リクエスト依頼・相談掲示板

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あなた様の作品にご助力を!
日時: 2017/09/16 15:37
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: hgzyUMgo)

こんにちは!赤色(っぽい色)が四つであかしと呼んでください!初めまして!

最近は読み専みたいなものになってしまいましたがその昔は色々と書いたりしておりました。
最近になって自分も書いてみたいような欲求が出てしまいましたので、この謎めいたスレッドを立てました。
ここの目的は、皆様を色んな形でサポートすることです。

正直なところ便利屋なのですが、僕にお手伝いできそうなものとして考えているものは以下の通りです。

1、読んで感想を述べること
2、もう少し厳密に、主観を排除して鑑定に近いことを行うこと
3、番外編のような短い物語の執筆代行
4、ただの相談相手

多分カキコのトレンド的に1や2が一番多くなる依頼だと思います。
詳しい諸注意は依頼が入る度に確認いたしますのでここでは割愛。
同様に依頼シートも依頼ごとに作る予定ですので割愛。
おそらく3が何なのかよく分からない人が多いのでその説明を。

小説って書いているうちに、登場人物に愛着がわいてくるじゃないですか。
そんな彼らの背景を掘り下げたいけれど本編の更新を考えるとそれどころじゃない、ってなりますよね?
どこかのタイミングでサブキャラクターの活躍する番外編を書きたいけれどそんな時間は無い、ストーリーは決まっているのだけれど……。
といった際に執筆を代行しますというものです。
他の書き手が書いたとなると、企画感も出ますし、何よりちょっと面白そうな感じしませんか?自分の知らないうちの子の姿を見れる、的な。
他にも短編の執筆代行も請け負います。
自分の書き手としての力は、そこまで優れてはいませんが、このサイトで並くらいの位置にはいるんじゃないかなと思います。経験がそこそこ長いから、というだけなんですけどね。

4はそのまま展開や表現などについての雑談相手みたいなものです。
作品に関わらない雑談は板違いですので、控えます。

そして最後に!二次創作は僕の専門外ですので今回は一括して取り扱いません。

とりあえず、わたくしのことを利用しようと考えていただきましたらまずは、自己紹介とどういったサポートがお望みなのかお教えください。その後こちらから詳細なシートをお送りします。

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Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.40 )
日時: 2017/10/08 19:53
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: IWueDQqG)

こんばんは。
どのような調子ですか?

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.41 )
日時: 2017/10/24 11:35
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: joK8LdJj)

いろんな方々、申し訳ございません。

ちょっとパソコンが壊れて修理に出していましたのでずっと顔も出せていませんでした……。

とりあえず、四季様のご依頼はデータ飛んだ分も含め、今月中に書き終わりますので、少々お待ちいただけると幸いです……。

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.42 )
日時: 2017/10/24 15:34
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: OZDnPV/M)

こんにちは、無事で何よりです。

ゆっくりで大丈夫です!

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.43 )
日時: 2017/10/24 15:51
名前: YCの人 ◆THVzcmzM.o (ID: 9/mZECQN)
参照: https://photos.app.goo.gl/VIe7t6bFYBQbEPsT2

>>38です。
電波様と流沢さんの後でいいです。
あと38のURLも私のキャラクターがいます。

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.44 )
日時: 2017/10/31 22:02
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: hgzyUMgo)

>>YCの人様
そうですね、とりあえず結構時間がかかってしまいそうですがおふた型の依頼をこなすことを先に考えさせていただきますね。

>>ヘキサ様
すみません、先日は立て込んでおり完全に見逃しておりました。
今からでもお手伝いできるなら返信くださると幸いです。

>>四季様
滑り込みセーフですが無事終わりました。
小分けにこちらにアップしていきますね。

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.45 )
日時: 2017/10/31 22:03
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: hgzyUMgo)


 開会式は例年と同じように、白から最も近い広場で行われた。主催が王である以上、開会の宣言を行うのだが、できるだけ城に近く、兵が有事に対応できる場所で行いたいという理由からだそうだ。今年は特に王女の護衛隊も忙しくしているので、いつもより警備は手薄と考えてもいい。そのため、いつも以上に国王直属の兵士は緊張して警備にあたっていた。
 普段であれば、王の後ろ側で民の顔を見ながらその様子を眺めているアンナだったが、今年は別。ほかの人々に紛れ、エリアスの隣で王の正面から開始の宣言を受け止めていた。周りの人々は、王様の言葉を真面目に聞いているため、アンナがすぐ近くにいることにあまり関心がないようだ。それもそうだろう、わざわざ国王直々に開会式に出てくれているのだ、私語を慎み、その御言葉を拝聴しないと失礼にもほどがある。
 その緊張感が唯一携わっていないのがアンナであり、退屈な実父のスピーチなど耳に届いていないようであった。周囲の様子をきょろきょろと見まわす。国民が事前に準備してきた、かぼちゃをくりぬいて作った装飾が王国いたるところに配置され、祭りを彩っている。遠くの方では自分の護衛隊の皆を筆頭にオリエンテーリングのチェックポイントの準備をしているのが辛うじて見える。エリアスはというと王の方を見ながらも、何となく緊張しているようであるなと、アンナは感じた。
 何か気になることが今日の催しの中にあるのだろうかとアンナは訝しむ。普段護衛されているからこそ察せられるのだが、何か危険な事態が起きた際に、自分を気にかけてくれている類の緊張感だとアンナにも分かった。
 これから城下を二人だけで回るというのだから、何事もないようにと緊張するのは当然かと、王女は一人納得する。その時だった。腰より低い位置から自分の今日の衣装のスカートが引っ張られるのを感じた。どうしたのだろうかとアンナは引っ張ってきた方向に視線をやる。そこには、一人の少年が首を傾げて立っていた。

「お姉ちゃん、王様の話はちゃんと聞かなきゃダメだ、ってうちの父ちゃんたち言ってたぞ」
「えっ、……ああ、そうね! ちゃんと聞くようにするわ、ありがとう」

 開会式のスピーチは大体終わりそうになっていたが、子供からこんなことを注意されるだなんてと、少しアンナは落ち込んだ。ヴァネッサがいなくて本当に良かったと心から安堵する。エリアスならば告げ口する心配もないだろう。
 アンナ自身目立ちたくもないのでありがたいが、今回ばかりはエリアスも「誰に口をきいているか分かっているのか」と少年を問いただすようなことはしなかった。それでも、慎重にこの少年のことを観察していた。が、それも一瞬のことで、ただの屈託ない一人の天使だと分かると、すぐに柔和な顔になり、国王の方へと向き直った。

「最後にだが、今年は私の娘も参加しているが、王女だからと気にしなくていい。アンナたっての希望で無礼講で参加してくれ」

 これで、長ったらしいお話も終わりかと、王女はホッと胸をなでおろす。少し心配だったが、父も「王女に必要以上に気を使う必要はない」という旨を伝えてくれたようで、それもアンナにとってありがたいことだった。
 先ほど私に注意した小さな男の子はどこに行ったのだろうか。少し辺りを見渡すと、すぐ近くのところで姉と思しき人物につかまっていた。今日は頑張ろうねと、二人で意気込んでいるようだった。何となくその様子が微笑ましくて、つい声をかけてしまう。

「さっきはありがとね」
「お、さっきの姉ちゃんか。いいよ、気にすんな!」
「ちょっと……あんたこの方がだれか分かってないの!?」

 お姉さんの方はどうもアンナのことを知っていたようで、なれなれしく話しかける弟の態度を指摘する。当の本人はどうして怒られているのか理解できておらず、首を傾げる。どうかしたのかと姉に問いかけると、姉は嘆息し、アンナへと頭を下げた。

「申し訳ございません、うちの弟が」
「いやいや、気にしないで。父上も、今日は無礼講でと言っていたでしょう? むしろその子みたいな態度の方が嬉しいわ」
「そうですか……」

 少し釈然としない様子だったが、お姉さんの方も納得してくれたようでアンナは顔を綻ばせた。ようやく弟の少年もアンナが誰なのか理解が追い付いたらしく、少しの間目を白黒させたが、アンナ本人が全く気にしていないことからすぐにさっきのような態度に戻った。
 少し騒がしくしてしまったため、次第にほかの人々の目も王女の方へと向かった。目の前の子供たちと話している様子を見ていた人たちの中には、どうせだからと自分も話しかけようと近づいてくる者が何人も現れた。

「ちょっと混雑しちゃいそうね。なるべく離れないでね、エリアス」
「ええ、分かっています王女」

 この行事を楽しみたい気持ちもあったが、それと同じようにせっかくの機会だからみんなとも話してみたい。アンナ自身強くそう思う。そのため、近寄ってきてくれた全員とできるだけ話すんだと、今日は決めていた。

「今日は楽しみにしてました!」
「まさか本当に王女様が来るなんてのう」
「それにしても、あんな小さかった王女様がこんなきれいに育つだなんて、時間の流れって早いわねえ」

 若い人から、ご老人、そして世話焼きなおばさん、さっき出会った子供たちなど、様々な人が王女のもとへと押し寄せる。誰もが、親しみを持って自分に話しかけてくれているのが目の色から分かるので、アンナ自身それを嬉しく思う。隣で控えているエリアスも、アンナが喜んでいるのが分かるようで、黙ってその様子を見守っていた。
 ふと、エリアスの目がアンナの足元に止まる。何かがちろちろと動いているように見えたからだ。何事かと思い目をやると、そこには一匹のトカゲがきょろきょろとあたりを見渡していた。赤と黒のコントラストが美しく、細身の体はとても妖艶だった。足元でちょろちょろと動くその姿にアンナも気づく。キャッと小さく悲鳴を上げて、エリアスの後ろに隠れる。可愛らしい襲撃者の正体に気が付くと、すぐさま顔を伏せて赤らめた。

「恥ずかしがらなくていいじゃない、女の子らしくて」

 柔和な態度のおばさんがそう笑いかけた。それもそうねと、アンナは落ち着きを取り戻す。普段自分がやんちゃな子供だと思っているヴァネッサもこの様子を見たら少しは女性らしいと思ってくれるかしらと考えたが、トカゲ一匹に情けないと言われるのがおちだと思ったのでやめた。

「それじゃ、皆さんもそろそろ行きませんか。私とエリアスも、当然狙うは一位ですから」
「王女様も大きく出たね、おれじゃ俺らも行こうか」
「いこいこー」
「王女様にも負けませんよ」
「一位になったらどんなお願いしようかしら」

 アンナの号令とともに、野次馬に過ぎなかった国民たちが動き出す。人を動かす力というのが、アンナにも備わっているのだなとエリアスは感心する。それもそうだ、ヴァネッサが厳しいのは王女を思ってのこと、自分も王女に忠誠を誓っており、癖の強いノアもジェシカもアンナのことを強く慕っている。カリスマ性や威厳といったものはまだまだ見られない、けれども王女には優しさと人柄で人民を引き付ける魅力がある。
 だからこそ、お守りしなくてはならない。そう思っていると、王女はエリアスに向き直った。少しむっとしているがどうかしたのだろうかとエリアスは首を傾げる。

「聞こえなかったの? 目指すは優勝よ。行くわよ」
「はい、仰せのままに」

 初めに目指すチェックポイントはどこかと、王女は地図を広げた。南に数百メートル進んだ八百屋にて、初めのチェックポイントがあるようだ。何らかの課題も設けられているようである。

「じゃあ、急いでいくわよ」
「了解いたしました」

 それでは。そう言ってエリアスは王女の背中と膝の裏に手をかけ、持ち上げた。自分が不意に浮き上がったことよりも、その状況にアンナは狼狽した。恥ずかしさと照れとでアンナが押し黙っているうちに、エリアスは翼を翻す。

「飛ばします。下をかまないよう、喋らないようにしてください」
「う、うん」

 綺麗で、大きな羽を思い切り宙に打ち付けると、瞬時にエリアスは加速した。目的地まで飛んで向かっていくことは別段禁止されていない。そのため、同じように向かっている者たちも大勢いたが、そのような人々を一瞬のうちに追い抜いてしまう。目まぐるしく移り行く周囲の光景に、アンナは目が回ってしまう。頭がくらくらしているところで目線を上にあげると、すぐそばにエリアスの顔があった。
 これは心臓に悪い。そう思ったアンナは怖いふりをしてすぐさま目を閉じた。

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.46 )
日時: 2017/10/31 22:04
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: hgzyUMgo)


 北側のチェックポイントから始める人、一番遠いチェックポイントからあえて進む人など様々な人がいるが、南側のチェックポイントは比較的混雑していた。というのも、開会式の広場から最寄りのチェックポイントは北側で、そこが最も混むと予想した人々がこぞってこちら側に来るも、南側のチェックポイントは一つしかないからだ。
 他の方位には二つずつ、計七つチェックポイントがある。すべてのポイントにおいてスタンプを押し、お城の入口につくと、一位だけが王座に通してもらえる。そこで王様に直々にお願いができるのだ。些細なお願いならば、国王は賞品として叶えてくれる。

「ここではちょっとしたテストのようなものがあるようですね」
「そうね、何々ルールは……商品を組み合わせてぴったりの金額にしろ、というものね」
「なるほど、子供が解くことも考えて簡単な内容になっていますね」

 クイズの中で使われる通貨は金貨と銀貨と銅貨。銅貨十枚で銀貨一枚、その銀貨が五枚で金貨一枚と同じ価値になるようだ。そして、数々の野菜を使って金、銀、銅がそれぞれ七枚になるような値段になるよう整えるようである。
 そして、野菜は種類によって購入できる個数に制限がかかっているようである。

「折角だからこれは私に任せてもらえるかしら」
「分かりました。私は後ろで待っていますね」

 王女に一礼し、エリアスは数歩後ろに下がる。ほかの参加者の邪魔にならない位置に下がらなくてはならない。何があっても構わないように王女から目を離すことは無い。近くを通りがかったノアがエリアスにそっと近寄った。ほかの人たちに聞こえないようにそっとエリアスに耳打ちする。

「エリアス、来てるよ」
「どこにいる?」
「今は分からない。けど、さっきかなり王女の近くにいた。多分だけど、野次馬の中のだれかだったと思う」

 おそらく、すぐ隣に自分がいたから手出しできなかったのだろうとエリアスは推察する。王女が目的だというなら、護衛がいないところを狙うのが最も賢い選択だ。
 それにしても、ノアには気づかれているようだがエリアスに自分の魔気を隠し通せているということは、よっぽど相手は気配を消すことに長けているようだとエリアスも感心する。いや、ノアにしてもまだ正体を見破れていない以上、これ以上なく身を眩ませるのが得意なようだ。

「最悪の場合は例の作戦も視野に入れてよ」
「……わかっている。だが、そうしなくて済むように、もうしばらく頼んだぞ」
「わーかってるって」

 エリアスをリラックスさせるためにもあえて軽口をたたいてノアは立ち去った。一旦広場に戻って痕跡を辿るべきだと判断する。自分にならそれができる。

「できたわ、エリアス!」
「じゃ、僕は先行くね、王女にばれる前に」

 そう言ってノアは立ち去り、エリアスのもとにはスタンプをもらってきた王女の笑顔があった。次のチェックポイントはここね、と東側の噴水を地図上で指さした。

「それでは、もう一度失礼いたしますね」

 エリアスは先程同様に、アンナを持ち上げようと両手を伸ばす。先ほどのテレ九合記憶が蘇って、アンナは一気に紅潮した。ちょっと待ってと慌てながらエリアスの申し出を止めて見せた。

「せ、せっかくのお祭りだから自分の足と翼で楽しみたいの。い、いいで、しょ?」
「それもそうですね」

 過保護にしすぎると、自分で何かを成し遂げたという実感を感じられなくなってしまう。祭りを自分の体で楽しみたいとする王女に対し、自分が足代わりになるのはただのお節介でしかないとエリアスも理解した。
 王女には、めったにないこの機会を楽しんでもらいたい。そう思ったエリアスは彼女の意に添うようにした。

「それでは並んで飛んでいきましょうか。道は少し混雑しているようですので」
「ええ、そうしましょう」

 ほんの少しの落胆と、落ち着きを得たアンナは次のチェックポイントへと向かう。次の場所は到達するだけでスタンプがもらえるため、人が集まっていたとしてもそれほど混雑はしないだろうという判断だ。
 次のチェックポイントに向かう途中にもアンナはたくさんの人々から声をかけられた。時には優しそうな男性から応援され、時には真上から悪ガキに話しかけられ、意地悪なおじいさんに正面から皮肉を言われたりして。それでも、それら一つ一つが全ていとおしく、楽しいもののように彼女は笑い続けていた。それはきっと本心のようだとエリアスにはわかり、敵わないなと彼も息を漏らした。

「やはり王女はすごいですね」
「何が?」
「どんな人にも、どんな声にも眼を背けずに立派に応えていらっしゃって、どんな無礼も全て包み込んでしまう」

 ヴァネッサはまだまだ未熟だと常に口にするが、それはまだ幼いだけのことだと思う。彼女の素質はこんなにも、民の上に立つだけに相応しい。いや、きっと、だからこそ彼女は王女に厳しく接しているのだろうか、やはり自分は彼女にも敵わなさそうだと、エリアスは少し弱弱しくため息をついた。
 対して自分はどうだ、賊一人捕まえられず何が護衛隊長だというのだろうか。そもそも賊の存在も、昨日ノアが魔気を感知したためようやく知ることができた。自分の手柄ではない。そして護衛隊全員をもってしても未だにその賊の詳細はノア以外は一切、感知に優れたノアにしても微かな残痕を察知するだけにとどまっている。
 そう、昨日ジェシカからの指示で城下に買い物に出かけた彼は息を切らして帰ってきて、それを伝えてくれた。年に一度の大きな催し、それも王女が大層期待しているイベントだ。それを中止にするわけにもいかず厳戒態勢を敷いた上で執り行っているが、その程度の対応しかできていないことが己の無力を物語っている。このままでは、いつ王女が悪魔の軍門に下ってしまうか分かったものではない。

「そういう訳でもないわよ」
「えっ」
「ただ、私は今日という日をめいっぱい楽しんでるだけ。何を言われても受け入れてるとかじゃなくて、そう言ってくれる人もいるんだっていうのが新鮮で何もかも面白がってる、ただ我儘言ってる子供とそんなに変わらないわ」

 謙遜している、訳ではないのだろう。王女の瞳は場を取り繕うとしているのではなく、いつも爛漫に毎日を楽しんでいるのと同じ瞳をしていた。この時間も、彼女にとって輝かしい日々の一部なのだろう。大人になって、もっと不自由な生活になったら今日沢山話しかけられたことを思い出すのだろうか。

「それを言い始めたらエリアスの方がずっと凄いわ。さっきも、私を担いでいるのにほかのどの天使よりもずっと速く飛んで見せた。まだ若いのに、この国で一番を争うような天使だし、いつも私を助けて、寄り添ってくれる。あなた以上の護衛隊長はいないわ」

 彼女の言葉に、エリアスは目頭が熱くなるような思いだった。彼女はきっと、侵入してきた悪魔のことなど何も知らない。エリアスが胸の内で自責にかられていたこともきっと気が付いていない。それでも、その言葉は、冷え切っていた彼の心を溶かすような思いだった。
 王女は、自分を信頼している。そして自分には、必ず王女を助けてやると言えるだけの気概が、力がある。ならば今最も、王女の身から危険を遠ざけ、根絶する方法は例の作戦が一番なのではないだろうか。
 自分がいる以上、王女に仇為す者は王女に指一本触れさせない。決意を新たにしたエリアスは、神妙な面持ちで王女へと話しかけた。

「王女、少々お話がございます」

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.47 )
日時: 2017/10/31 22:05
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: hgzyUMgo)


 開会式のころには、まだ東から南へと昇り行く途中に過ぎなかった太陽が西に傾き始めた頃、多くの参加者が着々とオリエンテーションを進めていた。アンナとエリアスのペアもその例には漏れず、後は開会式上東側エリアのスタンプ二つを残すのみとなっていた。
 そこに至るまではいくつもの企画が用意されていた。同じようにくりぬかれた沢山のカボチャの装飾の中から一つだけ彫り方が異なるものを当てるゲーム、出題者の意に添うように、手持ちのお菓子を適切なお化け役の人に渡すことでいたずら、つまりは妨害を受けないようにするゲーム。そんなハロウィンらしさと老若男女楽しめるような工夫がなされた催しを、ジェシカ筆頭に企画したのだということをアンナは知っていた。自アンナが参加すると決めてから、ジェシカが急に運営としてやる気を出して、いつもより楽しいゲーム増やしちゃえ、と意気込んでいた。
 実際、今日という日はとても楽しくて、王女自身、自分が王女であることを忘れて、人々と一緒にこのお祭り騒ぎに興じていた。ずっと続いてくれたらいいのに、そう願うももう折り返し地点はとうに過ぎてしまっている。後チェックポイントは二つ。クリア者はまだ出ていないが、戦闘のプレイヤーは今しがた六つ目のチェックポイントについたと街中にアナウンスされた。

「エリアス、近道でもしない?」
「ですが、この辺りで近道といいますと裏路地くらいしか……」
「でも空の方が混雑してるし、人通りの少ない裏道を抜けた方が早そうよ」

 王女がそう言うのでしたら。渋い顔をしながらその提案をエリアスは受け入れた。この辺りの地形は大体頭に入れるようにしていたので、最短ルートは分からなくもない。

「取り壊しが決まった教会の中を通ることになるのですが……怒られませんかね」
「大丈夫よ、何かあっても私ならそんなに怒られないでしょ。……ヴァネッサ以外からは」

 かくいう彼女から怒られるのは慣れっこなので構わない。二人そろってその道に進む決心をした。他の参加者に見つからないようにそっと細い裏道へと入り込む。そのまま入り組んだ暗い道を抜けて古びた協会にたどり着く。管理人を失った協会の庭には雑草が生い茂り、窓にはツタが伸びていた。施錠する意味もないので開け放たれた裏口から入り込み、中を貫通するように正面玄関へと内部を駆け抜ける。
 と、そんな時だった。

「エリアス!」
「分かっています」

 日の光が辛うじて差し込んでいるだけの薄暗い教会の中が真っ赤に照らされた。彼らの背後から突如現れた紅蓮の炎が、まっすぐに二人に襲い掛かる。炎からはまがまがしい気配が感じ取られ、悪魔の発した代物だとは瞬時に判断できた。
 炎が王女に当たることがないようにと両者の間に立ちはだかり、帯刀した剣の柄に手をかける。刀身を抜いたかと思うと、目にも止まらぬ早業で巨大な火球をそのまま細切れにしてしまった。目にも止まらない神速の剣戟、その美しさには思わず襲撃者も拍手を漏らす。静謐な教会の中にぱちぱちと乾いた音が響く。

「名乗ってもらおうか」
「サラマンダー、そう呼ばれてるわ」

 現れたのは黒い布地に身を包んだ赤い肌の妖艶な悪魔だった。布地をまとう面積は少なく、下品な女だとエリアスは揶揄する。目は先程の炎のように、血よりも真っ赤に爛々と輝いている。その羽はというと、天使のそれとはもちろん異なるが、悪魔のものとも異なっており、燃え盛る炎が翼の形を成していた。

「目的はなんだ?」

 敵意を露にするエリアスを挑発するかのようにじらしながら、ゆっくりと彼女は自分の目的を口にした。王女を誘拐することだと。

「こちらの国の中心で、それができると思ったか」
「ここなら誰も見ていないし、できるんじゃないかしら」

 何ならこの教会ごと燃やしても構わないとサラマンダーは脅しをかける。大事な王女がどうなっても構わないのかと圧力をかけるようである。だが、そんなことができる訳はないとエリアスは一瞬のうちに看破する。そんな目立つことをすれば瞬時に自分が捕らえられて終わり、その上王女を殺したら彼女自身の目的が達成されない。

「あら、賢いのね」
「今退けば見逃してやる。すぐにお前たちの世界に帰れ」

 何をバカなことをと、サラマンダーは笑って見せる。そんな言葉に屈するくらいならば初めから攻め入っていないと強気に出ている。臨戦態勢を解くつもりはないらしく、彼女の右手に魔気が凝集していくのが感じ取れた。

「王女! 椅子の裏に隠れていてください!」

 向かい合った天使と悪魔は同時に空を駆けた。矢のように真っすぐ飛び掛かった白い閃光がサラマンダーに剣をふるった。白銀の刃が瞬き、悪魔を引き裂いた……かのように見えたがそれはただの炎の残り火に過ぎず、ゆらゆらと陽炎のように揺れて消える。
 押し殺していた気配がエリアスの背後から再び現れる。左手で支えながら、右手をエリアスへと向ける。手のひらには、先ほどよりも強力な火球が今か今かと発射を待っている。
 しかし、そんな小細工も護衛隊長たる彼には通じなかった。気配が再び現れたのを察知したその瞬間、瞬く間にその身を翻し、向き直る。瞬時に対応されたことに慌てたサラマンダーは咄嗟に火球を撃ちだしたが、少し遅かった。万全の体勢のエリアスは、彼女の全力の火球を難なく自分の聖気で抑え込んだ。
 そんな馬鹿なと動揺したサラマンダーは動きを止めた。それが彼女の最大最後の失策であった。聖気をまとわせた剣が彼女に襲い掛かる。何とかよけないと、そう思った彼女は咄嗟に自分を巻き添えに爆発を起こした。あまりに小規模の爆発だったのでエリアスに傷一つつかなかったが、爆風を利用したサラマンダーはエリアスの斬撃から難を逃れる。その分床に自身を叩きつけることになったが、すぐに体勢を立て直した。
 爆発の煙の中から、エリアスが地面に降り立った。今にも膝をつきそうなほどに疲弊したサラマンダーに向かい、とどめを刺そうと剣を振り上げる。しかし、剣が振り下ろされることは無かった。
 二人の間に、王女が立っていたからだ。

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.48 )
日時: 2017/10/31 22:05
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: hgzyUMgo)



「待って、エリアス。そこまでしなくてもいいわ。この人はあなたには敵わない」

 無駄な殺生はしないで欲しい。それが例え自分を狙った人だったとしても。このまま帰ってもらえば今日はもうこれ以上痛めつける必要はない。そう言いたげだ。

「それに、やっぱり私を囮にして誘い込んだ人を殺すのは、私が殺したみたいだし、可哀想なところもあって……」

 アンナを囮に使う、それこそが今回のサラマンダーをつり出した作戦だった。あえて人気の無いところに行くことで襲ってきてもらい、天界一のエリアスが返り討ちにする。アンナのパートナーが彼だったことで初めて成立する作戦。
 ただ、敵の強さが分からない以上むやみに王女を危険にさらしたくないというエリアスの反対により今朝の段階では実行するつもりはなかった。しかし、最終的にはエリアスの指示により実行されることとなった。一応あらかじめ王女に確認をとってからだったが。

「初めは、自分が狙われていることにびっくりした。けど確かに、普段城から出ない私が今日はずっと街中にいるとなると狙うには絶好の機会だし、今日、私以外を狙う理由は無いからって納得した」

 けれど、おびき出した目的は殺すことではないのだとアンナは言い放つ。もっと平和に解決する道もあるはずだ、と。

「分かりました」

 そう言ってエリアスは剣を鞘に戻す。先ほどまでむき出しにしていた敵意も殺気も全て引っ込めて、自然体になった。

「そういう訳だ。王女の温情がかけられた以上、もう戦うつもりはない。さっさと失せろ」

 淡々と仕事を片付けるかのように、感情なくエリアスはサラマンダーに言い放つ。その言葉に、彼女の心の中の怒りの炎は、爆発したかのように燃え盛った。

「ふざけないで!」

 敵に情けをかけられたことによる激しい怒り、羞恥により、彼女の魔気は本来以上に膨れ上がる。綺麗な真紅の炎はたちまち彼女の心のうちのように、どす黒く染まった。めらめらと燃える黒い炎は教会を侵し、全てを真っ黒な灰へと還す。

「どうせ、どうせ無理なら全部ぶっ殺してやる」

 まるで断末魔の声のような鋭く、それでいて濁った雄たけびをあげて、全霊の黒炎を放出する。全てを飲み込もうとするようなその怒涛の魔炎は、まるで獰猛な悪魔のようにエリアス達に襲い掛かる。
 しかし、エリアスも、彼に守られるアンナも、何一つ臆することは無かった。

「救えないやつだ」

 そう言い放ったエリアスは王女の前に立ちはだかり、正面から炎と対峙する。そしてもう一度、先ほど鞘に戻した剣に手をかけ、アンナが瞬きする間に一閃した。彼の体から迸る聖なる力が炎を引き裂き、浄化する。光の力の奔流に飲み込まれて、サラマンダーの最後の炎は全て消え去った。

「終わりましたよ、王女」
「……死んじゃったの、彼女?」
「いえ、そういう訳でもないようです」

 そう言ってエリアスは足元をちょろちょろしているトカゲを一匹拾い上げた。赤と黒のコントラストが美しい、どこか見覚えのあるトカゲ。ちょっと考えてみるとすぐに分かった、開会式の時にアンナを驚かせたトカゲだ。

「おそらくこいつは悪魔ではなく魔界で育ったがゆえに魔力を取り込んで悪魔のようになったトカゲだったんでしょう」
「じゃあもう害はないの?」

 無いとは言えませんねとエリアスは渋い顔をした。とりあえず、安全だと言い切れない以上、辺境の土地で幽閉するのが妥当だとエリアスは言う。

「殺してはいませんし、本人の自爆の結果ですし王女が気に病むことはありませんよ」
「そうね、そう思うことにするわ」

 行きましょう、とエリアスはアンナに手を差し出した。やっぱりエリアスはすごいなあとアンナは思いなおす。今日何度かエリアスは自分をほめてくれたけれども、この人に仕えてもらえるだけの人間なのか、自分でも疑いたくなる。

「それにしても、今日は一段と強かったわね」
「それはそうでしょう。私の目の前でこの国の宝に手は出させませんよ」

 よくそんなことを口にできるなあと、言葉を失ったアンナは辛うじてそう呟いた。




 結果から言うとアンナたちのペアは三位という結果に終わった。上位五組はかなりの僅差だったようなので、サラマンダーがいなかったら自分たちが一位だったはずだとエリアスはアンナに頭を下げた。自分がもっと早く、件の者を対応できていればと、自責の念に苛まれているようである。

「別に気にしなくていいでしょう。王女は王女らしく今日を終えられたのだから私は構いません」
「ヴァネッサはそうかもしれませんが私としては……」

 聞けば一位のペアは、いつも役所で働き詰めの両親に休暇を与えるために王様にお願いしたのだという話だ。それも、開会式で元気よく話しかけてきたあの姉と弟だ。これを喜ばずしていられようか、自分が一位だったならばこんな風に喜べるようなこともきっと無かった。

「ま、それに格好いいエリアスも見れたことだし、良しとしようじゃない」
「今、何かおっしゃいましたか?」
「べっつにー」

 翻弄されるエリアスが昼間とは打って変わって可愛らしく、ついついからかってしまう。今日は散々エリアスに褒め殺され、ジェシカからは冷やかされたのだ。ちょっとぐらい意趣返ししても咎められないだろう。
 けれど、最後にたった一言ぐらい、素直に告げなくてはならないなと感じたアンナは二人の付き人に向き直る。昔から自分を支えてくれている、大事な二人に。

「エリアスも、ヴァネッサも、今日はありがとう」

 色々あったけど、これ以上なく楽しかった。
 それが彼女の、隠すことない、偽りなき本心であった。
 今日の夜空はきれいだなと、満天の星空を見上げて、アンナは明日という未来に思いを馳せた。

Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.49 )
日時: 2017/10/31 22:56
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: sE.KM5jw)

こんばんは。読ませていただきました。

書いていただき感謝です!お忙しい中、ありがとうございました!


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