雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 死(元猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/8までに延長 ( No.323 )
日時: 2012/07/08 19:03
名前: 玖龍◆7iyjK8Ih4Y

【 まほうつかいになりたい 】

 と書かれた古い紙きれが机の中から出てきた。お世辞にも上手とは言えないような幼い平仮名だった。自分にもこんな時代があったな、と、懐かしく思った。それだけ。

 幼稚園児の非現実的な将来の夢なんて叶う筈もない。叶う、叶わない、ではなく夢は持つことが大切なのだ、と教師は言ったが、現実主義の進路調査に「魔法使いになりたい」なんて書いたらふざけているのか、と怒鳴られるのだろう。大人なんて皆嘘吐きだ。
 溜息を吐いて、シャーペンをぶらぶらさせる作業に戻る。が、それもすぐに飽きて携帯電話を開くと、メールのアイコンが自己主張をしていた。兄貴からの、元気?、とだけ書かれたメールを読んで、携帯電話を閉じる。社会人の兄貴。自分で進路を決めて自分で勉強して自分で仕事を見つけて自分で生きている兄貴。
 ふと、兄貴はどうやって進路を決めたのだろうと思った。成績は中の下くらいで、無彩色の現実よりもカラフルなフィクションの世界の方が好きだった兄貴が、すんなり進路を決められる筈がない。
 携帯電話をもう一度開く。

兄貴は魔法使いになりたくなかった?(送信)
なりたかったから魔法使いになったんだよ。 (受信)

冗談を言うなら(笑)くらいつけてほしかった。
 一分もしないで帰ってきた笑えもしない文に、返信を打つ。

嘘付け (送信)
まあ、嘘だな。最初からそう思ってたわけじゃないから(笑)
社会人は皆魔法使いなんだってさ。時間をかけてアイディアを練った物には魔法がかかるんだ。それが形のない物でも。逆に言うと適当にやった仕事は誰のためにもならなくて、笑顔も信頼も売り上げも無いんだって。
会社に入った時に社長に言われた。
でも今お前に魔法使いになれなんて言ってもなー
どうせ進路にでも困ってんだろ? 決めるのはやりたいことが出来てからで良いんじゃないの?
下手に書いてそのまま進んで、適当に仕事をこなす人間になってほしくないからな。
どうせやるんだったら楽しいほうがいいし……適当にごまかしとけ(笑) (受信)

 今度は五分待った返信は、(笑)がついていたのに冗談のような内容ではなかった。
 大人は無責任で教師は嘘吐きで、夢なんてないし大学に行けるような金も学力もない、自分は卒業したら自殺でもするのだろうか。自分がさっきまで考えていたことが急に幼稚に見える。

 携帯電話を閉じ、放り出していたシャープペンを持ってプリントと向かい合う。あの頃とは違うきれいな字で、濃くはっきりと書いた。

「 魔法使いになりたい 」





あとがき

 三時間くらいで書いたものなのでクオリティが低いです。
 ばこーんとかずどーんとかの魔法とかなり離れた感じになりました。
 間に合ってます? 大丈夫でしょうか。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.324 )
日時: 2012/07/08 20:52
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


 紅は炎。
 蒼は水。
 翠は
 金は雷。
 藍は氷。
 白は光。
 黒は闇。
 大魔導師に勝る者無し。


title:No one is stronger than the greatest magicians


 山地に囲まれ、荒涼とした岩肌だらけの平野にも、もちろん街は存在する。
 古より、人が集まり、そこで暮らそうと思った時にこそ街は誕生するのだ。
 ただし、その街が長続きするのかは、その土地条件や人々の努力次第だろう。
 どれだけの人がいようと、何の取り柄もない街では長い間生き残れないだろうし、それならばむしろ食糧問題のために、多すぎる人口は邪魔になる。
 だが、裏を返すとどれほど過酷な環境であろうと、存在意義のある街ならば存続できるという訳だ。
 そして、その街もまさしくそんな街の代表例だった。
 ミネ・グルーヅ・モタイン、古き言葉で金の採れる山、という名前を持つこの街は、世界有数の金山を持っていた。
 それを最初に見つけた、大昔の遊牧民が、その金山を掘ることを生業とし始めたのが、きっかけだ。
 それ以来、数世代経った今でも、町民はせっせと採掘しているのだ。
 彼ら自身の魔法で――――。

 この世には、魔法と呼ばれる不思議な力が確かに存在していて、人々はそれを活用している。
 用途は、お使いから戦争にかけてさまざまな用途で使用される。
 魔法というものには、それを使うためのエネルギーが必要であり、大概がそれを魔力と読んでいる。
 しかし、言語によってその名前は様々で、魔力が公用語というだけで、土地によってはマナやMP、気などとその名が異なる場合もある。
 魔法は、何種類も開発されており、その性質によって色分けされている。
 紅が炎、蒼が水、翠がで金は雷、藍は氷で白が光、もしくは回復系統、黒はその他全ての雑多なものと闇の魔術だ。
 まあ、誰にでも修得できる、努力だけでお金のかからないお手軽な武器だが、やはり才能や得意不得意は存在する。
 魔力は、人間が持つことができるのには限界がある。
 そして、体の中に所有できる程度の魔力では、マッチ代わりに使う炎は扱えても、戦うには些か心許ない。
 それなのになぜ、戦争の道具として使える程の威力を発揮するのかというと、大気中の魔力を吸収して使役するのだ。
 その、吸収の能率の良さと、元から体に蓄えられた魔力が多ければ多いほど、より強い魔法を使えるようになる。
 そして、鍛練を重ね、詠唱の言霊を重ねることで、より複雑な魔法を使えるようになる。
 前者は才能が要り、後者は言わずとも分かるだろうが努力である。
 つまりは偉大な魔法使いや魔導師になるには、才能と努力が共に必要だということになる。
 こんな説明ばかりでもつまらないので、最後に一つだけ。
 この世には、大魔導師と呼ばれる魔法使いがいる。
 彼らは、全世界に七人しか居ない、各色のエキスパートであるのだとか。




「なあ、婆さん。いつものやつ頼むよ」

 西部劇にありそうな街の、とある一つの飲食店に一人の若者が入ってくるなりそう言い放った。
 鼻の頭や腕には泥がはねて渇いたのか、薄膜状に白い砂が貼りついていた。
 おそらく、つい先程まで金山でせっせと掘っていたのだろう、そして昼の休憩だ。
 気さくな話し方で分かる通り、店主の老いた女と青年は知り合いであった。
 この、金山で働いている正義感の強い性格のこの男は、この店の近所に住んでいて名をゼインと言った。
 この店の常連であり、自炊の苦手なゼインは、しょっちゅうここで朝昼晩のどれかはお世話になっている。
 いつもの、と言われた店主は、足下の棚から皿を取り出し、その後に背後の食材庫からパンを取り出した。
 そしてついでに分厚く切られた肉を取り出すと、あらかじめ熱しておいた鉄板の上に乗せた。
 肉に付いた脂が溶けだして、熱い鉄板の上で胃袋を刺激する音と匂いを生み出し、店中を満たした。
 これだよ、これ、と呟いて、ゼインは小さく舌なめずりして、焼き色がついていく肉を舐めるように見つめている。
 もう少しで焼き上がるから少しお待ちよ、と店主の女がたしなめても、涎が止まらないらしい。

「先にパン食っときな」
「あざっす」

 待ちきれないのだろうと悟った老女は、肉が焼けるよりも先に青年にパンを差し出した。
 待ってましたとばかりに彼は一気にそのパンに噛り付いた。
 何の味付けもされていない普通のパンなのだが、空腹ならばそれだってご馳走だ。
 見る見るうちにパンがゼインの胃に押し込まれていくうちに、生肉は次第にこんがりと焼けていく。
 そして、マスターの女がゼインに肉を出してやろうとしたその時、店の外で、何かが倒れる音がした。

「なあ、今ドサッて音がしたけど何なんだ?」
「分からん。ちょっとあんた私の代わりに見てきておくれよ」

 目の前の餌にお預けをくらった犬のように、無念そうな顔をしながらも、ゼインは席を立った。
 どうせ、ちょっと強めのが吹いたせいで荷物が倒れてしまった程度だろう。
 そのような、適当な予想を張り巡らせても当たる訳はなかった。
 そもそもこの青年は知っていたはずである、この店の主は必ず、届けられた荷物は店内にしまっておくと。
 それなのに、そのような結論を急いて決め付けたのは、それ以上の面倒事があってたまるかという意識があったからだ。
 事実そこには、予想通り、もしくは予想を上回る面倒が地に伏していた。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.325 )
日時: 2012/07/08 20:53
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM

「おわぁあ! 何だお前っ!」

 外に出てすぐに、男が発した言葉を、店主の女はしっかりと耳にした。
 かなりの驚きに包まれた叫び声であると共に、それほど恐れている声ではなさそうだ。
 杖を持ったならず者が来たのではなく、行き倒れた乞食でもいたんじゃないのかと思ったのだが、両方違っていた。
 ひどく狼狽してしまったかと思うと、ゼインが、仕方ないと言い、しゃがみこんだ。
 何かを掴んだかと思うと、それを引きずるようにし、精一杯の力を腕に込めて建物の中に運び込んだ。

 ゼインが運んできた男の格好は相当に変り者のようであった。
 無造作に見えるが、実はただの爆発した寝癖である黒髪、そして真っ黒なローブを羽織っている。
 歳はゼインと対して変わらないであろうその顔は、何だか酷く頼りなかった。
 腹を空かして行き倒れているせいなのだろうが、見るからに元気のない表情をしている。
 分かりやすくこちらの言葉で形容させてもらうならば、草食系のなよなよした奴、だ。
 そして極め付けに、手には魔導師の証明書である、足元から胸ぐらいまでの長さの魔法の杖を持っていた。
 修行の旅がよほど険しい道のりだったのか、先に挙げたローブはボロボロに擦り切れている。

「あんた、おい聞いてんのか?」

 年老いたマスターが慌てているのも知らずに、ゼインはと言うと彼を起こそうとその頬をひっぱたいていた。

「馬鹿もん、魔導師をはたく奴があるか」
「えっ!? 魔導師……って杖! マジかよ……」

 ここまで引き上げたくせに、今更になって杖に気付いたのかと、呆れる店主をさておき、ゼインはひどく驚いた。
 という訳で肩を揺するようにして起こすことに変えると、程なくして彼は目を覚ました。

「おっと、目が覚めたか?」
「えっと……こちらはどこでしょうか」
「ミネ・グルーヅ・モタインだよ。うちの店の前で倒れてたんだよ」

 目が覚めた彼の声を聞いたゼインは、危うく吹き出しそうになるのをどうにかこらえた。
 彼の声音やしゃべり方は、外観から想像した通りの、気弱でおどおどとしたようなものだったからだ。
 開かれた瞳も、偉そうな魔法使いのものではなく、ひ弱な小動物の方がよっぽど近いだろう。
 このような魔法使いがこの世の中に存在している、ということが驚きだった。

「あんた、よくそんな性格や態度で旅に出ようって思ったねぇ……」

 何日旅したのかは知らないが、何らかの事情で倒れるまでだと、それなりの日数であろう。
 しかも、外傷が見当たらないので倒れる原因となったのは、飢えか渇きか病かのいずれかだろう。
 万全の準備をした後の旅立ちの場合、そんなことになるのはかなりの日数を要するだろうと予測できる。
 そして前述の通り、外傷がないため、道中では山賊に会わなかった、もしくは全て無傷で倒したのだろう。
 だが、それはそれでとても強い驚きだ。

 確かに、旅をするような人は魔法使いや魔導師だけとは言え、それでも弱い人は弱い。
 山賊とは、旅の途中に立ち寄れる街へと続く街道やその周辺で待機しているはずなので、この街に来るならば、会わないでやり過ごすのは不可能な話なのだが、無傷で倒すのはもっと不可能なはずだ。
 きっと、どうにかして相手の目を欺いて街へと入場したのだろう。
 だって、大魔導師に勝る者は無いのだから。

「実は、ちょっと前にマギ・ヴィーヌの御殿に召された御師匠様からの、最後の修行でして」

 マギ・ヴィーヌに召された、それは魔法使いの死を意味している。
 マギ・ヴィーヌとは、古き言葉で魔法を司る女神という意味である。
 魔法使いは死んだら、自身の魔力に引きずられるようにして意識や魂も一緒に女神の御殿に運ばれるのだ。

「そうかい、冥福を祈るよ。セユ・アガイン」

 セユ・アガインはまた会いましょうという意味合いであり、死者に対してのみ使う。
 いずれ死後の世界でまた会えることを願います、という祈りが込められているのだ。

「一週間ぐらい、ずっと歩いていたんですよ」

 そのせいで飲み物も食料も無くなっちゃって……、と頼りなさげな表情で自分で呆れるような顔をした。
 金銭は一応あるようなので、普通に料理を注文した彼はカウンターに座った。
 ゼインはと言うと、店主が目を離した隙に、先にカウンターの方に腰掛けてまだ湯気の立ち上る厚い肉を食べていた。

「ほへは……俺はゼインって言うんだ。お前は?」

 最初、口に物を含みながら喋ろうとしたのだが、汚いからやめろと老いたマスターの睨み付けるような視線とあまりの喋り辛さに一度閉口し、口内のものを飲み込む。
 そしてもう一度口を開いた時には、素朴な質問を目の前の少年へと呼び掛けていた。

「僕は、ネロって言います」

 それだけ言うとネロも、出てきた料理に夢中になって手を出し始めた。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.326 )
日時: 2012/07/08 20:54
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


「ネロっていうのか、珍しいな。それに、黒い目も珍しいな」
「えぇ、黒い瞳にあやかって、ネロって名前を貰ったんです、師匠から」

 その、名前を師匠から授けられたという言葉に、少し胸の奥を針で突かれたような痛みを二人は感じた。
 この世界では、黒い目や黒い髪を持って生まれた子は忌み子として迫害される。
 天性の、生まれながらの闇の魔術師であるという象徴であるからだ。
 その昔、手に負えないほどに、心の中に闇が侵入した黒魔導師が暴れたせいで世界の崩壊寸前まで陥ったせいだとか。
 その魔導師が、生まれついた日から黒い瞳に光を宿らせ、後に生える髪も漆黒であったそうだ。
 それゆえ、世界の破滅の再来ではないかと怯え、人々は自らの息子娘であっても、忌み子ならば捨ててしまう。
 ただし中には、忌み子を正しく教育しようとする者もいるらしく、ネロの御師匠様もそのようなものだろう。

「じゃあ、あんたの師って……オスキュラスかい?」
「はい、おばさん。よく知ってますね」
「知り合いだったからね。あたしはフィートって名なんだけど、聞いたことないかい?」

 瞬間、ネロの表情がどこの誰が見ても分かるようなほどに爆発的に変わった。
 見知らぬ土地で助けてくれた恩人に対する重たい目付きから、もっと気さくで友好的な、歓迎的なものに変化したのだ。

「あなたがフィートさんだったんですか! それはこの街が平和なはずだ。あんな山賊がいるのに……」
「お前、山賊に会ったのか?」

 食後の余韻に浸り、ぼぉっとしていただけのゼインの表情も、瞬く間に変化した。
 山賊に会って身ぐるみを剥がれなかった者がいることにひどく興味津々のようだ。
 しかし、会ってはいないという意思表示のため、ネロはゆっくりとかぶりを振った。

「いえ、そうではなくて……よく師匠から話を伺ったものですから」
「なるほどな。そういえばあんたの師匠って何者? 聞く感じ、結構凄い人っぽいけ」

 ゼインは、結構凄い人っぽいけど? と繋げたかったのであろうが、それは叶わなかった。
 なぜなら、それを遮るほどに大きな音が周囲一体をつんざくように走り抜けたからだ。
 耳が痛いと言うより、身体中が振動するほどの、低くて重たい、爆発音。

 その爆発音に、一同は顔から血の気が引き、まさに顔面蒼白となってしまった。
 何事かと思って最初に飛び出したのはゼインで、頭に血が昇ったのか、ただの野次馬根性なのか、一目散に駆け出す。
 それを引き止めようとしたのだが、フィートは間に合わなかった。

「待ちな、ゼイン! ……って言って聞くようなたまじゃないなあいつは」

 そう言いながらフィートは、慌ててカウンターの方に引っ込んで何かを探すようにしゃがみこんだ。
 ネロが見守る中、フィートはごそごそと引き出しの辺りを探り続けている。
 いきなり、彼女は弾かれたようにしていきなり立ち上がった。

「ようやく見つかったよ。ここ何年も使ってなかったからね……」
「行くのですか?」
「当たり前さ。弟子一人で何とかなる相手じゃないからね」

 心配そうな目をして、不安そうな声音になっているネロを諭すようにしてフィートは杖を構えた。
 ついでにローブもどこかから取り出したようで、純白の絹のものを羽織っている。
 杖の上端に取り付けられた宝玉に魔力が流れ込み、強い閃光が屋内に迸る。

「オスキュラスがいないんじゃあ、あたしがいくしかないねぇ」

 苦笑いを浮かべた彼女は、可愛い愛弟子のためなら仕方ないと呟いて、低く小さな声で詠唱を始めた。
 ぶつぶつと唸るような魔術の詠唱と共に、杖には魔力が注ぎ込まれ、頭部の宝玉はより一層その光を強くした。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.327 )
日時: 2012/07/08 20:54
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


「光、汝我の眷属とならん! 瞬光〈ライトニング〉!」

 完全に、部屋の中をまばゆい閃光が埋め尽くしたかと思うと、その光はほんの一瞬だけ強くなる。
 強くなったその瞬間、フィートはその杖を横一文字に振るった。
 その瞬間、明るいだけの光に熱がこもったようになり、今まで堪え忍んでいたネロも、網膜を焼かれるような刺激に目を閉じた。

 光が去ったその時には、もうすでにフィートの姿はそこから消えてしまっていた。
 残されたのは、杖とローブ、そして服だけのネロ、そして店内に漂う、残存の魔力だけであった。




      *


 町外れの一角は、たかだか数刻の時を過ごしただけで、街から廃墟へとその姿を変えていた。
 ねじ曲げられて断ち切られた家の木材の割れ目はまだ真新しく、大層恐々としたものだ。
 多くの者は急いで避難した上、逃げ遅れた者も命からがら軽傷で済んでいたのが幸いだ。
 この場を蹂躙しているのは、付近にその活動領域を広げている山賊の首領格の連中だ。
 戦争が起こった時には国に雇われて、その絶大なる力を知らしめる圧倒的な大魔導師、だ。
 山賊の頭となる五傍星、紅、蒼、翠、金、藍の大魔導師である。

 大魔導師は正義の味方であると、信じて疑わない無知な民衆もいるが、それは間違いだ。
 強ければ誰もが正義ではない、むしろ強者こそが弱者を踏み躙るのが世の理というものだろう。
 事実、大魔導師はその者の器量に関わらず、強さだけで決定する。

 しかし、最強の魔導師の七人の全員が全員悪であるならば、世界は、政府は崩壊する。
 それを押さえているのが、白と黒の大魔導師だったのだ。
 炎や氷など、分かりやすく戦闘に適した属性の魔導師は世界の抑止力、そして光と闇の二大魔導師は彼らの抑止力。
 白や黒の者は、自分が死ぬ前に、自らの後継者に成り得る存在を見つけださねばならない。
 条件はこちらの場合たった一つだけであり、それは正義感を持っているか否かだ。
 力など、後からいくらでも付けることができるが、生まれついた時からの性というものは、後からは中々変わることはない。
 そして、先代の大魔導師が、次世代のそれを弟子に取り、育成するのだ。

 そして、現在教育途中の次世代光の大魔導師、それがゼインであった。

「で、まあそのお弟子さんはズタズタにやられました、と」

 嬉々としてそう笑ったのは、白銀の髪の毛の気さくそうな青年だ。
 無邪気な子供のように笑ってはいるが、内容が内容なだけに共感しがたい。
 目の前には、彼が直接手を下した同年代の男が転がっていた。
 銀髪の青年は、その服装から目の前で横たわる男が金山で働いていると一目で見抜いた。
 手に持った、タクト状の細く短い杖が青年の魔法で折られたせいで、もう反抗はできない。
 全身に打撲や切り傷のできあがったゼインは、苦しげに低く呻いて、睨むように大魔導師を睨んだ。

「翠の……大魔導師……ゼカか……?」
「まあね。瞳は藍色、髪の毛は銀だけど、魔力は翠っぽいらしいよ。だから見てくれがこんなでも翠の大魔導師さ」

 あっけらかんとした口調でゼカはそう答えた。
 もはや敵にならないゼインは恐れるどころか誠意を示すのすら億劫らしい。
 足元のゴミを眺めるようにして、街の破壊を他の奴らに任せっきりにして嘲り始める。

「それにしてもお前の師匠はどうした? 尻尾巻いて逃げてったのかな?」
「んな訳あるかよ。お前ら、師匠に勝てないくせに……」
「ま、一対一ならね」

 流石に五対一なら負けないし、と卑怯な手口をサラっと、当然のことのように口にした。
 必然的に、そういうのには目ざとく、耳ざといゼインは、即座に首を持ち上げて軽蔑の色を込めてその顔を眺める。

「まさか、目的は最初から……」
「まあね、黒の大魔導師亡き今、白を片付ける必要があってね」

 その説明を終えるのを見越していたかのようなタイミングで、他の四人が戻ってきた。
 恰幅の良い体型、褐色の肌を持つ中年男性、ローブが赤いことから、紅の者だと伺える。
 その次に降り立ったのは、青い瞳に冷酷な光を宿す、人魚や人形のように美しい女性、きっと藍の魔導師だ。
 彼女を追うようにして、見るからに正反対の性格をしていそうなブロンドの女も現れた。
 彼女の体表を、雷撃が走る様子は、ショートした配線のようである。
 一人、遅れをとって参ったのは、筋肉質の大男で、巨大な斧を構え、今にも振り回さんとしている。

「ま、五人の大魔導師が一人の魔導師に負けるなんて、相手が天才と呼ばれた黒魔導師でも有り得ないね」

 ぽつりと、ゼカはつい最近その訃報を知らせられた男のことを語りだした。
 その男は今まで世に出た中で最も強い黒の魔術師と畏怖されていた。
 後継者のことを誰にも知らせようとせず、それを隠したままに死んでいったのだ。
 もはや、その後継者を知っている者は、本人の他にはいないだろうと、ゼインは師たる女から教えられていた。

「とりあえず、彼女の理性を欠く手段の一つとして君の死を利用するけど悪く思わないでね」

 大気が喉をならすようにして、うなり声を上げているような爆音がした。
 そこいら中の空気がねじ曲げられ、強制的に螺旋を加えられていく音だ。
 一度だけ見たことがある、魔法で作られた巨大な大竜巻が大自然を飲み込む時と非常によく似ていると、ゼインは思い返した。

「バイバイ」

 友達に対して、また明日にでも会おうと約束するのとよく似た口振りで、ゼカは別れを告げる。
 巨大な空気の竜みたいなサイクロンが、ゼインを呑み込もうとしたその時、全員の目の前で光が弾けた。
 さながら光の大爆発であるそれは、の竜を包み込み、それを消し去った。
 魔法無効化魔法、光属性の中でも強力なそれを扱うのは、今の世では光の大魔導師ぐらいだ。

「あたしの弟子に、何しようとしてんのさ」

 ゼインの危機に、瞬光の魔術で現れたのは、フィートであった。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.328 )
日時: 2012/07/08 20:55
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


「これはこれはフィート様、お久しぶりにございます」

 フィート……つまりは光の大魔導師の出現に対して、五人を代表してゼカが恭しく一礼する。
 友好的な笑みをたたえてこそいるが、今しがた行った破壊活動は、友好の兆しなど見受けられない。
 宣戦布告、寝首を今にも掻いてやろうと舌なめずりする蛇のような微笑みだ。
 そのためにフィートはあからさまに顔をしかめて、白々しいと吐き捨てる。
 やはりそうくるのかと、目の前の五人の目付き、そして顔つきも変化した。

「それでは、死んで頂きましょう」
「最初から猫被らないでそうしてりゃ良いんだよ」

 元からそれを計画していたのであろう、ゼカの口から放たれた言葉に、気丈なフィートは強気に返す。
 この期に及んでもまだ強気でいられる老女に、金の大魔導師が侮蔑の笑みを浮かべる。
 抑止力として存在する白の大魔導師は確かに紅や蒼と比べると数段上の実力を有するだろうが、それも一対一においてのみの話なのである。
 白の場合は、他の全ての連中が結託し、共に天下を取りにくる状況を想定してはいない。

 しかし、それは白の場合は、なのだ。
 今日この瞬間に彼らがフィートを襲撃した一番の理由は黒の大魔導師が死んだという報せが入ったからだ。
 黒に至っては、白が窮地に陥るような敵でもあっても必ず勝てる実力を必要としている。
 つまりは、五人の大魔導師が集っても、必ず勝利できるような力を保持していないといけない。
 よって黒の大魔導師には大いなる責任が生じてしまうのだ。
 他の者を抑えつけるだけではなく、己の力に溺れないようにする責任が。

 それを完璧にこなしたのが、つい最近に天上に召されたオスキュラスという人物なのだ。
 彼は、世界の破滅の再来とも言われるほどの強力な闇の魔術師であり、その力は世界を崩そうとした太古の魔法使いよりも遥かに上だとの定評もあり、状況証拠的にそれも事実だと言われている。

「だけど黒は死んだ。老衰だ。そしてあなたは白だ、私には勝てても私達には勝てない」

 金髪をなびかせ、金の彼女は腰に手を当てて挑発に出る。
 勝利はほぼ確定しているが、あなどってはならない相手なのだ。
 末期の際に大魔法でも使って一人二人こちらの人員を欠いてくるかもしれない。
 となると、迂闊に近寄る訳にもいかないので間合いを取ったままに彼女は言霊を紡ぎ始める。

「…………雷鳴集いて監獄となる」

 微かに聞こえただけの呪文からフィートは、彼女が唱えようとしている魔法を察知する。
 全方位を取り囲む形状をした雷の監獄の錬成呪文であり、かなりの上位呪文でもある。

 取り囲まれたら袋叩きなのは目に見えた展開だ。
 だが、その目に見えた羨望にわざわざはまってやるかのようにフィートは立ち尽くしている。
 刹那の後に天空より飛来した黄金の稲妻が何十本も地面に突き刺さり、格子代わりになり、円形の牢屋が完成する。

「仕留めるわよ、皆」
「了解」
「オッケー」
「わかせて」
「当然だ」

 牢屋の番人が一気に勝負を片付けようと周りの者を急かすようにして呼び掛ける。
 了承の意を示す言葉が各々から飛び交い、皆が皆己の杖に魔力を宿した。
 紅く、蒼く、緑に、金に、藍に輝いたその様子を目にしたフィートはふと笑みを漏らした。
 本当に捕えたつもりでいるのかと。

 五色の閃光が空気を駆けるその瞬間、脳内で一瞬で詠唱を完了させた彼女は瞬光を発動した。
 瞬間、フィートの姿が消えた後にまばゆい光が辺りを埋め尽くす。
 閃光が雷撃の中心を射ぬき、その眩しすぎる光が晴れた底には、傷ついた老女など見当たらなかった。
 フィートは、いつしかそこから脱出していたのだ。

「瞬光か……」

 瞬光とは術者の肉体を光の森変換し、高速移動を可能にする光属性の上位魔法だ。
 魔法の発動している間は闇以外の全ての攻撃は一切通用しないので、あっさりと脱出できる。

「そうさ。あんたらもまだまだ若いな」
「うーん、それがどうなのって感じだけどね」

 瞬光は体全体を全く違うものに変換する、言うなれば奥義クラスの呪文。
 その消耗は一秒だけと言えどもかなりのもので、短時間に二度もそれを行使するなど、フィートにとっても荒技のはずだ。
 隠してはいるのだろうが、確実に彼女の息はすでに上がっているに違いない。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.329 )
日時: 2012/07/08 20:56
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


「弟子連れて逃げたらオッケーって魂胆だろうけど逃がさないよ」
「できるのか? お前達に?」

 得意げな表情で挑発するフィートに少しずつカリカリし始める五人の大魔導師。
 彼らは未だにフィートの意図していることに気付いていないようである。

「あたしはただの時間稼ぎさ。黒の大魔導師が来るまでのね」
「オスキュラスは死んだ。弟子に継承されただろうが、まだ成り立てほやほやの素人だろう。恐るるにたらんな」

 そんな事も分からないのかと言いたげな目を見て、フィートは目の前の一団が哀れに思えてきた。
 分かっていないのはどちらの方だと、嘆息しながら諭してやろうかと思ったが、年寄り臭いかと思い、開きかけた口をつぐむ。
 全く若者の早死になんて見ていられないと、苦笑混じりに頭を左右に振った。

「早いとこ実力見せて御覧よ、ネロ」

 地面に張った薄い氷が割れていくような、乾いた粉砕音が耳に響く。
 フィートと、彼女と敵対する五人の間の空間に縦方向に二メートルぐらいの亀裂が走る。
 空間内に亀裂が入る魔法なんてそう多くないため、そのような呪文を彼らはほとんど知らないために仰天した。
 唯一その術を知っているフィートは飄々としているが、ゼインまでもが驚いている始末だ。

 ちゃんと教えたじゃないかと、若い弟子に愚痴をこぼしながらフィートは解説を始める。
 瞬光が光属性の魔法で、高速移動するための、つまりは二点間を素早く移動する動的な術に対して、静的な闇の魔術。
 離れた二点間の空間をねじり、直接つないでしまう、大魔導師以外には使用を禁止された闇属性の禁術、黒穴〈ホール〉である。
 禁止するまでもなく、大魔導師クラスの魔法使いにしか使えないのだが、むやみに使用してはならないと自覚させるためにだけ、禁忌として名を馳せている。

 縦の亀裂から、今度は地面と水平な方向に亀裂が入り、どす黒い空間が垣間見える。
 その中から、一際強く輝く二つの点が鈍く光った。
 ネロの、漆黒の瞳だ――――。

「どうも、初めまして。この度黒の大魔導師に就任致しました、ネロと申します。大魔導師の皆皆様方、どうかよろしくお願い致します」

 恐ろしげな気配、それなのに関わらずネロは年端もいかない少年のあどけなさを残していた。
 にっこりと微笑んだその表情だけ見ると、ただの見習い魔法使いにしか見えないのだ。
 柔和な笑みには、大魔導師の威厳など、宿ったものではなく、見ている方が微笑み返しそうになるほどだ。
 しかしそれは外見だけの話であり、彼の恐ろしいまでの実力は、肌で感じている。
 ゾクゾクしてしまう魔力が、体から漏れだして周囲を取り囲んでしまっているほどだ。

「お前がか?」
「はい。若輩者ですが、精進したいと思います」

 ネロが言い終わるのと、ゼカが目配せするのとはほぼ同一のタイミングであった。
 ネロが言い終わったその後に、一斉に五人は杖を構えた。
 白と黒が揃ってしまったのなら、先に不意討ちで片方を潰せば良い。
 狙われたのは、明らかに経験が足りないだろうと推測されたネロだ。

「ごめんね、若輩者のまま死んどいて」

 今まさに、ネロへの集中砲火の口火が切られようとしたその瞬間に、彼らの腕は止まる。
 地べたに這いつくばっているゼインは、何事かと思って五人の侵入者が見上げた方向を目で追った。
 そこには、その存在感を重厚に示すほどのプレッシャーを持った扉がそびえていた。
 高さ百メートル、横幅三十メートルを、目測でゆうに凌駕するサイズの門に顔を引きつらせる。
 分厚い扉一枚隔てた向こうからは、まがまがしい災厄の気配が感じられた。

 黒の魔法とは闇の魔術であり、闇の魔術の本質は“魔”と呼ばれる者との契約だ。
 向こう側の、魔界と呼ばれし大帝国には闇の魔法使いと契約した異形の生物が住んでいる。

「このサイズ……龍でも召喚する気なの……」

 不安そうな声が抑えきれず、恐怖に震えた声で金の大魔導師は呟いた。
 心なしか足元もおぼつかないようで、震えているようである。
 その扉がゆっくりと開いていくにつれて、向こうにいるものの息遣いが聞こえてくる。
 突が吹くような、荒々しい吐息……。

 ゼカが気付いた時には、味方の軍勢は、全員がすでに肩を震わせていた。
 もちろんゼカも例外ではなく、震えは止まらないのだが、鼓舞しなくてどうすると無理矢理言い聞かせ、叫ぶ。
 動揺をひたすらに隠した凜とした声が響き上がり、まだいけると気持ちを高く持てた。

「落ち着け! 龍は、かつての闇の魔法使いを超えたオスキュラスでさえ三体が限界。三体なら俺たち五人で対応できる」

 どうせ見習い、召喚できても一体や二体と、高をくくった五人は詠唱を始める、先手必勝の言葉を信じて。

 しかしそれは徒労というものだった。

「……………………………………バカな」

 予想外の仰天の事実に、一同は完全に硬直してしまう。
 今度は、さしものフィートまでもが信じられないと天を仰いで呆然と立ちすくんでいる。
 こんな光景は、彼らにとってはお伽話や神話のような世界にしか存在しないと思っていた。

 完全に解き放たれた門扉からその姿を拝ませているのは、荘厳とした貌の巨龍であった。
 鱗の一枚一枚が頑強で、まるで刃物のように鋭く、獲物たちの返り血に塗れながらも神々しく煌めいている。
 その眼は邪悪なようで、神聖でもあり、神にも悪魔のようにも見えた。
 牙の隙間から漏れだす吐息はさながら強のごとく大地をなでる。
 そして、空間をつんざき、天空はるか彼方まで響く特大の咆哮は、地響きを起こすほど。



 そんな龍が、赤青緑金白で五体も現れたのだ。



「それでは女神の判決をお伝えします」

 マギ・ヴィーヌからの勅命をしかとご理解下さいませ。
 ネロの声が、咆哮の後の静寂の中ぽつりと漂った。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.330 )
日時: 2012/07/08 20:57
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


「女神の……判決?」
「えぇ。あなた方の行動は他の誰にでもなく、女神への背信行為です。罪は重いですが、死にはしません」

 素の彼らを知っていたならば、その場面は絶対的にありえないような光景だったであろう。
 五人もの大魔導師が、たった一人の青年の前で意気消沈とした様子で、怯えるようにしているのだ。
 それを見ている青年は、確かに丁寧な言葉遣いなのだが、それのせいで威圧感を増しているように思えた。

 どれもこれも真後ろにいる龍がその状況を招いているのだろうが、実質のところはそうとも言い難い。
 確かに龍は魔術師などとは一線を画している存在なのだが、それでも五体の龍は召喚されたのだ。
 魔術師が召喚できる魔物は、絶対的に召喚者よりも弱い個体であるはずなのだ。
 なぜなら、魔物には召喚者の言うことを聞く義理はあっても義務は無く、抵抗されたら魔導師の命に関わる。
 そのため、ネロがその龍を召喚するためには彼らが確実に裏切らないと断言する自信、もしくは彼ら以上の強さが求められる。

 しかしだ、龍とは、体躯が大きければ大きいほど、その力は強くなる。
 鋼鉄の門から顔を覗かせる五体の巨龍はどう見ても龍王と見て間違いないだろう。
 つまりそれ五体全てが裏切らないと言い切れる、もしくは五体がまとめてかかってきても、ネロはねじ伏せられるのだ。
 後者は人間としては信じがたいのだが、その可能性が強いと誰もが悟っていた。

「それでは皆さんへの罰をここに宣言します。大魔導師の資格剥奪、及び全魔力の生涯没収です」

 その瞬間に空間内に凄まじい魔力の奔流が満ち満ち、周囲の気圧が高くなったかのように思われる。
 とたんに、ネロの銀髪はうねるようにしてざわめき立ち、黒々と変色していった。
 その姿は、まるで絶対的な力を持った、最高位に位置する帝王のように映るほどだ。

「生涯……没収?」

 そんなこと、どうやったらできるんだと掴み掛かりそうになるのを、ゼカは必死に堪えた。
 思い出したのだ、より強い魔力は弱いものをかき消し、龍族には魔力の発生を司る体内器官を壊す能力があると。
 龍の気の込められた吐息、すなわちブレスと呼ばれる代物には、そういう性能があるのだ。
 ふと目を配らせてみると、その先では五体のそれらは大口を開いてエネルギーを充填させている。

 発射準備オーライ。
 誰が言わなくても、それはすぐに察せられた。

「皆! 逃げ……」
「不可能です」

 尻尾を巻き、踵を返し、おめおめと逃走しようとするゼカ。
 周りの者にも避難の勧告をし、逃亡を促すために、叫ぶ。
 だがそれすらも言い終えないうちに、ネロはそんなことはできないと、易々と断言してみせた。

 大きな力が、一瞬にして炸裂する気配を、五人の大魔導師は文字通り体感してしまった。
 ローブを翻し、はためかせ、敗走するその背中に、容赦のないブレスが浴びせかけられる。
 その時に、彼らは自分の体から魔力が漏れだしていくのを悟った。
 大きなタンクの底に穴が開いたどころの話ではない、もはや底が抜けきってしまったかのような、だだ洩れの現象。
 それは全て、空気中に出た瞬間に龍の息吹きに燃やし尽くされてしまい、その存在が否定される。
 気付いた時には彼らは、ただの一般の“人間”になってしまい、意識を失った。

「全ては、女神の仰せのままに」

 胸の前で斜め十字を切った後に、神に対しての敬意を示すように天を仰いでネロは祈りの言葉を紡ぐ。
 この罪人たちにも、どうかこの先の未来に必ず安住の時を。
 歴代、最も心優しく、そして女神に最も忠実な黒の大魔導師の最初の仕事はそれだった、という話だ。



ようやくお終い。
長くなった上にラストが微妙で申し訳ないです。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.331 )
日時: 2012/07/09 11:18
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

あ……延長シテる……

どうしよ……チャレンジしよっかな?(魔法)

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.333 )
日時: 2012/07/15 22:35
名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
参照: 雑談では伊坂幸太郎が流行っているのだろうか……

一応纏めときます。

>>324->>330

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間終了! ( No.335 )
日時: 2012/07/17 18:26
名前: 猫(元: ◆GaDW7qeIec
参照: SAOアニメ始動! 今期夏最も期待しているぜ!  何? マイラヴァーのユウキとシノン様が出ない!? 馬鹿な……

第六回SS大会 エントリー作品一覧 

No1 瑚雲様作 【Magic of smile】 >>312-314
No2 那由汰様作 【魔法の言葉】 >>315-316 
No3 秋原かざや様作 【ささやかな魔法】 >>320
No4 蟻様作 【私が欲しがったまじない】 >>322 
No5 玖龍様作 【まほうつかいになりたい】 >>323
No6 月牙様作 【title:No one is stronger than the greatest magicians】 >>324-330
 
以上、全六作品エントリーです! 

Re: 第六回SS大会「魔法」 投票期間7/17~8/1まで ( No.336 )
日時: 2012/07/17 19:50
名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM

No1 瑚雲様作 【Magic of smile】

母集団少ないので一つだけになります。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投票期間7/17~8/1まで ( No.337 )
日時: 2012/07/19 23:21
名前: 猫(元: ◆GaDW7qeIec
参照: SAOアニメ始動! 今期夏最も期待しているぜ!  何? マイラヴァーのユウキとシノン様が出ない!? 馬鹿な……

月牙様作 【title:No one is stronger than the greatest magicians】と那由汰様作 【魔法の言葉】で。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投票期間7/17~8/1まで ( No.338 )
日時: 2012/07/20 00:01
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6

No1 瑚雲様作 【Magic of smile】 
No5 玖龍様作 【まほうつかいになりたい】 
No6 月牙様作 【title:No one is stronger than the greatest magicians】 

うちはこの3作品です。
月牙さんの作品は、特にラストがどうなるのか、どきどきしながら読みました。格好良かったです!!
なんだか、この続きも読んでみたい、そんな気持ちになるワクワクした作品でした。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投票期間7/17~8/1まで ( No.340 )
日時: 2012/08/01 17:45
名前: 猫(元: ◆GaDW7qeIec
参照: じょしらく、良いですね……あれ、20台かぁ。可愛いなぁ★

第六回SS大会「魔法」 結果発表

一位:瑚雲様作 【Magic of smile】 月牙様作 【title:No one is stronger than the greatest magicians】 同率
二位:那由汰様作 【魔法の言葉】 玖龍様作 【まほうつかいになりたい】 同率

えっと、投票数の問題で二位までしかありませんでした……
この企画もそろそろ新しいが必要でしょうかね(汗

今回入賞しなかった方々も次回頑張って下さいね♪

Re: 第六回SS大会「魔法」 結果発表 ( No.342 )
日時: 2012/08/14 15:00
名前: 猫(元: ◆GaDW7qeIec
参照: SAOアニメ始動! 今期夏最も期待しているぜ!  何? マイラヴァーのユウキとシノン様が出ない!? 馬鹿な……

大分、時間が空きましたが第七回大会を始めたいと思います。

お題は、「赤」です。

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.344 )
日時: 2012/08/15 21:05
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6

おおお、今回も面白そうなお題ですね。
落ち着いたら、ひょこっと投稿させていただきますので、よろしくおねがいしまーす☆ ぺこり。

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.346 )
日時: 2012/08/18 18:40
名前: 瑠奈

『ファイナル・インターネット』

『貴方は、終わります。』
パソコンの画面の深紅の文字をみて、瑠奈は呆然とした。
「お…わる?私が…」

私がこの文字を見る三時間前・・・
『深紅の小雪』
と言う、アプリに入りこんだ。
そう…。画面の中に。
画面の中は、不思議な世界だ。
深紅の雪が降り積もり。あれっ?
そういえば、人がいない?
家らしき物は、あるのに。

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.347 )
日時: 2012/08/18 19:36
名前: 瑠奈

道具まで、残されている。
私は家を、一つ一つ巡っていった。
さっきまで、人が、いたハズだ。
何故なら。
「グツグツ」
鍋が、点火されているから。強火だ。

もう一度、外を見てみた。
深紅の雪が積もっている。
近代的な民家は、まだ新しい。
それに、弥生時代くらい?の服をきた、若者…。
なぜ、今までいなかったのに?
この近代的な民家に、弥生時代くらいの人?
「誰だ。」
と、つぶやく様に言った彼の口元は、疲れきっていた。
「誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。」
どんどん、強い口調になっていった。私のアタマに、エコーがかかる。
「瑠奈。」
私が言う。
彼は、消えた。

私は、外に出た。
雪を掴んだ。柔らかく、溶けて赤い汁が手ににじむ。

『貴方は、終わります。』
画面から出た私。終わりました。
「誰だ。」
あの声が、アタマに響く。
私の真後ろには、彼がいた。
周りは、あの景が永久に続いている。
「瑠奈…。お前は、深紅の時代へ来た。お前は、終わる。」
彼の口が、ゆっくり開いていく。
「終わる。」
彼の…目。はなかった。骨と肉だけの彼が、私をにらむ。
「じゃ。」
彼が、消えた。まただ。このループが、永久に続くのか。
「私は…終わるのね。」

別に。終わってもいい。未練なんて無い。
ひきこもりで、ネットだけに頼っているに私なんか。

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.348 )
日時: 2012/08/24 13:24
名前: 瑠奈

「瑠奈~?起きなさいー」
これだけは、無くしたくない。母の声。
これも、なくした。

…私が彼の言うに『深紅の時代』に来た為に。
永久に続くあの景…。

もう……私は深紅の住民になりました。





ありがとうございました!
勝手に入ってすみません!
終わりました!

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.349 )
日時: 2012/09/03 16:39
名前: 猫 ◆GaDW7qeIec
参照: 神は言った! 大丈夫だ問題ない! キリト、上条の落とし神ツートップは無敵だ、と!

 『ブラッドリーテンペスタ(審判の日に鮮血は舞う)』

  

  西暦二千二百四十二年十二月二十八日。
  それは、知的生物として初めて地球を支配した生物。すなわち人類の滅びた日。

  白い雲の絨毯が、無限に敷き詰められている。永遠に続く雲海。その上に巨大な西洋古城の建造物が、幾つも聳え立つ。その建物は各々景観を崩さないためにか、純白の壁をしている。そんな中でも特に大きく、目立つ城が有った。 
  現在の建物にして、百階建て以上に値するだろうその巨大建築物の天辺から、白髪の長い顎鬚を蓄えた男が世界を見下ろす。彼の眼下に見えるのは、長大なビル郡が並ぶ大都会。朝も夜も決して眠らず、文明人と自分を称す愚者達が跋扈する下界。

  「人間は豊かになりすぎた。人間は知識を得すぎた。人間は……」

  人間の年齢にして齢八十にはなるだろう老いた顔をしかめ、彼は口唇を震わせながら言葉をつむぐ。そのしわがれた声には、確かな哀れみと悲しみの感情がにじみ出ていた。老父は青い瞳から一縷の涙を流し、最後に言葉を付け加える。

  「人間は世界の害悪でしかなくなった。滅ぼさねばならない」
   
  そのしわがれた声は重く深く、老人の悔恨と苦渋が滲み出ていた。当然だ。人間もまた彼の作った存在の一つなのだから。


Part2へ続く

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.350 )
日時: 2012/09/03 17:06
名前: 猫 ◆GaDW7qeIec
参照: 神は言った! 大丈夫だ問題ない! キリト、上条の落とし神ツートップは無敵だ、と!

Part2

  ここは人間界。天上の神々の存在など知る由もなく、自らを文明人と称し、世界を我が物顔で占領する者達の住まう場所。既に神が人間に与えた地球という領域はほとんど開拓され、彼ら人間は自分たちの許されぬ領域、宇宙をも掌握しようとしていた。

  「グッドモーニング、文明人の皆さん! 今日もまた新たなる文明人とわれわれは交流することに成功しました!
  彼等はアスペルタ人と名乗り、凄まじい肉体能力を持っていながら優しく、人間に好意的です!
  きっと、私達人類の馬車馬として役立ってくれるでしょう! 新たなる知的生命体アスペスタ人を皆様受け入れてやってください」

  進化して完全なスリーディーを体現した巨大スクリーンには、連日のように新たなる宇宙人の発見が放送される。そして、必ずニュースのリポーターは言うのだ。彼等は地球人に役立つから皆受け入れろと。
  だが、それは端的に言えば、地球人が他宇宙人と比べて、圧倒的な戦力と文明力を有するが故の支配的な言葉だ。決して友好的ではない種族は政府により秘匿され武力で脅し、餌付けして人間に従う状態になったら、マスコミに情報提示して放送させる。
  当然ながら、その陰険なやり取りを知る一般人はほとんどいない。世界政府の完璧な情報統制により、地球市民は皆が子供のようにニュースの内容を疑わず、鵜呑みにするのだ。しかし、そんな市民たちの中で連日放送されるこのニュースを穿った見方をする者がいる。

  「これでは、全宇宙がエントロピーを崩し、主たちが造り世界が崩壊してしまう。何としても地球人は排除せねば……」

  透き通るような白い肌をした華奢な若者だ。中性的で優しげな儚い顔立ちをした若者は、文明の利器を使わず何かと交信する。それは彼の主である神々だ。エントロピーとは感情値のことである。憎悪、恐怖、嫉妬といった負の感情。そして、愛や希望、慈悲といった正の感情の大きく二つ。それらが均衡を保ち世界は存在しているのだ。勿論、拮抗を崩せば世界は混沌し崩壊する。知力が高い生命体ほど感情を強く持つため、極端な感情を抱くと世界のエントロピーが傾きやすい。今、地球人が行っていることは極端に他知的生命体に恐怖を与える行為だ。このままでは負の方向に天秤が傾き、世界が終わってしまう。

  「はい、主よ。もう、一刻の猶予も許されないと思われます。どうか大命を!」
  「少し、考えさせてくれ……」

  切迫した様子で許可を要求する青年に対し、老人と思しき通信先の主が口をつむぐ。青年は人間を滅ぼすことに引け目を感じているのだと、すぐに理解する。当然だ。自身が作った存在なのだから簡単に消したくはないだろう。
  だが、それは青年とて同じだ。人間の姿は彼ら神々の尖兵である天使に限りなく似ている。ゆえに強大な知力と文明力を有しているのだ。しかし、彼等は知っている。一つの物に対する愛着によって、全てを失うことのむなしさを。最終的には護ろうとした物まで失う現実を。

  「主よ、人間は最早矯正はききません。我々、創造主が鉄槌を下すしか方法はないのです!」

  中性的な顔をした青年は必死に訴える。敬愛する神々が創った世界を維持するという使命感のために。

  「――分った、審判を下すことを許可する」

  老人のしわがれた声が鼓膜をたたく。青年は小さく拳をあげるが、それ以上に大きな虚無感が胸中を駆け巡ったのを感じ、歯噛みする。

  「もう、覚悟はできていたことではないか。何、我々が力を奮えば一瞬で終わる。痛みは時間が癒してくれる」

  青年は動揺した心に何度も言い聞かせる。そして、立つ。戦争でも討伐でもなく、ただの殺戮へと身を投じるために――

  「赤い、世界が赤い。主よ。我等が主。貴方方のために罪を感じ苦しむことは、私達の義務ですよね?」

  自らの主である神が、英断を決した瞬間。天使の視界は全て朱に染まった。紅、赤、朱。しばし一括し“赤色”と言われるそれらが、なぜ知的生物全般の血の色に適用されているのか。それは、天使や神にとって、罪と罰の象徴だからだ。死を恐れよ。命を慈しめ。世界にそれを見るということは、彼自身が神の創造物たる人間を滅ぼすことに、嫌悪感を感じていることの証明であり、彼等を長年見つめてきて感情移入していた結果でもある。
 
  「やらねばならぬのだ」
  
  律儀に人間生活を監視するために借りた自室から、玄関口を介して退室する天使。周りを見回すと、既に人々は外を歩き回っている。ペットの散歩をしている者や学校や職場へと向かっている者。談笑する者や既に仕事を始めている者達も居る。

  彼はこの景が嫌いではない。天使などよりよど強い個性を持った者達が、夫々思い思いの行動を取っている。夫々の思惑で。彼が人の世の調査に当り既に十年近くが過ぎていた。慣れ親しんだ存在も多数居る。
 
  そんなことを周りを見回しながら考えていると、突然恰幅の良い濁声の叔母さんが声を掛けてきた。

  「あらぁ、貴方仕事はどうしたのぉ?」
  「お早うございます。今日は休みですよお婆さん?」  

  彼女もまた赤く見える。だが、体格や声色で顔見知りだと認識し挨拶を交わす。いつも人の世話を焼こうとする優しい叔母さん。だが、殺さなければならない。自らが判断を急がせ、承諾を得たのだから。自分が一番槍にならなければい。強く心に言い聞かせる。

  「あら? アリアさん、何だか手が……」
  「すまない」

  彼の名はアリア。人類殲滅作戦の司令官として、神々より待命を受けた存在だ。神の許しと彼により放たれる攻撃が、作戦の合図と決定されている。神は決断した。次は自分の番。そう思い、力を振るうことを決め自らの指先に霊力を収束させていく。
  
  その青白く輝く燐光に訝しがる、知り合いの叔母さんに小さく彼は誤り力を解き放つ。一瞬にして目の前に居た女性は砕け散り、骨も残らず青炎(せいえん)の中に飲み込まれていった。舗装された道路が切り裂かれ、近くにあった家屋が真っ二つになる。ミシミシと音を立て襤褸アパートだった建造物は砕けていく。

Part3へ

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.351 )
日時: 2012/09/03 17:50
名前: 猫 ◆GaDW7qeIec
参照: 神は言った! 大丈夫だ問題ない! キリト、上条の落とし神ツートップは無敵だ、と!

Part3

  「何だ!?」
  「爆発か!?」
  「意味が分からねぇよ! ってか、これ死者とか出てんじゃねぇ!」
  「あの辺、俺のアパートじゃねぇか! 友紀は……親父は!?」

  そのあまりに現実感の無い光景を見て、人々はただ立ち竦む。各々が心配や恐怖、或いは死体や破壊という非日常への興味を口にする。そんな彼らの全ての言葉をアリアは砕いていく。彼の全身が光り輝き、青い稲妻が当たり一面を這い巡る。
  
  周りにあったあらゆる物を破壊していく。自分の借りていた宿も、いき付けのコンビにも。舗装された歩道橋も砕かれていく。人々は雷に飲み込まれると同時に、悲鳴を上げ倒れこみ灰と化す。

  男女問わず悲鳴が響き渡り、困窮に溢れた阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。だが、力を振るい始めたからには地球はすぐに滅ぶ。

  「人間達よ。すぐに全員殺してやろう」
  
――――――――――――ー――――

  彼が力を振るったことは、すぐに他の天使軍に伝わる。数秒後には軍の率いる巨大な母艦たちが、人間側の戦力からすれば突如として現れる。人間達にとっては未だ未知の領域にある技術で、姿を消して待機していたのだ。

  「総司令官! 突然、宇宙に戦艦が現れました! 見たことの無い機種です!」
  「数は!?」

  敵対型の好戦的な新宇宙人の出現かと、総司令官と呼ばれた男は臨戦態勢を引くが。余り緊迫した雰囲気ではない。幾度とない野蛮な宇宙人の襲撃を、高い技術を誇る地球の兵器で、看破してきたが故の余裕だろう。だが、彼の華々しい経歴も今日で終わりとなる。

  「総司令官! ザーク防衛戦線が壊滅しました!」  
  「…………」

  銀河系に常駐している宇宙艦隊が、報告が入って銃数秒で壊滅するのだ。地球の前線を守護する艦隊だ、勿論防御力や機動力といった落とされ辛さに繋がる性能は最高である戦艦を揃えている。オペレーターの報告に思考が追いつかず総司令官はしばし沈黙した。

  「馬鹿な。そんな馬鹿な! 我が地球軍は最強のはずっ!」

  第一防衛戦線、最精鋭部隊が一瞬で壊滅。援軍が来るのも間に合わずやられた。今まで信じてきた最強への自負が一瞬が砕けていく。総司令官の口唇は力なく、上の空となる。
 
  「数は? 数は幾つだ?」
  「敵軍の数は、十三。信じられません! それと日本の東京やイギリスのロンドンが正体不明の怪物に襲われているそうです!」

  十三。司令官が必死で口を動かし聞いた質問は、更に絶望をあおる結果としたならなかった。そしてすぐにオペレーターからは、また驚愕の情報が伝えられる。その襲撃の姿がモニターに移されると、そこには人に羽の生えた自分達が天使という存在にそっくりな者達が居るではないか。それらが正体不明の圧倒的なプラズマやレーザー、焔で見知った町町を蹂躙していく。カメラは現実しか映せない。

  「馬鹿な。これは我々にとって未曾有の危機なのでは……」
  「第二防衛戦線がほぼ壊滅しました!」

  事の深刻さを理解したと同時に、百戦錬磨の将である彼は理解した。この未曾有の進撃は今の人間の力では全てを出し切って求められない。懺悔し死を待つか、降伏が利く相手か試してみるか。十中八九白旗を振ったところで意味は有るまい。増援を送っても援軍が届く前に間違えなく戦線は破られていくだろう。止まった蚊を叩き殺すような容易さで、相手戦艦十三体は彼の軍を駆逐していく。

  「勝てる可能性はあると思うか?」
  「いえ、有りません」

  軍人なら世界を守るため最後まで戦え。上官の勝率に対する質問に関しては、勝てないと言うな。それはどこでも叩き込まれる常識のはずだ。だが、オペレーターは欠片の迷い無く、本音を口にした。総司令官もそれを許してくれるのを分かった上で。

  「キンズリーよ……長くこの職に居るが、本当に滅びる時は何者もあっさりよな」
  「はい、エズグード総司令。あぁ、我々の滅びの光のようです。これは神々の裁きなのでしょうか」

  哀愁に満ちた瞳でエズグードという名の司令官はつぶやく。同じく長く彼と付き添っていたキンズリーは、総司令ではなく名前で呼び頷く。それとほぼ同時の話だ。画面上に今までに無い強大なエネルギーの就職を確認したのは。無限、計測系を振り切るその力の総量は、当たれば間違えなく地球が滅びる数値だ。その光を確認したと同時に、天使ににた生物達は姿を消す。

  「神の裁きか。思えば地球を襲っていた輩はまるで天使だ。何の抵抗も出来ず、誰一人護れず……神というのも勝手なものだ」
  「本当ですね」

  鉄槌が下される。人々の懺悔も諦めも何もかも、それは飲み込んでいく。世界が焦土と化し、人も鳥も木々さえが息絶え消え去った。膨大な爆発が銀河系中を包む。真空空間では音すらしない。物悲しさ感じながら、地球から離脱したアリアは黙祷を捧げた。

  「眠れ、人よ」

――――――――――――ー――――

  
  西暦二千二百四十二年十二月二十八日。八時十分頃。寒空の下、人類は謎の巨大勢力により、十数分で滅ぼされる。血も骨も残らず、全て紅蓮の炎によって焼き尽くされた。高温で青く棚引く炎は全てを溶かしていき、地球人が築いた文明を跡形もなく焼き尽くした。

  天使達は愛すべき家族を殺すような、非業に満ちた顔で血の涙を流しながら力を奮い続けた。

  血の涙を流しての、神々による悲しき審判は終り、地球人は母星とともに一人の例外もなく死んだ。

  「空しいですね。地球のあった場所が全て紅く見える……」
  「罪の感情がそうさせているのじゃアリア。彼ら人類全ての血があの空間を朱に染めておる」

  「……我々は間違っていたのでしょうか主よ?」
  「そうじゃな、おそらくは間違っていたのじゃな。どうしようもなくワシ等短慮じゃった――」

  赤は罪の色。
  何もかもが赤く見える今は、彼らが罪に溢れているからだろう。神は懺悔した。何も考えず人を作ったことを――

  地球だった場所が赤に覆われている。そして、自らたちも赤にまみれているのだ。

  罪に溢れている。世界が――
  人も神も過ちを繰り返す愚かな生き物なのだろう。
  人は傲慢でさかしいだけだが、神々はさらに強大な力を持っていることを鑑みれば、更に赤いべきなのは神々なのか知れない。

END


  

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.352 )
日時: 2012/08/21 10:07
名前: 猫 ◆GaDW7qeIec
参照: 神は言った! 大丈夫だ問題ない! キリト、上条の落とし神ツートップは無敵だ、と!

===あとがき===

久々の自分の作品ですが、本当に展開が速すぎて何がなんだかですね。
何だか途中で書く気力が(オイ
本当は、人間と天使側の血みどろの抗争とか、色々あったのです。
まったく、赤という物を感じさせない情けないつくりの作品になってしまった(涙
半端な気持ちで書くものじゃないですね……

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.353 )
日時: 2012/08/24 09:55
名前: 那由汰

「a colors」 第一話

「赤色・・・」
あたしはびっくりして振り向いた。
後ろには男の子がいて、ニコニコしながらあたしを見ていた。
「だ・・・だれ?」
制服から見るに3年生。
あたしは2年。
だからその人が誰かなんてまったく知らなかった。
れ?でも、見たことある・・・。
「ありゃ?しらない?ぼくの名前は籤形竜次(くじかたりゅうじ)。軽音部の部長なんだ。」
あああっ!思い出した!
「文化祭で暴力沙汰を起こして停学になってた人だ!!!」
大声で言ってしまい、あわてた。
怒られるかもと思ったのだ。
「あ・・・えと・・・あのぅ・・・」
どうする?どうする、鹿島鈴音!!
結果。
笑われた。
「あはははははっ!君、面白いね。」
面白い・・・?
そうかな?
「邪魔してごめん、それと――――――。頭、気をつけて。かびんがおちてくるよ・・・。」
そういうときびすを返してどこかにいってしまった。
・・・頭・・・?

≪つづく≫

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