雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 風死(元風猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(風猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波風を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.397 )
日時: 2012/10/24 20:03
名前: あおい


「初恋の痕跡」


 くろいろ。白を塗りつぶす単色。全部をかきけす、強い暗色。

 ああなんて幸せなんだろう、とわたしは思った。他人を想えるって素晴らしいことね。赦されるのではなく与えられているということを人は知らない。自分が幸せだということすら知らないで失くしていくのだ。明日の未来も知らぬままに。幸せは財産だろうか、否、幸せは消費財なのかもしれない。蓄えなどできず、なくなってしまった時の保証だって無いのだ。

 暖房の効いた部屋の窓ガラスにうつる冬空は、まるで暗い。炭か灰ででも描いたようだ。雲は仄暗い太陽のひかりさえ遮っていた。曇天は雨も降りそうに無いのに、乾燥した空気を底に底に沈めていくようだった。しかしながらその濁ったせかいの景観は美しくみえた。その眺めはわたしのこころは恍惚にも似た高揚と、しあわせに似た愛しさの他に、朝もやのような鈍い痛みを覚えさせた。満たしてゆくのは、なんだろう。カレンダーをめくれば、霜月の暦。すこし雑な黒いペンで書かれた丸――今日はあの人と、逢える日だ。

「酷薄なひとって焦燥感とか罪悪感が薄いらしいわよ」
「返す言葉もないけど記憶力には定評があるよ」

 普段より少し和らいだ表情の彼が来た。時計の針は予定の時間から三十度ほど傾いていた。屋外のテラスは相変わらず冷たくそこからしこに風が吹き抜ける。

「言い訳がましい。素直に遅れてごめんなさいって言えないの?」
「全然待ってないよとか少しは気の使えた表現も「じゃあ酷薄という表現は些か不適切な気がするわね。昇任きまったからってお偉いですね、ふふ」

わたしは彼を彼の名で呼んだことがない。象徴的な代名詞でしか呼ぶことはない。きっとそのことばを口にしてしまえば、たちまちわたしを包む魔法は解けてしまうような気がするからだ。彼はいつものように左手で頬杖をつく仕草をし、わたしをみつめる。端正な顔付きの彼の瞳はまっくろで、綺麗だなと純粋に思った。なにかと似ている、と思い出そうとすれば朝の光景を見ていた時の感情とそっくりだった。そこにはないものを見ている気分だった。

「ご注文はお決まりになりましたか」
「何がいい?」

 ふと彼がわたしに訊いた。おもむろにわたしはうつむき加減のまま、珈琲がいいと答えた。外から見る店内はあたたかいひかりに包まれていて、こぼれた客が寂しそうにまばらにテラスに腰掛けている。そもそも待ち合わせだから、客の多さに関係なくとも屋外で良かったのだけれど。冷たさがむしろ心地良かった。暫くして、湯気を立てた珈琲とミルクティーが運ばれた。皿の横には砂糖とミルクが転がっていた。砂糖を入れた。カラカラとプラスチックのスプーンが音を立てる。

「よくそんなもの飲めるね」黒いカップの中身を覗いて彼が嘲笑ぎみに言うので、「うるさい」と軽口を叩いた。
テラスを覆う植木の塀の向こうに少女と青年の姿が見えた。わたしが眺めているのに興味を示したのか彼もちらりとその方を向く。が、それほど興味を持つ対象でもなかったらしい。つまらなさそうに彼は視線を変えた。少女はまだ幼く十代後半なのだろう。さらさらとした細い黒髪が揺れていた。何かは知らないが、頬を染め、男に向けて微笑んでいた。

「覚えてる?」
「なにを、」
「わたしと、わたしに関わる全部。はじめて出合った時のこと」
「もちろん覚えてるよ、だから今日呼んだんだろう?」

「やっぱりあなたって、酷薄な人ね」
本当に。こくはくな、ひと。
「本当に覚えていない?ほんとはね、」

紡ごうとした言葉の先が出てこない。冷たい日の朝のことを、あなたは覚えていない。雪のちらつく、寒い寒い朝の日を、なんともない出来事を、あなたは覚えていない。――その日わたしは、朝早く眼が覚めた。なんとなしに、高校へ向こうにはまだまだ早くて、もいちど眠ろうと布団を被れど目は冴えきっていた。朝食を食べ、それから、まだまだ時間に余裕があったため通学路をゆったりとした足取りで歩いた。肩がぶつかったのは、まっくろの瞳のひとだった。ばらばらと床に散らばった荷物より、それを片付けようという理性より、そのひとみをじいっと見入ってしまっていたのだ。あなたに恋焦がれた少女を、あなたは知らない。

 冷め切った珈琲を口に含んで、それでもなお崩すことのない彼の表情が気に食わなかった。赤いリボンのプレゼントをテーブルに置いて笑って見せた。知らないとでも思っているんだろうか。

「結婚おめでと」

そしてさよなら。
彼は驚いた顔をした。それがすこし、嬉しかった。暗い空はその色を増し、そしてわたしのこころを、朱でも藍でも白でも碧でもない、黒い何かが塗りつぶしていった。しあわせなはずの感情を、筆で平坦に、ポスターを塗るように平等に。

それでもわたしはあの日から、あなたのことが好きだったの。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


こんばんは、少し前からみなさまのSSを拝見させていただいていたのですが、今回は書かせていただきました!
また参加できると嬉しいです。


Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.398 )
日時: 2012/11/05 22:50
名前: 葱◆pYghh90vi2

 『過去の鎖』

 黒い油性マーカーで、彼女は手にしていた小説の一ページを雑に塗りつぶした。 机の上のコーヒーに手を伸ばし、それを口に含む。

 馬鹿げている。

 こんな馬鹿なことをなぜやっていたのだろうと、自己嫌悪に浸りながらペンをあった場所へと戻す。 本当に、私という生き物は馬鹿だ。

 昔の自分に似た主人公が、友人を得て幸せになっていく話。 私にはそんなことなんてなかったし、ところどころに含まれるご都合主義には吐き気がした。
 部活をつくり、居場所を作り、美少女やイケメンと仲良くなり、親睦を深め、それで楽しい日々を過ごす。
 現実にそんなことなんてあるはずもないのに、ただけなされて落とされるだけなのに。 人を助けても報われない、何をやっても空回りする。
 努力では夢はかなわないし、私には夢を叶えられるような努力の才能もない。 真っ暗な世界を歩んできた私の心は、真っ黒に汚れた。

 現実は酷薄だ。 友人だったと思っている人間はすぐに私を切り捨て離れていく。 自分のみが危なくなれば、私をトカゲの尻尾のように切手自分は逃げるのだ。
 そしてその危機の矛先は私へと向けられ、私はただひたすら暗い闇に落ちていく。 一人になっても、落ちるのは止まらない。
 人とかかわらなければそれだけで私は闇へと引きづり込まれる。 人間は一人では生きられないというが、そういったせ解に変えたのはほかでもない人間。

 高々小説を読んだだけで、吐き気を催し気分が悪くなる。 
 なぜ私は、みんなに裏切られるのだろう?

 直後、悪寒が体中を駆け巡った。
 コーヒーに混ぜてあった毒に、体が気付いたらしい。 それがどうしたというのだろう、生きていても結局は苦しむだけなのに。
 ただ苦しいのは慣れっこだ。 まさかこれ以上の地獄なんて、あの世にあるとは到底思えない。 痛みも苦しみも、結局は生きているだけで受け続けるのだから。


 END


 単純に「黒」い話。

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.399 )
日時: 2012/10/24 16:59
名前: 碧◆ExGQrDul2E
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=29645

【この素敵な世界は、何色?】

「おはよう」
何気ない挨拶。偽善ともいえる笑顔。
なんで、偽善かって?
だって、しなきゃいけない意識、つまり、当たり前をやってるから。
それは、私の中では、偽善だ。
毎日、毎日が平凡で、面白くない。
その中で、私は夜が好き。
暗くて、静かな闇。誰も私に近づかない。近づくのは、黒い悪魔と白い夢。私が眠ると、入り込むのは白い夢。
夢の中なら、私の好きなように世界が創れて、悲しい事や苦しい事なんてない。たまに、悪夢が迷い込んでくるけど、そんなのは気にしない。
黒は、白が揉み消してくれるから。
現実では、そうはいかない。
毎日毎日、嫌な事や苦しい事の連打。
例えば、朝。傘を持ってないのに雨が降り、私が濡れた。
だけど、人々は見て見ぬふり。これが夢の中なら皆が手を貸してくれる。
それから、昼も。転んだせいで、お弁当がぐちゃぐちゃになってしまった。だけど、誰も優しくしてくれない。確かに、私が悪いけど。
少しは、手を貸してよ。たくさんの人がいるのに、まるで私は独りぼっち。

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.400 )
日時: 2012/10/24 17:06
名前: 碧◆ExGQrDul2E
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=29645

「そんなの、気にしなくていいよ」
母は、決まって優しく微笑みながら言う。
その笑顔、偽善?それとも、私を哀れに思った苦笑?
私はそう問いたくなる。
言えるわけがないけど。大人に逆らえないのが子供。
ちっぽけな存在なのに、大人達は、
「子供は私達の未来を担うのです!」
の一点張り。おかしいよ。
私に手を貸してすらくれない大人達が、私に頼るわけ?
その上、
「成績がよくないと、いい小学校や、大学に入れない」
分かってる。そんなの、子供が一番良く分かってるから。
わざわざ、言われなくたって。わかるっつーの。
そんな事を思っちゃう私。私も、白に頼る黒。つまり、大人みたいなものなのかな

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.401 )
日時: 2012/10/25 06:57
名前: 碧◆ExGQrDul2E
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=29645

>>400
に続きまして

そんな事は、どうでもいい。
どうせ、“オモテ” は、華やかに輝く白舞台。“ウラ” は、残酷で黒く染まった舞台裏。私は、ウラに生まれてきてしまったのだ。
そんなウラで、オモテを憧れても、意味は無い。
もし、オモテに生まれてきた人がいたとしたならば、私はその人に聞きたい。
「その素敵な世界は、何色?」
って。

「おはよう」
何気ない挨拶。偽善ともいえる笑顔。
また、リフレインされる……!
つまらない平凡な毎日が。
だけど、夜の白も、結局は偽りだった。
私は、素敵な世界の色を知りたい。
黒か、白か。


《END》

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.402 )
日時: 2012/10/25 00:03
名前: 遮犬◆ZdfFLHq5Yk

【暗がりの奥】


家出をした。
発端は何気ない出来事。親と些細なことで喧嘩して、思わず家を飛び出してしまっていた。
気付けば、公園の中にいた。誰もいない公園。家からそう遠くない距離にあるが、寂れた様子が夜のせいかどこか漂っていた。

肌寒さを身に染みながら、いつの間にか入っていた公園の中で立ち止まった。周りには昔ながらの遊具がぽつぽつとあるが、他に人はいない。一人になるには、絶好の居場所だと思った。

砂場の中で腰を下ろした。はぁ、と溜息を吐く。
どうしてこんなことになったのだろう。僕はそんな風に冷たい砂を肌に感じながら思った。
些細な出来事から、人は争う。どんな理由であろうが、他人から見れば本当にしょうもないことであろうが、当の本人達にとっては十分火種になるのだ。
そんなことを分かっていながらも、言ってしまった。心の奥底で僕は分かっているつもりでいた。言ってはいけない。自分に言い聞かせるかのようにそう念じたのも覚えている。

だけど、その感情は止められなかった。理由としては、未だに分からない。ついカッとなって言ってしまったのであろうが、僕自身は言いたくなかった。でも、不意に襲いかかる感情が止められなかったのだ。それが悔しくて、今ここにいるのだろうか。


砂を掴み、握り締める。無意識のことだったが、やがてその冷たさを手の平いっぱいに広がった後に開いた。砂は一瞬の内に同化していく。
暗闇の中で、僕は一人でいた。どういうことだか、不安になったのだ。

そういえばそうだ。この家出だって、元はといえばその不安だった。僕は怖かった。そう、一人でいることが。とても、怖かったのだ。

電灯が申し訳程度に一つ公園の真ん中に立っていた。よくこの電灯が邪魔で、サッカーなどをしたくても出来ず、不満げにしていた自分を思い出した。
けれど、今ではこの電灯が有難く思う。本当の暗闇だったら、僕は今頃どうなっていただろう。泣いていただろうか。そもそも、この公園に入ろうなどとは思わなかったはずだ。

奥の方に見える暗闇には電灯の光が照らされている。僕は今、ここにいて、それを見ている。独りだった。僕は、どういうわけだか独りでいた。


助けて、何て言えるはずもなかった。勇気を出して物を言えるなら、僕はとっくにそうしていただろう。
けれど、出来なかったから僕はもがいていたんだ。苦しむっていうのは、自分にしか結局は分からない。共感なんてものは全てを分かっていることではない。言ってしまえば、自分の苦しみは自分が一番よく分かっている。だけど、他の誰かにも分かって欲しい。だから人は共感するんだろうと思っていた。

「おい、お前何かムカつくんだよ」

不意に言われたこの言葉から始まったあの日のことを思い出す。それは突然だった。何もかもが突然。それはまるで伝染病のように広がり、僕はそれを甘んじて受け入れる他になかった。そうすることでしか、そこに居られなかったから。

もし僕がヒーローだったとして。とても格好よくて、強くて、誰からも信頼されるような人だったとして。
そう考えれば考えるほど、虚しくなる。後からだんだんと襲いかかる孤独と劣等感が全身に襲いかかる。嫌だ、逃げたい。怖い、助けて欲しい。

僕は願うばかりだった。神様に願うばかりで、僕は何もしちゃいなかった。僕は、たった一人孤独だと思い、自分で甘んじてその状況を受け入れていただけに過ぎなかった。



そろそろ肌寒くなってきた。特に厚着をしていなかった僕は、その時帰りたいと思ってしまった。
何を言っているんだ、僕は今家出をしているんだ、というつまらないプライドが重なり、耐えるように僕は体を丸めた。

季節は冬じゃないはずなのに、寒かった。肌寒くなってきた頃合いの季節ではあったが、ここまで寒くはなかったはずだ。
夜はこんなにも寒く、暗く、怖くて、寂しくて、孤独で、押し潰されそうで……どうしてここにいるのか、こんな寂しい場所にいるのか。

「助けて……欲しかったんだ」

不意に、そんなことを呟いていた。誰かがもしも聞いていたなら、分かってくれるだろうか。

「僕は、ただ、助けて欲しかったんだ……いい子でいるつもりだったけど、母さんと父さんはいつも忙しくて、僕は独りだった。でも、僕は耐えていたんだ。迷惑はかけたくないから。でも……本当は苦しくて、苦しくて、たまらなかった……。それを言えば、二人はどんな表情をするだろうって。僕は……」

そこで息が詰まる。涙が込み上げてきた。どうしてだろう。僕は……あぁ、そうか。僕は、泣いているんだ。泣いて……泣いて。ただそれだけで、心が安らぐ気がしたから。
些細なことなどではなかったんだ。僕はそう思うことにしていた。そう思うことで、楽になれたから。僕は普通なんだと、それが気休め程度には思えたから。

暗闇は僕を取り囲む。黒が周りを覆い、電灯の明かりがまばらに消えようとしていた。
冷たい砂場の感触が手に伝わらない。僕は一体どこにいるのかも分からなくなっていた。どうして僕は、こんなところで独り泣いているのか分からなかった。

「自分のことぐらい、自分でしなさい!」
「お前をそんな弱く育てた覚えはない! そんなもの、俺の息子なら見返してやれ!」
「どうして貴方はいっつもいっつも……!」

頭の中で反復する。言葉の刃物が刺さっていく。励ましているのか傷つけているのか分からない。僕は孤独に生きていくのだろうか。
どうしても、この瞬間、僕は"些細なことの発端"として、捉えることが出来なかった。無理だった。限界がいつの間にかきていたことを知った。
この場所に来て、考えて、やっと分かった自分に押し寄せるそれは、言葉として飛び出す。まるで、小さな子供のように。

「そんなの……嫌だ……! 嫌、だよぉ……! 嫌だよ……! 嫌だ、嫌だ嫌だ! そんなの、嫌だよぉっ!!」

感情が知らない間に込み上げてきた。ダメだと抑えこんできたそれが爆発した時、僕は――初めて声を荒げて、泣いていた。


暗い暗い、黒色の世界で、僕はひたすらに泣き、叫び、訴えて、初めて全てを拒絶した。電灯の光はもうない。暗闇が広がるその世界で、僕は泣き叫び、手を伸ばした。
そこにはふと、温かい何かが触れた気がした。暗い暗い、黒色の世界の奥に、一体何があるんだろう。
それを掴み、握り締めると、世界が反転したような気がした。

――――――――――

太陽の日差しが目に差し込んだ。朝が来たようだ。全て夢だったのだろうかと思い返せば思い返すほど不思議な気持ちになる。
僕はさっきまでどこにいたのだろうか、と。夢の話はすぐに忘れてしまう。もう既に忘れそうになっているぐらいだ。

ベッドの上から起き上がると、温かい感触が手にあった。それは、目に見えないものだけど、それは確かにそこにある。

心の中にある暗い世界は、僕の世界を覆っていた。黒色が染め上げられていた僕は、自分からそこに座り込んでいたんだと思う。
そうすることで、暗い闇から逃げようとしていた。何も僕は独りじゃなかった。独りだと思いこんでいた。
違う。決めるのは僕自身なんだ。自分の世界はどうにでも変えられる。

暗がりの向こうで握り締めた"それ"を、僕は大事に握り締めて、微笑んだ。
今日を頑張ろう。明日も頑張ろう。その先も頑張ろう。
手を伸ばしたその先には、何色の世界が見えるだろうか、と。


END


――――――――――
お久しぶりに投稿してみました……;
SSを書くのは久しぶりで、楽しく書けました……が、内容は相変わらず伝わりにくいようなものになってしまい、ダメだなぁと心を悩ませるばかりです……。
『黒』というテーマは非常に難しく、物語を作る段階以前にテーマに沿って作ることが難敵でした;
前々からも一応書いてたんですが……テーマの難敵に破れ、投稿しないままストックが4,5本ぐらいライブラリにあります(ぇ

今回は……こんなんですが、投稿させていただきたいと思ったので、投稿させていただきますっ。
以上、ありがとうございましたっ!

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.403 )
日時: 2012/10/25 13:27
名前: 冬ノ華 神ノ音◆yijXGxWT6w
参照: 不必要な僕の存在。そして、僕は思う。「所詮人等偽善なのだと」


 私も参加宜しいですか…? 以前から参加したいとは思ってたのですが(苦笑
 

  『黒を願い、白が欲しいと』
  
 僕が不登校になった理由などざらにある。勉強、環境、友達……話しだすとキリがない。だが、どの理由も僕自身が弱いから引き起こしたのである。誰の所為でもない。僕自身が悪いのだ。
 
 
 学校が嫌いになってから、僕は唯一、言う事を聞いていた親にも、反抗するようになった。親はそれに憤りを感じ、暴力を振るってきた。悪いのは僕だ。僕は殴られてもなんとも思わなかった。それを見た親は、病院に連れて行こうと言い出した。精神科医でもいい、とにかく連れて行こうと。
 僕はそれを拒んだ。僕はどこもおかしくないからだ。おかしいと思っている彼奴らがおかしいのだ。程なくして、僕は引きこもりになった。
 親はそうなってから優しく扱ってきた。「私が悪かったわ。お願い、出てきてちょうだいよ」と。それに応える事はなかった。ベッドに横たわり、母の甲高い声をただ聞いていた。母と父が、喧嘩している。勿論、僕のことであろう。
 僕がこうなったのを、あろうことか他人の所為にたくし上げようとしているのだろう。それに腹が立つ。これは僕の意思で有り、誰の所為でもない。
 
 
 
 暇、だった。僕は何もしなかった。家にゲームや漫画、パソコンがないからだ。携帯はあるが、する事はない。メールが来るわけでも、ソーシャルゲームをするわけでもないからだ。ただ、時間が流れるのを待っていた。
 僕の部屋のドアをノックする音がする。母のものだ。母は決まって同じ時間にごはんを持ってくる。僕がそこでドアを開けることなどないが。


 「歩(アユム)……ご飯、置いとくからね。朝ご飯、食べなかったでしょ?」
 

 母はそれだけを言い、二階から降りた。僕はその音を聞きとり、ドアを少し開ける。そして、ご飯やおかずが置いてあるお盆を取った。
 不思議だった。何もしていなくとも、腹は減るから。まぁ、どこかでエネルギーは使われているのだろう。
 ふと、僕は考えた。世界を色で表すとしたら、僕は何色なのだろうと。
 答えは簡単。黒だ。黒以外何物でもない。黒に染まっている。
 心の白いキャンパスは黒の絵の具で塗りたぐられてしまった。それを夜空と表して、綺麗な花火でも打ち上げる訳でも無く、ただ黒い。白など垣間見ない、黒。
 僕が外へ出て、青い光を受け入れる心があれば、黒い空から青空へと変わるかもしれないが、そんな心は生憎持ち合わしていない。橙色の太陽は僕を照らさず、照らすことを許さない。その光を必要としないから。
 感情を色で表すとしたら、楽しい・嬉しいが黄色、悲しいが青、好きが桃色、怒りが赤、喜ぶは橙だろうか。僕はそんな感情は枯渇、していた。
 笑う事も、泣く事も、喜ぶ事も、悲しむ事も何もなかった。無だった。無は……黒だろうね。よく似合ってるよ。
 無のキャンパスに楽しいという感情が降ってくれたらどれだけ良いだろうか。それだけで明るくなる。そしたら、いずれは黒もなくなるかもしれない。
 黄色の光が降り注ぎ、キャンパスを埋めるんだ。さぞかし綺麗だろうね。ぼくはそんなキャンパスを見れるだろうか。今のままでは……
 羨ましく思った。僕にないものを、光は持っているのだ。それを欲しい。黄色という光の中に白がある。それが羨ましい。黒い僕を白く、照らして欲しい。
 僕は、僕は……まだやり直していいのではないか?
 
 
 そうだ。僕はまだ、全部黒くはない。
 僕は光を遮っていたカーテンを勢いよく開ける。そこには白い光があった。僕の黒いキャンパスを白く塗り替えているような気がした。
 僕は服を着替え、ドアを開けた。僕はましてや、ガラでもない明るい色合いの服を着込んでいた。
 下へ降りると、母が信じられない様な目で僕を見た。僕はガラでもなく笑った。
 「母さん、ただいま」
 ガラでもなく、僕は母を抱きしめた。母は泣いていた。
 僕の心のキャンパスは今、白の絵の具で塗りたぐられ、そこに橙や黄色や桃色、青などの色が虹を作り上げていた。
 
 end
 
 
 意味不明だ……黒から色が変わるってしたかったのに…orz
 楽しく書かせて頂きました! 有難うございました。

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.404 )
日時: 2012/11/03 02:59
名前: 黒雪
参照: 1レス目。

 こんばんは。予告通り参加いたしますw
 題名『Black Tears』 全2レスです。


 ――美しいものほど壊したくなる。

         『Black Tears』

 形あるものを壊したい。ここに存在するものを壊したい。何でも良いから壊したい。全てを壊したい。――破壊欲。
 私は何でも壊したいわけではない。別に、全てを壊してみたいとも思わない。
 ただ。ただ、美しい『もの』を壊したいだけよ。

 ねぇ、ステンドグラスを割ったことはある?
 光の差し込み具合によって、色がキラキラと輝くのを見ている。それだけじゃ完璧な美しさなんて訪れない。
 窓に嵌め込まれたガラスを、金槌で思いっきり叩くの。沈みかけて、金色の光を放つ太陽に照らされる瞬間に。ガラスに金槌が触れたとき、うっとりするぐらい儚くて、失恋のように切ない煌きを放つと、一瞬でガラスは砕け散るわ。
 砕け散ったガラスの真ん中に立つと、ガラスの断面にいろいろな輝きの色が見える。見る角度によって、異なった顔を見せてくれるの。壊される前よりずっと綺麗。枠に嵌め込まれて、ひとつの顔しか見せないよりもずっと素敵でしょ。
 そんな昼間の残骸も良いけど、夜の闇に包まれたガラスはもっと綺麗なの。吸い込まれそうなくらい深い、漆黒の闇に煌く星と、闇に一筋の光を射す満月。暗闇の中でガラスは、昼間の、宝石のような輝きが嘘みたいに、光を奪い取られて暗く、重たい色に変わる。例えて言うなら、色が付いた石ころかしら。でも、月明かりに反射して時々、微かにキラッと暗い輝きを放つのも美しいわ。
 昼と夜でまったく違う顔になるのよ。時が経てば、色褪せて朽ちてしまう『もの』に、美を感じない人なんて存在しないわけがないわ。
 欲しいのは一瞬の美しさ。永遠なんてつまらないし、飽きるだけ。

 ねぇ、ゾクゾクしない? 美しい『もの』が壊れた後の残骸って。美を極めた『もの』は破壊されたときに、宝石のように輝くの。ただの『もの』を壊しても、美しさなんて得られない。でも、かといって美しい『もの』を眺めているだけ? 身に着けて見せびらかすだけ? 美しさが失われないようにしまっておくだけ? で満足なんて出来ないわ。
 永遠に美しさを保っている『もの』に愛着なんて、執着なんて、馬鹿馬鹿しい。一瞬で飽きるに決まっているじゃない。
 破壊したときに得られる満足感。それは黒胡椒のように、ピリッとした刺激となって、美しい『もの』を完璧に、完全にするためのスパイスになる。
 そして極上の調味料となるのは、『もの』が壊されたとき人々に走る、嘆き、悲しみ、絶望、怒り、衝撃……。人の感情ほど醜くて、これほどまでに美しさを際立たせるものを、私は知らないわ。

 でもね、飽きちゃったの。
 色んな『もの』を壊したわ。有名な絵画に、時価1億円もする宝石や、光り輝くアクセサリー。それだけじゃないの、建築物だって火を点けて燃やしたし、文化遺産と呼ばれてるものだって、滅茶苦茶にして修復できないぐらい壊してやった。
 もちろん壊した時のことは覚えてる。
 絵画は、油性のスプレーやカラーボールで絵を台無しにした後、キャンバスをバラバラにしてしまうの。科学が発達しているから、絵に落書きするだけだと壊せないのよ。そして、バラバラになったキャンバスの破片の中で、絵の描いてある部分が一番大きな破片を持って帰る。
 宝石はすっごく簡単。固定して、ハンマーで思いっきり叩くだけ。砕けた宝石は、同じ色のガラスと混ぜて土に撒いてあげるの。ほら、自然に帰ったでしょう?
 アクセサリーは絵画の破片と一緒に、建築物を燃やすときに、火に投げ入れる。赤やオレンジに姿を変える炎の中に、黒ずんでいく銀細工を見るのが堪らないわ。
 ほら、絵画もアクセサリーも二度と元には戻らない。

 他にもあるけれど、私は『もの』を壊すこと自体に飽きてしまったの。
 何故なら、『もの』を壊したときに見られる美しさには限界があるから。
 もっと美しい『もの』が見たい。もっともっともっと、もっと美しい『もの』が。でも、私を満足させられる『もの』は存在しない。
 考えて、考えて、考えて分かったの。『もの』よりも、壊したときに美しい『もの』。でも、それは存在しない。だって、『もの』に飽きたから。
 じゃあ、『もの』以外の『もの』を壊せばいい。――何がある?

 『ひと』を壊せば、『人』を殺せばいい。

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.405 )
日時: 2012/11/17 17:59
名前: 黒雪
参照: 2レス目。

 『Black Tears』


 その後はすごく簡単だったわ。
 まず、殺す『人』を決めたの。そこら辺にいるような、平凡で、醜い『人』じゃありえない。殺す気なんて最初からおきないし、第一、美しさの欠片も無いじゃない。
 だから、モデルやタレント、俳優の『人』にしようって決めたの。特に女性は、顔が売りの『人』たちばかりだから、みんな美しいでしょう?
 どうやって殺そうかしらって。
 鋭利な刃物で心臓を一突き。悪くは無いけれど、一瞬で死んでしまうわ。もっと、苦しみぬいてから死んでもらいたかった。
 決めたのはそれだけ。
 別に、美しい『もの』を壊して、もっと美しい『もの』が見られるなら、自分が死のうが捕まろうがどうなったって構わないわ。だから、必要最低限の事しか決める必要が無かったの。

 実行したわ、月がとても綺麗な満月の夜に。
 いきなり拘束して、体のあちこちに傷をナイフでつけていくの。柔らかな肌と、なるべく平行になるようにナイフを動かして、スッと切る。細い、線のような傷口からは、黒い絵の具でなぞった様に黒が滲み出てゆく。何回も繰り返したわ。
 彼女は苦痛と恐怖に顔を歪めて、泣き叫び続けるの。だんだん声が嗄れて、最後には呻き声しか出なくなっていったけれど。
 一番最後に首を絞めた。痛みで、体の感覚は麻痺しているはずなのに、ジタバタと暴れていたわ。苦しみに美しい顔を歪めながら、新鮮な空気を求め、必死にもがいて縄を緩めようとするの。後ろから締め上げられているから、緩まるわけ無いのにね。
 首を絞めて息が無くなった後は、ナイフで体中を滅多刺しにしてあげた。心臓は止まっているから衝撃を与えて、血液をどんどんあふれ出させる。周りに血が大量に飛び散った死体って、邪悪で、綺麗で、恐ろしくて、美しいと思わない?

 そして、今。
 私の目の前には完璧な死体が転がっている。真っ白な肌は、何箇所も切り裂かれて血の気が無くなった証拠。小さな切り傷には、真っ赤なはずの血液が固まりかけて、どす黒く変色を始めている。大きな傷はまだ、傷口がパックリと開いていて、中の筋肉や血管が所々に見えているわ。
 首には斑模様の紐の痕。『人』の首を絞めるのって、意外と力が要るのね。紐が巻き付いていたところだけ、赤黒い痣が出来ている。その痣の周りには、必死で空気を求めて、生に執着して出来た引っかき傷があった。左右に4本ずつ、8本の細いすじ。強く引っかいたのね。爪の中にまで血がこびり付いているわ。
 極めつけは、周りに飛び散った大量の血。冷たいコンクリートの上で真っ黒な血だまりが、街灯に照らされて妖しく光る。
 死体の周りに、花吹雪のように飛び散った血液。血が抜けた白い肌と血で出来た真っ黒な水溜り。

 なんて美しいの。美しいわ、美しすぎる、完璧よ! これ以上美しい『もの』があるかしら! ないわないわ無いわ。
 あるはずが無かった。私が、たった今、この手で作り出してしまったから。
 急に私を襲った空虚。今まで、美しい『もの』を壊して、さらに美しい『もの』を作り上げてきたわ。
 もっと美しい『もの』を壊したい。壊して、もっと美しい『もの』を見たい。壊して壊して壊して壊して壊して1番美しい『もの』を見たい。満足感で満たされたい。うっとりする様なあの感覚をもっと味わいたい。もう一度味わいたい。
 ――欲望は止まらなかった。
 『ひと』を壊して、1番美しい『もの』を作り上げてしまったら、私はこれから先、どうやってこの欲望を満たせばいいの? こんな綺麗で、儚くて、邪悪で、恐ろしくて、美しい『もの』なんて、二度と作れない。
 絶望と悲しみがこみ上げてきて、何故か涙が溢れ出して止まらない。こらえきれない嗚咽が、月明かりと街灯に照らされる、深夜の倉庫に響き渡る。
 この涙は、何色かしら? きっと――

 『破壊欲、という名の欲望に染められた、黒色の涙だわ』

                                FIN


~あとがき~
 今回始めて参加させていただきました。黒は一番好きな色なので、書いていて楽しかったです。
 『黒』から『欲望』、特に『破壊欲』を連想して書いてみました。
 台詞が一切ないので読みづらいとは思いますが、最後まで読んでくださった方には感謝しています。
 書かせてくださり、ありがとうございました!

Re: 第八回SS大会 お題「黒」 投稿期間 10/17~11/17 ( No.406 )
日時: 2012/11/08 21:11
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6
参照: http://kazaya.blog8.fc2.com/

『小悪魔の悪戯』

 グッモーニン! グッモーニン!
 こんなに良いお天気。
 足元だけ、開けたカーテンから良い感じのお日様の光。
 ふと隣を見るけれど、キミはまだ夢の中。
 そっと起きて、もう一度、開いてるところから空を見る。
 とっても素敵な澄んだ空色。
 うん、やっぱり今日はいい天気だ。
 さて、どうしよう。
 このまま寝てもいいけれど、たぶん、きっと寝れない。
 だから起きて……ふふふ。
 いいこと思いついちゃった♪
 でも、天使の心が囁いた。

 ホントにいいの?

 でも、小悪魔な私の声が言う。

 やっちゃう! だってキミはまだ寝てるのだから。
 こんな素敵な日に寝ているキミが悪いんだよ?

 キミを起こさないように、私は悪戯を開始する。
 何をしよう?
 このままいっぱいキスをしようか?
 可愛いそのキミの鼻をこしょばすか?
 ううん、それじゃ、ダメ。

 にまっと笑って、私はそっとベッドを出た。
 そして、手に取ったのは。

 黒のペン。



 グッモーニン、グッモーニン……。
 ちょっとやりすぎちゃった。
 キミを怒らせちゃったね。
 あの黒のペンは水性じゃなくって、油性だった。
 額に肉なんて、おちゃめなことをして……あんまり綺麗に取れなかった。
 だからキミは、前髪を下ろして、仕事に出ていっちゃったね。
 とっても反省したから、これからお詫びに、ケーキを買ってこよう。
 キミの好きな、あのケーキを。
 それと、今日という記念の日を祝うプレゼントも。
 キミは忘れちゃったかもしれないけれど。

 今日はホントは、キミと私が出会った記念の日なんだよ。

 それにご馳走も用意しよう。
 とびきり美味しいご馳走を、キミのために……。


 ………グッドイブニング、グッドイブニング。
 もうすぐ、キミが帰ってくるね。
 裸エプロンしたら、キミは驚くかな?
 まあそんなことしたら、キミにまた怒られるから、普通にお迎えするよ。
 ほら、いつもの足音が聞こえる。
 もうすぐ、もうすぐ、鍵をあけて、私達の家に帰ってくるよ。
「おかえりなさいっ!!」
 キミはきっと驚くよね?
 私の素敵な、お祝いというなの悪戯に。




★あとがき★
 というわけで、黒のクセに明るいSSを投下!
 ちなみに「私」と「キミ」が男か女か、または同性かで、雰囲気がぐっと変わります(にやり)。
 みなさんの好きなカップリングを浮かべて、もう一度、読んで楽しんでみてくださいませー☆
 え? 私? さーて、どんなカップリングで書いたでしょう?
 ふふふふふふ。

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