雑談掲示板
- 第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
- 日時: 2014/02/27 20:57
- 名前: 風死(元風猫 ◆GaDW7qeIec
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247
第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介
始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!
題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(風猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^
では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。
意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波風を立てたりしないように!
~今迄の質問に対する答え~
・文字数は特に決まっていません。
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?
――――連絡欄――――
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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。
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Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.70 )
- 日時: 2012/01/04 23:53
- 名前: 友桃◆NsLg9LxcnY
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=24099
【鈍色の海】
眼前に広がるのは、鈍色(にびいろ)の海。じっと見つめていても、小声で声をかけても、ちっとも答えてくれない……ちらりとも目を向けてくれない冷たい海。冬も目前の乾いた風が水面を打ち、わずかに波打ちはするが、それだけ。こうしてひとりぽっちで砂浜に座るさびしい女の子のことなんて、気にかけてくれないのだ。
砂も冷たい。海と同じ。立てた両膝に腕を回し、膝小僧にあごをのせて、懲りもせずに暗い海を見つめる。それでもやっぱり心は満たされなくて、ふと目を伏せた。足先の砂を軽く蹴って、辺りに散った砂の一粒一粒を意味もなく見つめてみる。この子達は寂しくなんてないだろう。周りにこんなにもたくさんの仲間がいるのだから。そう思ったらなんだか憎らしくなって、もう一度、今度はもっと強く足元の砂を蹴っていた。……虚しさに、胸がえぐられそうだ。
再び目をあげて、どこまでも遠く広がる海を見る。どこまでも、どこまでも際限なく広がるそれは、ただだだっ広いだけで包容力なんて何も感じない。逆に広すぎて自分だけ置いてきぼりをくらった気分だ。すねた気持ちで唇を尖らせる。膝小僧に右の頬をつけ、無感情を装ってぼんやりと眼前の風景を瞳に映す。鈍色の、海を。
――……気持ち次第で、変わることだってあるかもね
いつだったか誰かが言っていた言葉が頭に浮かび、弾かれたように顔をあげた。同時に、波が浜に打ち寄せる力強い音が耳に響き、胸の内に反響する。今まで聞こえていなかった音だ。響いて、いたのに。
小さく息を吸い込む。冷たい空気が体中にしみわたった瞬間、改めて海一帯を見渡してみた。そして目に映ったものに、思わず背筋をぴんと伸ばしてしまった。自然と笑みがこぼれる。
「……鈍色なんかじゃなかったね」
目を細めて水面の一点を見つめてみる。水面にはオレンジ色の細かい光が美しく散っていた。ほぅ、と吐息を漏らして視線をあげると、金色の光を放つ夕日が今にも海に沈もうとするところだった。こんな神々しい風景すら、ついさっきまでは視界から弾かれていたのかと思うと、身ぶるいさえしそうになる。
あたたかい光に頬を照らされ、まぶしくて手でひさしをつくった時、足音が近付いて来ることに気が付いた。ゆっくりと、静かに。まるでこの美しい風景を壊さぬよう意識を張り詰めているかのように。その足音が背後で止まる。人の気配はしない。手でひさしをつくったまま後ろを振り仰ぐと、予想通りの人物が包み込むような笑みを浮かべて佇んでいた。大好きな、お母さん。それこそ海のように広い心を持った、大好きな、……ここにいるはずのないお母さん。怖くはなかった。お母さんは前と変わらぬ優しい笑みを浮かべていたから。
あたしは口を開きかけて、何も言わないままゆっくりと閉じた。代わりに手を伸ばすと、お母さんは静かにその手をとってくれた。顔を見合わせて微笑みあう。
「連れてって?」
甘えるような声でそう言うと、お母さんはうなずいてあたしの手を引き立ち上がらせてくれた。同時に砂を踏む足の感覚が、空気に、服に触れる肌の感覚が、波が引くように薄れていった。
冷たい海。足首を濡らす鈍色の水。
幸せそうに微笑む、ひとりぽっちの女の子――……。
――――――――――――――――――――――――――
はじめまして。突然ですが投稿させていただきました。
とりあえず、意味わかんない話すみません^^;
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.71 )
- 日時: 2012/01/05 13:29
- 名前: 雷燕◆bizc.dLEtA
嘘
季節はずれの海に、勿論人気はない。秋もだいぶ深まってきて、海風にうたれると肌寒く感じる。
そんな中そいつは、金色の髪から水を滴らせ、水着姿の上半身だけを海から出し、また下半身では鱗を綺麗に光らせながら、俺の方を見据えていた。
「……どちら様?」
俺は尋ねた。
「見りゃ分かるでしょ」
そいつは、気が強そうな喋り方で答えた。
「……半魚人」
「人魚って言いなさい!」
この海岸は道路沿いの浜辺からは少し外れていて、まず地元の人しか知らなくて、したがって人があまり来ない。だからこいつも来てたのかも知らないけど。
「こんな時期に海って寒くないん?」
「あんた馬鹿? 水は温まりにくくて冷めにくいの。このくらいの時期だったらずっと水の中にいたほうが暖かいわよ」
「それを知らない人を馬鹿と呼ぶなら俺は馬鹿やな」
「はっ馬鹿が」
高飛車な半漁人……もとい人魚だなあ。
「なあ」
「何よ」
「水中で息できるん?」
「できるわよ。当たり前じゃない水中で暮らしてるんだから」
「えらはどこに付いとるん」
「ここ」
そいつは腰のちょうど下辺り、人間の肌から人間のものでない鱗に変わった所を指差した。
「ふーん……。変な所にあるのな」
「あんたが人魚をよく知らないだけでしょ」
「何食べよんの?」
「魚とか、貝とか、海草とか。海の中は高級食料の宝庫よ。おかげでいくつになっても肌はぴちぴちだし。触ってみる?」
「遠慮します」
「遠慮して断った言い方じゃないわよ。ま、結構食べ物は人間に近いから出てくるものも近いわよ。魚の肛門ってね――」
「ストーップ! これ以上聞いたら俺の中の大事な何かが崩壊する気がする」
「常識に縛られて生きてんのねえ」
そいつが笑ったその時、少し強い風が吹いた。俺は肩をすくませる。そいつは身震いをした。
「……寒いんじゃねえの?」
「空気中に体を出してると気化熱で寒いの! 気化熱って分かるお馬鹿さん?」
「ああそれは分かる。別に潜ってていいのに」
「あんたがここにいるからでしょうが! そもそも! 夏の間は我慢してもう人はいないだろうなと思って来たのに、何でこんな時期にこんな浜辺に来てたのよ!?」
「今日ここに来たら誰かに会える気がしたから」
「はい?」
「俺の勘は外れたことがないんだ」
俺の勘は当たる。最早超能力を言って良いレベルに。こっちの道を通ったら何かある、と思えば知り合いのおばちゃんに会ってアイスを貰った。ちょっと危険を感じで立ち止まると目の前に鳥のフンが落ちた。その他諸々。
本当にどうでもいいくらい小さな事なんだけれども。それでも、そうなる気がしてならなかったことは無かった。
「何それ嘘臭いわね」
「別に信じてもらえなかったら大変なレベルのことは分からない」
「下らない能力ね」
「俺もそう思う」
数秒、沈黙に包まれた。上空では太陽が傾き始め、地上と海面を照らしている。ぽかぽかして暖かい。
俺は沈黙を破った。
「何で浜辺に来とったん」
そいつは暫く答えなかった。応答なのか独り言なのかよく分からないような頃、ぼそっと呟きが聞こえた。
「……人に会いたかったのよ」
「…………へぇ」
「ええ矛盾してるわよ! さっき『もう人はいないだろうなと思って』って言ったものねっ」
そいつは突然饒舌になった。「だってもし人間に会ったら取材とかいっぱい来るでしょ? 捕獲しようとか考える大馬鹿連中が現れるかもしれないでしょ? でもやっぱり憧れってあるのよ! みんないっぱい友達がいて、いっぱい恋愛して、いっぱいお洒落して、いっぱいいっぱい人生を楽しんで……! 夢見たって良いじゃない、あたしだって人間だったら女子高生だもの! あたしだってもっとたくさん友達がほしい、もっとたくさん恋したい、もっとたくさんの服が着たいの!!」
そして、彼女の叫びは唐突に終わった。最後の方は声がちょっとかすれていた。顔を隠しているので、どんな表情をしているのかは分からない。
「色々あるんだな」
「だって人魚って絶対的に数が少ないもの」
「――だから人間を引きずり込むんだ?」
そいつは声もなく顔を上げてこちらを向いた。見開かれた目からは、涙が流れていた。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.72 )
- 日時: 2012/01/05 12:21
- 名前: 雷燕◆bizc.dLEtA
「ど……どういうこと?」
そいつの唇は震えながら動いた。
「夏とか海岸に人が集まる時期に浅瀬へ来て、気に入った人間を海に引きずり込んで殺してたんだろ? 一人目は7月5日に大学生川口栄太。二人目は7月18日、高校生上田陸斗。そして三人目が、8月26日高校生の加藤美沙。殺して何になるのか俺には分からないけどさ」
「な、何でそんなところまで」
青い顔をしながらも、そいつは否定をしてこなかった。……少しだけ期待してたんだけどな。
「そんな気がしたんだ」
「気がした、って……」
「言ったろ? 俺の勘は外れない」
「……そうだったわね。――でもあたし、あなたのことも結構気に入っちゃったのよね」
そいつの顔つきが変わった。「そういうそっけない態度も良いし、よく見りゃ顔も整ってるじゃない」
そいつは驚くべき速さで俺の足首を掴んで海へ飛び込んだ。しまった。もっと早く海から遠ざかってないと悪かった。
大きく息を吸い込む暇も無い。人魚の尾ビレが水をかく力は凄まじく、とても俺なんかが太刀打ちできるものではなかった。息が苦しい。このままでは死んでしまう。でも、何故か助かる気がした。俺の人生はこんなところで終わらない気がする。
俺の勘は外れない。
『あんた何また馬鹿なことやってんの!』
女性の声がした。それと同時に細い日焼けした足が見えて、その足が俺を引っ張る腕を蹴る。手は足首から外れた。
今度は手首をぐいと掴まれて、海岸の方へと引っ張られる。勢いよく海面に顔を出して、空気を肺へ送りこんだ。
「早く海から離れて!」
その声に急かされて砂浜を走る。声は、海の中で聞こえてきた声と同じだった。
波打ち際から離れて海を振り向くと、一人の女性が立っていた。
「えっと……」
「こんにちは。私、加藤美沙。大丈夫だった?」
加藤美沙は、自分を殺した相手のことを笑顔で語る。多少無理がある笑い方ではあったけど。
「あの子、寂しがり屋なんよ。人間は海の中までは一緒にいられんけど、幽霊やったら別やろ?」
「そんな自分勝手な」
「うん。やけんあの子は私が見張っとるけん。今日はもう帰っていいよ」
兄の元クラスメートである彼女は、自分は殺されたにもかかわらず他人のことを考えている。
「助けてくれてありがとう。でもごめん、まだ用があるんだ」
俺は自ら海へ飛び込んだ。後ろで加藤美沙の声がする。
少し泳ぐと、眼の周りを赤くしたそいつが驚いた顔をして俺を見ていた。俺はそいつへ近づいて、右手をそいつの右の頬、左手をそいつの左の頬に添えた。そしてそいつの口に俺の口を近づけて、同時に目を閉じる。目は閉じていたし海の中だったけれど、そいつがまた泣いているのが分かった。
右手と左手とそして唇の感触は、だんだん無くなっていった。
浜辺へ上がると、加藤美沙が待っていた。
「わお。大胆やなあ」
「あいつ、多分恋愛ができないまま死んだのが一番の後悔やけん、キスのひとつでもすれば成仏するやろうって斑猫婆さんも言ってた」
「だからって中学生ができるか普通。顔もやけど、その淡々とした性格まで兄ちゃんに似てんのね」
分かってたのか。彼女の笑顔は、さっきと違って明るい。
「……あんたは成仏せんの? あいつを止めるために幽霊になったんやないん?」
「うーん、だってあの子成仏したわけじゃないけんな」
「嘘っ。死にかけた上あそこまでしたのに」
心臓がドキッとした。これで終わったと一安心したところなのに。
「だって別にあんたあの子が好きなわけじゃなかろ? どこか遠くに行ったみたいやし大分効果あったと思うけど、完全には多分無理だよ」
「マジか……。やけんまだ残るん?」
「うーん、それもあるけど彼氏からのプレゼント貰いそびれたからかも」
「なんだそのリア充な理由」
「あ、笑った」
俺も彼女の笑顔につられたのだと思う。魅力的な女子高生だな。友達も多かったことだろう。だからこそあいつのターゲットにされてしまったのかも知れない。
「じゃあ俺は帰るよ。助けてくれて本当にありがとう」
「いいって。こっちも楽になったし。風邪引くなよ!」
「おう」
加藤美沙に手を振って、家に帰った。早くシャワーを浴びて着替えよう。
「おお、竜也か」
住宅街の外れにある古い平屋。60歳くらいの女性に中学1年の少女と、そして老いた斑猫が住んでいる。俺がそこを訪ねると、縁側にいて日向ぼっこをしていた斑猫婆さんにまず気づかれた。その横に腰掛ける。この家の縁側は勝手に使っても咎められない。
「浜辺の幽霊人魚、会って来ましたよ」
「ありがとよ。何日も通ってもらってすまんね」
「いえ、部活も引退して暇ですし。毎日あの浜辺に現れるって分かってましたから、時間帯をあわせるだけでそう大変じゃありませんでしたよ」
「そうかい。これ以上人を殺されても困るんでの。助かったわい」
斑猫ばあさんはいつも目を細めているので、笑っているのか眩しいのかよく分からない。怒ったようなところは見たことがない。
「……あの」
「なんじゃ?」
「実際、人魚っているんですか?」
「どうじゃろうなあ。いるかも知れんし、いないかも知れん。海を探し回れば見つかるかも知れんぞ」
知ってるくせに。斑猫婆さんは何でも知ってるんだ。
「あ、竜也先パイ」
後ろから、斑猫婆さんよりずっと若い声がした。ここに住む少女だ。
「来てるんなら言って下さいよぉ。今お茶用意しますね」
「あ、いやいいよ。すぐ帰るから」
「えー帰っちゃうんですかぁ」
「特に用もないのに長居するのも悪いし。じゃあね真理ちゃん。さようなら、斑猫婆さん」
俺は平屋を後にした。
そういえばあいつの名前も聞きそびれたまんまだったな。……うん、多分『エリナ』。漢字は分からないけどエリナだな、あいつは。そして多分明日も明後日もその先も、あの浜辺に行っても彼女には会えないなと根拠のない確信が持てた。
俺の勘は、外れない。
****************************************
何だこの会話文だらけ。特に前半。グダグダ失礼しました←
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.73 )
- 日時: 2012/01/06 12:30
- 名前: 書き述べる◆KJOLUYwg82
こんばんは~
大会も終わり、ちょっと気分転換に、でも全力ですよ。
『水のいのち』という合唱組曲がありますが、そんな雰囲気が出せたらなぁと思いながら書きました。
……わけわかんないですねぇ。。。。
失礼しました~
【億万年の光明】
息が詰まるほど空には重たく雲が垂れ込めている。波頭をギロチンで切断するように突風が水面(みなも)を駆け抜ける。いたずら好きな風の精が金色の粉を派手に巻き上げようとしたが、夜明け前からしたたかに波に打ちのめされていた砂浜はさびた鉄のように穢れ、重たく固まっていた。
うめき声が聞こえる。沖のほうから下っ腹にめり込むような重たいのが何度も何度も風にのって響いてくる。
今日も海は喘いでいた。
彼らは自らの身を削り、周りに与えてばかりで見返りを求めようとしない。
約5億年前、無数の命が大地に上がった。それらの多くは長きに亘り海に養ってもらっていた恩を忘れ、淡水でしか生きようとしなくなった。そして使い古した淡水を川を使って彼らの横っ腹に突き刺すように垂れ流すのだ。
彼らは誰かに頼れれるとその者たちを身ごもって守ろうとする。
体の中で噴火する海底火山。群れを為して勝手気ままに蠢く無数の魚たち。身ごもられた者たちは、彼らの肉体を内から痛めつけるためだけに動いているのだ。
彼らは健気に太陽から放たれる灼熱の光線を跳ね返している。
銀河の片田舎にある自ら光ることのできない岩石の塊をを歓楽街のネオンサイン顔負けに華やかに彩り周りの星々を愉しませようとしている。母なる惑星から見れば彼らは卵の殻よりも薄いと軽んじられることはままあるにも拘らず。
彼らは疲弊しきっていた。約46億年という歴史の中で、幾度となく怒りを大地に星にぶつけてきた。それでも彼らの体は蝕まれる一方であった。
湿気を含んだ生ぬるい風が一層強くなり、港の桟橋付近に舫われた九百人乗りの大型客船が湯船に浮かぶおもちゃの船のように激しく揺さぶられている。海鳥たちはとうの昔に山の向こうまで吹き飛ばされていた。水平線の近くでは神罰を落とさんとばかりに漆黒の積乱雲の底辺が漏斗の形を為して海面に届こうとしている。波状的に上陸する突風が岸壁の道路のガードレールを貫き、悲痛な叫び声をあげさせた。
壊してしまえ、何もかも――。
昼間でも日光の届いた試しのない大洋の底で魚類の骸骨と共に淀んでいた陰鬱な塊が巨大な泡沫となって浮かび上がってくる。もはや空と海の区別のつかなくなった暗闇で弾けるたびに、彼らの怒りを焚きつけようと静かに囁きかける。
遂に波浪は港で一番大きな船舶のブリッジよりも高く聳え立ち、桟橋はいとも簡単にへし折れてしまった。遥か彼方で光が明滅し、刹那雲の輪郭が強烈な陰影と共に浮かび上がった。暫くして雷鳴が 海底を打ち震わし、陸に突進してきた。
壊すんだ。壊せ、壊せ――。
防波ブロックが浮き輪のように流され、水の壁が岸壁に打ち付ける轟音が周囲から全ての音を奪った。陸が波打ったように見えた。
「できない。我々にはできない」
彼らは慟哭した。憎悪をぶつけようとすればするほど何かがそれを遮ろうとする。海が海であるために、陸は必ずしもいらない。胎内で蠢く魚たちもいらない。熱傷を負わせる海底火山もいらない。なのに何かが、感じたことのない感情が彼らを抑えつける。
陸と星と真黒に染まった我が体躯を改めて見つめる。
――与えるばかりであったのか、守るばかりであったのか、本当に。
大気が一気に凪いだ。
渦巻ている雷雲はまだ解ける気配を見せていない。ふと、水平線の向こうでは一条の真紅の光芒が虚空を真っ直ぐつらぬているのが微かに見えた。
吹き飛ばされていた海鳥たちがいつものお気楽でやかましい鳴き声をあげ、隊列を為して戻ってくるのが見えた。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.74 )
- 日時: 2012/01/05 19:36
- 名前: ランスキー◆RtaaCjFysY
【SS―①】
鉛色の空は実に心を薄暗くする、だから天気が曇りばかりという地域の人達は、皮肉屋で性根が曲がっている。そんなことを誰かが言った。馬鹿馬鹿しいと一蹴する人もいるだろう。僕もその一人だ。太陽を拝めない時期が少し続いたからと言ってそれが何だというのだ。
年代物の自動車、その後部座席から見る天候は重々しい曇天だった。この周辺では特に珍しくも無いらしい。僕はそう教えてくれた運転手に視線を移す。
「曇り空は好きかい?」
軽く前に問いかけてみると、温雅な声が返ってきた。
「好きではないですね。だけど、お天道様が決めることですから。しょうがないですよ」
くたびれたコートにハンチング帽といった出で立ちの運転手。彼はこんなご時世では珍しいほど純朴で親切だった。なんたって町の駅からこんな郊外まで、不満の一つも漏らすことなく、キチンと乗せてきてくれたのだから。
彼の何処が性根が曲がった皮肉屋だというのか。僕は件の誰かを問い詰めてやりたい気分だった。
「旦那、この先は今は軍用地ですがね。何か御用でも……?」
運転手の男性は肩を竦めながら、そろそろとした声で僕にあそこでどうするのかと訊いてきた。スパイだったら大変だ、なんて思ってるのかも知れない。
「いやなに。ちょっと外から見るだけさ。廃棄された町があったろ、僕はそこの出身なんだよ」
落ち着いた口調で言葉を返すと、彼は納得した風に頷いて息を吐き出した。そして「あんまり近づかないでくださいね。撃たれたら大変ですから」と言った。
彼の気遣いがズッと心に圧し掛かってくる。今からしようとすることを思うと、心に少しの罪悪感を感じた。僕はそれを振り払うように声を出す。
「……昔、この辺りに、ほら、向かいの国がちょっかいを掛けてきたのは知ってるかい?」
「空爆のことですかね? なら良く来ましたね、ええ。もっと南の方にもバカスカ落とされたみたいですけど」
「いや、そっちじゃない。銃を持った兵隊がボートに乗ってやってきたという奴だよ」
一旦、そこで会話が止まった。僕はトレンチコートの胸ポケットから紙タバコを取り出して、口に咥える。ライターで火を付けようとした時、彼がやっと返答した。
「与太話とばかり思ってましたが、本当なんですか?」
不安と興味が入り混じった声調だった。なるほど、良く隠匿されていたようだが、地元の人間に隠すのは難しい。
「どうだろうね。列車で隣に座った客が、話してくれたんだけど」
「旦那はあの町にいた事があるんでしょう?」
「何分、子供の頃だから。でもボートに乗った兵隊、なんてのは記憶に無いなぁ……」
運転手が「なら与太話に決まってますよ」と静かに笑った。僕も笑った。胸に、細い針が突き刺さった感じを味わいながらも、笑った。
やがて自動車はある木看板の前で停車する。半ば腐った木看板には「この先、アズフォード」という案内が書かれていた。胸の中で何かがざわめく。
「この先です」と運転手が呟いた。彼は僕に些か興味を惹かれているようだった。
「ありがとう。感謝するよ」
「気を付けてくださいね」
コートの襟を整えながら、僕は後部座席の扉を開けて外へ出た。鼻孔に懐かしい“臭い”を感じる。
運転席に回ると、ポケットからチップを取り出して、運転手へ渡そうとしたが、彼は首を縦に振らなかった。僕は無理やり中へとチップを押し込むと、困った表情の彼を労う。
「これで子供に菓子でも買ってやってくれ」
そう言って微笑みながら、フロントを軽く叩く。運転手が礼をすると、年代物の自動車は来た道を戻っていった。
僕はため息を吐く。あそこまでしてくれた彼に嘘を付いてしまった。もうこれで後戻りはできない。おもむろにコートの内ポケットを探る。硬い感触がした。
その感触をしっかりと刻み込みながら、後ろを振り返る。背丈の低い雑草の間に野良道が通っていた。自動車の轍が幾つもある。それなりに行き来はあるのだろう。
ふと、空を仰ぐ。相変わらず機嫌が悪そうな日和だった。今に、雨でも降り出しそうな感じだ。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.75 )
- 日時: 2012/01/05 19:38
- 名前: ランスキー◆RtaaCjFysY
【SS―②】
「濡れ狐……か」
そんな言葉が脳裏に浮かんできて、思わず口元が緩んでしまう。惨めなさまは僕にお似合いかも知れない。
一度、紙タバコを噛み締め、僕は野良道に足を向ける。一歩、二歩。踏んだ勢いのまま、ズコズコと先に進んだ。
左手の繁みから、右手の雑草から、生の臭いがする――。
それは僕自身が生きている感覚というのを半ば忘却しているからこそ、鼻孔に届いた臭いだった。
気づけば、段々と胸の内に不快感が溜まってくる。
何故、僕はこんなにも哀れで気薄なのだ。ただの藪や草からも、僕は生きている証を受け取っている。何故ならば僕自身にそれがないからだ。それがないから、周りから感じられるのだ。こんなふうに激しくも、悲しく。
嫌になるような感情が、精神を貫く。
振り払うかのようにかぶりを振って、更に一歩二歩と歩むと、不意にやるせない感覚が身体に沈んでくる。もう帰ろう、家に帰ってベッドへ倒れ、麦酒でも口に入れれば、また日常が帰ってくる。
――そして過去に苦しめられるのか。
斜面に差し掛かろうかというところで、僕の足は止まった。道先に張り巡らされたフェンスと、間に存在する検問所を見つけたからだった。
コマを、イメージする。黒くて、強靭なコマだ。それが頭部の中でグルグルと回転し始める。そして、それを徐々に首、胸部、腹部、そして下腹部へと降ろしていった。
コマがいよいよ峻烈に回り始める。身体が一種の気迫に包まれていくのが感じられた。すべきことをしよう。今しかない。
堂々とした態度を保ち、僕は一軒の小さな小屋と古ぼけた開閉棒がある検問所に向かった。小屋の外で立ち竦んでいた分厚いコート姿の衛兵が、肩に掛けていた自動小銃を両手に持ち替える。彼は小屋の中に何事か呼び掛けると、その場で、向かってくる僕に言い放った。
「止まってください! ここから先は軍用地です」
撃たれては適わないので、僕は素直に立ち止まった。衛兵が近づいてくる。顔を見る限り、僕よりも数歳か年下だ。そして一等兵。階級章がそう告げている。
「民間人の方は原則立ち入り禁止です」
彼が言った。僕は肩を竦めた。
「お勤めご苦労。兵隊手帳を出してもいいか?」
「……軍関係者?」
「中尉だ」
若い一等兵が瞳をパチクリさせる間に僕は両手を広げる。そして手振りでコートの内ポケットを示す。
「もう一度言うぞ。身分証明をさせてもらっていいだろうか?」
一等兵が何か答える前に、背後からもう一人が近寄ってきていた。締まりの無い口をした伍長だった。
「許可しますよ、中尉。さっさと出してください」
伍長が代わりに返答し、僕はゆっくりとコートの内ポケットから兵隊手帳を出した。開いて、一等兵に渡す。彼はすぐに開くと、数秒もしない内に伍長へと回した。
今度は伍長がそれを開いて、じっくりと中を見る。一分ぐらい経ってやっと彼は敬礼した。一等兵がそれを見て、同じようにする。
「ご苦労様です。中尉。何か当軍用地に御用でしょうか?」
「今度、軍測量部の部長補佐がこちらに来られる。再測量の下見だ。自分は先に状況確認を任された」
適当な嘘だ。大抵の兵と下士はこれで騙せる。要は士官クラスの人間が言った、ということが重要なのだ。発言内容にさして彼らは興味を持たない。
しかし……この伍長は例外のようだった。
「私服で、しかも供を連れずに、ですか?」
怪訝そうな視線を僕に纏わせてくる。僕は内心うんざりしながらも、まるで侮辱を受けたように自身の肩を怒らせ、声調に怒気を混ぜた。
「伍長……貴様の氏名と所属連隊、兵籍番号を言え! 士官の言動を疑うとは、ただでは済まさんからな!」
「あっ、いえ。失礼しました!」
咄嗟の所作で助かったようだ。眼前の彼は一瞬怯えたように眉を顰めると、すぐにそれを戻して、こちらの顔色を伺うように直立不動になる。
僕は内心の笑みをグッと堪えながら、仏頂面を湛えて言った。
「では開閉棒を開けてくれたまえ?」
伍長が頷くと、一等兵が慌てて開閉棒の下まで走っていき、それを両手で掴んで持ち上げ始めた。僕は一度ふっきらぼうに敬礼すると、そのまま歩いていく。
そして、抜けた。邪魔をされずにこの検問所を。
もうこれで障害はないはずだった。背後で開閉棒が閉まる音がして、固い地面を踏み込む感触が足の裏から伝わってくる。
こういう時にだけ、生を実感する。スリルから解放されたこの瞬間の、何とも言えない充実感。生き残ったぞ、やってやったぞという理性と本能の合唱曲。
あの兵隊たちは後でとばっちりを喰らうだろうし、僕は罪に問われるだろう。だがそれが何だって言うのだ。今、しなければならないことがあるのだ。
僕は何十回も足を持ち上げて、降ろす、この一連の動作を繰り返す。まるで昔のマスケット銃兵のようで、少し滑稽さを感じた。だけれど、これは有史以前から人類と共に付き添ってきた偉大なる伴侶だ。そう、それは『歩く』という名の行い。僕らを僕らたらしめてくれ、世界を広げられる行為。残酷さと慈悲深さが足には詰まっている。
気分が高揚してきた。一度目を瞑って、もう一度開く。右手には小高い丘、左手には浅い林。前方には道が広がっていて、丘の縁を回るように伸びている。その先には、あった。『それ』が。悪夢の源。幼少期からの因縁。美しき想い出。全てが詰まった『それ』がそこにはあった。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.76 )
- 日時: 2012/01/05 19:38
- 名前: ランスキー◆RtaaCjFysY
【SS―③】
アズフォード。僕の故郷。
海沿いの……白塗りの民家が町に一種の清廉さを与えていた町。
今は、そんな風景は微塵も残っていない。瓦礫と崩れかかった建物があるだけの、人っ子1人いやしない孤独なゴーストタウンだ。
町の向こう側には海が見える――海。全ての元凶。僕にはアズフォードという乙女を無理やり押し倒して強姦しようとする、悪党に見えた。何とも憎々しげに波の満ち引きを繰り返し、暗い蒼は奥を見通すことすら許そうとはしない。不寛容の塊。今でも人を海底に引きずり込んでしまいたくて、うずうずしている。
ふと視線を移動させれば、地平線では雲と海が一つになっていた。それが何だか無性に気に入らなかった。子供の頃はそこに世界の真理を見たような気分になっていたが、まったく馬鹿げている。海は何処まで行っても海だ。空は何処まで行っても空だ。
そう、正直に白状しよう。僕は海が嫌いだ、いや、憎んでいる。憎悪している。だからマリーンどもも大嫌いだ。潮の臭いは地獄の腐臭だった。
そしてこの事実に怨嗟の声をあげたくなるが、僕の幼少期には地獄の腐臭が滲み込んでいた。
道沿いに丘を回って、町に入る。潮と灰と、忘れ去られた死の臭いが漂っていた。視線をあげてみれば何処にでも想い出の痕跡が残っている。
優しかったケントの雑貨店、オーブリー爺さんの釣具屋、フィンチさんの銃砲店、幼馴染だったバカラのパン屋。
僕は横断した。それら全てに、今は背を向けるしかなかった――何も見ようとしなければ、辛さもまた襲ってくることは無いのだから。
必要以上に町に留まりたくなかったので、さっさと横断した。町の外れには斜面を登っていく道がある。その先に僕の目的地があった。
斜面を登り、切り立った、屹立する崖へと着く。
上に生え茂った草地を足で踏み倒し、崖先まで歩くと、僕は崖下を覗き込んだ。
まるで炎のように揺らめく波が、崖へとぶち当たり、雄叫びをあげている。見ている内に段々と吸い込まれそうになってきたので、すぐに数歩退いた。
身体が震えているのを感じる。僕は心底、海を憎悪しているとともに、恐れてもいた。
あの時、海の向こうから偵察にやってきた、敵の特殊部隊員が放った流れ弾が、母の頭蓋と西瓜のように砕いてから。
精気を失った父がやっとのことで立ち直った矢先に、乗った釣り船が転覆してから。
いつか、僕自身もあの蒼の中に引き込まれてしまいそうで――。
僕はため息を付いた。もう疲れたのだ。いや、本当はずっと昔から嫌になっていたのかも知れない。“生きる”ということに。
母も父もいない。天涯孤独だ。親戚や親友も空爆で死んでしまった。そして復讐というには希薄すぎるどうしようもない静かな怒りと、それ以上に恐怖が残った。
分かっていたのだ。しょうがないことなのだと。
世間にはただの人間にはどうしようもないことや、不条理なことが沢山あって、それに立ち向かおうとしても無駄なのだということは。
だけれど、そうでもしないと。僕の空っぽの心は痩せ細って餓死してしまいそうだったから。だから、僕は海に憎悪を向けた。半ば強制的に。
僕の本能が、生存欲求がそうさせた。でももう、お終いだ。それも。
僕は海の音を聴きながら、そこに数分ほど佇んだ。海よ、君に仮初めの厭悪を抱くのは止めにする。この十数年間、良く付き合ってくれたね。
崩れ落ちるように膝を付く。そして地平線を見つめた。子供の頃の感覚を思い浮かべる。しかし、そこに無限の彼方を想像することは出来なかった。
右手をコートに押し込んで、中をまさぐる。ショルダー・ホルスターに鉄の鈍い触感を覚えた。ボタン留めを外し、それを引き出す。
良く手入れをされたリボルバー。シリンダーには一発だけ銃弾が装弾されている。
僕は銃口を自身に向けると、思い切って腔内へと突っ込んだ。吐き出してしまいたい、そんなことを一瞬思ったが、もう戻るつもりはなかった。
躊躇いがどんどんと大きくなる。これ以上肥大化しない内にケリを付けるべきだ。
ありったけの勇気で引き金を絞る。額から汗が流れ落ちているのが分かった。このリボルバーは撃鉄が上がる際に、チッチッと二回音を鳴らす。
チッ。まず一回目。この次で……僕は脳幹を吹っ飛ばされて死ぬ。ああ、駄目だ。
「ふう!」
大きな息とともにリボルバーの銃口を腔内から荒々しく出す。腋や首筋、額が汗でびっしょりだった。なんという臆病者だ。
僕は更に抵抗が強まってきたのを感じた。これ以上躊躇えば、このお芝居を終わらせることはできなくなるだろう。そうなれば、もはや僕にとってこの世は生き地獄に等しい。
全身が強張る。やれ、やるんだ。ここで終わらせろ。
痛いぐらいグリップを握りしめて、僕は絶叫した。同時に口に銃口を入れて、そして引き金を絞る。
耳元に反響する破裂音が、まるで僕の成功を祝っているようだった――。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.77 )
- 日時: 2012/01/05 19:42
- 名前: ランスキー◆RtaaCjFysY
【SS―アトガキ】
良く分からんもんになったなあ、というのが率直な感想です。自分でもあまり納得がいっていない作品になりました。
海、といったら怖いもの、と連想して、はてまた執筆中に考えを変えてそれが『僕』にも反映された感じです。何もかも失って生きる、ということがきっと恐ろしく見えたのかも知れません。
では参加させていただいてありがとうございました。また次回などありましたら……。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.78 )
- 日時: 2012/01/07 13:10
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
今回のレベル高いですね……作品数も多いですし
二回に分かれます
title:Regend Treasure
誰かが言った。世界は、海は広いと。遥か彼方遠い遠い海の向こう、そこには何にも換えがたい大切な宝が置いてあるという話だ。どのような宝が置いてあるのか、そう訊かれた時にはこう答えた。とにかく、行けば分かると。誰もが素晴らしい財宝を夢見て『其処』を目指した。北極、かつてそう呼ばれた場所を。
現在、その始まりの日から十年の月日が経とうとしていた。財宝を見つけた者は未だ居ないという話だ。
ここにも、その宝を探した者が一人――。
「おい、ボケ船長。港が見えたぞ」
「てめ、良い度胸じゃねーか。俺に対してボケたぁ高性能の口してやがんな」
「うるせぇ、いつも誰のせいで漂流してんだよ」
貨物船のように大きな船が海上に浮かんでいた。そしてその甲板の上に二人の男が立っている。両者共にあまり上品な口調とは言えず、出来の悪いチンピラの低俗な口喧嘩としか言い様が無い。舵を取ったり慌ただしく働くその他もろもろの部下たちはいつもの事だと嘆息している。一々仲裁に入ろうものならば、邪魔にしかならないことも、重々承知。
「お前への悪口言わねぇ口のがよっぽど高性能だ。後お前話聞いてたか? 港が見えたぞ」
「あぁ? それがどうした……ってマジか!」
要するに上陸できる所に着いたという訳だ。それならばその港に立ち寄って物資の供給を行わないといけない。さっきから散々ボケと罵られている船長は舵を取る部下にそこに向かうように指示する。
正直物資、中でも飲み水と食糧は底を突きかけていた。以前に立ち寄った港では充分すぎるほどに買ったはずなのに、だ。それでいて、充分すぎるほどに買って、それが足りなくなった原因は先ほど一人の部下が述べた通りだ。
彼らの船長にはとある性癖がある。陸の上ならば何も無いが、水の上では方向音痴になる。それもかなりのもので、本来なら真東に一日進むだけの航海が、最低でも一週間はかかるというクオリティだ。
そのせいで今や誰もがその船長には舵を握らせるつもりは無い。一度握らせたら最後、軽く五日間は漂流する。
「てめえら久々の陸だぞ! いやー、何日ぶりだ? 一ヶ月かな?」
「三十五日、一ヶ月よりちょっと多いな」
「そうか! 良かった良かった」
「良くねぇよバカ、本当バカ。本来なら1週間で着いてんだよ」
勝手に浮かれて能天気にはしゃぐ船長に苛ついた男は罵声を浴びせた。長年共にしてきた絆や愛着と言えば聞こえは良いが、実質ただの腐れ縁である。もう生まれてこの方十八年も一緒だ。唯一の救いは互いに女性は苦手だから男同士で気は緩められるという事だけだ。
しかしながら窮地に陥った時は、この二人は誰よりも落ち着き、的確な判断を下す。さらに、その窮地に立った中では二人のコンビネーションは庭球と呼ばれる球技のダブルスのコンビも、顔面蒼白になるぐらいに。
「野郎共ぉっ!! 上陸だぁ!! 今夜は船で宴だぞ!!」
店長のその掛け声に呼応するように数百人のクルーが大気を揺らすような大声で返事をした。その喚声にも似た鳴動を正面から受け止めながら船長の彼は愉悦感に浸った。自分にはこんなにも多くの仲間がいるのだと。それが旅をしていて一番嬉しい。一人じゃないんだと、胸の中で噛み締める。
そのはしゃぎっぷりを横から眺めながら、先程から船の長たる青年に反発している船医の青年も微笑を漏らす。これほど慕われる頭領も珍しいだろうなと、常々思う。以前から確かにこうだったが、昨年のあの日、数百人の乗組員全ての絆はより堅くなり、結束はより強固になったと船医の彼は思い返した。
過去に思いを馳せているといきなり肩を叩かれた。しばらくぼうっとしていたから気付いていなかったがどうやら港に着いたらしい。この港が一団の旅が一段落する島の港。長い間帰っていなかった自分達の故郷。温暖な南の方に位置する自然豊かな小島である。
「着いたのか……」
「まあな。旅立ってもう五年以上……覚えてくれてる奴がいるかは、分からねぇけどな」
「村長んとこのバカ孫なら、覚えてんじゃねーの?」
「確かにな。まだ五歳だってのに一緒に行くって叫んでこっちの言うこと聞かなかったからな」
ひょっとしたら恨まれてるかもよと、船長の男は笑う。そうに違いないと話を振られた船医の彼は冗談混じりに頷いた。恨まれないように土産話たっぷり聞かしてやろーぜ、そのように提案すると船長は大賛成で肯定する。勿論自慢気に言い放つつもりだ。
そうやって談笑しながら二人が大勢の部下を引きつれて歩いていると、一人の老人が出てきた。
「誰だよじいさ……って村長じゃね!? 変わってねーな!」
「どこから客が来たかと思うとお前達か……たかだか齢十三にして船旅など始めおって……村の恥は曝してないだろうな」
「もっちろーん。面倒なのは全部、夜襲かけてうやむやにしたからね」
「充分恥じゃ、阿呆共が!」
子供を叱る親が喝を入れるように村長の老人は二人に対して叫ぶ。その顔には五年経っても全く成長していないことに対する小さな苛立ちが浮かんでいる。なんとかそれをなだめようと船医の方の男が、変わらないのも良いんじゃねぇの、と呼び掛けてみたが不変よりも成長の方が重要だと一蹴される。船長の方はというと、他人面して笑っている。
こんな状況でよく笑えるなと、仲間の船医は呆れ、向かっている老人が明らかに怒りを強くすると、少々真剣さを取り戻したのか笑いを止めた。
「そういや、親父居るか?」
「居るぞ」
「見つけたと、伝えてくれ」
見つけたという言葉に、村長の目も猟奇的な色を示した。
Re: 第二回SS大会 小説投稿期間 12/25~1/8まで ( No.79 )
- 日時: 2012/01/07 13:10
- 名前: 狒牙◆nadZQ.XKhM
「ほう。あの悪ふざけにも等しい財宝宣言……見た感想は?」
「何だよじいさん、知ってたのかよ」
当然だとでも言うように老人はニヤリと笑う。必死に捜し出してその正体が何なのか教えて驚かせようとしていたのに、これでは面白くない。
「フム、で、見た感想は?」
「感動した。まさかあの親父があんなメッセージ残すなんてな」
「乗組員数百人、満場一致で宝だと認めたさ」
そしてその時、物陰から一人の少年が飛び出してきた。さっきからずっと聞き耳立てていて、好奇心に負けて話に加わろうとやってきたのだ。その顔には、村長は当然として帰ってきたばかりの二人にも見覚えがあった。
つい先のタイミングで、『村長んとこのバカ孫』と言ってやった相手だ。背も伸びてすっかり大人びてきているが、未だに十一、二といったところだ。まだまだ幼さそうな空気だし、何より十八歳の彼らと比べるとそれほど背も高くない。だが年齢以上の風格は出ているように思えた。
「うぉい、ようやく帰ってきやがったか不届き者共。さあて、土産話でも聞かしてもらうよ」
自分達のしているようなチンピラ口調を真似されて、帰省した二人は鬱陶しげに眉を潜めた。航海をいくつも乗り越えただけあって、眼光には鋭いものがある。あるのだが、その村長の孫は怯まなかった。二人が自分に手をかける訳が無いと、分かっているから。
「おうよ、たっぷり聞かせてやろうじゃねーか」
「てめぇが羨ましくて堪らなくなるぐらいにな」
そう言って二人はさも得意げにニタニタと笑う。
「ふーん。ま、見ものだね」
「言ったな。羨ましすぎて涙が出てくるぜ」
「今すぐ旅立ちたくなるぐらいになぁ」
「そんなあんたらみたいな事にゃあならねぇよ」
またしても口調を真似されて二人は何とも言い難い顔つきになる。はっきりと答えると一番強い感情は苛立ちだ。こいつ散々人をおちょくりやがってと、目を細めて不快の意を示した。そのしかめっ面に気付いていないのかスルーしているのか、少年はヘラヘラと笑っている。彼が全く変わっていないことから二人は脱力した。ああ、この村は何も変わってはいないのだと安堵する彼らを見て、少年は二人を自分の家に向かって連れて行った。土産話を聞かせてもらうために。村長が少し待てと引き止めようとしたが、孫の押しの方が強く、結局船長達は連れて行かれた。
連れて行かれた村長の家も、外観はほとんど変わっていなかった。所々剥げていた塗料が塗り直され、壊れたのか知らないが花瓶の形が変わっていた。そんな些細な事まで覚えていたのは、きっと五年も幼い自分たちが白い壁に下らない落書きをしたり、花瓶の形を見て変だ変だと笑って囃し立てたからだろう。特に落書きに意味は無く、大して変な形ではないと言うのに。
「やっべーなぁ、ほっとんどそのまんまじゃねぇか」
「てめえも同じ事考えてたのかよ。……でも、確かにそうだな」
「ハイハイ、兄さんたちはこっちに座って座って」
一旦奥の方に姿を隠した村長の孫はその姿を現した。両手に折り畳み式の椅子を持って。その椅子を受け取り、畳まれた状態から開いて組み立て、床に置いて座った。サイズから察するに子供用なのだろう、極めて大人に近い青年が座るとギシギシという嫌な音がほんの少しだけした。
木の椅子が音を立てて軋むことに不安げな表情になったが、もう一度よく屋内を観察することで気を紛らわした。昔と同じく何らかの植物を焚いた匂いがする。すっと鼻腔に入ってきて心地よい清涼感を与えるそのお香の原料の植物を船の上の一団は知らなかった。
目を泳がせてみると次は本棚に目が行った。隣の島、更に隣の島、そして又は遥か遠くの島から取り寄せた本が一面にズラリと並んでいる。昔から思っていたのだがどのような内容なのだろうか。旅の途中で立ち寄った場で漢字を覚えていた二人は楽々と読むことができた。“植物の育て方”を初めとする農業関係の本が最上段を埋め、二段目を“自然の猛威”という台風や洪水について記されたシリーズものが置いてあった。三段目には“羅生門”などの小説があった。
「旅の話も聞きたいんだけど、実は宝についてが一番知りたいんだ。最初にその事を教えてよ」
じろじろと眺めている二人を見て、このままではいつ話が始まるか分からないぞと察した少年は自分から切り出した。よそ見ばかりしていたことを申し訳なく思った彼らは謝る代わりに話を始めた。
「そうだな、俺たちもお前に何よりもそれを話したい」
「で、どんな財宝があったのさ」
すると船長は一瞬だけ沈黙した。そしてすぐに彼は声を荒げた。
「財宝なんて存在しない!」
すると隣の船医の彼は、ゲラゲラと大きな声で笑いだした。
「ちょっ、おまっ……あのオッサンそっくりじゃねぇか! やっべ面白ぇ」
事情を知らない少年はなぜそんなに可笑しそうにしているのかさっぱり分からなかった。だが、自分一人だけが話を知らずにのけ者にされている気がしたので、ほんの少し嫌な気分になった少年は早く続きを言えと切実にせがんだ。二人で勝手に盛り上がるな、と。
「悪ぃ悪ぃ。実はな、宝のある島の直前の島で俺たちはやたらと酒臭いオッサンに会った」
「財宝への憧憬が強かったんだろうな。絶望してたよ」
「そこのオッサンが言ったのさ、財宝なんてなかった、ってな」
「そしてその1週間後かな、俺らはその島に着いた」
「そうして見つけたんだ。“この世で一番の宝”を」
そして少年は彼らに頼んだ。何があったのか教えてほしいと。二人は自分で見た方が感動が強いだろうと思い、決して言わなかった。
彼らの率いる一行が見たのは一枚の写真だった。写真にはそれを眺める若き船長の父親、宝を残した張本人と、笑顔の仲間がたくさん映っていた。宝とは、その写真。いや、そこに映る者全てだ。
――――さて、もうこれで宝の正体が分かったのではないだろうか?
fin
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