雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 風死(元風猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(風猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波風を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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第十一回SS大会 結果発表 >>523に掲載!

_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/8までに延長 ( No.318 )
日時: 2012/07/07 19:01
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM

今日明日に完成すると思うのでしばしお待ちを……。
場違いに魔法使いが闘っちゃいますけどスルーしちゃってください。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/8までに延長 ( No.319 )
日時: 2012/07/07 20:38
名前: 檜原武甲◆gmZ2kt9BDc

期末に重なって書く暇がないので今回は出せそうにもないです。SSとちゅまでなので残念です。


 一応、審査はしようかと……

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/8までに延長 ( No.320 )
日時: 2012/07/08 16:36
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6

『ささやかな魔法』

 泣いている子を見つけた。
 声を殺して泣いているんだと、最初は思っていた。
 彼女は、声が出せなかった。
 出したこともない。
 もともと声が出なかったらしい。
 そんな子が、思わず、一緒にいた母親と喧嘩してしまったそうだ。

 黄昏色に染まる河川敷。
 緩やかに流れる川を二人で眺めながら、言った。
「じゃあ、魔法をかけてあげよう」

 彼女はびっくりした様子で、私を見る。
 私は微笑んでから、彼女に告げた。
 これは大事な大事なお約束。
「ただし、この魔法は数分しか持ちません」

 えーーー!?
 と言わんばかりの彼女に、私は苦笑した。
 だろうなって思った。
「というわけで、君のお母さんのところに行こう」
 いやいやする彼女を無理やり立たせて、私は彼女を母親の元へ連れて行った。
 性格に言うと、私が脅して、彼女の母親のいるところに向かったのだが。

 彼女の母親はすぐに見つかった。
 少し若く見えるが、疲労の様子がみて分かる。
 きっと、苦労しているのだろう。
「彼女から伝えたいことがあるそうですよ。でも、この声はつかの間の声。永遠のものではなりません。それをお忘れなきよう」
 ぺこりと頭を下げて、ぱちんと指を鳴らした。
 ついでに色とりどりの花を舞う様に仕込んだ。
 これはサービス。
 少女と母親は驚き、そして。
『お、かあ、さん……』
「えっ!?」
『け、けんか……ごめ……』
 なかなか言えなくて、少女の口から言えたのは。
『い、つも、あ……りが……と』
 同時に空に舞っていた花が消えた。
 声も消えた。
 そこにあったのは、少女の心。
 零れた涙を拭う前に母親は、少女を強く抱きしめた。
「ごめんね、私も……悪かったわ。ううん、そうじゃなわね」
 ゆっくり腕を解いて、母親は笑う。
「大好きよ。私の大好きな……」
 笑っていたのに、母親の瞳から大粒の涙が溢れていた。

 ふと、二人はあの人を探した。
 ほんの数秒間だけ、力を貸してくれたあの人を。
 けれど、既にその人はいなかった。
 少女はいつもの手話で、母親に告げる。
『あの人、魔法使いだったんだよ』
「ええ、きっとそうね」
 二人は手を握って、夕暮れの小道を家へと向けて歩き出した。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/8までに延長 ( No.321 )
日時: 2012/07/08 16:28
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6

なんとかギリギリ。
間に合ったと……思いたいです。
遅くなってすみませんでしたーー。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/8までに延長 ( No.322 )
日時: 2012/07/08 17:14
名前: 蟻◆35IUmyKssU

[ 私が欲しがったまじない ]


 幼い頃から、魔法というものが好きだった。
 御伽噺で一番好きなお話は『白雪姫』だった。

 ――でも、そのラストは嫌いだった。
 

 彼氏にキスされる度に、そう感じていた。おはようも生きる勇気も私には要らないの。私が欲しいのは、たったひとつだけ。
 ファンタジーとか御伽噺とか、高校生になっても憧れ、夢を見ている。楽しくないから楽しくしたい。ありえない魔法を使いたい。変なイキモノを見たい。動物と話したい。
  
 ――林檎で眠れる白雪姫、なんてなんて素敵なんだろう。
 眠り姫のように針でぶっささるなんて痛いこともないまま、齧ったらすぐに眠りに堕ちる。美しい白雪姫は、王子が助けてくれたけど、私は美しくないから、キスで目覚めるわけでもない。それでいい。それでいいの。
 照れ臭い想いとか甘い言葉とか、そんなものが欲しいんじゃない。私はこの世界を楽しくする魔法では楽しくなれないから。
 私は、夢の中に溺れ、沈んで、二度と覚めたくないのだ。だから私は、もう一回眠る。

 キッチンに移動して、冷蔵庫の中を見る。
 冷蔵庫に閉まってある、薬漬けにした林檎。
 それに手を伸ばし、包丁でさくさくと切り分ける。お皿に乗せて、口に入れた。飲み込んだ瞬間、突き刺さる激痛。きもちわるい、うああ。勢い余って吐瀉物を吐き散らかす。

「うっはああ……はあっ」

現実はうまくいかないな。綺麗に眠りたいのに、痛くてたまらない。ゲロは吐くし、全身は痛いし。意識が朦朧とする。ああ、強い劇薬って凄いな。もう眠ってしまいそうだ。

 白雪姫も眠り姫もびっくりのエンディング。魔女の魔法はどこまでも中途半端だった。キスなんかでとける魔法? 笑っちゃうな。
 とっても痛いけど、顔が勝手に綻ぶ。

 これこそ私が欲しがった、呪い。



@ end

皆あかるいあったかい魔法だけど私だけ呪い。
のろいじゃないよ! まじないだよ!
これぞありんこクオリティ。

ぎりぎり間に合った…か?



 

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/8までに延長 ( No.323 )
日時: 2012/07/08 19:03
名前: 玖龍◆7iyjK8Ih4Y

【 まほうつかいになりたい 】

 と書かれた古い紙きれが机の中から出てきた。お世辞にも上手とは言えないような幼い平仮名だった。自分にもこんな時代があったな、と、懐かしく思った。それだけ。

 幼稚園児の非現実的な将来の夢なんて叶う筈もない。叶う、叶わない、ではなく夢は持つことが大切なのだ、と教師は言ったが、現実主義の進路調査に「魔法使いになりたい」なんて書いたらふざけているのか、と怒鳴られるのだろう。大人なんて皆嘘吐きだ。
 溜息を吐いて、シャーペンをぶらぶらさせる作業に戻る。が、それもすぐに飽きて携帯電話を開くと、メールのアイコンが自己主張をしていた。兄貴からの、元気?、とだけ書かれたメールを読んで、携帯電話を閉じる。社会人の兄貴。自分で進路を決めて自分で勉強して自分で仕事を見つけて自分で生きている兄貴。
 ふと、兄貴はどうやって進路を決めたのだろうと思った。成績は中の下くらいで、無彩色の現実よりもカラフルなフィクションの世界の方が好きだった兄貴が、すんなり進路を決められる筈がない。
 携帯電話をもう一度開く。

兄貴は魔法使いになりたくなかった?(送信)
なりたかったから魔法使いになったんだよ。 (受信)

冗談を言うなら(笑)くらいつけてほしかった。
 一分もしないで帰ってきた笑えもしない文に、返信を打つ。

嘘付け (送信)
まあ、嘘だな。最初からそう思ってたわけじゃないから(笑)
社会人は皆魔法使いなんだってさ。時間をかけてアイディアを練った物には魔法がかかるんだ。それが形のない物でも。逆に言うと適当にやった仕事は誰のためにもならなくて、笑顔も信頼も売り上げも無いんだって。
会社に入った時に社長に言われた。
でも今お前に魔法使いになれなんて言ってもなー
どうせ進路にでも困ってんだろ? 決めるのはやりたいことが出来てからで良いんじゃないの?
下手に書いてそのまま進んで、適当に仕事をこなす人間になってほしくないからな。
どうせやるんだったら楽しいほうがいいし……適当にごまかしとけ(笑) (受信)

 今度は五分待った返信は、(笑)がついていたのに冗談のような内容ではなかった。
 大人は無責任で教師は嘘吐きで、夢なんてないし大学に行けるような金も学力もない、自分は卒業したら自殺でもするのだろうか。自分がさっきまで考えていたことが急に幼稚に見える。

 携帯電話を閉じ、放り出していたシャープペンを持ってプリントと向かい合う。あの頃とは違うきれいな字で、濃くはっきりと書いた。

「 魔法使いになりたい 」





あとがき

 三時間くらいで書いたものなのでクオリティが低いです。
 ばこーんとかずどーんとかの魔法とかなり離れた感じになりました。
 間に合ってます? 大丈夫でしょうか。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.324 )
日時: 2012/07/08 20:52
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


 紅は炎。
 蒼は水。
 翠は風。
 金は雷。
 藍は氷。
 白は光。
 黒は闇。
 大魔導師に勝る者無し。


title:No one is stronger than the greatest magicians


 山地に囲まれ、荒涼とした岩肌だらけの平野にも、もちろん街は存在する。
 古より、人が集まり、そこで暮らそうと思った時にこそ街は誕生するのだ。
 ただし、その街が長続きするのかは、その土地条件や人々の努力次第だろう。
 どれだけの人がいようと、何の取り柄もない街では長い間生き残れないだろうし、それならばむしろ食糧問題のために、多すぎる人口は邪魔になる。
 だが、裏を返すとどれほど過酷な環境であろうと、存在意義のある街ならば存続できるという訳だ。
 そして、その街もまさしくそんな街の代表例だった。
 ミネ・グルーヅ・モタイン、古き言葉で金の採れる山、という名前を持つこの街は、世界有数の金山を持っていた。
 それを最初に見つけた、大昔の遊牧民が、その金山を掘ることを生業とし始めたのが、きっかけだ。
 それ以来、数世代経った今でも、町民はせっせと採掘しているのだ。
 彼ら自身の魔法で――――。

 この世には、魔法と呼ばれる不思議な力が確かに存在していて、人々はそれを活用している。
 用途は、お使いから戦争にかけてさまざまな用途で使用される。
 魔法というものには、それを使うためのエネルギーが必要であり、大概がそれを魔力と読んでいる。
 しかし、言語によってその名前は様々で、魔力が公用語というだけで、土地によってはマナやMP、気などとその名が異なる場合もある。
 魔法は、何種類も開発されており、その性質によって色分けされている。
 紅が炎、蒼が水、翠が風で金は雷、藍は氷で白が光、もしくは回復系統、黒はその他全ての雑多なものと闇の魔術だ。
 まあ、誰にでも修得できる、努力だけでお金のかからないお手軽な武器だが、やはり才能や得意不得意は存在する。
 魔力は、人間が持つことができるのには限界がある。
 そして、体の中に所有できる程度の魔力では、マッチ代わりに使う炎は扱えても、戦うには些か心許ない。
 それなのになぜ、戦争の道具として使える程の威力を発揮するのかというと、大気中の魔力を吸収して使役するのだ。
 その、吸収の能率の良さと、元から体に蓄えられた魔力が多ければ多いほど、より強い魔法を使えるようになる。
 そして、鍛練を重ね、詠唱の言霊を重ねることで、より複雑な魔法を使えるようになる。
 前者は才能が要り、後者は言わずとも分かるだろうが努力である。
 つまりは偉大な魔法使いや魔導師になるには、才能と努力が共に必要だということになる。
 こんな説明ばかりでもつまらないので、最後に一つだけ。
 この世には、大魔導師と呼ばれる魔法使いがいる。
 彼らは、全世界に七人しか居ない、各色のエキスパートであるのだとか。




「なあ、婆さん。いつものやつ頼むよ」

 西部劇にありそうな街の、とある一つの飲食店に一人の若者が入ってくるなりそう言い放った。
 鼻の頭や腕には泥がはねて渇いたのか、薄膜状に白い砂が貼りついていた。
 おそらく、つい先程まで金山でせっせと掘っていたのだろう、そして昼の休憩だ。
 気さくな話し方で分かる通り、店主の老いた女と青年は知り合いであった。
 この、金山で働いている正義感の強い性格のこの男は、この店の近所に住んでいて名をゼインと言った。
 この店の常連であり、自炊の苦手なゼインは、しょっちゅうここで朝昼晩のどれかはお世話になっている。
 いつもの、と言われた店主は、足下の棚から皿を取り出し、その後に背後の食材庫からパンを取り出した。
 そしてついでに分厚く切られた肉を取り出すと、あらかじめ熱しておいた鉄板の上に乗せた。
 肉に付いた脂が溶けだして、熱い鉄板の上で胃袋を刺激する音と匂いを生み出し、店中を満たした。
 これだよ、これ、と呟いて、ゼインは小さく舌なめずりして、焼き色がついていく肉を舐めるように見つめている。
 もう少しで焼き上がるから少しお待ちよ、と店主の女がたしなめても、涎が止まらないらしい。

「先にパン食っときな」
「あざっす」

 待ちきれないのだろうと悟った老女は、肉が焼けるよりも先に青年にパンを差し出した。
 待ってましたとばかりに彼は一気にそのパンに噛り付いた。
 何の味付けもされていない普通のパンなのだが、空腹ならばそれだってご馳走だ。
 見る見るうちにパンがゼインの胃に押し込まれていくうちに、生肉は次第にこんがりと焼けていく。
 そして、マスターの女がゼインに肉を出してやろうとしたその時、店の外で、何かが倒れる音がした。

「なあ、今ドサッて音がしたけど何なんだ?」
「分からん。ちょっとあんた私の代わりに見てきておくれよ」

 目の前の餌にお預けをくらった犬のように、無念そうな顔をしながらも、ゼインは席を立った。
 どうせ、ちょっと強めの風が吹いたせいで荷物が倒れてしまった程度だろう。
 そのような、適当な予想を張り巡らせても当たる訳はなかった。
 そもそもこの青年は知っていたはずである、この店の主は必ず、届けられた荷物は店内にしまっておくと。
 それなのに、そのような結論を急いて決め付けたのは、それ以上の面倒事があってたまるかという意識があったからだ。
 事実そこには、予想通り、もしくは予想を上回る面倒が地に伏していた。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.325 )
日時: 2012/07/08 20:53
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM

「おわぁあ! 何だお前っ!」

 外に出てすぐに、男が発した言葉を、店主の女はしっかりと耳にした。
 かなりの驚きに包まれた叫び声であると共に、それほど恐れている声ではなさそうだ。
 杖を持ったならず者が来たのではなく、行き倒れた乞食でもいたんじゃないのかと思ったのだが、両方違っていた。
 ひどく狼狽してしまったかと思うと、ゼインが、仕方ないと言い、しゃがみこんだ。
 何かを掴んだかと思うと、それを引きずるようにし、精一杯の力を腕に込めて建物の中に運び込んだ。

 ゼインが運んできた男の格好は相当に変り者のようであった。
 無造作に見えるが、実はただの爆発した寝癖である黒髪、そして真っ黒なローブを羽織っている。
 歳はゼインと対して変わらないであろうその顔は、何だか酷く頼りなかった。
 腹を空かして行き倒れているせいなのだろうが、見るからに元気のない表情をしている。
 分かりやすくこちらの言葉で形容させてもらうならば、草食系のなよなよした奴、だ。
 そして極め付けに、手には魔導師の証明書である、足元から胸ぐらいまでの長さの魔法の杖を持っていた。
 修行の旅がよほど険しい道のりだったのか、先に挙げたローブはボロボロに擦り切れている。

「あんた、おい聞いてんのか?」

 年老いたマスターが慌てているのも知らずに、ゼインはと言うと彼を起こそうとその頬をひっぱたいていた。

「馬鹿もん、魔導師をはたく奴があるか」
「えっ!? 魔導師……って杖! マジかよ……」

 ここまで引き上げたくせに、今更になって杖に気付いたのかと、呆れる店主をさておき、ゼインはひどく驚いた。
 という訳で肩を揺するようにして起こすことに変えると、程なくして彼は目を覚ました。

「おっと、目が覚めたか?」
「えっと……こちらはどこでしょうか」
「ミネ・グルーヅ・モタインだよ。うちの店の前で倒れてたんだよ」

 目が覚めた彼の声を聞いたゼインは、危うく吹き出しそうになるのをどうにかこらえた。
 彼の声音やしゃべり方は、外観から想像した通りの、気弱でおどおどとしたようなものだったからだ。
 開かれた瞳も、偉そうな魔法使いのものではなく、ひ弱な小動物の方がよっぽど近いだろう。
 このような魔法使いがこの世の中に存在している、ということが驚きだった。

「あんた、よくそんな性格や態度で旅に出ようって思ったねぇ……」

 何日旅したのかは知らないが、何らかの事情で倒れるまでだと、それなりの日数であろう。
 しかも、外傷が見当たらないので倒れる原因となったのは、飢えか渇きか病かのいずれかだろう。
 万全の準備をした後の旅立ちの場合、そんなことになるのはかなりの日数を要するだろうと予測できる。
 そして前述の通り、外傷がないため、道中では山賊に会わなかった、もしくは全て無傷で倒したのだろう。
 だが、それはそれでとても強い驚きだ。

 確かに、旅をするような人は魔法使いや魔導師だけとは言え、それでも弱い人は弱い。
 山賊とは、旅の途中に立ち寄れる街へと続く街道やその周辺で待機しているはずなので、この街に来るならば、会わないでやり過ごすのは不可能な話なのだが、無傷で倒すのはもっと不可能なはずだ。
 きっと、どうにかして相手の目を欺いて街へと入場したのだろう。
 だって、大魔導師に勝る者は無いのだから。

「実は、ちょっと前にマギ・ヴィーヌの御殿に召された御師匠様からの、最後の修行でして」

 マギ・ヴィーヌに召された、それは魔法使いの死を意味している。
 マギ・ヴィーヌとは、古き言葉で魔法を司る女神という意味である。
 魔法使いは死んだら、自身の魔力に引きずられるようにして意識や魂も一緒に女神の御殿に運ばれるのだ。

「そうかい、冥福を祈るよ。セユ・アガイン」

 セユ・アガインはまた会いましょうという意味合いであり、死者に対してのみ使う。
 いずれ死後の世界でまた会えることを願います、という祈りが込められているのだ。

「一週間ぐらい、ずっと歩いていたんですよ」

 そのせいで飲み物も食料も無くなっちゃって……、と頼りなさげな表情で自分で呆れるような顔をした。
 金銭は一応あるようなので、普通に料理を注文した彼はカウンターに座った。
 ゼインはと言うと、店主が目を離した隙に、先にカウンターの方に腰掛けてまだ湯気の立ち上る厚い肉を食べていた。

「ほへは……俺はゼインって言うんだ。お前は?」

 最初、口に物を含みながら喋ろうとしたのだが、汚いからやめろと老いたマスターの睨み付けるような視線とあまりの喋り辛さに一度閉口し、口内のものを飲み込む。
 そしてもう一度口を開いた時には、素朴な質問を目の前の少年へと呼び掛けていた。

「僕は、ネロって言います」

 それだけ言うとネロも、出てきた料理に夢中になって手を出し始めた。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.326 )
日時: 2012/07/08 20:54
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


「ネロっていうのか、珍しいな。それに、黒い目も珍しいな」
「えぇ、黒い瞳にあやかって、ネロって名前を貰ったんです、師匠から」

 その、名前を師匠から授けられたという言葉に、少し胸の奥を針で突かれたような痛みを二人は感じた。
 この世界では、黒い目や黒い髪を持って生まれた子は忌み子として迫害される。
 天性の、生まれながらの闇の魔術師であるという象徴であるからだ。
 その昔、手に負えないほどに、心の中に闇が侵入した黒魔導師が暴れたせいで世界の崩壊寸前まで陥ったせいだとか。
 その魔導師が、生まれついた日から黒い瞳に光を宿らせ、後に生える髪も漆黒であったそうだ。
 それゆえ、世界の破滅の再来ではないかと怯え、人々は自らの息子娘であっても、忌み子ならば捨ててしまう。
 ただし中には、忌み子を正しく教育しようとする者もいるらしく、ネロの御師匠様もそのようなものだろう。

「じゃあ、あんたの師って……オスキュラスかい?」
「はい、おばさん。よく知ってますね」
「知り合いだったからね。あたしはフィートって名なんだけど、聞いたことないかい?」

 瞬間、ネロの表情がどこの誰が見ても分かるようなほどに爆発的に変わった。
 見知らぬ土地で助けてくれた恩人に対する重たい目付きから、もっと気さくで友好的な、歓迎的なものに変化したのだ。

「あなたがフィートさんだったんですか! それはこの街が平和なはずだ。あんな山賊がいるのに……」
「お前、山賊に会ったのか?」

 食後の余韻に浸り、ぼぉっとしていただけのゼインの表情も、瞬く間に変化した。
 山賊に会って身ぐるみを剥がれなかった者がいることにひどく興味津々のようだ。
 しかし、会ってはいないという意思表示のため、ネロはゆっくりとかぶりを振った。

「いえ、そうではなくて……よく師匠から話を伺ったものですから」
「なるほどな。そういえばあんたの師匠って何者? 聞く感じ、結構凄い人っぽいけ」

 ゼインは、結構凄い人っぽいけど? と繋げたかったのであろうが、それは叶わなかった。
 なぜなら、それを遮るほどに大きな音が周囲一体をつんざくように走り抜けたからだ。
 耳が痛いと言うより、身体中が振動するほどの、低くて重たい、爆発音。

 その爆発音に、一同は顔から血の気が引き、まさに顔面蒼白となってしまった。
 何事かと思って最初に飛び出したのはゼインで、頭に血が昇ったのか、ただの野次馬根性なのか、一目散に駆け出す。
 それを引き止めようとしたのだが、フィートは間に合わなかった。

「待ちな、ゼイン! ……って言って聞くようなたまじゃないなあいつは」

 そう言いながらフィートは、慌ててカウンターの方に引っ込んで何かを探すようにしゃがみこんだ。
 ネロが見守る中、フィートはごそごそと引き出しの辺りを探り続けている。
 いきなり、彼女は弾かれたようにしていきなり立ち上がった。

「ようやく見つかったよ。ここ何年も使ってなかったからね……」
「行くのですか?」
「当たり前さ。弟子一人で何とかなる相手じゃないからね」

 心配そうな目をして、不安そうな声音になっているネロを諭すようにしてフィートは杖を構えた。
 ついでにローブもどこかから取り出したようで、純白の絹のものを羽織っている。
 杖の上端に取り付けられた宝玉に魔力が流れ込み、強い閃光が屋内に迸る。

「オスキュラスがいないんじゃあ、あたしがいくしかないねぇ」

 苦笑いを浮かべた彼女は、可愛い愛弟子のためなら仕方ないと呟いて、低く小さな声で詠唱を始めた。
 ぶつぶつと唸るような魔術の詠唱と共に、杖には魔力が注ぎ込まれ、頭部の宝玉はより一層その光を強くした。

Re: 第六回SS大会「魔法」 投稿期間6/11~7/16までに延長 ( No.327 )
日時: 2012/07/08 20:54
名前: 月牙◆nadZQ.XKhM


「光、汝我の眷属とならん! 瞬光〈ライトニング〉!」

 完全に、部屋の中をまばゆい閃光が埋め尽くしたかと思うと、その光はほんの一瞬だけ強くなる。
 強くなったその瞬間、フィートはその杖を横一文字に振るった。
 その瞬間、明るいだけの光に熱がこもったようになり、今まで堪え忍んでいたネロも、網膜を焼かれるような刺激に目を閉じた。

 光が去ったその時には、もうすでにフィートの姿はそこから消えてしまっていた。
 残されたのは、杖とローブ、そして服だけのネロ、そして店内に漂う、残存の魔力だけであった。




      *


 町外れの一角は、たかだか数刻の時を過ごしただけで、街から廃墟へとその姿を変えていた。
 ねじ曲げられて断ち切られた家の木材の割れ目はまだ真新しく、大層恐々としたものだ。
 多くの者は急いで避難した上、逃げ遅れた者も命からがら軽傷で済んでいたのが幸いだ。
 この場を蹂躙しているのは、付近にその活動領域を広げている山賊の首領格の連中だ。
 戦争が起こった時には国に雇われて、その絶大なる力を知らしめる圧倒的な大魔導師、だ。
 山賊の頭となる五傍星、紅、蒼、翠、金、藍の大魔導師である。

 大魔導師は正義の味方であると、信じて疑わない無知な民衆もいるが、それは間違いだ。
 強ければ誰もが正義ではない、むしろ強者こそが弱者を踏み躙るのが世の理というものだろう。
 事実、大魔導師はその者の器量に関わらず、強さだけで決定する。

 しかし、最強の魔導師の七人の全員が全員悪であるならば、世界は、政府は崩壊する。
 それを押さえているのが、白と黒の大魔導師だったのだ。
 炎や氷など、分かりやすく戦闘に適した属性の魔導師は世界の抑止力、そして光と闇の二大魔導師は彼らの抑止力。
 白や黒の者は、自分が死ぬ前に、自らの後継者に成り得る存在を見つけださねばならない。
 条件はこちらの場合たった一つだけであり、それは正義感を持っているか否かだ。
 力など、後からいくらでも付けることができるが、生まれついた時からの性というものは、後からは中々変わることはない。
 そして、先代の大魔導師が、次世代のそれを弟子に取り、育成するのだ。

 そして、現在教育途中の次世代光の大魔導師、それがゼインであった。

「で、まあそのお弟子さんはズタズタにやられました、と」

 嬉々としてそう笑ったのは、白銀の髪の毛の気さくそうな青年だ。
 無邪気な子供のように笑ってはいるが、内容が内容なだけに共感しがたい。
 目の前には、彼が直接手を下した同年代の男が転がっていた。
 銀髪の青年は、その服装から目の前で横たわる男が金山で働いていると一目で見抜いた。
 手に持った、タクト状の細く短い杖が青年の魔法で折られたせいで、もう反抗はできない。
 全身に打撲や切り傷のできあがったゼインは、苦しげに低く呻いて、睨むように大魔導師を睨んだ。

「翠の……大魔導師……ゼカか……?」
「まあね。瞳は藍色、髪の毛は銀だけど、魔力は翠っぽいらしいよ。だから見てくれがこんなでも翠の大魔導師さ」

 あっけらかんとした口調でゼカはそう答えた。
 もはや敵にならないゼインは恐れるどころか誠意を示すのすら億劫らしい。
 足元のゴミを眺めるようにして、街の破壊を他の奴らに任せっきりにして嘲り始める。

「それにしてもお前の師匠はどうした? 尻尾巻いて逃げてったのかな?」
「んな訳あるかよ。お前ら、師匠に勝てないくせに……」
「ま、一対一ならね」

 流石に五対一なら負けないし、と卑怯な手口をサラっと、当然のことのように口にした。
 必然的に、そういうのには目ざとく、耳ざといゼインは、即座に首を持ち上げて軽蔑の色を込めてその顔を眺める。

「まさか、目的は最初から……」
「まあね、黒の大魔導師亡き今、白を片付ける必要があってね」

 その説明を終えるのを見越していたかのようなタイミングで、他の四人が戻ってきた。
 恰幅の良い体型、褐色の肌を持つ中年男性、ローブが赤いことから、紅の者だと伺える。
 その次に降り立ったのは、青い瞳に冷酷な光を宿す、人魚や人形のように美しい女性、きっと藍の魔導師だ。
 彼女を追うようにして、見るからに正反対の性格をしていそうなブロンドの女も現れた。
 彼女の体表を、雷撃が走る様子は、ショートした配線のようである。
 一人、遅れをとって参ったのは、筋肉質の大男で、巨大な斧を構え、今にも振り回さんとしている。

「ま、五人の大魔導師が一人の魔導師に負けるなんて、相手が天才と呼ばれた黒魔導師でも有り得ないね」

 ぽつりと、ゼカはつい最近その訃報を知らせられた男のことを語りだした。
 その男は今まで世に出た中で最も強い黒の魔術師と畏怖されていた。
 後継者のことを誰にも知らせようとせず、それを隠したままに死んでいったのだ。
 もはや、その後継者を知っている者は、本人の他にはいないだろうと、ゼインは師たる女から教えられていた。

「とりあえず、彼女の理性を欠く手段の一つとして君の死を利用するけど悪く思わないでね」

 大気が喉をならすようにして、うなり声を上げているような爆音がした。
 そこいら中の空気がねじ曲げられ、強制的に螺旋を加えられていく音だ。
 一度だけ見たことがある、魔法で作られた巨大な大竜巻が大自然を飲み込む時と非常によく似ていると、ゼインは思い返した。

「バイバイ」

 友達に対して、また明日にでも会おうと約束するのとよく似た口振りで、ゼカは別れを告げる。
 巨大な空気の竜みたいなサイクロンが、ゼインを呑み込もうとしたその時、全員の目の前で光が弾けた。
 さながら光の大爆発であるそれは、風の竜を包み込み、それを消し去った。
 魔法無効化魔法、光属性の中でも強力なそれを扱うのは、今の世では光の大魔導師ぐらいだ。

「あたしの弟子に、何しようとしてんのさ」

 ゼインの危機に、瞬光の魔術で現れたのは、フィートであった。

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