雑談掲示板

ただのヲタク少女の雑談です【春季企画】
日時: 2023/12/27 18:41
名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳◆GHap51.yps (ID: WmKEiYPc)

 暗い話もたまにする。基本的ハイテンション。
 これだけ言わせて。

・ケンカすんなよ!!!!

 それだけ。

【速報】
 前のスマホがまさかの復活をとげました☆

*短編感想交流会のお知らせ
 今回の幹事は!
 そう!
 此のわ・た・s((殴殴殴殴

 概要  >>617
 参加者様>>618

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Re: ただのヲタク少女の雑談です【春季企画】 ( No.625 )
日時: 2022/05/02 23:14
名前: オノロケ (ID: qXBfL4G2)

『春季パーティー参加』
 こんにちは!めっちゃ長いです。

【春戦士~遥~】

「みなさんおはようございます。四月もまもなく終わりを迎えてしまいますね。校門にも桃色の桜道が出来上がっておりました」

 四月の下旬。私たちはGW前最後の朝のHRを過ごしている。
 先生の情感溢れるゆったりとした口調は私の眠気を誘う。さらに窓から差し込む淡い光が全身を包み、日々の疲れをいやしてくれる。
 心地いい朝だ。

「こら、遥(はるか)さん。目が閉じてしまっていますよ。四月は活動が大変なのは分かりますが、私たちの未来を担う戦乙女としてしっかりして下さいね」
「すみません。先生の穏やかな声色に思わず聞き入ってしまいました」

 私は席を立って深々と腰をまっすぐに折る。
 先生は眼鏡の奥の瞳を柔らかく細め、私に席に座るよう言った。

「いつも応援していますよ。ふふっ。それでは朝のHRを終わりにします」

 先生が教卓の上の出席簿を手に取ったのを合図に、生徒が号令をかけた。

「起立。気をつけ。先生に礼。万年桜様に礼」

 みな一斉に窓側に体を向け、遠くの山の上で華やかにそびえる一本の大樹にお辞儀をする。
 私たちの命を支える神に近しい存在──万年桜様だ。一年中桃色ただ一色を咲かせている。

 号令も終わり、一時間目の授業の準備を始めようとした、そのときだった。

《警報! 警報! 三春区A‐6エリアでtype‐Sの怪物出現。春戦士は至急現場へ!》

 こんな朝から現れるなんて。やっぱり四月は忙しい。
 私は教室の窓を思い切り開き、中にいるみんなに手を振る。

「それでは行って参ります」
「遥さん!」

 先生がおろおろとした様子で私を見つめ、胸元で両手を絡ませ握りながら言った。

「万年桜様のご加護がありますように。頑張って下さい」

 私は先生に小さく笑みを浮かべると、すぐに窓に向き直る。
 春風が吹き抜け、心体ともにポカポカと温もりが沸いてくる。春を守るために。みんなの未来を守るために。
 私は今日も怪物と闘う。

 窓枠に足をかけ、私は思い切り空中に飛び出す。
 暖かい風を浴びながら私は腕についた桜模様の時計に触れる。

「変身!」

 二文字の言葉を唱えると、私の周りを桜の花びらが舞い始めた。
 柔らかな花びら達は回る速度を上げていき、そして頑丈な鎧に変化を遂げる。
 それに次いで、赤色の靴や手袋を私の手足に、桜模様をあしらったスカートを下半身にまとう。

 対怪物用に作られた戦闘服に身を包むと、私は空を飛び、怪物のもとへ向かった。

────────────

「怪物。確認しました」
「了解。戦闘体勢に移行せよ」

 私は耳元の小型通信機で春戦士管理委員会と連絡をとっている。私が戦闘体勢に切り替えたのを確認すると、相手はばつの悪そうな声で話を続けた。

「遥。怪物のもとに向かう道中で何度も警報を聞いただろう」
「はい」
「今は四月。我々から春を奪おうとする怪物が大量に発生する時期だ。近年の怪物の凶悪化もあり、人手が足りない」
「つまり、一人であの怪物を倒せと」

 私は目の前の怪物に指を差してみせる。相手にはモニター越しでコイツが見えているだろう。

 相手は苦笑混じりに私にそうだと告げる。

「人類の未来のために精一杯闘ってくれ。万年桜様のご加護があらんことを」

 通信が切れる。
 一息ついて私は目の前の怪物を睨み付けた。
 怪物のtypeはSummer、Fall、Winterの三種類。私の前にいるコイツはtype‐S。つまりSummerだ。Summerの厄介なところはなんといってもその技の威力。体内の莫大な量の熱エネルギーを媒体としているため、技一つ一つの一撃性能が高い。

 そんなことを考えていると、怪物がついに攻撃を始めた。高熱によって体表をドロドロさせている巨体から、直径二メートルほどの炎のヘドロとでも言うべき歪(いびつ)な玉が四、五つほど放たれる。

「水桜!」

 私は赤い手袋から水流の渦を呼び起こす。怪物に向かって伸びた一本の太い渦から炎の玉めがけて何本にも枝分かれする。水流が炎を弱めると同時に、渦を伝う桜の花びらが炎を包み、そのエネルギーの核を浄化する。

 太い渦はそのまま怪物に直進を続ける。
 そして──命中。よし。

「グオオォオオォア!!」

 怪物はけたたましく叫んだかと思うと、今度はあたり一辺をその大きな口で吸い込もうとする。
 物凄い勢いで怪物の口に春風が飲み込まれていく。

「花吹雪!」

 私はすかさず、何千もの桜の花びらを怪物の口に次々に飛ばしていく。この花びらは柔らかな見た目とは裏腹に鉄をも切り裂く強靭な刃を持つ。これが怪物の口に入れば一溜まりもないだろう。
 ただ、怪物はそれを見るとすぐに吸うのをやめ、花びらを燃やし尽くそうと前方に炎の息を撒き散らす。
 花びらが端から端へと塵になっていく。
 ──狙い通りだ。

 私はそのまま両手袋に力を込める。身体中を雷電が走り始め、不規則に強い光を放つ。本来はこの目立つ光で怪物に警戒されてしまうが、コイツは自分で吐いた赤い息のせいで前側の視界が遮られている。その隙をついて私は思い切り、象でも即死するほどの強力な雷を怪物に大量に浴びせた。

「春雷!」

 雷は全て命中。怪物からは湯気のようなものまで出ていた。

「グギャアァアアアアアア!!!」

 さっきよりもでかく高い、耳をつんざくような雄たけびが街に響く。だが、怪物の体はすぐに動かない。さっきの雷の攻撃で体が芯から硬直してしまっているのだ。

 ここで決める。

「ひゃ」
「うわああああぁん!! ママァアァ! パパアアア!」

 え?
 最後の技を繰り出そうとした瞬間、背後に少女の泣き声を聞いた。私は思わず振り向いてしまう。
 見ると、半壊した建物の瓦礫の影で少女が体を丸くしていた。一瞬、私の時が止まる。
 どうしてこんなところに!? 逃げ遅れた?
 怪物から目を背けたその一瞬が事態をさらに悪化させた。

 怪物の硬直が治ってしまった。体がでかい分、硬直時間も短いということか。

「ギャアアガァガアアアギアァアアア!」

 まずい。完全に暴走状態だ。わずかにある知性も捨て、はちゃめちゃに攻撃をしてくる。特に威力の高いtype‐Sだとなおのこと厄介になる。

 怪物が私と少女めがけて大量に炎の玉を投げつけてくる。大きさもさっきのよりも何倍も大きい。
 さらに怪物は最大まで口を開き、腹一杯に息を吐いた。玉のスピードが急激に上昇する。

 少女が危ない!

 猶予はほとんどない。靴にブーストをかけ、ただ少女に向かって走る。
 少女も炎の玉の存在に気づき、目を見開いた。

「ああぁああぁああああ!??!」

「秋桜!」

 桜の花びらが私たちの前で結界(バリア)を張る。
 ギリギリ間に合った。
 ただ、

「結界の強度が甘い!」

 早く強度を上げないと、私も少女も炎に飲まれ、丸焦げどころか形すら残らなくなってしまう。
 炎の玉が何度も何度も結界を殴ってくる。その震動が骨にまで伝わる。
 わずかな視界からかろうじて周りを見てみると、炎の玉がアスファルトの地面を喰っていた。

 まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい

「……くぅっ!!」

 ただ結界を張るだけしかできずに、私は限界を迎えるのか?
 私は春を守りたいのに。みんなを守りたいのに。

「お、おお、お姉ちゃん! こわいよぉお!! ママァ! パパァ!」

 少女の泣き声が背筋に響く。
 子ども一人すら守れず私は死ぬのか。

 私は……私は!

 そのときだった。こつぜんと怪物の攻撃が止まり、同時に雄たけびが私の耳を支配した。

「ギャガァアアァア!!」
「え?」

 何が起きた? 私は状況が理解できず、いまだ結界を張り続けている。
 だが、一人の声によって全て理解できた。

「待たせたな! 遥! 一人でよく頑張ったな」

 ──仲間だ。
 私と同じ、三春区エリアを担当する仲間が、自分が相手していた怪物を倒し、私のもとに駆けつけてくれたのだ。

 ふいに体から力が抜ける。

 どうして、こんなにも心が暖かいんだろう。
 なぜだか目頭も熱くなって、今までの不安や緊張がどっと溢れてくる。四月は怪物の数が多く、精神的にもかなりキていたのだろう。
 でも、仲間がいる安心感だけで、こんなにも心が楽になるなんて。

「遥! まだ闘えるか?」

 仲間の言葉ですぐ我にかえる。今はまだ戦闘中だった。私は鎧の袖で目を乱暴にこすり、仲間に笑いかける。

「よし! じゃあこの子は俺が守るから遥は怪物にとどめをさせ!」
「はい!」

 これは私の闘い。私たちから春を奪おうとする怪物からみんなを守るんだ。

 私は結界をとくと同時に靴にブーストをかけ、地面を思い切り蹴って、怪物めがけて飛ぶ。

 いまだ暴走中の怪物は私に大量の炎の玉を送りつける。でも、信じられる仲間がいるから私にはもう何も怖くない。

「百花繚乱!」

 手袋から伸びる春風が渦を巻き、鋭い刃を持つ桜の花びらがその中を縦横無尽に飛び回る。
 風はどんどん大きくなり台風に、竜巻に、ハリケーンに姿を変えていく。

 怪物の放つ炎の玉も吹き荒れる春風の流れに捕らわれ、桜の舞に切り裂かれながら、次々に浄化されていく。風が勢いを保ったまま怪物に突撃した。

「ギャアアアアァア!!!!」

 怪物がそのでかい図体で必死に抵抗している。その隙をついて私は靴にブーストをさらにかけ、一気に怪物の胴体に向かう。

 私は春戦士。春を、みんなを守るために生きている。こののどかな世界を誰にだって奪わせない。

「夏にも、秋にも、冬にだって。奪わせてなんかやるもんかああああ!!」

 鼻先が触れそうなほどに怪物に近づき、両腕を怪物のお腹に突っ込んだ。中はとても熱い。早くしないと両腕どちらも溶けてしまいそうだ。手袋に力を込める。
 
 type‐Sにとっておきの技でとどめをさしてやる!

「桜花火!」

 怪物のお腹の中に花びらの塊を、春のタマシイを放り込む。

「グ、グギャア────────」

 雄たけびが最高点に達する前に、怪物は熱エネルギーの核ごと爆散し、文字通り桜の花火となった。

 私は力尽きて、地上に降りるとそのまま仰向けに寝転ぶ。
 勝った。私は怪物から春を守り抜いたんだ。
 空雲から差し込む一筋の光が私を祝福してくれる。
 さらに、視界いっぱいに広がる桜の花びらが私を眠気へと誘った……。

────────────

「はっ!」

 私はベッドの上で体を飛び起こす。
 いつの間に寝ていたのだろう。どうやらここは学校の保健室のようだ。するとタイミングよく誰かが中に入ってきた。私はカーテンのしきりから顔を覗かせる。

「先生!」

 先生は私を見るとたちまち顔に笑顔を咲かせて、小走りで近づいてきた。流れに身を任せて私の胸に飛び込み、ぎゅっと抱きしめてくれた。

「遥さん。ああよかった。よく頑張りましたね」
「ありがとうございます」

 涙目で私を心配してくれてなんだか恥ずかしい。けど、心がポカポカ暖かい。

「きっと万年桜様のご加護があったからですね」
「はい。でもそれだけじゃありません。私を信じてくれたみんな、私を守ってくれた仲間のおかげでもあります」

 先生は涙を手で拭うと、にこやかな表情を私に向けた。私を見守ってくれる万年桜様がいて、心配してくれる先生がいて、助けてくれる仲間がいて、ああ、私は幸せ者だ。
 すると、春戦士管理委員会から携帯に連絡が来た。
 私は今回の戦闘についての報告をする。

「遥。今回もご苦労だ。君たち春戦士のおかげで『春一季計画』も順調に進んでいる。次も頼むぞ」
「はい!」

 私が明るく返事をすると、携帯の中から相手の微笑がかすかに聞こえた。
 そして電話が切れた。

 私は一息つくと、改めて自分の役割を確認する。
 四十年前、地球温暖化の影響で世界はいわゆる終末期を迎えた。夏はマグマの中にいるように暑く、逆に冬は極寒の地へと変貌する。もはや人間には打つ手が無くなった。
 そんな時だった。科学の世界である一本の桜の大木に注目が集まる。
 それが万年桜様だった。
 万年桜様はいかなる気候においてもその美しさを保ったまま朽ちることはなかった。万年桜様の花びらには周囲の異常な熱エネルギーを核ごと浄化する作用があったのだ。人類に希望が再び訪れた。
 そしてすぐに『春一季計画』は実行された。
 簡単に言うと、一年の季節を春夏秋冬の四季から春の一季にかえることで地球温暖化の影響を受けずに済むようにしようというものだ。

 すぐさま人間は万年桜様の遺伝子を受け継いだ桜を世界中に植えることに成功した。ただ、それだけでは桜が花を咲かせる前に人間が滅んでしまう可能性がある。そこで熱エネルギーを何ヵ所かに凝縮し、時間稼ぎを試みた。
 しかし、それが別の事態を招く。
 ──怪物が生まれた。
 人間は焦りすぎたのだ。大規模な熱エネルギーの急激な凝縮は突然変異をもたらした。
 そして、最終的に残った一つの選択肢が闘うこと。
 万年桜様の花びらの浄化作用を利用し、春戦士を誕生させた。それは見事に成功し、私たちの代まで命を繋いでいった。
 浄化の力を持った桜たちは世界各地で咲き誇り、先人たちを称え続ける。
 私の役目はいまだ生き延びている怪物をやっつけること。みんなの意志を私は継いでいる。
 
 私が春を守るんだ。

 先生に別れを告げ、帰宅しようと学校を出る。
 すると、

「あ! お姉ちゃん!」

 なんと、さっき助けた少女が母親と手を繋ぎ、私のことを待っていた。少女に歩み寄り、腰を低く下げる。

「守ってくれてありがとっ! お姉ちゃん!」
「怪我は大丈夫?」
「うん!」

 少女はきらめく夕日の下で、とびきりの笑顔を見せてくれた。
 頭を何度も撫でてから、少女とも別れる。

 私が守れた笑顔は、私の生きる意味になる。
 怪物が滅ぶその時まで、私は闘い続ける。

 気付けば、街並みから桃色が姿を消している。桜たちは青い花びらのつぼみを実らせていた。もうすぐで五月。皐月桜が咲く季節だ。
 私は青春が息吹く音色を感じながら、また一歩足を踏み出した。

 私は遥。春とみんなの笑顔を守る、誇り高き春戦士だ。

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