雑談掲示板

ただのヲタク少女の雑談です【春季企画】
日時: 2023/12/27 18:41
名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳◆GHap51.yps (ID: WmKEiYPc)

 暗い話もたまにする。基本的ハイテンション。
 これだけ言わせて。

・ケンカすんなよ!!!!

 それだけ。

【速報】
 前のスマホがまさかの復活をとげました☆

*短編感想交流会のお知らせ
 今回の幹事は!
 そう!
 此のわ・た・s((殴殴殴殴

 概要  >>617
 参加者様>>618

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Re: ただのヲタク少女の雑談です【春季企画】 ( No.626 )
日時: 2022/04/30 23:50
名前: 枯水暁◆ytYskFWcig (ID: 6eyUga5Y)

『春季パーティー参加』

【出会いと温度と心の壁と】

「っくしゅ!」
 紫音(しおん)はくしゃみをした。花粉症だろうか? いや、そうではない。確かに春になって花の蕾は膨らみ、そして開花しているものもあるが、紫音は花粉症をまだ発症していない。

「暑くなったと思えば寒くなるし、なんなんだよ、もう!」
「紫音は寒がりだな」
「やまにぃはいいなー。冬の間ずっと薄着なのに風邪引かないんだもん」
「いや、その代わり俺は夏に弱い」

 彼らがいるのは学校の教室。紫音がやまにぃと呼んではいるものの、彼らは同級生であり、クラスメイトだ。やまにぃとはいわゆるあだ名に過ぎず、彼らの上下関係を表わす呼び名ではない。

「それにしてもさ、今年はやまにぃと一緒のクラスになれて良かったなー! 去年は別々だったから」
「そうだね。せっかく俺についてきたのに全然一緒にいられないって泣いてたね」
「は?! 泣いてないし!」
「はいはい」

 そう話す二人の近くに人はいない。二年になって生徒がシャッフルされたとはいえ、既にクラス内は複数のグループで分かれている。あるグループは他クラスや校庭に行き、あるグループは教室の隅に固まっている。別に彼らは嫌われているわけではないが、この状況は彼らがクラス内で孤立していることを表していた。しかし彼らはそれを気にすることなく、むしろ好都合だとばかりにずっと一緒にいる。

「あ、あの」

 無論、孤立しているのは彼らだけではない。彼らと友達にでもなろうと言うのか、一人の少女がやってきた。不幸にもグループの溜まり場に選ばれたエリアに自分の席があるこの少女は気まずそうに、人が少ないエリア、すなわち彼らから少し離れた場所でぽつんと立っていたのだ。

「あっ、その、わたし、結愛(ゆま)っていいます」

 顔を真っ赤にして黙ってしまった少女に、紫音はにこりと笑いかけた。

「初めましてかな? わたしは斎藤(さいとう) 紫音です」
「山間(やま) 陸(りく)です。結愛さんって呼べばいいかな? 結愛さんも一緒に話す?」

 陸もそれに続き、結愛が二人の間に入れるよう手招きする。結愛は顔を真っ赤にして頷いた。
「はい! あっ、星橋です!」
 随分と言葉足らずだが、おそらく星橋というのは苗字だろう。

「星橋結愛ちゃんかー。綺麗な名前だけど、画数多くて大変そうだね」
 冗談めかして笑いながら紫音が言うと、結愛は緊張がやや緩んだ顔で言った。
「そうなんです。テストとかだと名前書くだけで時間を取られるのでそれが辛くて……」
「あはは! わかるよ。私も星橋さんほどじゃないけど画数多いからさ。自分の名前は気に入ってるんだけど、しんどいんだよね」
 紫音はちらっと陸を見た。
「陸はいいよね。『陸』って名前はちょっとあれだけど、苗字なんて二秒あれば書けるでしょ?」
「そんなことない。紫音とは違って丁寧に書いてるから三秒は要る」
「ほら、三秒じゃない! っていうか、私とは違ってって何よ!」

 結愛は気まずそうに笑っている。自分は蚊帳の外だと感じているのだろう。無理もない。二人の会話を聴きながら話しかけるタイミングを見計らっていた結愛は、明らかな違和感に、もうとっくに気づいているのだろう。

「二人の帰り道って、どの方面ですか? もしよかったら」
「ごめんね」
 結愛が言い終わらないうちに、紫音はその申し出を断った。
「星橋さんと私たち、帰り道真逆だから」

 一瞬、しん、と静寂が包んだ。離れた場所から聞こえる騒がしい笑い声が静かな空間に流れ込む。

「は、ハイ」

 肯定と言うよりも承諾と言うよりも、ただの二音を奏でるように結愛は答えた。紫音は笑った。
「ごめんね、方向一緒だったら良かったのにね」

 ****

 結愛の背中を、紫音と陸は見た。彼らの帰り道は一本道だが、結愛が二人に気づく様子はない。
「……嘘ついちゃったね」
「嘘なんて、日頃からついてるじゃん。今更だよ」
「それは……。うん、それもそうだね」

 自分勝手なことを言っているようにも見える紫音の表情に、影が落ちた。

「仲良くなったって、どうせおれ達を受け入れられないよ」

 春は出会いの季節。世間はそう言って浮き足立つ者で溢れている。春と出会いを結びつけた作品だって多いだろう。

 しかし少数、出会いを望まぬ者も存在する。自らの世界に閉じこもり、外の世界へ踏み出すことを恐れる臆病者。

「うん、そうだね」

 これは彼らの物語。外部の人間が口を出すのは筋違い。

 さて、それはどうだろうか。彼らの背を押す第三者も必要なのではなかろうか。幼い彼らには、他者の助けが必要なのではなかろうか。

 彼らに互い以外の救いが訪れるのは、もう少し先の物語。

 ……そんな物語は、果たして存在するのかな。

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