雑談掲示板

【完結】〜V計画〜【夢をありがとう】
日時: 2019/03/25 17:31
名前: 名無しのアキラ◆gAG34vIFP2 (ID: PtJBEP/Y)

皆さま初めまして。今はこの名前で失礼いたします。


こちらは某スレ閉鎖につき、臨時で建てた避難所スレになります。

主に某合作の創作物の保管庫として使う予定ですが、私以外の関係者の方のリクエストや、全く関係のない新参の方からのご質問や問い合わせ等も受け付けておりますので、よろしくお願い申し上げます。

荒らしスレではございませんので、皆さまのご理解を頂ければなと思います。


※2019/03/24 完結しました。また同日を持ってこちらのスレは閉鎖となります。短い間でしたがお世話になりました。


〜書いてる小説リスト〜

●「合作!!三千世界のヴァルキュリア!!」(完結)(リク依頼板・複雑ファジー板)


~創作イラスト紹介~

●「オリキャラ“ヴァルキュリア部隊”設定画」(>>2)

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Re: 【暫定】〜ヴァルキュリア開発計画〜 ( No.53 )
日時: 2018/12/15 21:25
名前: 名無しのアキラ (ID: bdjBkUDc)

一同が踵を返し、石化したイクリプスに背を向けて歩き出した時だった。

パキンーー

透き通った1枚のガラスの板が割れたような、けれども楽器で奏でたように美しい音がどこからか響いてきて、一同は歩みを止める。
各々が辺りを見回すも、それらしき物は見当たらない。
しかし、ふと何かに感づいて上を見上げたホムンクルスのフィアが、空を指差した。

「ーーなんだ、あれは?」

見上げたそこにあったのは、空にぽっかり空いた巨大な“穴”だった。ガラスを割ったように鋭利な切り口の向こうには、広大な宇宙空間のようなものが広がっている。そして、空に亀裂が入っては、破裂音と共に大きく割れ、その破片が落ちてくる。破片には今まで自分達が見ていたはずの青空の情景が映っており、まるでそれが偽りであったかのように物語っていた。
次々と割れては落ちてくる破片に、一同は各々の武器を構えた。

「これは!?」

異界人の天使「エリアス」が、同じく異界からやってきた王族の少女「グラエキア」を庇うように、その手にした槍を振りかざすが、雨のように細かくなって落ちてきた破片の数々は、他のものに触れると塵のように霧散して消えていくようだ。
当たっても雪のような軽さしかなく、触れても害はないようだ。

「あわわ!空が大変な事になっていきますよ!?どうすれば!?」

空に広がり、覆い尽くしていく非現実的な光景に、異界のヒーロー「美琴」は、彼女の師である紳士「スター」へ判断を仰ぐ。しかし彼もまだ状況を把握できずにいた。

「わけが分かりませんが、私は厄介ごとは御免ですよ!ここは引かせて貰いますからね!」

ビジネスマンのミヤギが我先にと、近くにあった建物の中へと消えていく。それに合わせ、フィアも「すまぬな皆、私も直接戦闘は苦手だ。悪いが少し下がらせて貰おう」と言い残し、ミヤギの後を追った。
残されたメンバーは、想定外の出来事へ円陣を組むように各々の武器を構えて固まる。

「うむぅ......これは一体......デスタムーア君、君はどう見る?」

「とてつもない規模の幻術の類か......それも惑星規模か?ヴァルキュリアどころじゃないぞ、これは」

スターの問いに、異界からやってきた少年「デスタムーア」は見たことのない星々が輝く宇宙空間を睨みつけながら言う。

「まさか、これが1人の能力者によるものだってのか!?」

レジスタンスのリーダー、ラヴォンも双剣を構えながら臨戦態勢をとる。

「ていうか、その術者も、これじゃあどうやって探せというんですの......あら?ねえ皆んな!あそこになにか見えませんこと!?」

その時、グラエキアが夜空の一角を指差しながら叫ぶ。うっすらと見えるそれは、半透明の翼を広げた巨大な鳥のようなシルエットをしていた。正確な距離が分からないため、大きさも不明だが、だがとても巨大なものであることは確かだった。
夜空に浮かぶホログラムのようなそれ。しかしそいつは羽ばたきながら移動し始める。ただのシンボルじゃない、こいつは動く!

「みんな、気をつけーー」

ユキカゼが言いかけたその時、空に浮かぶ鳥のようなシルエットの周囲が、新星の如き煌めきを放ったーー

刹那、放たれた何かが、地上の風景を爆風と共に消しとばすーー

Re: 【暫定】〜ヴァルキュリア開発計画〜 ( No.54 )
日時: 2018/12/15 21:28
名前: モンブラン博士 (ID: w8HUfNAY)

名無しさんへ
また新しい敵が登場する予感ですね!

Re: 【暫定】〜V計画〜【最後の敵】 ( No.55 )
日時: 2018/12/15 21:33
名前: 名無しのアキラ (ID: bdjBkUDc)

モンブランさん


こんばんは〜(^^)お久しぶりです!
しばらくカキコに入れなかったので、ちょっと書き溜めてましたw
新しい敵は“上位者”という勢力の「フレスヴェルグ」っていう敵ですね(一応こっそりキャラシを本スレに貼っておきましたw)

既存のオリキャラとは一線を画す存在の敵で、某合作の正真正銘の“最後の敵”になります......
最後ってだけに、皆さんのキャラをどう動かすかとか、どんな流れで話を進めるか、色々考えながら慎重に頑張ります(^^)

Re: 【暫定】〜V計画〜【最後の敵】 ( No.56 )
日時: 2018/12/15 21:49
名前: モンブラン博士 (ID: w8HUfNAY)

最後ならスター流の正真正銘の切り札として闇野が登場する可能性も少しはあるかもしれませんね。

Re: 【暫定】〜V計画〜【最後の敵】 ( No.57 )
日時: 2018/12/15 22:04
名前: 名無しのアキラ (ID: IFW0hiEY)

モンブランさん

闇野も出していいですよ〜
上手くセパレートさせて、それぞれのグループ毎に活躍してもらおうと思ってます(^^)

前衛と後衛みたいに分けて、各々の陣営にキャラを細かく分けて書くというか
同じ場面に大量のキャラを固めて出すと、台詞が誰が何を言ってるのか分かりにくくなると思うのでw

Re: 【暫定】〜ヴァルキュリア開発計画〜 ( No.58 )
日時: 2018/12/27 18:10
名前: 名無しのアキラ (ID: dV.p8lhw)

灰色のモノトーンの曇り空と、純白で大理石のように硬く冷たい床がどこまでも続く世界。
その真ん中に横たわっていたヴァルキュリアの少女ソルは、誰かの呼びかけに目を覚ました。一帯どれだけの時間が流れたのだろう。微睡の先に見た世界も、これまた夢の中のような場所である。

「ソルちゃん、ソルちゃん?」

聞き慣れた声がする、それを聞くといつも安心できた。ソルの瞳に、モノトーンの世界の中で唯一鮮やかなな色が映った。
蒼い、鮮やかな衣装を身にまとった女性。全身のふわふわのフリルや、風が吹けばはためくマントとても印象的だ。
彼女は、ソルの盟友であるヴァルキュリア、イクリプスに他ならなかった。
イクリプスに揺すられて起きたソルは身を起こす。

「ここは......」

ソルは次第に今までの事を思い出してきた。
自分がヴァルキュリアとして多くの仲間を率いて来たこと、多くのものを失った事。そして、自身が隣にいるイクリプスに看取られて最期を迎えたこと。
それは即ち、この世界が生死の狭間の存在であるという事に彼女は気づく。そして、イクリプスもまた同じ地にいるという事は、彼女もソルと同じ運命を辿ったのだと推測できた。

「ーー死んじゃったんですかね、私たち」

「うん、でも私達の“意識”が、まだヴァルキュリアの通信回路の中に残ってるのかも」

「......そう......ですか」

ソルはそっとイクリプスに身を寄せた。
するとイクリプスは、自分のマントをソルの肩にかける。

「......もう、このまま離れたくない」

ソルがイクリプスの胸元に顔を埋めると、イクリプスは優しく彼女の頭を撫でてくれた。

「大丈夫、ずっと一緒にいるよ」

イクリプスはそのままソルを抱きしめる。ソルは思う、この世でここよりも安心できる場所はないと。ここが最後でいい、このまま2人で眠るように消えてしまってもいいと。
目を瞑ると、全身に温もりが広がるのを感じた。身を寄せた2人の体温によって、お互いの身体が温まる。
ふと灰色の空を見上げたイクリプス。

「ソルちゃん、見て」

ソルも顔を上げると、空には見慣れた連中の姿が、まるでスクリーンのように映っていた。
降り注ぐ槍のようなものの雨を掻い潜りながら、必死に反撃をする天使のエリアスや、死術師のヴェルゼ。
負傷したレジスタンスのリーダー、ラヴォンを引きずって物陰に隠れ、再び戦場へ駆けていくスター流のヒーロー、美琴。
更に障害物の間を移動し、味方の撤退を援護しながら魔法を唱えるリクセス。
どいつも、今まで自分達が戦ってきた“敵”だった。

「はあ......“まだ戦ってる”んですか」

ソルは呆れたように呟いた。そして、その自身の言葉のなにかがおかしいと察する。
まだ戦う......? おかしいのだ、もはや自分達も居ない世界で、一体何と戦っているのかと......
再び空を見上げると、断片的ではあるが、彼らが戦っている“敵”の姿が見える。明らかにヴァルキュリアでも人間でもない。
それは正に“未知の敵”だった。


『“ヴァルキュリア”よ、聞いてください』


突然空から響いてきた声に、ソルは身を震わせて驚く。イクリプスはソルをマントで包んだまま、灰色の空を冷静にじっと見つめていた。

「あ、あなたは......?」

『わたしは“オーティヌス”、貴方達を生み出した者の1人です』

ソルが空へ語りかけると、声の主が名乗る。
ヴァルキュリアは何者かが生み出したとされる生き物だ。それがこの声の主だと言うのだろうか。

『ヴァルキュリア・ソル、そしてイクリプス。貴方達にお願いがあります』

声の主の言葉と共に、灰色の空に次々と様々な光景が流れる。既存の文明を吸い上げていく竜巻、全てを粉砕しながら蹂躙する津波。見渡す限り続く火の海。そして、未知の敵とそれに対抗する人々。

『今、この星は最大の窮地を迎えています。異界より召喚せし英雄達を持っても、この脅威には対抗しきれません』

異界、という言葉にソルはピンときた。それは先の大戦で自分達が敗れた、エリアスやヴェルゼ、美琴、嘉元、ミヤギ、そしてフィア達の事に違いなかった。

『お願いです。主義や理想、言葉、そして人とヴァルキュリアの違いを全て捨て、もう一度、彼らと共に、この星の為にまた戦ってくれませんか?』

突然だった。正に夢のような話だ。全てを失ったこの地で、ソルは、本当の【神】を見たーー

「ーー行こう、ソルちゃん。これはきっと、私たちがーー“ヴァルキュリア”が生まれてきた意味なんですわ」

イクリプスの言葉は、いつだって間違ったことはなかった。
ソルは彼女の言葉のバックボーンも得て、決意に迷いがなくなる。


「ーーわかりました、戦います。わたしは......【明日】を取り戻す!」


ソルが握りこぶしを固めると、モノトーンの世界を光が包み込んだーー

Re: 【暫定】〜ヴァルキュリア開発計画〜 ( No.59 )
日時: 2018/12/28 15:58
名前: 名無しのアキラ (ID: H9KOaXfM)



「みんな巻き込まれないでよ!“滅亡の業火(ロストフレイム)”!」


リクセスが黄金の知恵の輪を手に詠唱する。そして薙ぎ払うように腕を振るうと、広範囲に炎の魔法が広がった。そしてその向こうから迫り来る、青黒い触手の塊のような怪物達を一掃する。
しかしそれでも炎の間を縫って、何匹かが滲み出てくる。

「まったく!よりにもよって、なんでこっちに来るんですかね!」

「ヴァルキュリアの次は怪物退治かあー」

ミヤギは懐から拳銃を抜き、怪物の弱点である触手の中の眼を狙い撃つ。そして動きが鈍くなったところへダメ押しに、今度はフィアが手持ちのカンテラを怪物の中心に叩きつけた。その瞬間、怪物は彼女のカンテラの魔法の炎によって火だるまになり、しばらく身悶えた後に生き絶える。

「ふう、非戦闘員の私とミヤギでも、連携すればなんとか戦えなくはないんだな」

「呑気にそんなこと言ってる場合ですか!後方のここまで敵がうじゃうじゃ来るってことは、前線はもっと大変な事になってるって事ですよ!」

淡々と無表情に話すフィアに、ミヤギが突っ込みを入れる。

「無駄口叩いてる暇があったら、とりあえず化け物に食べられないように必死に逃げなよ」

リクセスの言葉に、ミヤギとフィアは大通りの奥を見る。そこからは、更に大量の青黒い触手の怪物達が、まるで津波のようにこちらへ押し寄せてきていた。





一方その頃、別の場所では、瓦礫の下から這い出してくる1人の少女の姿があった。先程、生き絶えたはずのヴァルキュリア、ソルだ。
確かにあの時ーーインデックスの中に潜んでいた上位者“フレスヴェルグ”の手によって葬られた。しかし生死の狭間で出会った別の上位者“オーティヌス”の手を借り、なんとか生還を果たす。
しかし、それでも身体に蓄積したダメージは大きい。瓦礫から身を起こすも、なかなか歩き出せない。

すると、彼女の手前に空から何かが落ちてきて、クレーターを作りながら着地する。
しかしそれは、彼女が見慣れたものだった。

「イクリプス......?」

そう、彼女はソルの仲間のヴァルキュリア、イクリプスだ。しかし様子がおかしい、目は赤く充血し、血の涙を流している。そしていつもの鉄壁の笑顔もない、無表情のままだ。

「ウゥ......ガウ!」

「イクリプス!あなた、言葉が......!」

イクリプスの動物のような鳴き声に、ソルは彼女の状態を把握した。激しい戦闘による脳内出血によって、言語や記憶に障害が出ているのだ。下手したら今のイクリプスは誤って味方へも攻撃しかねない状況だが......
彼女はすぐにソルの元に駆け寄ってくる。そして片膝をついて彼女の臭いを嗅ぎ、そのまま待機した。

「イクリプス......あなたっていう人は......記憶が無くなっても、私の為に戻ってきてくれたんですね......」

返事はない。しかしその赤い瞳は、ソルのことだけを見ていた。
イクリプスがこんなにボロボロになっても頑張ってるんだ。自分も動かないわけにはいかない。
ソルは両足に力を込めて立ち上がる。

「はあ、はあ......イクリプス、とりあえず安全な場所へ移動しましょう。ついでに武器も探しながら......」

「ガウ!」

ソルはイクリプスの手を借りながら、移動を始める。遠くからは剣戟や爆発音など、戦闘の音が聞こえてくる。辺りは焦げ臭さと埃っぽさに包まれ、そして至る所で黒煙が上がっていた。

「それにしてもーー」

ソルはイクリプスを見ながら呟く。

「ーー相変わらずあなたは、空から落ちてくる人なんですね」

ソルはイクリプスと最初に出会った時のことを思い出しながら呟いた。





建物が破壊され、瓦礫とともにリクセスと一体の化け物が飛び出してきた。距離は2メートルもない、お互いの武器の射程圏内だ。リクセスは即詠唱に入るが、一方タイミングが間に合わず、怪物の触手で吹っ飛ばされてしまう。
しかしリクセスも負けてはいない。前世で培った技術を生かし、受け身をとって起き上がると、すぐに詠唱を再開して炎の魔法をお見舞いした。

「よし!あと2匹ーー」

リクセスは次なるターゲットへ向きを変えようとした瞬間だった。偶然にもちょうど彼の背後へ転がってきた触手の怪物、リクセスをその瞳に捉えると、その後頭部へ触手のビンタを放った。
後頭部を打たれる、脳震盪。リクセスの両膝から力が抜け前に倒れこみそうになる。
倒れるリクセスへ、ミヤギとフィアが声を上げようとしたその時だった。

横から放たれる銃弾の嵐、それは今まさにリクセスを踏みつぶそうとしていた怪物を切り裂いていった。
更に近くにいたもう一匹も、颯爽と現れた青いマントの人物に、素手で紙のように切り裂かれた。

「ガァ!」

そう、この青いマントの人物こそ、かの伝説のヴァルキュリア、イクリプスだ。そして、その向こうには、片膝をついて息を荒げる銀髪のヴァルキュリア、ソルの姿があった。

「残弾......ゼロ......」

「......! ヴァルキュリア! なんでここに!」

気がついたリクセスは、突然荒げる現れたソルの姿に、思わず知恵の輪を向けるが......
すぐにソルを庇うようにイクリプスが飛んできて立ちはだかった。獣のように低い唸り声を上げている。
しかし、ソルはイクリプスの力が入った背中に優しく触れる。

「大丈夫......彼らは......わたしの......味方です......」

今のイクリプスに、ソルの言葉の意味は理解できない。しかしソルのその心のオーラを読み取ったイクリプスには、その事を理解できた。

「うぐ......相変わらず、無茶な戦い方をするじゃないですか......“アンダルシア”の魔法使いというものは」

「ーーいや、君に言われたくはないよ」

しばらく呆然としていたリクセスは、またいつもの高飛車な口調に戻っていた。色々分からない事がある、死んだはずのヴァルキュリア達が復活していて、しかも今この瞬間に自分を助けてくれたと。
その様子を見ていたフィアは、すたすたとソルとイクリプスの元へ近づいていく。

「もう、いいだろう」

「ちょっと!フィアさん、なにを!危ないですよ!」

ミヤギの警告も無視し、フィアはソルの傍まで来た。今のでソルも体力を使い果たしたのか、ペタンとお尻をついて動けない様子だった。
ことりと地面に置かれか、フィアのカンテラ。そして彼女はその炎を調整し、一段と大きくした。
すると白く暖かい光がソルとイクリプスを包み込んだ。2人の傷が消えていき、内側から体力がみなぎってくるようだった。

「ソル......ちゃん」

「イクリプス!?脳の損傷が治ったんですか?これは......回復の魔法なんでしょうか」

ぼそりとイクリプスが喋った事に、ソルはフィアが自分たちを治してくれたんだと理解する。

「あ、ああー気持ちいい......ふふっ、とても素晴らしい術をお持ちなのですね。感謝しまーー」

記憶と言葉を取り戻したイクリプスが、フィアに感謝を告げようとした時だった。
突然フィアが、音を立ててうつ伏せに地面へ倒れる。

「えーーなに!?」

ソルは慌ててフィアを回復姿勢にして寝かせた。ミヤギとリクセスも駆け寄ってくる。

「いやあーなに、大した事じゃないさ......私の魔法は命を燃やして、他者を癒すんだ。きっともう、限界なんだろう」

「なっ!どうしてそんな大事な事を言わなかったんだい!?」

リクセスも前世で似たようなものを見ていたから、癒しの魔法には高いコストが付き物なのは理解していた。だからこそ、尚更そんな重要な事を今まで黙っていたフィアに、激しい感情が込み上げてきた。
ソルは「これか!?」と慌ててカンテラの炎を絞る。

「何故って......誰にも聞かれなかったからさ......私のことなんて、君たちはあまり気にしないだろう......」

「なんて自分勝手な!勝手に馬鹿な事をするなよ!」

リクセスが声を荒げる中、ソルとイクリプスはーーなんと無表情に戻って、とても静かで冷静になっていた。ミヤギはその顔を見て一瞬驚くも、すぐにヴァルキュリアの特性を思い出した。

ヴァルキュリアは、窮地になればなるほど冷静になりーー“策を打ち出す”生き物だとーー
しばらく沈黙していたソルは、ふと口を開き、突拍子も無い事を言った。


『ーー“燃焼の三要素”を覚えていますか』

Re: 【暫定】〜ヴァルキュリア開発計画〜 ( No.60 )
日時: 2018/12/28 20:40
名前: 名無しのアキラ (ID: H9KOaXfM)

ソルの言葉に一同は返事を失う。しかしそれに最初に答えたのは、異界のビジネスマン、ミヤギだ。

「......“酸素”“熱”そして“燃焼物”ですか?」

「なんだい、それは......“化学”ってやつ?それがどうしたのさ!?ここは学校じゃないんだよ!」

フィアが絶命するかしないかの瀬戸際だ、リクセスも焦っていた。

「......要は物が燃えるには“酸素”“熱”そして“燃えるもの”が必要です。そして彼女、フィアの場合は、その燃えるもの=自分の命だった。このカンテラの火が消えることは、即ち彼女の死」

ソルの解説を更に突き詰めようとリクセスが「だから、どうするのさ!」と檄を飛ばす。

「つまり......“命の代わりに燃えるもの”をこのカンテラに注入すれば、理論上はフィアちゃんを助けられますわ」

イクリプスの言葉に一同は顔を上げる。フィアのカンテラに、魂に変わるな何かを注入し、火継を行なって絶命を回避するという作戦だ。
しかしそれには当然問題がある。魂や命を手に入れるには、当然「生贄」が必要となってくる。

「......イクリプス、貴方の宇宙空間を操る能力で、なにか魂に代替できるものを召喚できませんか?」

「うーん......隕石とかブラックホールとかなら出せるけど、魂は難しいかな......」

ソルとイクリプスが相談する中、トコトコと瓦礫の陰からこちらに走ってくるものがいた。
子供ほどの大きさの小型ヴァルキュリア、“はぐれファランクス”だ。いくらでも量産でき、お馴染みのやられ役みたいになってる奴だ。
全滅したはずだが、なぜかここに一機だけぽつんといたのだ。
その姿を見るや、ソルの目つきが変わる。


「あ、“魂”あるじゃん」


ソルは傍まで来た、はぐれファランクスを捕まえる。ファランクスも抵抗するそぶりはなく、大人しくしていた。早速リクセスとミヤギが何か言いたそうだったが、ソルは「大丈夫、いっぱいおるし」の一言でぶった切る。

「よし......イクリプス、こいつから貴方の空間を操る能力で魂を抜いてください。私は......」

ソルはイクリプスに命令しながら、自身の網膜上で何かの設計図を作成していく。そして彼女は手にホログラムの設計図を投影した。
それはフィアのカンテラの底部に丁度はまるように設計された“ブースター”のような機会だった。これに、はぐれファランクスの魂を入れて燃焼させ、火継を行うつもりなのだが......

「......設計図は出来ました。でも、どうやってこれを作れば......」

「複雑な構造だね......こんな代物は流石の僕でも無理だ」

設計図を覗き込むソルとリクセス。
すると、そこに更に空から滑空してくる影があった。ソルにとっては聞き慣れたエンジン音、そして、その音はリクセスも、しかもこの異世界に来た初日に聞いた物だった。

『ソル隊長どのー!』

空から飛んできて着地した小柄な少女は、ソルの仲間、ヴァルキュリア・アイギスだ。銀髪を左右でまとめたアイギスは、小柄ながらも重装甲で身を包んでおり、なかなか打たれ強いヴァルキュリアだ。
小柄な体躯と、赤を基調とした重装甲と複数の武装がギャップになっており、とても印象的だ。
彼女も先の戦闘で死亡したはずだが......

「アイギス!どうしてここに......って、それどころじゃない!最高にいい所に来ました!ほら!早く貴方の能力で、この設計図のパーツを印刷してください!」

ソルはカンテラを指差しながら「これと同じ材質で!」と付け加える。戻ってくるや否や、状況を掴めないまま突拍子も無い隊長の命令に、アイギスは一瞬思考が停止する。
一同全員の目線が、全てアイギスに向けられているのだ。しかも中には今まで敵対してたミヤギとリクセスまでいる。

「あ、あの......これならすぐに作れるでありますが、一体これはなにをするーー」


『早くやれこのチビ!ぶっ殺すぞ!』


『急げ!僕の魔法を食らいたいのか!』


『早くして下さい!私のビジネスがかかってるんですよ!』


『いいから、やりなさいな♪(怖い笑顔)』


ソル、リクセス、ミヤギ、イクリプスの4人に詰め寄られる。そしてアイギスはソルの言葉を聞き、直ぐに状況を理解したのだ。ソルがここまで言う時は、いつもよっぽどの窮地!いつも真面目なアイギスにとって、自分を救ってくれた隊長であるソルを助ける事は生きる意味に等しい。
アイギスは考える暇もなく、両手を手前にかざして、ソルの設計図を空間へ投影したーー

Re: 【暫定】〜ヴァルキュリア開発計画〜 ( No.61 )
日時: 2018/12/29 17:13
名前: 名無しのアキラ (ID: dGeWrAwk)

アイギスがかざした両手の前に投影される、ホログラムの設計図は、次第に立体と質量を伴う実物となっていった。そしてソルは完成した部品を手に取ると、直ぐに反対側の手でフィアのカンテラを掴む。
そして2つを組み合わせ......ソルはイクリプスへアイコンタクトを取る。
すかさずイクリプスは、はぐれファランクスの胸元の空間を能力で切り開き、そこへ手を入れ、引き抜く。と、同時に はぐれファランクスは機能を停止した。イクリプスの手には白い光が握られている。

フィアのカンテラの炎は、正に風前の灯火。フィア本人も既に意識はなく、眠ったように目をつぶって動かない。息もどんどん弱くなっていた。

(間に合えー!)

ソルは心の中で願いながら、イクリプスにファランクスの魂を装置に入れてもらい、そしてカンテラと繋ぎ合わせて起動する。

しかし......気づけば、徐々に小さくなっていった炎は既に消えていた。

「ああ!火が......」

いつも冷静で生意気なミヤギも、今は真っ青だった。散々他のメンバーを下に見ていたくせに、いつのまにか仲間意識が芽生えていたようだ。
装置は稼働してる、みんなが静かに見守っていると......瓦礫の中、ボロボロになった全員を、暖かく照らす光があった。

そう、フィアのカンテラだ。フィアのカンテラに火が戻ったのだ。
成功した、皆は互いに顔を見合わせ、笑みを浮かべあった。
種族の壁を超え、世界の壁を超え、彼らが「分かち合った」瞬間だった。





上空に浮かぶ巨大な怪物、上位者“フレスヴェルグ”の雨のように降り注ぐ猛攻。その空に不気味に開く大口が稲妻のごとく光ると、そこから木の枝のように無数に分岐していく光線を放ち、地上を薙ぎ払っていった。

「なんてことなんですの!まるで天災じゃない!」

異世界からやってきた王族の血を引く少女“グラエキア”は、その闇の鎖を操る術を持って、うまく追いかけてくる光線や飛んでくる瓦礫を跳ね除けながら、地上をちょこまかと走っていた。
更にその上空、同じく異世界の天使“エリアス”も、フレスヴェルグの攻撃を避けながら、渾身の聖気の槍を閃光の如く放ち反撃をしていた。エリアスの槍は直撃すればヴァルキュリアですら大破される程の威力がある。しかしフレスヴェルグの半透明の身体は幾ら攻撃しても、強化ガラスのように少し砕けるだけであり、大したダメージを与えていないように見えた。

それだけじゃない、エリアスの周りには自律飛行する鳥に羽のような兵器が複数浮いており、それらも地上や空中へレーザーを撃ちまくっていた。
前世では敵無しだったエリアスも、フレスヴェルグの光線や自律兵器の数々のせいで、上手く近づけずにいた。

「これは、なかなか手強い相手ですね......」

エリアスが自律兵器に囲まれながらも、槍を振り回して攻撃をいなしていた。
その時、上空から一筋の光が、エリアスを追い回していた自律兵器の軍団を吹き飛ばした。
その光を見たグラエキアは顔を上げる。

「今のは!? 新手......いや、援軍?でもあの光、どこかで......」

立て続けにその光の一線は上空の自律兵器を撃ち落としていく。そして、一際大きなレーザーが、フレスヴェルの頭部に命中して爆散した。
エリアスは目を凝らすと、雲の間から現れた“彼女”の姿を捉えた。


『ーー手こずっているようだな、ボクの“胸”を貸そう......』


白い板状の兵装に器用に乗り、波乗りの如く空を滑空する。フレスヴェルグの対空砲火の間を縫うように空を滑り周り、しかも両手のエネルギー火器で反撃もしていく。
長くクセのある桃色の髪を両サイドで束ね、白い装甲服を身にまとっている。なかなか自己主張の強い、良い体格をした“青帽子”の少女。


『なんつてー!だーっはっはっは!いつだって、こんな時はボクにお任せーっすよ!』


『“フェイルノート”!』


グラエキアとエリアスは声を合わせて驚く。撃破された筈のヴァルキュリアが、しかも今は援護射撃までしてくれている。驚かないわけがない。
一通り自律兵器を撃ち落とすと、フェイルノートは地上のグラエキアを庇うように着地してきた。

「やっほー!調子はどうっすか?えーっと......名前なんだっけ?確かグラコロなんとか?」


『わたくしぃのぉ名前はぁ!
“グラエキア・ド・アルディヘイム・クラインレーヴェル・ヴァジュナ・フォン・アリアンロッド”ですわっ!
しかも貴方!“胸を貸す”の意味違うし!』


早速名前を間違えられ、今までの戦闘に使った以上の体力を全て声に放出する勢いで己の名を叫ぶグラエキア。きっとこの戦場中に響き渡っただろう。

「ええー?......まあ、もうグラコロでいいじゃん!」

「おい......」

「まあまあ、グラエキア様」

今にもその闇の鎖でフェイルノートを絞め殺しそうな勢いのグラエキアの前に、エリアスが降りてきた。
そして警戒するようにフェイルノートと向き合う。

「フェイルノートさん、これは一体?」

「うーん、ボクもよくわかんないっす!でもとりあえずは、今は皆んなと一緒に戦うっすよー!」

そう言うと、フェイルノートは再びボード上の兵装の上に飛び乗って高度を上げていく。

「でも、今はちょっと“会わなきゃいけない人”が居るから、後はちょっと任せたっす!」

「ええ!?ちょ、待ちなさい!」

グラエキアの制止も無視して、そのままフェイルノートはどこかへ飛び去った。しかしフレスヴェルはまだ健在だ。再び顔をエリアス達に向けてくる。

Re: 【暫定】〜ヴァルキュリア開発計画〜 ( No.62 )
日時: 2018/12/29 18:34
名前: モンブラン博士 (ID: /XF86LJk)

ソルが復活し、かつて敵味方だった者同士が力を合わせて共通の敵に立ち向かうというのは熱い展開ですね!犬猿の仲のシャドウとソルが共闘したら面白そうですが、水と油の組み合わせですから空中分解の可能性もありますね。この先どうなるのか、楽しみです!

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