納得していた。
まあ、こんなもんだろう、と。
「おい。」
すぐ近くでおっさんの声が聞こえた。
振り向くと、おっさんは皿を1枚持っていた。
「手を出しな。」
先ほどまであんなにムカついていた相手に、よくも俺は素直に従ったものだ。
差し出した手のひらに、冷たい皿が心地良かった。
「あいよ。食べてごらん。」
スプーンで皿の上のものを食べる。
やはりよく冷えていて、傷だらけの身体に染み込んでいくようだった。
「…すりおろしりんご、か。」
舌の上でそいつを転がし、味わった。
「んじゃあ、俺は帰るわ。」
おっさんが言った。
俺は顔を上げずにスプーンを動かした。
服を返せとは言わない。
ましてやさよならなんて言う必要はない気がしていた。
でも、やはりおっさんは、
「じゃーな。」
と別れを1つ置いて行った。
家の扉が閉まる音がした。
俺は顔を上げ、時計を見た。
外からは鳥の声や子供たちの声がしてきた。
ドレッドヘア、中々似合うじゃねえか。
あの手つきからすると、バーテンダーにでもなったんだろうか。
結構、楽しそうだったじゃないか。
時計がカチコチと鳴り響いた。
俺、まだ頑張ろう。
半ば生きるのに嫌気のさしていた俺を励ましたのは、
ちょっと陽気な、
俺の倍くらいの人生を歩んだ、
ドレッドヘアの、
俺だった。
- Re: 小説コンテスト ( No.12 )
- 日時: 2016/05/06 00:05
- 名前: 詩勉強家 (ID: LL/fGGq1)
以上をもって、小説の投稿を締め切りたいと思います。
これから投票に移りたいと思います。
これから親レスにて投票方法を記載しますので、皆様、ふるってご投票ください。
なお、本日より「第2回 小説コンテスト」の参加者募集を始めたいと思います。
参加希望者は「小説コンテスト 参加者募集スレッド」にてその旨をお書きください。
どうぞよろしくお願いします。
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