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徒桜バーコード【〆切り】
日時: 2021/08/21 13:57
名前: ヨモツカミ (ID: oKgfAMd9)

徒桜バーコード-adazakurabarcode-


 ──死神の噂を知っているだろうか。

 それはただの少女の姿をしているだとか、少年の姿をしているだとか。とても誰かをころせそうには見えない子供なのに、もう数え切れないほどのカイヤナイトや研究員がころされいるらしい。

***

って、感じでいちいち? 指名? で也をやりたいなと思ってスレ立てしました。
関係が面白そうだったら本編に組み込ませてもらおうかと予定しています。が、もちろん本編に出されるの嫌だったら無理にとは言わないです。読者参加型小説にしたいので、できれば協力よろしくお願いします。

・複雑ファジーで連載している「継ぎ接ぎバーコード」や「AnotherBarcode」の世界観を元に作っていますが、それらの作品を読んでいなくても楽しめるように作っております。これをきっかけに本編に興味を持っていただきたいと考えております。
・ここで作っていただいた也のキャラを、私が気に入ったら本編でも使わせて頂きたいとか考えています。その場合私の解釈で動かさせていただくので、多少キャラの解釈違いが起こると思うので、それが嫌でしたらおっしゃってください。


***

正体不明の少女との出会いから始まります。
あなたは会話やストーリーの中で少女の正体を探っていってください。
死ネタ、流血、残酷描写、暴力表現ありです。
世界観を簡単に言うとダークファンタジーで、戦闘もありますが、回避することも可能。
バーコードという科学実験で生み出された生物と人間の対立、みたいな話です。

***

 自らを死神と呼ぶ少女。嘘くさい笑顔。自らの運命。歪な魂。
 泥にまみれて、踏み躙られて、血に汚れて。
 それでも生きたいと願うなら、“死神”の手を取れ。

***

>>1 キャラ選択①~⑤
>>7-9 キャラシート

>>10 世界観
>>11 用語説明
>>21 世界観2

***

①日馬さん(双子・兄)>>42
②心さん(双子・弟)>>43
③ヨモツカミ(研究員の息子)>>23
④黒狐さん(クリムゾン)>>30
⑤紫月さん(群青バーコード)>>22


目次
【紫月さん編】>>26-29>>31
>>33-35>>37-41>>45-46>>49>>53
>>57>>59-62>>64>>69>>70>>76
>>77>>79>>82>>84>>87>>90>>93
>>94>>96>>98
【黒狐さん編】>>48>>52>>55>>66>>68
>>72>>75
【日馬さん・心さん編】>>56>>58>>63
>>65>>71>>78>>80>>83>>85>>88-89
>>91>>92>>95>>97

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10



Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.61 )
日時: 2021/02/02 17:28
名前: ヨモツカミ (ID: GC8OxdMB)

>>60 紫月さん 続き

 小さな悲鳴。それからある程度の質量があるものが崩れ落ちる音。でも、次から次へと有象無象。
 銃撃は痛いから嫌だとは思ったものの、うまく避けきれなかった。発砲音がやかましいところも好きじゃない。
 四肢が撃ち抜かれて、立っていられなくなったところに、勝ち誇った様に注ぎ込まれる弾丸の嵐。硝煙の臭いが辺りに広がる。
 歓声。そして数秒後に悲鳴。バケモノだ。誰かがそう言う。
 ええ、その通りだよ。
 そうやって笑って、残りも片付ける。
 辺りが静かになった。
 さあ、帰ろう。何事もなかったみたいに森の中を進んでいく。暗くて何も見えないし、迷いそうだと、少女は思う。
 ガサ、とすぐ近くで何かが動く気配がして、思わず足を止める。出てきたのは、ただの猫だった。こちらをひどく警戒している、しなやかな四肢の足運びを見て、何かに似ていると思った。撫でたいと思って接近すると、シャーッと威嚇されてしまう。しばらく睨み合っていたが、猫のほうが興味を失ったみたいに去っていった。
 猫。そうだ、あの少年に似ていた。でも彼は、ただの猫で終わらないだろう。彼の秘めるものは、もっと気高く、力強い生命力。とある物語の百獣の王の姿が浮かんだが、それとはまた違う。もっと、仄暗いもの。そうだ、その物語の悪役。それの纏う空気が、一番彼にふさわしい。

「私達が生きるためには、悪役にならざるを得ないものね」


***

 森の中にあった、古びた小屋。こんな山で態々暮らすヒトはいないと思うので、登山したヒトのための避難用の山小屋か、その他の用途があるのか。とりあえず、雨風を凌いで寝食をするのにちょうど良かったので、ロストとエルファバは少しの間、ここを勝手に借りて生活していた。
 血のあとを拭き取って、まだ出血の止まってない傷は消毒して止血。体中の傷には薬を塗りこんで。消毒液や薬が多少傷に滲みたかもしれないが、ロストは慣れた手付きで少年の傷の手当を済ませた。

「ふふん。無駄に包帯を消費しすぎることもなく、手際よく熟れた手付きに驚いたか? ミイラ男にでもされるかと思っていたのかもしれないが、ワタシは消毒液も薬も湿布も包帯も無駄に使い過ぎないんだ。勿体無いからな」

 さて、疲れたから寝る準備でもしようか。そう思ってロストは立ち上がる。自分よりもこの少年にこそ休息が必要だろう。何か食べさせて、さっさと寝かせて、さっさと傷を治すべきだ。
 そんなことを考えていると、コンコンココンコン、と特殊なノックの仕方でドアを叩く音がした。エルファバが帰ってきたのだ。これは、万が一見知らぬ者がドアを叩いたときにすぐに警戒態勢に入れるように、ロストとエルファバで、扉一枚挟んでいてもお互いであることがわかるようにと決めた、2人にしかわからない合図のようなものだった。


【情報】
・あなたはとりあえずロストに手当をしてもらって、薬や消毒液が滲みるかもしれないが、銃創などが剥き出しの状態ではなくなったし、夜風の当たらない室内に移動できたので、さっきの状態より楽にはなっただろう。

・小屋の中は弱めの灯りで照らされている。机と椅子、暖炉、二人分の寝床、毛布数枚、非常食的なもの、水、とかがある。暖炉は帰ってきた瞬間にロストが火をつけたので、暖かい。

・まだ体の傷が痛むかもしれないが、それよりも命懸けで逃亡したことや、沢山出血したこと、ついでに部屋が暖かいし、溜まっていた疲れがどっと押し寄せてきて、眠くなってきているかもしれない。

・そんなとき、突然少し変わったリズムで、小屋のドアがノックされた。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.62 )
日時: 2021/02/04 20:14
名前: 紫月 ◆GKjqe9uLRc (ID: w1UoqX1L)

>>61続き

 森の中にあった古びた小屋に案内され腰を下ろした僕はふ、と一息を吐く。周りを見渡して、眼を細めればやっとあの研究所から逃げきれたのだと不意に実感がわいてくる。こんな怪我を負わせられたがそれも別にどうでも良くなっていた。

 突然、傷口から痛みが走り顔を歪め、目線を下に向ければロストが慣れた手つきで血のあとを拭き取り止血、そして薬や消毒液を塗り込んでいた。
傷にしみる薬や消毒液に「ぁ、う」などと声を漏らしてしまうが自分は生きているのだとまた思えそれもまた涙ぐみそうになる。

 あっと言う間にあれ程あった傷の手当てが終わり眼を瞬かせていれば、
「ふふん。無駄に包帯を消費しすぎることもなく、手際よく熟れた手付きに驚いたか? ミイラ男にでもされるかと思っていたのかもしれないが、ワタシは消毒液も薬も湿布も包帯も無駄に使い過ぎないんだ。勿体無いからな」
とロストは言う。ずばり、と図星を指され何だかバツの悪く感じてしまう。
「……ほんと、きみがこんなにも……手当上手だって思わなかったから、驚いちゃった。その通り」と苦笑交じりに正直言って見て見た目で判断しすぎた……、ごめんと口にする。

 立ち上がったロストに合わせて顔を上げ、暖炉へと眼を開けた。もうもうと火が燃え、小屋内を温かくしている。
手当されたものの体の傷はやはり、痛むがそれよりも久し振りに感じる眠気と言うものが僕を包む込むような感じがする。
今まで居たあの場では眠気何てものはなく、どうやったら脱出できるのか、明日も僕は生きて居られるのか、と不安を抱え朝を迎えていた。眠るなんてこと出来なかった。
命懸けで逃亡したことや、沢山出血したこと、それから溜まりに溜まっていた疲れ、温かいこの部屋のせいで瞼が自然と下がってくる。

 

 そんな時コンコンココンコン、と特殊なノック音が鳴り身を委ねようとしていた眠気はパッと吹き飛ぶ。
「!」
まさか追手がエルファバを倒し、此処にたどり着いたのかと、冷や汗を伝わせれば何だか表情の綻んで見えるロストを見上げ「だ、だれなの……? エルファバ、な訳?」とたどたどしく訊く。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.63 )
日時: 2021/02/04 22:50
名前: 日馬 (ID: SG60l.ki)

(遅くなって&長くなってしまってすみません!おそらく初回だけなんで!次からはもうちょっと短くなるんで!すみません!)
>>56>>58 続き

「おはようございます、ご主人様」

 皆と声をそろえて朝の挨拶をする。自分は声は平たん、表情は能面のような笑顔で。しかし失礼のない程度のものだから、よっぽど機嫌が悪くなければ叱責を食らうことはないだろう。
 なにやら隣で弟がもぞもぞと動いていた時は少しヒヤリとしたが、運よく気づかれなかったようでそっと胸をなでおろす。
 にんまりと笑う男に心の中で舌を出す。毎朝のことながらこの時間は嫌だ。アイツのガマガエルのような見た目はいつ見ても気持ちが悪い。
 心の中で散々な言葉を吐くカナリアをよそに、男は――カラバッサはいつものように自分たちに鼓舞するような一言を言ったあと、カルバッサの一人娘であるエミーを呼んだ。娘にお人形をプレゼントするのだという。その時すでにカナリアの中で何か嫌な予感がしていたのだが、例のものを、そうカルバッサが言って使用人の一人が連れてきた“お人形”をみて、カナリアは思わず顔をゆがめそうになった。

 使用人が連れてきたソイツは明らかにおかしかった。瞳は濁り切った池のように淀み、光を失っている。それになにより、丈の長いドレスに隠されているがソイツには両足がなかった。それが弟のようにもとからないのか、それとも後から“奪い取られた”のか。
 そんなことはカナリアにはあずかり知らぬこと。だがこんな風になっているヤツをお人形だなんて言って自分の娘に渡すアイツも、こんな姿で生きているコイツも、そして何より同胞がこんな姿になっているにもかかわらずその姿に嫌悪し、ソレが弟でなかったと安心している自分も――。

「(あぁ、なんておぞましい)」

 そんな自分にあろうことかカラバッサは「頼んだ」と言ってとあるものを渡してきた。ヒワやエミーからは見えないように渡されたこの注射器の使い道なんぞ、言われずともわかる。
 自分に打て、と言っているのだ。これを、桜色の髪をした、彼女に。
 思わず唾を吐き捨てたくなる気持ちを抑え、微笑んで

「かしこまりました、ご主人様」

 主人に命じられたからにはその仕事をしなければならない。それがどんなものであっても。
 カナリアは命じられた通り、“お人形”が乗っている車いすを押し、エミーの部屋へと向かいながらも考える。
 ここにいるのはすべて弟のためだ。それ以上でもそれ以下でもない。確かに、カルバッサの言う通りに過ごしていればご飯が食べられてちゃんと清潔な寝床がもらえる。だけどカナリアにとってそれは全く価値がないものだった。同胞が傷つけられいつ我が身に降りかかるかという綱渡りのような日々は着々とカナリアの心をむしばんでいく。
 しかしそれでも心を壊すこともなくここで踏ん張っているのは、弟がつらい思いをしないから。弟がご飯を食べておいしいと微笑むから。苦痛に歪む表情ではなく穏やかな表情で弟が眠れるからだ。

「(じゃなきゃ、誰がこんな場所……!)」

 その時、エミーが笑って話しかけてきたことで一気に思考が現実に戻ってくる。何を考えてるんだボクは。
 エミーの笑顔を見ていると、少し困ってしまって何も言わずに微笑んで彼女を見た。

「(ボク、コイツちょっと苦手なんだよなぁ)」

 それはカルバッサのように憎しみが入り混じったものではなく、どうすれば良いのかわからないといった意味合いが強い。
 一時、エミーは能力によって自分に魅了された状態にあった。常ならば能力が切れた後カナリアを拒絶し離れるか、それをきっかけにずるずるとカナリアへ堕ち、まがい物の愛を嫌悪するカナリアは拒絶するかの二つなのだが、彼女は完全に堕ちることはなく、また能力が切れたにも拘らずこのように笑顔で話しかけてきた。
 今まででこのような反応をとられたことがなかったカナリアは完全に混乱していた。彼女に対する気持ちを一言で言うなら――

 “何コイツ怖い”

 である。
 だからあとからやってきた可愛い弟に会話はすべて任せ、カナリアは必要最低限のこと以外はしゃべらずただひたすらに車いすを押し続けた。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.64 )
日時: 2021/02/08 17:46
名前: ヨモツカミ (ID: LPN5HxR2)

>>62 紫月さん 続き

「だ、だれなの……? エルファバ、な訳?」

 少年が警戒しつつ声を上げるのが聞こえてきて、エルファバは扉の外でなんだか楽しくなった。

「そーでーす、エルファバさんでーす。ロストちゃん早く開けてー」
「はいはい、ただいま」

 ロストは慣れた様子で扉を開ける。

「ロストちゃん、スカーくん、ただいま!」

 スカー。その名を口にしながら、エルファバは少年の方を見て微笑む。そうだ。これが彼の名前であった。

「私の名前は“悪い魔女”って意味の、とある物語に出てくる悪役の名前。それで、スカーは“傷跡”ていう意味の、とある物語に出てくる悪役の獅子の名前だよ。素敵でしょ?」

 エルファバがスカーにそう笑いかける。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.65 )
日時: 2021/02/08 17:47
名前: ヨモツカミ (ID: LPN5HxR2)

>>58>>63 心ちゃんてぃむさん 続き
(別に長いのも遅くなるのも気にしないというか、急かしてないし、長いのも沢山読めて面白いし、気にしないでほしい)

 カナリアに話し掛けても、彼は微妙な反応しか返してくれない。いつものことであるが、やはり寂しく思う。

「ね、この子と何するの?」

 あとから来たヒワがそう訊ねてきた。エミーは困ったようにお人形さんの顔を見る。カラバッサの趣味を自分にまで押し付けないでほしい。可愛い服を着た人形を貰えば、確かに嬉しい。でも、これは生きている、本来意志のあるヒトだ。これを可愛がるのには無理がある。
 彼女の頬を突けば、ちゃんとふにふにで温かい。どうせなら、この子とは友達になりたい。なのに、生き物にしては瞳だけが不自然に濁っている。

「この子とおともだちになりたい。いろんなおはなしがしたいな。好きなたべもののコトとか、好きなおはなのおはなしをしたいな」

 部屋に着いたので、ドアをあけつつ、エミーはそう言った。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.66 )
日時: 2021/02/11 11:43
名前: 黒狐 (ID: 2fSLq59j)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

(/遅くなって申し訳ないです……!)
>>55 続き

 涙を流し、震えているヒオウギは恐ろしく。
 なぜかは自分でも理解し難い物のこれは多分、何の根拠もない、誰もが持っている直感と言う奴だ。どちらかと言えば怖がられるのは自分の方だと思うが。
 そうこう考えているうちに耳から耳へと抜かしていた言葉も終盤に差し掛かる。

「アキ。僕は君の味方だよ……だから、だから……」

 泣いているのに微笑んで、命乞いをするヒオウギはなんとなく何かを思い出させるようであったが、今自分は殺したいだけと言うのもはっきりしている。

「殺さないでくれって? 命乞いなんてよく出来たものだよ……。殺される恐れ……いや確信がある者にずかずかと歩み寄ってきてさあ。悩みなんて無いのが悩み位だね。幸い、俺はバーコードなのにヒトと協調出来たんだから」

 途中俺にヒト、とか言われただろうか。どちらにせよヒオウギは研究員の息子だし、この大問題もアイツの中では解決する。
 そう思いながら斧を下に置いて見せて、ヘラヘラと笑いながら言い。

「ヒオウギの力量次第じゃないの? 俺が正気になるには」

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.67 )
日時: 2021/02/11 18:16
名前: 紫月 ◆8OwaNc1pCE (ID: w1UoqX1L)

>>64続き

 
「そーでーす、エルファバさんでーす。ロストちゃん早く開けてー」
「はいはい、ただいま」

 扉の向こう側から楽しむような呑気で仕方が無い声が聞こえ、僕は顔を顰め自分の怯えた様子を楽しんでいるのだろうと考えれば萎められた風船のようにへろへろと寝っ転がり息を吐く。

 視界の端でロストは扉を開け入ってきたのはやはり桜色の髪が印象的な、エルファバだった。
「ああ、おかえ……」と言いかけたその次の瞬間、



 「ロストちゃん、スカーくん、ただいま!」

僕はかちんこちんっと石のように固まってしまう。スカ―くん、確かに彼女はそう自分の事を呼んだ。248.ではなくて、スカーと立派な名前で。
 微笑まれた僕は涙腺がまた緩み、涙を流しそうになる。ああ、堪えなくちゃ、泣くなんて……こんなところで泣くなんて恥ずかしい。
 
 「私の名前は“悪い魔女”って意味の、とある物語に出てくる悪役の名前。それで、スカーは“傷跡”ていう意味の、とある物語に出てくる悪役の獅子の名前だよ。素敵でしょ?」

 お揃いの悪役。傷跡。獅子。
ぴったりじゃないか、とエルファバにつられて笑いそうになった。心に在った虚無が、苦しみが、劣等感が、悲しさが苛立ちが。
何もかも、消え去ったように嬉しさで覆い被される。

 「…………すてき、だよ。ほんと、冴えてる…………ありがとうなんて、言わないつもりだったけど………あ、ありがと。う、うれしいって素直に、単純に、思った」

涙零れそうな真っ赤に染まった顔を俯かせながらそう言って。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.68 )
日時: 2021/02/20 00:25
名前: ヨモツカミ (ID: 5ySyUGFj)

(私も遅くなっちゃってごめんなさい。まあ、好きなペースでやっていきましょ)

>>66 黒さん 続き

「殺さないでくれって? 命乞いなんてよく出来たものだよ……。殺される恐れ……いや確信がある者にずかずかと歩み寄ってきてさあ。悩みなんて無いのが悩み位だね。幸い、俺はバーコードなのにヒトと協調出来たんだから」

 ヒオウギの顔から表情が消える。命乞い。バーコード。ほぼヒオウギの策略など悟られているようだ。殺人鬼にズカズカ寄っていく行動が、不自然過ぎたらしい。
 バクバクと、心臓が跳ねた。けれど、アキは斧を床に置いた。殺しに来ない。どうして。

「ヒオウギの力量次第じゃないの? 俺が正気になるには」

 そうやって、アキは笑ってる。彼の中の人間の部分が、ヒオウギに助けを求めている。そうだ。必ず救い出さなければ。
 ヒオウギはアキに飛びかかった。右腕を掴んで、頸動脈を押さえつけることができれば。それより先に、飛びかかられたことで、受け身も取れずに頭部を強打してくれれば。
 今のアキの状態というのは、強い衝撃を受けるとか、時間経過で元に戻せるものだ。馬鹿力のアキ相手では反撃されてしまうだろうか。彼の言うとおり、ヒオウギの力量次第──もう、一か八かだった。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.69 )
日時: 2021/02/20 00:50
名前: ヨモツカミ (ID: 5ySyUGFj)

>>67 紫月さん 続き

「…………すてき、だよ。ほんと、冴えてる…………ありがとうなんて、言わないつもりだったけど………あ、ありがと。う、うれしいって素直に、単純に、思った」

 エルファバは少し驚いて目を瞬かせた。名前を与えただけだ。それなのに、彼はこんなに嬉しそう。
 利用するだけ。使えなくなったら捨てる。そう考えていたはずなのに、キュ、と胸の奥が暖かくて締め付けられるような感覚。

「……ふふ、喜んでくれてよかった!」

 そんなわけないくせに。ロストは二人を冷たく見つめた。
 一時の利用し合う関係だったはずだ。そんなエルファバと、名前を貰った少年、改めスカー。二人は本当に嬉しいみたいで。彼らはとても明るい光のように、でもそれはひどく儚い──蛍だ。蛍の輝きに似ていると思った。

「よかった。ダサい名前だなんて言われたらどうしようかと思ってたの。改めてよろしくね、スカー」

 エルファバは少年に手を差し出す。
 これから地獄を共に歩むのだ。それはきっと、素晴らしい日々になる。死者に足を掴まれても、躓いてしまわぬように。スカーの手を引いて、彼の笑顔を守れたら。
 エルファバは、そんなふうに思った。

Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.70 )
日時: 2021/02/21 14:00
名前: 紫月 ◆8OwaNc1pCE (ID: w1UoqX1L)

>>69/続き

「……ふふ、喜んでくれてよかった!」

笑うエルファバに僕も堪えて居た涙を流して思い切りに目を伏せ唇に弧を描いた。笑う、これも初めてのような表情だった。初めてが増えて、嬉しいが増えて、思ってた以上に何だか胸の奥が締め付けられるように、でもそんな痛みは温かく優しく。
何故だろう、と先程から考えさせられるような感覚に頭を悩ませて考えてみても答えは見つからず、堂々巡りで。

「よかった。ダサい名前だなんて言われたらどうしようかと思ってたの。改めてよろしくね、スカー」
「ダサいだなんて、僕言わないよ」

差し出された手をジッと見つめ、震えた右手で掴む。

 気付けたのは、この心地良い空気のまま一緒に地獄を歩んでいくこと。先が思いやられ、不安に満ち溢れていたが実はそんなことではなく、素晴らしい日々になると言う事。生きていく為なら、自由の為なら彼女の横で少しばかり手駒になって戦っても良いと感じた、彼女に手を引かれ地獄を見ていけたら。

 それが一番良いのではと気付いた僕は目をゆっくり伏せ「これから宜しく、エルファバ」と言った。


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