雑談掲示板
- 第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
- 日時: 2014/02/27 20:57
- 名前: 風死(元風猫 ◆GaDW7qeIec
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247
第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介
始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!
題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(風猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^
では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。
意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波風を立てたりしないように!
~今迄の質問に対する答え~
・文字数は特に決まっていません。
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?
――――連絡欄――――
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第二回大会 優秀賞作品一覧 >>110に掲載!
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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。
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Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.125 )
- 日時: 2012/02/10 17:21
- 名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497
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――――これは夢だ。 こんなの夢に決まってンだろ…………
俺はムリヤリ“今”を夢だと思いこんだ。
俺のとなりに風呂上がりの星野が、さっきの“あの下着”を身に付けた姿でいる。
(こいつ…… こんなに可愛かった か?)
「やだっ、涼クン…… そ、そんなにジッと見ないでよぉ……」
(フン! さっきはいきなり風呂に入ってきやがったくせに……)
顔を真っ赤にして必死で胸を隠している星野。 今までは彼女に対して(……っつーか、女に対して)全く関心がなくて、気付かなかったけれど、よく見れば豊満な胸、そして、普段はツインテールに縛っているが、意外にも長かった下ろしている濡れ髪、抱き心地が良さそうな小さな肩、プルンとしたつややかなくちびる……無意識で俺は…………
――――彼女のくちびるを奪っていた。
そして俺はベッドの上に立ちあがり、天井に設置されている“隠しカメラ”をへし折って壊した。
突拍子もない俺の行動に目を丸くしている星野の両手を握り、彼女の耳もとでささやいた。
「どうせ夢なんだ。 夢の中ならば“何をしたって”構わない……
俺と一緒に目を覚まそう…………」
――――カメラを壊した時に、どうやら俺まで壊れてしまったようだ。
俺はそのまま星野をベッドの上に押し倒し…………
――――バシイッ!!
耳を裂く音と同時に、俺の尻に激痛が走った。 Tバックだからなおさらのこと……尻も裂けるくらいの……
「実験終ー了ー。 おつかれさんっ」
俺の背後に生のバーコードが現れた。
メチャクチャに荒れ狂ったこの気持ちを、彼にどう ぶつけたらいいのか分からないでいる間に、彼は俺の背中に大きなリュックサックを背負わせた。 さらに、俺と星野の腰にゴツいベルトを取り付け、それをつなぎながら、サーッとワケの分からない説明をしだした。
「3000フィート落下したところで、オート開傘します。 ああ、服はこの横のポケットに入っていますよ。
無料(タダ)でスカイダイビングを体験できるなんて、ラッキーでしたねぇ、
――――それでは ごきげんよう。」
そう言ってバーコードは自分のポケットから出した携帯電話によく似たリモコンのスイッチを押した。
(ちょ、ちょっと待て バーコード! 今 なんて言った?
たしかスカイ……)
突然 俺と星野が腰かけているベッドのマットレスが中央から真っ二つに割れ、俺たちは夜の“スカイ”に放り出された。
――――実は俺は“高所”も苦手なのだった。
「……ねぇ見て 涼クン…… すごーくきれいだよ!」
「あ、あ、あ、ああ キレイ…………」
星野に弱みを握られたくなくて、俺は意識喪失をしても構わない覚悟で目を開け、震えた声で返した。
「まみね、もう充分だよ。 だって……大好きな涼クンの胸のなかで“リアル・プラネタリウム”をこうして味わえるんだもん…………」
「――――どうせ夢だよ。 あきらめるんだな、バーカ。」
俺はもう一度“まみ”に口づけをした。
俺は“今夜のできごと”を夢ではないことを願っている。
本当はまみの……このやわらかいくちびるの感触をずっと忘れたくない。 ちなみにさっきバッチリと目に焼き付けた彼女の下着姿も……な。
俺は彼女を優しく抱きしめた。
「なぁ…… どうしたらいいんだ……?
なんか俺、まみのこと……好きになっちまったみたいだ…………」
――――星屑のちらばるステージに舞う…………ブーメラン男とランジェリー女。
《おわり!》
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.126 )
- 日時: 2012/02/10 21:51
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
「ねぇ、空に絵を描いてみたいって思わない?」
「思わない。っていうか無理だし」
「ちょっと……ノリが悪すぎるわよ。そこは嫌でも思うって言いなさい」
「嘘は吐きたくないんだ。どんな事にも、誰に対しても」
「吐いて良い嘘だってあるのよ、それで誰かの気分が良くなるなら」
「嘘は嘘だよ、良いも悪いも無いさ」
「本っ当に夢無いね。本当に小五?」
「五月蝿いな。夢を見るのも覚めるのも、年齢なんて関係ない」
「あーもう、分かったわよ。私が一人で描く」
「無理だっての」
「最初から無理とか言わないでよ」
空に絵を描く、それが彼女の夢だ。最初から無理って断言したくない、それが彼女の信条だ。諦めたら何もできないから、できることだってできなくなる。それは嫌だ、彼女はいつもそう言っている。
title:Dream Sky
俺とアイツはそれほど中が良いって訳じゃなかった。小学生の頃から、とりあえず家が隣だからという適当な理由で一緒に帰っている。アイツが部活で遅れた日には確実に俺も遅れる。同じ部活なのだから、中学校の頃からそう、星の有無なんて関係ない、空が大好きだから、天文学をもっと知りたいから、地学研究部。
今、俺たちは高校二年、まだ部室に先輩は居るが下から何人か新入りが入ってきたって感じの時期だ。最近彼女は夢を諦めたのか、夢から冷めてしまったのかもうすでに、空に絵を描くなんて事は言わなくなった。どういう心境の変化かは分からないがとりあえず言わなくなった。今年の五月七日、俺の誕生日以降。
毎年、この腐れ縁を讃えて互いに誕生日には小さな小包みを上げているのだが今年の彼女は来なかった。
まあ男でも出来たんじゃないだろうかと、適当な推測を立てて終わった。別に構わない、俺がアイツに対して持っている感情は友情であって恋愛感情ではない。趣味が合って意気投合する、登下校を供にする。どいつもこいつも友達同士でやっている。それを男女一対一でしたら付き合っているとか騒いで、当事者の俺とアイツがどれだけイラついている事か……。
騒がしい教室、その中で俺は人知れず溜め息を吐いた。その理由は安直、目の前にあるのは欠席していた間に溜まった課題。ついこの前俺の父さんは死んだ。いきなりまさかの展開だがこれは事実だ。しかも命日は縁起が悪いことに五月七日。あの親父は俺を嫌っていなかったはずなんだけど……。
死因は事故、トラックに突っ込んだ。あの頑強だった姿を知っている俺にとって、病死よりも交通事故の方が驚きだったが、トラックと聞いてすぐに納得した。流石に人はトラックに勝てない。それも何やら人を助けようとしたとの事だ。その人情味は間違いなく俺のよく知るオッサンの取りそうな行動だ。
お人好し、それだと聞いた感じは悪いが親父は違った。お人好しは優しさに足を引っ張られてそれがただの甘さに変わってしまう。だが親父は全てを遣り遂げた。文字通りその身を犠牲にしてまで。
もう一度溜め息を吐く。目の前には山積みのプリント、つくづく思う、うちの教師は馬鹿阿呆鬼畜外道なんじゃねぇの、って。進学校だけどこれはないだろ。
そんな風に考えた矢先、コツコツと、廊下を靴で叩く音が一人だけの静かな教室に侵入してきた。ガラス越しにシルエットがぼんやりと映る、痩身長身、きっとあれは学年中の男子から大評判の女性教師。確かに綺麗だけど歳上は興味ねぇっつーの、見下されてる気がするし。ついでに課題の多さには定評があるしな。と言うより手元の山の八号目まではあの人の数学の課題だし。
「面倒くさっ…………」
そう呟くと同時にガラッと叫んだドアが一気に開く。入ってきそうな候補にはあの先生しかいない。
「課題は順調? 今日中に仕上がるかしら?」
「あっ、女バージョン田中先生。順調も糞も無いっすよ、まだ放課後始まったばっかですし」
「そう……その前に女バージョンって何?」
「ああ、現国の先生は男バージョン田中先生ですから」
「成る程ね、確かに紛らわしいもんね」
別に下の名前で佑香先生でも良いと言ってきたが、下の名前で呼ぶ程親密な関係じゃないとはねのけた。
「良いじゃない、言っても。あなた教え子よ」
「流石に馴れ馴れしいでしょ? 彼氏かっての」
「随分はっきりと言い切るのね、嫌いじゃないけど」
「嘘を告げるの大嫌いっすから」
クスクスと男を釣るような笑い声を上げて先生は笑う。その美貌ならば同年代の男を釣って欲しいのだが、本人曰く年下が好きらしい。本人の趣味をどうこう言うつもりはないが、少なくとも俺はターゲットにされたくない。理由は前述の通りだ。それなのになぜか俺が目を付けられた。
それを自覚したのは去年の二月中旬、丁度今の後輩が入試をしていた期間だったと思う。地学研究部の顧問がまずあの人で、俺とアイツがそこの仮入部に行った時に懇切丁寧に説明してくれたので、良い先生だと思ったが生徒に手を出すという噂を聞いた九月頃、ちょっとだけ印象が悪くなった。そして二月の中旬だ、いや、もっと正確に言おう。二月十四日の話だ。世ではバレンタイン、そういう訳であっさりと自覚できた。
ここでまず注釈だが、アイツ……そろそろ個人名を出そうか……晴紀(はるき)から俺には渡してこない。何度もしつこいが、俺と晴紀の二者の間の関係は恋人ではない、親友だ。周りがギャアギャア煩いから、『義理』は渡さないことが暗黙の了解になっている。
それはさておき田中先生だが、あの人は男女関係なく部員全てにチョコレートをばらまく。それぐらいなら別に構わない。だが一つだけ余計な一言が入った。「私の好感度によって貰える物が変わる」、それが余計な一言だ。そう、そして皆が全く同じ四角形のやつを貰っているのに、俺だけなぜか果物の桃ひっくり返した形だぞ! まず、種類が違うだけで他より嫌われているか好かれているかの二択だ。先生に訊くと「Likeの方」とあっさりと言い切った。嘘ではないとは分かるので俺は人知れず肩を落とした。
ただしここで唯一ありがたいことが起きた。皆は俺と晴紀の仲を勘違いしている。だから、田中先生から気に入られても宏樹(ひろき)なら構わないとあっさり許される。元々歳上は苦手と言っていたのもあり、彼らの中ではマドンナ的なあの先生は俺には取られないと分かっていたらしい。
はた迷惑な勘違いと噂が助けてくれるのはその一瞬だけで、それ以外では役に立たないことも一応言っておこう。
ふと先生は時計を見て顔色を変えた。職員会議が始まる時間だと、慌てて教室を出ていった。
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.127 )
- 日時: 2012/02/10 21:53
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
「さてと、課題の片付け始めますか」
先生がいなくなると同時に、机の横に無造作に置かれるエナメルから、黒と赤を基調とした傷だらけの筆箱を取り出す。小三の頃からずっと愛用しているものだ、多分これ以外のものは中々使わないと思う。年季の入った物であるのは勿論、人から貰ったものなのだから無下には扱えない。
その中から取り出したシャーペンも、中一の時分からお世話になっている。アルファゲルの柔らかい部分をカバーする薄皮状のシートには何本かの亀裂が入っている。どれもこれも晴紀からの誕生日プレゼント。流石にエナメルは違うけど。これは親父が残してくれた物の一つ。
「数学を……とりあえず一時間以内に片すか」
まずは最も数量の多い科目から手を付ける。飽きたら他の教科をすれば良い。大量にプリントはあるが一問辺りの問題の密度は大したことない。集中すればすぐに終わらせられる筈。途中数学に飽きて英語でもするとして、数学は一時間で終わらせてみせる。
着々とシャーペンを走らせる。やはり難問は少ないようでたかだか二分ちょっとで一枚目のプリントが終わる。微分の基礎確認問題ばかりだ、「xのn乗の導関数=n×xのn-1乗」、それを覚えたら楽勝。
着々と二枚目三枚目も終わらせて山を切り崩していく。順調順調、そうして三十分経つ頃には数学の七割方、全体の半分ちょっとが終わっていた。
そろそろ数学にも飽きがやって来る。それを打破するために数字の書かれていないプリントを取り出す。今度は英語、正直文系は苦手だが英語だけはそう嫌いでもない。分からないと先が厳しいから有難い事だ。長文だから面倒と言えば面倒だが、気分転換には打ってつけだ。
さらに格闘すること一時間弱、五時を少し回ったぐらいに課題は終わった。やっと肩の荷が下りてホッとした時にまたしても教室のドアが開いた。今度入ってきたのは後輩だった。
「あっ、宏樹先輩。ちょっと訊きたい事が……」
「どうした小杉? 顔真っ赤にして。走ってきたのか?」
「いや、そういう訳ではないんですけど……」
頬を赤らめて落ち着きがないというならば、選択肢は大体二つだ。一つはベーシックに激しい運動のためであり、もう一つは恋煩いだ。前者を否定されたので後者であることは半確定的だ。そして一々俺の所に来るってことは相手はおそらく晴紀だろう。
「晴紀先輩と付き合ってないって前言ってたの、本当ですか!?」
「やっぱその話題かよ……付き合ってる訳ねーだろ」
「本当ですか!?」
「知ってんだろ? 嘘は嫌いだ」
確かにと、小杉はあっさり納得した。一年が二年から怒られるのは大きく分けて二種類、一つは嘘を吐いた時であり俺からで、もう一方は初めから諦めるようなセリフを発した時に晴紀からだ。
気さくな面と面倒見が良い事から晴紀は後輩から慕われている。目の前の小杉のように好意に変わる者も少なくない。
「何だ、お前も晴紀が好きな感じなのか」
「はい。でも宏樹先輩と付き合っているなら無理だなと思ってたんですけど、大丈夫そうです」
「そうか。俺は一応違うけど敵は多いから気を付けろよ」
その続きを言うか言わざるか大分迷った。この頃昔馴染みの友人の俺との付き合いが悪くなったのだから、もしかしたら男がすでに出来たのかもしれないと。
数秒の沈黙のうちに考えた結果、言わないことにした。本当に誰かと付き合っている確証は無い。不用意に惑わすようなセリフは口にしない方が良い。早く部活に行くぞと手で指示する。静寂の中でただ呆然としていた小杉もすぐに反応してくれた。
それにしてもなんでアイツはいきなり付き合いやノリが悪くなったのだろうか、それに関してはどれだけ深く考えてもさっぱり分からなかった。
その日もいつも通りの地学研究部だった。先輩はちゃんと端の方で黙々と受験勉強……勿論ここでは地学しかしない、と暗黙の了解があるのだが。一年は望遠鏡の使い方を必死で覚えている。それを親切に補助しているのが数少ない二年生部員の晴紀だ。二年生はこの部活では二人しかいない。
五時を回ったのであまりすることは残っていないのだが何もしないよりはマシだ。机に向かって資料を広げ、レポート用紙とボールペンを取り出す。課題研究の発表が迫ってきているので、そろそろ纏めないといけない。
しかし悲しくも時間は無い。今日は結局大した作業もできずに下校時刻になってしまった。
「さーて帰るかぁ」
いつもの軽い感じで晴紀に声をかけた。しかし晴紀は知らぬ存ぜぬを貫き通すように、それを独り言と見なして一人で帰りだした。
「何だアイツ? やっぱ普段と違くね?」
そろそろ真剣に、からかわれるのにうんざりしているのだろうか、まるで避けるように俺から離れる。一体何があったというのか。
倦怠期か? と皆が囃し立てるがそんなのはどうでも良いし倦怠期よりも不味いかもしれない。なぜなら一方的に晴紀が避けているのだ、俺にはどうこうする手段はない。結局何もできずにその日は学校を出ることになった。
「ただいま、母さん……はパートでいないから父さん……の遺影」
結局家にいるのは自分一人しかいないことに気付く。一人っ子なのだからそれも止むなし、とりあえず健康管理の手洗いのために洗面所に向かう。葬式関係で散々休んだのだ、病欠なんてもう論外だ。また課題をする羽目になる。
とりあえず衛生面はしっかりさせようとした後に、台所へ向かう。冷蔵庫を開けると今日の晩ご飯であろう唐揚げ等が置いてあった。電子レンジに直行、加熱を始める。その間に炊飯器から白米を茶碗によそう。まずは仏壇に供える用、そして俺の食事用だ。
仏壇の親父の写真の前に供え、自身の茶碗をダイニングテーブルに置くと、計ったかのようにぴったりレンジが加熱完了を知らせる電子音を上げた。ようやく飯が食えるなと思いながら座席に着こうとしたらインターホンが鳴った。
「誰だ、こんな時間に?」
母さん十時まで帰らないって言ってたよな? とするとやはり候補はいない。宅配物があるようなら書き置きでもある筈だし、同級生が来るとはあまり思えない。それでも知り合いだったら困るので玄関に向かう。ドアを開けるとそこには晴紀がいた。
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.128 )
- 日時: 2012/02/10 21:54
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
「晴紀か……いきなりどうしたんだ?」
声をかけたがあいつはずっと俯いてじっと黙っている。人の家の呼び鈴鳴らしといて何を惚けているのかと、少し呆れる。このままでは面倒だからこっちから近寄り、声を掛けようとした。
するとそこでようやくアイツは口を開いてくれた。
「えっとさあ、今日、来るの遅れたけど、何か、あったの?」
「遅れたってどこにだよ?」
かなり舌が回らないようで、ちょっとずつ詰まりながら口にする。その様子はやっぱり、尋常では無かった。
「どうした? 何かあったのか?」
晴紀はとりあえず小さく頷いた後にまた動きを止める。そのまま沈黙が果てなく続く。晴紀からは話しだそうとせず、俺はというと向こうから口を開くのを待っている。そういう面倒な状況が展開され、数十秒が経過、そろそろ痺れが切れそうな俺から話し掛ける。
「だから、どういう用件なんだって訊いてるんだよ。早く言えって」
「…………実はさ、その……」
何やら緊張しているようで、その不安と焦りから手に力がこもってしまったのだろう。何やら紙の形の崩れるクシャリという音がしたので晴紀の手元に目をやった。そこには軽く皺の寄ってしまった包装がされた小さな何かが握られていた。視線に気づいたようで慌ててその小物を隠すように背面に回しこんだ。
どうやら、あれが多少は関係しているらしいなと、すぐに予想はできたがそれ以上の予測は立てられなかった。結局何の用件で来たのかさっぱりわからずもう一度問いただそうとした時に、ようやく晴紀は自発的に口を開いた。
「えっと……今日部活来るの遅かったけど、何かあった?」
「ハア? ……何かって、田中先生の鬼の課題してたけどそれがどうかしたか?」
行くの遅れたから何だって言うんだ? こいつはお隣さんなんだからつい先日葬式があった事ぐらい知っているだろう。それ以前にアイツも一日だけ休ませてしまった筈だ。幸いアイツの場合は課題は溜まらなかったらしいが。
そう、それなら良いんだけど……、語尾を濁すようにして独り言並みに小さい声でそう口にしたのを訊き、さらに首を傾げる。何だか安堵しているようだがこいつは俺が何か厄介事に巻き込まれたとでも思ってんのか? まあ確かに最近は田中先生に絡まれるだけで厄介事だから今日も起きたんだけど……。
「で、結局の本題って今日俺が遅れた理由を訊きに、って事か?」
「えっ……違……わないか、これじゃあ。じゃ、じゃあさ……」
「じゃあ何だ?」
おかしい、いつもはこんな風に人の、それも俺の顔色を窺って話すことは決してしない筈なのに、今日のこいつはどう考えてもおかしい。何かに脅えるようにしておずおずと口を開いた晴紀の口から発された言葉は本当に俺の目を点にした。
「宏樹は、私が憎いと、思ったことはある……か?」
瞬間、思考が停止した。というよりも自体が、セリフが呑み込めなかった。自分が晴紀を憎む要因などある訳が無い。あっちが動転しているのがこっちにも伝わってきて、俺までパニックに陥りそうだ。
「馬鹿かお前は、思ったことなんてめーよ。つーか何で思うんだよ」
「原因ならあるんだ! そうなっても仕方ないぐらいの!」
「知るかよ、少なくとも知らん。ていうか今父さん死んだばっかで他の奴恨んでる暇はねーし」
「だから、それが原……」
「ん? どうした?」
いきなり火蓋を切られたように大論争もどきが勃発したかと思うとすぐに鎮静化された。横の方を見た晴紀の、その顔から一気に血の気が引いた。どうしたのだろうかと歩み寄ろうとした瞬間に、獣に脅える羊のように一目散に自分の家に向かって駆け出した。
「ったく、一体何だってんだ」
とりあえず明日になったら部室で嫌でも顔を合わすだろう。その時にもう一度訊けばいい。夕食を放置してしまっているのも問題なのでさっさと家に戻ることにした。
「完全に冷めきってるな、不味そ。再加熱したらもっと悪化するかもだし止めとくか」
食卓に戻ると待っていたのは湯気の出なくなったおかずと、まだうすら暖かいご飯入りの茶碗。もっと早めに尋問しとけば良かったとため息を吐く。今日何回目だっけと思いつつ、いざ箸を口に運ぼうとしたときに、リビングのドアが開いた。
入ってくるのは母さんに他ならないのだが、それにしても予定の帰宅時間よりも早いなと思う。
「お帰り。早くね?」
「ええ、今日は早めに仕事終わったからね」
「パートってノルマ制なのかよ?」
「違う違う、まだ精神的に整理がついていないだろうから早退しても良いって」
なるほどと、俺は相槌を打つ。それにしても豪い格差だ。俺に至っては手加減も容赦もない課題が降り注いできたのに母さんは楽になるとは……。神様、いや先生共め……。
半分ヤケ食い気味に食いだした。味とか温度とか関係ない、怒りを紛らわすために口に物を含む。そこで思い出した、夕食が冷めている原因を。その時に母さんの方からそれについて問いただしてきた。
「そういえば、さっき彼女来てたわよね、何話してたの?」
「んあ? 別に大したことねぇよ。今日の課題が面倒だったってだけだよ」
「それだけ? ほかに何か無かった?」
「意味わかんねえこと言ってやがったな。俺があいつを憎むとか憎まないとか」
そう、と適当な返事をした後に母さんはコートをハンガーに掛けて自分の夕食の準備をし始めた。それにしても今の声は妙に冷たかったように思える。何でか知らないが晴紀に対して怒りを感じているような、そんな風に不機嫌な声音。
母さんと晴紀、この二人の違和感に関しては関連性があると、普段ならば決して当たることの無い直感が告げていた。晴紀は俺が晴紀を憎く思っても仕方ないと言った、そして母さんは何やらアイツに対して負の感情を持っているようで。
だけど一体何でだろうか、そこが全く解せない。特に晴紀が何かしたせいで母さんを怒らせるとは思えない。母さんも、確かに感情的な人間だけど理由なく人に刺々しく接しない。
結局の話一切その続きが思いつかない。この状況は変、その奇妙な状況に陥るだけの理由も委細無い。自分には分からない、それならば本人に訊くしかないな、そう判断した俺は母さんに呼び掛けた。
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.129 )
- 日時: 2012/02/10 21:56
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
「なあ母さん、もしかして晴紀絡みで何かあった訳? いつもは俺とあいつが喋っても完全無視なのに」
「別に、何も無かったわよ」
「本当に……何も無かったのか?」
「本当よ、一体何を疑っているの?」
「いやさあ……アイツが帰ってからすぐに母さんが帰ってきたからさあ――――」
――――アイツさあ大通りの方見てかなりビビった顔して逃げ帰ってたからさ、もしかして直後に来た母さんを見て青ざめたのかな、って考えたんだ。確か母さんの職場あっち方面だろ?
そこまで言って言葉を切った。母さんの顔は見る見るうちに強張っていく。かと思えばそれを悟られないようにかすぐに真顔になる。しかし作り笑いをするまでには至っていない、いや、作り笑いでも笑える余裕が無いのだ。やはり何かあったと言わざるを得ないのだが、それを一々訊いて答えてくれるほど大人は丸くないことは知っている。
しゃあねぇ、明日晴紀に訊くか。諦めた俺はまた飯をがっつき始めた。数秒経ってようやく、もう気にも留められていないと気付いた母さんは食事の支度を始めた。
その日の親父の影は何だか暗く曇っているように見えた。表情一つ変えぬ写真の筈だと言うのに。
「あっ、そうだ火薬の調合しとかねぇと!」
親父の死後、母さんの仕事は増えた。それだけじゃ申し訳が立たない。だから俺も親父の仕事を手伝った経験を生かしてバイト、というには少々リスクが高いが家計を支えている。
夕食が済み、家を出て河川敷に向かうために支度を始める。今日はとりあえず仕事として一つ作って、学園祭用のものを造るためのプロトタイプの作成に取り掛かろう。
五月も中旬、もうそれほどまでに寒くない。適当な長袖を着るだけで寒さは払われる。まあまあ薄着でドアノブを回そうとしたら母さんが呼び掛けてきた。
「もう二度と、晴紀ちゃんとは話さないようにしなさい」
「ハァ? いきなりどうした? 何か恨みでもあんのかよ」
「良いから。分かった?」
「いやいや、訳分かんねぇよ。いきなりなんだってんだ? 理由をせめて言ってくれ」
「あなたがそれを知る必要性は無い。ただ、分かったって言っていたら良いの」
どうやらヒステリックなモードに入り込んでいるからこっちの話には聞く耳を持っていないらしい。うちの母親はこういう時に面倒だなと、相当な上から目線で呟いた。
だったら母さんの言うことも全部無視だ。明日晴紀から訊いてみせる。
意味の分からぬ苛々に今日は一日中振り回されることになったが、作業を始めたら多分吹き飛ぶだろう。そうじゃないと俺が吹っ飛ぶし。自転車を転がして大通りの反対側に向かった。
その最悪の日の翌日、普通に普通な平日。なのに俺の机の周りには人だかりが出来ていた。何やってんだろうかと見回すがあまりの人の多さに全然見えない。
何で自分の座席に迎えないんだよと、半分キレながら舌打ちをすると、ようやく俺に気付いたようで「来やがった」とどよめいた後に通路が開いた。マジで何なんだと思っている俺に、一通の手紙が目に入る。手紙と言っても普通の手紙ではなくて、先生からの手紙、要するに課題等の呼び出しである。
「何でだよ、課題は昨日終わらせたっての」
「いやいや、あれは一日分、お前は二、三日休んだ筈だ」
「…………待て。科目は何だ……?」
「数学! 新しい範囲だから先生の解説付き、田中先生とマンツーマン」
「あ"あ!? 数学!? あんだけで一日分かよ!」
「御愁傷様、そして良かったな。田中先生と二人っき……」
「てめぇらの楽園が常に俺の楽園だと思うな! 俺にとってあの人と二人は戦々恐々だ!」
どいつもこいつも適当な事言いやがってとぼやくとクラスメイト達は大声で笑いだした。笑ってもらわれても結局俺にとって状況は良い方向に向かわない。あがこうと課題からは逃げ切れず、嫌がっても先生に捕えられ、訊きたくとも昨日の異変について晴紀に訊きにいけない。
一体俺の周りではどれだけの不運が渦巻いているのだろうか。上記三つに加え親父の死、どこの誰でも良いから幸福を分けてくれ。
「にしてもついてないな、ああそっか。お前の一生涯のラッキーは晴紀ちゃんと田中先生と仲良くなることで使い果たしたか」
「止めてくれ……洒落にならん」
「七時間目は過酷だな」
七時間目、それは放課後課題の通称。本当に辛い。あれ? 何でだろ? 目から汗が…………。
「はい、じゃあ関数f'(x)は?」
「えっと……6xの2乗+8x+2……ですか?」
「正解。はい次に因数分解」
「(6x+2)(x+1)」
「極値は?」
「マイナス三分の一と-1です」
「オッケー、じゃあ今日はここで終了。帰って良いわ」
やっと終わった。分かりやすくてすぐに理解できるくせに解説を三周させる、そこからの楽な演算問題を三十問みっちり解説付き。ここまでおよそ一時間半、時すでに四時半。おそらくこの先生は自分の解説は分かりにくいとか思っているのであろうが、そんな事は無い。むしろ分かりやすく、一発で納得できる。それなのに懇切丁寧に教えるから無駄に時間を取るのだ。
その思い込みが無かったらもっと凄い教師になるかもしれないのに、保護者でもないのに先生の心配をする。とりあえず課題は終わった、後は二学期の学園祭で炸裂させる作品の製作のために必要な火薬と炎色反応を起こすために必要な金属について調べないといけない。
「さっさと行かないとサボりになるんで、そろそろ行かせて頂きます」
こっちの、女の方の田中先生は突拍子も無い事をすることが多いとよく聞く。早く離れないと、それこそ襲われたらどうしようかというような感じだ。普通被害の矢印って逆だろ、とかも言いたいが、普通でないのでそこは既に納得だ。
長居はしていられない、急いでエナメルの紐を掴む。持ち上げようと力を込める。しかし鞄は浮き上がってくれなかった。もう少し力を込めてもほんの少ししか地面から離れない。何でだよとクレームを付けようとしたその時に見えた。先生がおもいっきりエナメルを押さえつけているのを。
「先生、何してんすか?」
「前々から脅してたわよね? 最悪実力行使だって」
「えっ……? ってちょっとタイムタイム!」
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.130 )
- 日時: 2012/02/10 21:57
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
俺の肩に先生は手を置き、体重を乗せて力を加える。無用心にしていた時にそうされると、あっさり押し倒されるしかない。鼻先数センチすれすれに奴の顔、はっきり言って顔が紅潮するどころか逆に青ざめた。この人正気かよ?
力で押し退けるのは確かに簡単だが、それだと怪我をさせる可能性がある。どうにも八方塞がりで、どうしようか考えていたら目の前の教師は問いを始めた。
「今まで何度か訊こうと思ったんだけど、先生の事嫌い?」
「別にそんな事無いっすよ。授業も分かりやすいですし」
「へぇ……この状況で白を切るんだ?」
「そっちの意味ですか? それだったら……恋愛対象ではございません」
「随分はっきりねー。こんな状況で?」
「だから嘘は嫌いなんすよ。それは変えない曲げないぶれない。何か問題でも?」
「正直なのは良い事よ。ただし、嘘を吐かないと大変な時だって……」
途端にバタバタとドアの向こう側から足音が聞こえる。興奮と緊張で周りの見えていない先生の耳には入っていないらしい。声でも上げればとりあえず自身は護れるかなとか予想してたらその足音は教室の前でピタリと止まった。
コンコンとノックする音が部屋中を走る。はっとしたような表情になった田中先生は俺の上から跳び退いた。そして俺が立つ前にその引き戸は開けられた。そこに立っていたのは息を切らした晴紀。
「ちょっと、課題終わってるの? 終わったなら早く来なさい」
「えっ、あぁ……じゃあ先生ありがとうございました」
あちらさんの顔には残念そうな色は浮かんでおらず、危なかったと冷や汗を流している。もしあんな事したとばれたならば、職を失う。
とりあえずさっきの事は黙っておこう、そう決めた。あの人に押し倒されるほど貧弱だと思われたくない。それにクラス中の男子が野性の水牛の群れ並みに騒がしくなるのも必須だからだ。
それにしても、何で晴紀は俺を呼びに来ただけでこんなに息を切らしてるんだ? そんな急ぎの用じゃ無いくせに。
「ねぇ……さっき倒れてたけど何かあったの?」
「あったよ」
「何が?」
「知らなくて良いよ、言いたくない」
「やっぱり……先生に?」
「その辺はご想像にお任せするよ」
質問攻めはそこで止まった。こいつは分かっている。嘘が嫌いな俺は嫌な質問が来ると決して答えない事を。
もう訊くことはないようなので、今度はこっちから訊いてみることにする。内容は勿論昨日の事。
「なあ、昨日結局何しに来たんだ? 適当な会話の後逃げるみたいに帰ったけど?」
「それは……その……元気かな? って……」
「元気に決まってんだろ!? ていうかお前に心配されんの多分人生初だぞ」
「五月蝿いわね! 悪いの!?」
「それに母さん見ていきなり青ざめやがって」
前から男の方の田中先生が歩いてくる。軽く会釈すると、なぜか憎悪に歪んだ顔をパッと明るい笑顔に変えて返してくれた。
しかし今の視線は確実に自分に向いていたと思う。俺は何もあの人に突っ掛かった覚えは無いのだが。問いただせば確実に分かるのだが、もしそうだったら嫌なので止めておこう。
「何の事……かな? 私があんたの母さん見て驚くなんて、ある訳……」
「やっぱり動揺してんな、俺に虚構が通じないこと、忘れてる」
「――――っつ!」
嘘は嫌いだ、それを貫き通した俺にはとある才能がある。人が嘘を吐いているのが分かる。ちょっとした瞳孔の動き、冷や汗、呼吸の刹那の乱れ。その微細な変化は俺にとって見破るのは容易い。
そういう訳でカマをかけてみたら見事にヒットしたという訳だ。全く俺の周りには様子がおかしいのばかりだ。何やらよそよそしい幼なじみ、なぜか冷たい母親、生徒に手を出す先生、どういう訳か憎々しげな教員……えらくキャラクターの強いメンバーだな。
「で、母さんが何言ったんだよ? 最近夢の事言わなくなったけど関係あるのか?」
「そ……そんな事……」
「母さんが俺に、お前と関わるなって言った理由も知ってるのか?」
「えっと……その、し、し……知らない」
「…………そうか、よく分かったよ。体よく断りつつ、結局俺が嫌なんだな」
「違う……違うんだ! 嫌な訳無い! ……でも、でも……無理なものは無理なんだ」
知らないと言ったのは確かにブラフだった。しかし嫌な訳無いって言ったのは真実だった。折り入った事情で俺に近付けないといったところか。それにしても相当弱気だなぁと、溜め息を吐いた。
「にしても本当に大丈夫か? 最初から無理って決め付けない、じゃなかったのか?」
「……決め付けてないよ。考えてみたけど、どう足掻いても出来ないんだ」
「はあ……お前なぁ……」
らしくない、その一言では片付けられないほど、晴紀は普段の姿とはかけ離れていた。神妙な顔つきをするだけでも一大事なのにまさかアイツの口から無理っていう言葉が出てきたのだ。これを驚かずして何に驚くというのだろうか。
これはちょっと手を加えてやる必要があるな、そう思った俺は晴紀の右手首を掴んだ。顔を上げた晴紀からは紫色の雰囲気が漂っていた。紅潮しつつも蒼白しているような。
「明明後日、河原に来い。お前に昔の気分を取り戻させてやる」
「簡単に言うなよ……近付けなくなった今、やっと気付いたことだってあるんだから……」
「んあ? 何か言ったか?」
「何でもないよ! 明明後日だね? ちゃんと行くから!」
俺の手を無理矢理引き剥がして逃げ出すようにして晴紀は駆け出した。
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.131 )
- 日時: 2012/02/10 21:59
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
「ただいま……つっても誰もいないか」
閑散としている自宅に呆れ、荷物を置きに部屋へと向かう。それにしてもやはり、おかしくなりはじめたのはどこからだろうか。やはり五月七日、俺の誕生日辺りだろう。前日の晴紀はいつも通りだった。とするとまあ五月七日しかない。
五月七日に何があったって言うんだ? 俺の誕生日以外に母さんが気に掛ける事なんて、親父の命日ぐらいだ。
「待てよ。これってまさか……」
頭の中に一つの仮説が思い浮かんだ。それだけでは足りない、もっともっと、与えられた情報を全て加味する。晴紀の言動、親父の末期、母さんの怒りからできるだけ心情を予測、これによって仮説は肯定される。
しかし確固たる証拠は無い。これじゃただの憶測だ。考えた結果向かうことにした、親父の部屋に。
弾むように、浮き足立った自分を落ち着かせて急いで階段を上る。家でも仕事をしていた父さんはいつでも逃げられるようにって一番奥の部屋を使っていた。
乱暴にドアを押す。中はキチンと整理されたままだ。親父の机の上に目をやる。そこには予想通り日記が置いてあった。
震える手で、逸る気持ちを抑えながらそれに手を付けた。すまねぇ親父、プライベートの塊見るぞ。
「やっぱりそうだったか……」
メッセージは決まった、打ち上げる絵画は二発。作成にとりかかる、そのために今度は階段を駆け降りる。腹減ったとか関係ない、自転車に乗って一気にペダルを漕いで突っ走った。
「あっ、そうだついでに母さんと先生にも見せてやるか。言いたい事は一緒だし」
優しげな風が背中を押している。温かく感じるのは夏が近づいているからかな?
明くる日、からさらに二日後の夜近所の河原に四人の人が集まっていた。一人は俺、そして晴紀に母さんに女の方の田中先生。最近ストレスを俺に貯めさせる元凶となる三人組。
そして俺の隣には小屋一つ、元親父の職場、現在俺の職場。煙突みたいな突起が出ているが、それは発射台であり、中にしまっているものを発射するために存在している。
さて、そろそろ準備を始めるかと思った時に、河原小石を踏みならす、じゃらじゃらした音がする。こんな時間に誰かと思うと、男の田中先生。
「生徒が教師呼び出しとはどういう事だ? 何を田中先生にする気だった?」
「別に変な事考えてないですよ。説得……って言うか説教?」
突然同僚が出てきたからか、田中先生は目を丸くした。それにしても俺もこの人がなぜ来たのかさっぱり分からない。
「説教だと? ふざけているのか、自分の立場を弁えろ。生徒がゆか……じゃなくて教師に叱るなど言語道断……」
「ああ、なるほどようやく分かった! そうかそうか」
閃いた、この人が俺に対して憎悪の目を向けた訳が。この人は今、田中先生の事を佑香と呼ぼうとした。つまりは多分この教師は女バージョン田中先生に好意を寄せていることに。
「いきなり何を言っている? そういう生徒には天誅を……」
「ハァ? あんた何言ってんだ?」
「気に入られてることをよしとして、やりたい放題の生徒など……」
そこでもう聞こえなくなった、先生の声は。気付くよりも前に目の前のおっさんを突飛ばしていた。豪快に彼は小石の上を転がる。
「き、貴様何を!? 私は教師だぞ! それをこんな……」
「うるっせぇよ! てめぇもそっち側かよ、あ"ぁ!? 黙ってたらどいつもこいつも好き勝手言いやがって、俺の気分も気にせずに、適当な事ばっか言いやがって。この馬っ鹿野郎共ぉっ!!」
失敗作の花火の癇癪玉ならいくらでもある。次から次へと導火線に火を付けてポイポイと男の田中先生に投げつける。
失敗作とはいえ花火は花火、強烈な閃光と耳をつんざく快音が鳴り響く。熱だって相当だろう、完全に腰の抜けた田中先生はのた打ち回っている。良い気味だ。
「反省したかコラァ!?」
「す、すいませんでしたぁっ!!」
教師の誇りも忘れて地面に頭を擦り付ける。ここまでやられるとようやく俺も我に帰った。
「あっ、すいません」
「ひぃっ……!」
立ってもらう補助にと手を差し伸べると完全に怯えられた。嘘だろ?
「まあ良いや。じゃあ今から俺はメッセージを打ち上げる。しかと心に刻むように。そして晴紀、お前の夢なんて何百年も前に叶ってる」
さあ、準備は整った。後はこの何日かかけて作った花火を打ち上げるだけだ。
「一発目行くぞーっ」
発射台から伸びた長い導火線に俺は着火した。猛獣が獲物を狩るがごとく、火は猛スピードで突き進む。麻縄のような紐が燃え尽きると共に、光の塊は尾を引いて真っ直ぐ天へと走る。
そして上空百メートルほどの所で、盛大に炸裂した。身体中に響き渡る轟音と空の文字が成功を現わしていた。
そこには文字が、こう書かれていた。「少しは俺の声も聞け」と。
「女の田中先生!」
「えっ! ……何!?」
「そろそろ俺が憎まれ役買ってまであんたの教師生命守ってんの察しろ!」
「は、はは……はい……」
「男の田中先生!」
「な、なな、何だ?」
「俺がいつあっちの田中先生を恋愛対象として見ていると言ったぁっ!?」
「言ってません! ごめんなさいぃっ!」
「母さん、もといクソババア!」
「わ、私?」
「晴紀助けて死んだからって親父の仇とか晴紀に言うんじゃねぇ!」
日記を見て分かった、親父は死んだ日、晴紀と買い物に出ていた。内容は俺の誕生日プレゼント。そしてトラックにやられたのは晴紀と会っているはずの時間。ここからは憶測だが、きっと親父が救った女子っていうのは晴紀だ。そして母さんはそれを知って晴紀に言った、二度と私たちに関わるな、これ以上私の家族を奪うなと。
「最後に晴紀、俺の母さんの言うことなんて聞くんじゃねぇ! 俺と友達でいたいって思ってんなら、他の奴の意志なんて関係ない、俺とお前がどう思うかだ。後、最初から無理とか言うな。確かに死んだ親父は生き返らないさ、でもな……忘れさえしなかったら良いんだ、そしたらずっと生きてる!」
一息吐く、言いたいことはこれで大体言い尽くした。言いたいこと言い切るって案外すっきりする、大発見だ。胸の中に爽快感が満たされているのを感じながら二発目の花火を思い出す。それを取り出して俺はもう一度晴紀に話し掛けた。
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.132 )
- 日時: 2012/02/10 22:00
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
「晴紀、今日は何日だ?」
「五月十七日だけど……」
「俺の誕生日の十日後、さて何の日だ!」
「私の……誕生日?」
「その通り、だから今から空に描いてやるよ」
この花火でな、そう言って手元の球体を軽く叩く。さっきのよりも大型、親父が生きてた頃から何ヵ月もかけて製作してきた。これまでのものとは比にならないほどの超大作、上手くいくかは未知数だが今までの自分を信じる。
発射装置に丁寧に設置する。苦心してきたのだ、絶対成功しろよと念を押す。
「二発目だ、今度はド派手に行くぞ」
もう一度導火線に火を付ける。ジリジリと音を上げて炎は走り、ついに花火に火は点いた。発射の瞬間にすでに爆発音、轟音と共に空に向かって舞い上がる。濃紺の夜空を貫く一筋の閃光、俺は納得した、成功だって。
そして一気に花開いた。上空遥か彼方にて大噴火、しかしそれでも、とても綺麗な絵は描くことができる。顔に照った光は今を昼と錯覚させるほど。
花火は、ホールケーキを描くように炸裂した。丸いケーキに何本も、赤やら青やら緑やら、多数の蝋燭が突き刺さった中心に、プレートが置いてある。“Happy Birthday”と書かれたプレートが。
「凄い……絵が、絵が描かれてる…………!!」
空を見ながら晴紀は子供のように大興奮している。まだまだ幼いなぁと溜め息を吐いていると、母さんがやって来た。
何やら反省しているようで、頭を下げてきた。別にどうでもいいと顔を上げさせる。もう、分かってくれたから。
「ねぇ先生、一つ言っておきますよ」
「どうしたの、晴紀ちゃん?」
「先生には絶対に譲りませんから」
「んー? ああ、はいはい。でも向こうにその気配は無いわよ」
「構いません、落とします。卒業して先生と生徒っていう縛りが溶ける前に」
「まあ、頑張って頂戴」
そういう会話を聞き逃した俺は以降卒業式までやたらと振り回される羽目になることを知らなかった。
fin
後書き
今回はRegend treasureよりもEtarnal snow寄りの作品です。一人称書きとかですね。
最後の会話の詳細な中身は書きません。
まあセリフに伏線入れたつもりなんでご想像にお任せします。
そして何だかお題の空が御飾りに……申し訳ございません
そして最後の方大分走りがちになってしまいそこも申し訳なく……
しかも無駄に長くて七個もスレッド使ってしまい、もう……駄作でしたが許してくださいm(__)m
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.133 )
- 日時: 2012/02/18 19:07
- 名前: 檜原武甲◆gmZ2kt9BDc
- 参照: 初投稿
『非日常的な赤毛の不運で不幸な人生生活』
i話「僕はまったく空を飛んだことは無い」
僕は空を飛んだことがない。いや、超能力とかそういうことではなく飛行機に乗ることが17歳の間一度もない。これも【赤毛】と言われる原因か……
僕は飛行機つまり、ボーイング737のエコノミーに座っていた。空の景色を見たかったが、通路側だったためすこし残念だった。非常時の注意事項をビデオで見たあとはテイク・オフ(離陸)になるということだ。頭の中でコックピットを想像しながら離陸を味わおう。
管制塔から離陸許可が出る。
「クリアード・フォー・テイクオフ」
副機長がそうつぶやくと機長は
「ローリング」
車輪ブレーキをオフにして滑走を始める。そして、スラスト・レバーを前方に進め、オートスロットルスイッチをONにする。こうしてエンジンの回転数が上がるだろう。
エンジンを離陸出力にし、副機長が
「エィティコール」
が行われる。そして離陸滑走を続けるか続けないかを最終確認し機長が操縦輪を自分の方へ引く。
こうして僕は初の喜びに満ちたアメリカ旅行へ出かけた。
「ねえ。飛行機は初めてかい」
Re: 第三回SS大会小説投票期間! 2/5~2/19まで! ( No.134 )
- 日時: 2012/02/18 19:07
- 名前: 檜原武甲◆gmZ2kt9BDc
- 参照: 初投稿
となりの白い髭が特徴的なおじいさんが話しかけてきた。このおじいさんがもし旅行に行かなかったら僕は優雅な空が見えたのにと恨んだ。
「おい、おい。いきなり儂を怖い顔で見ないでおくれよ。儂の名は二四 東だ。」
一方的に名刺を押し付けられて腹が立ったがここは機内だ、年寄なんかに暴力をしてはいけないじゃないか。すこし息を整えると名刺を見た。そこには「ジャック株式会社会長二四東」と書いてあり驚いた。
ジャック株式会社、ジャックグループはいろんな分野に進出している会社で、一つ一つ説明してたら丸一日かかるので省略すると【二四東さんは大金持ち】ということだ。
ここで一つ疑問が浮かぶ。何故、金持ちがエコノミーに座っている? スイートでも行けばいいじゃないか!
はっきりと伝えたかったが、まだ出会ったばかりそう簡単に仲良くはできない。ここは遠まわしに追い出そう!
「何故、スイート行かないのですか? ここよりも心地よいらしいですよ」
東さんはすこし笑うと天井を見ながら
「気まぐれ」
「そうですか」
一瞬僕のこめかみがねじ曲がったぞ!!
僕の心の中で
普通にスイート行けよ! 一度も間近に空を見たことがないのに!
という悪魔が槍を振り回してるぞ!!
「君の名を聞いていなかったな。なんていうのかな?」
心の悪魔を冥界に送り込む……いや追い返し、本名はややこしい名前なので飛ばすことにした。
「本名はちょっと…… ん~そうですね……ニックネームは【赤毛】です」
ニックネームをいうとほとんどの人が僕の髪の毛を見る。残念ながらご希望の赤毛ではなく、黒髪の天然だ。そしてなんども聞き飽きた質問を聞くことも僕にとって定石だ。
「君の髪の毛は黒じゃないか。なんでだい?」
もちろん、即答。
「言いたくありません」
東さんはため息をつくと
「わかった。家族はいるのかな?」
なんだ? やけに僕のことを聞いてくるな……
「両親はもう他界して兄がいましたが行方不明です」
「それはご愁傷様…… 結婚してるの?」
僕は背伸びをしながら笑った。まず、僕の年齢を間違えているのだろうか? ほんと面白い人だ。
「何歳に見えますか? 僕は17歳です! 結婚はできません!」
「ハハハ、なんか儂からすると不良に見えて」
このジジイ……殺していいか? 殺気を送ると東さんはすこし驚いたふりをして
「いやはや悪かった。儂はからかうのが好きなのでね」
とんだ趣味だな……早く治すといい。
東さんはすこしニヤニヤすると髭をつまみ撫で始めた。
「儂のことは聞かないのかね? 教えてあげようか?」
「……大体わかっていますが、一応聞いときます」
一般人がジャックの会長の名前を知らない人は日本人の一割も満たさない。
「ジャックグループの会長だよ。驚いた? ハハハ君が儂を殺すとどうなるか予想がついたら馬鹿な殺気を抑えるんだな」
「殺気」の所ですこし東さんの裏側がすこしばかり見えた。やはりこの人は裏社会を知っているのだろうか。僕は少しばかり覗いたことはあるからわかるけどあそこから縁を切るのはとても大変だった。
客室乗務員から水をもらうとゆっくり喉に通した。すこし話し合うと喉が渇くのは人間だからか……これぐらいで乾くとなると東さんと話すには五リットルは必要だな……
「もう一度言いますが、なんで会長がエコノミー座っているんですか? 何かエコノミーに座っている理由があるんですか?」
「なぜエコノミーかは昔下っ端だった時を思い出すためさ。あのときは重要な書類やブツを持って大事に運んだものさ」
そう言い切ると東さんは目をつぶった。昔を思い出しているのだろう、眼尻からは涙が流れていた……ブツ? やっぱり裏社会?
「いかん、いかん。つい感傷的になったようだ…… すこしばかり儂の話を聞いてくれるか?」
「いいですよ」
気軽にご老体の話を聞くのもいずれか必要になるだろう。
「 実はな……儂には孫娘がいるのだがその夫が危険な病に倒れているのだよ。一生懸命看病している娘に何かしたいけど、儂はもうヨボヨボの体…… 赤毛もヨボヨボの体になるな…… 生涯後悔する。」
いきなり身の上話になったがこれはお年寄りがいつもやることだ。ちゃんと対応するのがマニュアルだろう。
東さんは力を抜き僕が求めていた空を見ながらしゃべった。話が進んでいくほど涙が東さんの顔を濡らしていった。途中で黙ってしまったが、東さんの涙腺はもう崩壊しているため聞かなかった。
「悪いが……すこし洗面所へ行ってくれないか? 一人になりたい」
東さんはボソッとつぶやいた。普段の僕なら嫌がるが、兄を失った時を思い出すと同情が湧きあがった。東さんを傷つけないように静かに立ち上がると、トイレに向かった。
「みんな苦しみを抱えているのか…… あの野郎、俺だけが不幸みたいに言いやがって」
手をわざわざ冷たくなるまで洗いながら黒眼鏡の大親友でニックネームを作りやがった張本人を思いだし、頭の中で惨殺してからトイレの扉を開けた。東さんは寝てしまったようで、顔に毛布を載せていた。
起こさないたら機嫌が変わりそうだからゆっくり座わった。
バン!
……何が起きた?
「ハハッハ。引っ掛かったな赤毛よ。いや~儂の暗い気分がスッキリ!! ありがとう!」
……はい?
そこまで大きい音ではなかったため周りの乗客が驚いただけだった。東さんは大爆笑をしているから原因を探るため立ち上がるとあの悪戯道具「ブーブークッション」が置いてあった……
どうやら僕が作動させたらしい
「東さん? 失礼ですが、殴っていいですか? 青酸カリ飲ませていいですか? 僕本当に持っていますよ?」
バックから黒いカプセルを出す。もちろん、青酸カリウムなんて持っていない。風邪薬だ。
東さんは笑いながら掌で僕の行動を制止した。僕の行動は本当に面白かったらしい
「悪かった。悪かったって…… 本当に悪かった」
東さんの何度の謝罪(この後も財布を掏られたので回数が多い……一生分の悪戯をするのか?)で気分が良くなった僕は寝ることにした。毛布をもらい通路側を向いて寝る。
僕が睡魔に襲われ千切られそうになっていると耳から知らない男と東さんの声が聞こえてきた
「爆弾は持ってきていますか? ボス」
「一応持っている。大丈夫だ、お前らには迷惑かけないようにする。ゴホゴホ……」
「ボス、これを飲んでください。睡眠薬です。ボス……向こうでも闘争があるんですよ。しっかり寝てくださいね」
「ありがとうな。ほんと頼りになる……」
東さんがドッサリと椅子に寄り掛かる音がして男の足音が消えて行った……いや、僕の意識が無くなっていった。
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