雑談掲示板
- みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】
- 日時: 2022/06/30 06:43
- 名前: ヨモツカミ (ID: HJg.2TAk)
再始動予定につき調整中!
注意書き多くてきもいね、もっと気楽に書ける場にするから待っててくれ!
略してみんつく。題名の通り、みんなでSSを書いて投稿しよう! というスレです。SSの練習、作者同士の交流を目的とした場所になっております。投稿された作品に積極的に感想を言い合いましょう。稚拙な感想だから、と遠慮する必要はありません。思ったことを伝えてあげることが大切です。
優劣を競う場所ではありません。自分が上手くないと思うそこのあなたこそ、参加してみてほしい。この場で練習をしてみて、他の参加者様にアドバイスを求めてみてはいかがです? お互いに切磋琢磨しながら作品投稿が楽しめると素敵ですね。
自分はそれなりに書けると思ってるあなたは、いつもの自分と違う作風に挑戦してみるのも楽しいかもしれませんね。または、自分の持ち味をもっと伸ばすのも良いでしょう。みんつくに参加することで、新たな自分を見つけるキッカケになるといいなと思います。
読み専の方も大歓迎です。気に入った作品があれば積極的にコメントを残していただけるとスレが盛り上がります。当然、誹謗中傷や批判など、人が見て傷付く書き込みはNGです。常に思いやりの精神を持って書き込みましょう。
*作品の投稿は最低限ルールを守ってお願いします。
↓↓
・お題は毎月3つ出題します。投稿期間、文字数の制限はありません。ただし、お題に沿ってないSSの投稿はやめてください。そういうのは削除依頼を出します。
文字数について、制限はありませんがどんなに短くても140字くらい、長くても20000文字(4レス分)以内を目安にして下さい。守ってないから削除依頼、とかはしません。
・二次創作は禁止。ですが、ご自身の一次創作の番外編とかIfストーリーのようなものの投稿はOK。これを機に自創作の宣伝をするのもありですね。でも毎回自創作にまつわる作品を書くのは駄目です。たまにはいつもと違う作品を書きましょう。
・投稿するときは、作品タイトル、使用したお題について記載して下さい。作品について、内容やジャンルについての制限はありません。
小説カキコの「書き方・ルール」に従ったものであればなんでもカモン。小説カキコはそもそも全年齢なので、R18ぽい作品を投稿された場合には削除をお願いすることもあります。
また、人からコメントを貰いたくない人は、そのことを記載しておくこと。アドバイスや意見が欲しい人も同じように意思表示してください。ヨモツカミが積極的にコメントを残します(※毎回誰にでもそう出来るわけではないので期待しすぎないでください)
・ここに投稿した自分の作品を自分の短編集や他の小説投稿サイト等に投稿するのは全然OKですが、その場合は「ヨモツカミ主催のみんなでつくる短編集にて投稿したもの」と記載して頂けると嬉しいです。そういうの無しに投稿したのを見つけたときは、グチグチ言わせていただくのでご了承ください。
・荒らしについて。参加者様の作品を貶したり、馬鹿にしたり、みんつくにあまりにも関係のない書き込みをした場合、その他普通にアホなことをしたら荒らしと見なします。そういうのはただの痛々しいかまってちゃんです。私が対応しますので、皆さんは荒らしを見つけたら鼻で笑って、深く関わらずにヨモツカミに報告して下さい。
・同じお題でいくつも投稿することは、まあ3つくらいまでならいいと思います。1ヶ月に3つお題を用意するので、全制覇して頂いても構いません。
・ここは皆さんの交流を目的としたスレですが、作品や小説に関係のない雑談などをすると他の人の邪魔になるので、別のスレでやってください。
・お題のリクエストみたいなのも受け付けております。「こんなお題にしたら素敵なのでは」的なのを書き込んでくださった中でヨモツカミが気に入ったものは来月のお題、もしくは特別追加お題として使用させていただきます。お題のリクエストをするときは、その熱意も一緒に書き込んでくださるとヨモツカミが気に入りやすいです。
・みんつくで出題されたお題に沿った作品をここには投稿せずに別のスレで投稿するのはやめましょう。折角私が考えたお題なのにここで交流してくださらなかったら嫌な気分になります。
・お題が3つ書いてあるやつは三題噺です。そのうちのひとつだけピックアップして書くとかは違うので。違うので!💢
その他
ルールを読んでもわからないことは気軽にヨモツカミに相談してください。
*みんつく第1回
①毒
②「雨が降っていてくれて良かった」
③花、童話、苦い
*みんつく第2回
④寂しい夏
⑤「人って死んだら星になるんだよ」
⑥鈴、泡、青色
*みんつく第3回
⑦海洋生物
⑧「なにも、見えないんだ」
⑨狂気、激情、刃
*みんつく第4回
⑩逃げる
⑪「明日の月は綺麗でしょうね」
⑫彼岸花、神社、夕暮れ
*みんつく第5回
⑬アンドロイド
⑭「殺してやりたいくらいだ」
⑮窓、紅葉、友情
*みんつく第6回
⑯文化祭
⑰「笑ってしまうほど普通の人間だった」
⑱愛せばよかった、約束、心臓
*みんつく第7回
⑲きす
⑳「愛されたいと願うことは、罪ですか」
㉑嫉妬、鏡、縄
*目次
人:タイトル(お題)>>
Thimさん:小夜啼鳥と(お題③)>>181-182
むうさん:ビターチョコとコーヒー(お題⑲)>>183
心さん:君に贈る(お題⑭)>>184
黒狐さん:神の微笑みを、たらふく。(お題⑳)>>195
よもつかみ:燃えて灰になる(お題⑱)>>196
むうさん:宇宙人が1匹。(お題⑳)>>200
*第1回参加者まとめ
>>55
*第2回参加者まとめ
>>107
*第3回参加者まとめ
>>131
*第4回参加者まとめ
>>153
*第5回参加者まとめ
>>162
*第6回参加者まとめ
>>175
*第7回参加者まとめ
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Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.124 )
- 日時: 2020/08/14 01:52
- 名前: 神崎慎也 (ID: NqCnte/U)
4レスに渡って書きました。今回はきちんと完結させたつもりです。クッソ長いですが読んで感想を聞かせてください
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.125 )
- 日時: 2020/08/14 16:01
- 名前: 鈴乃リン◆U9PZuyjpOk (ID: cML/SVOY)
お題⑧ 『視力検査』
「やだな、視力検査…………」
「ほらほら、浮かない顔しないのっ!るあ!」
私の大嫌いな視力検査が、今日の三時間目に迫っていた。
横で励ましてくれる深雪は、メガネを掛けていない。
そういう私は、三つ編みに丸メガネ。
地味、ってよく言われる。
声も小さいし、いっつも顔が暗い。
でも深雪は、小学校の頃から、明るくて、皆の人気者。
私はいつも、そんな深雪に憧れている。
「はーい、視力検査始めるぞー。」
出席番号順に呼ばれて、黒いスプーンみたいな物を左目に当てていく。
私は苗字が『石川』だから、出席番号が早い。
前の子の検査が終り、遂に私の番になった。
「次、石川。」
ぶっきらぼうに名前を呼ばれ、私は立ち上がった。
私は先にメガネを掛けた時の視力を先に測り、その後メガネを外して測る。
メガネ外す時が、私は一番嫌い。
「じゃあ、メガネ外し………………」
先生の声が止まった。周りの皆がざわめき出す。
「あれが、石川さんなの……?」
「…………なんできょとんとしてるのよ……メガネ無しの方が、美少女なの、るあが視力悪すぎて鏡で自分の顔見えないから、知らないのに……」
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.126 )
- 日時: 2020/08/14 17:20
- 名前: Thim (ID: f93DK3Yc)
全然顔を出さなくてごめんなさい。課題が、課題が……!
「小夜啼鳥と」についても、お待たせしてしまってすみません。沢山コメント頂けて嬉しかったです。それを糧に頑張っています!もう暫く、もうしばらくお待ちください……!!
そして皆様のSSへの感想も投稿していきたいと思います。皆さんのように頭良さそうなやつじゃない、おバカな感じの感想です。
解釈違いを起こしていたらごめんなさい!その場合は「ここはそうじゃないですよーこうですよー」と教えていただきたいです!
サニ。さん
>>6
あっ、あっ。わかんないけどすき……。語彙力乏しくてごめんなさい。でも雰囲気がとても好きです。
きっと“私”は“あの子”の事を友達として好きなんだなと思いました。恋とかではなく、ただの友だちとして、一定の感情を持っていて、ちゃんと友達の事を好きだったのに、その友達は自分が好きなあの子じゃなくなってしまった?解釈が間違っているかもしれませんが、不穏な感じ、好きです。
>>9
タイトルのたをやめとは『手弱女』ですかね?お嬢様学校って舞台がもう好きです。そして王子と王女好きです。あー!いけませんいけません!禁断の花園ーー!好きぃぃ!!
ヨモツカミさん
>>10
そうです!オスカーさんです!オマージュ出来ていて良かったです~。必ず完成させて見せます!本当にお待たせしてしまってごめんなさいっ
>>25
はじめて悪い事をした普段は良い子のおショタと、恐らく彼より年上の自分のすべてが毒になってしまって、誰かと触れ合う事が出来ない浮世離れした美少女。おねショタやぁ!ひぇぇ!えっちやぁ!(褒めてます)
ノエルくんがんばれ!毒に耐性をつけるか、完全防護服でいくか、何でもいいけどどうか、どうかがんばれ!
12さん
>>11
天才作家のすずめ先輩と、『毒にも薬にもならない人』だった三葉さん。三葉さんはすずめさんと出会わなければ、すずめさんを遠くから見つめる一人のままだったら、三葉さんは自ら毒になろうとせず、すずめ先輩が言った通りのままの人生を歩んでいたのでは?と思いました。そう言った関係、好きです。
>>13
そうです!ネタバレと言っても大体あれの通りです。宇宙猫(笑)
ありがとうございますー!ナイチンゲールは恋に恋する少女といったイメージで書きました!雰囲気が好きと言って貰えて本当にうれしいです!
がんばります!
心さん
>>14
ちゃんと一人称書けているでしょうか!?それならよかったのですが、私も苦手なので書きながらがこれで大丈夫なんだろうかと悩んでいました(笑)
是非読んでみてください!
私も心さんのSS読みたかったんですが、元ネタの方を読んでからの方が良いのではと判断したので、宵はく(ですよね?)を読んでから、再度読みたいと思います!すみません!
>>24
納得できないよね。そんな説明されても……。ダメって言われる事をする背徳感とか、それを隠れてする少女たちの姿を想像するともう……ウッ!
向日葵の花言葉を調べて色々ありましたが、「憧れ」「あなただけを見つめる」「程よき恋愛」「悲哀」「偽りの愛」「高貴」「愛慕」。アサガオの花言葉を調べても「はかない恋」「短い愛」「貴方に私は絡みつく」「固い絆」「愛情の絆」って出てきて、花言葉はかけてないのかもしれないけど、勝手に想像してしまってウッ……ウッ!(絶命)
ひがさん
>>16
あっ、あっ。やみぶか幼女とその子をかくまっていた男の人。ひぇっ。雨のお陰で彼の言葉を聞くことはなかった。だから呪いにも鎖にも茨にもならなかったと言うけれど、むしろ聞こえなかったからこそ彼女を縛り付けるのでは?
恋ではない。愛のようで、お互いに大切に思っていたことは確かなのに、ちゃんとそれを彼女が理解できる前に無惨にも引き裂かれてしまった。何でこんなことになるのぉ。上司のあほー!ってなりました。好きです。
ずみさん
>>17
ぎゃあ、好きです!特に好きなのは「もしも今この手に、君の感覚が残っていたとしたら~」の部分です。愛憎、どちらの感情を自分が持っているのか分からない。わからなくなっているけれど、でも相手にそれほどの強い想いがあった事は確かだという事が分かって、凄く好きです。好きです!
海原ンティーヌ
>>18
雨じゃなくて飴。何が起こっているのかわかってない“俺”さんに対して、嬉しそうに「拾いに行こうぜ」というお友達。えー!可愛いー!男の子って感じで可愛くて好きです!
かるたさん
>>19
はじめまして!ありがとうございます。コメライの方も現在停止中ですが、また落ち着いたら再開しようと思っています!
ひゃ~、童話風にしようと心掛けていたのでそう言って頂けて嬉しいです!そうなんです!恋に狂っている感じを出したくて頑張りました!
元ネタも非常に素敵なのでぜひ読んでみてください!
>>31
あの日を思い出してからの、お迎え!そして小さい頃に泣きながらお兄ちゃんを探す妹さん、可愛い……。普段から喧嘩ばかりしていて、お互いに素直になれないけど、でも確かにある兄妹の絆。素敵です!
この兄妹はお互いに恋人ができたらお互いに恋人をめっちゃ審査していそう(偏見)。好き。
スノードロップさん
>>22
最初人の事ぼろくそに言ってきてなんだこらてめー!って感じでしたが、最後でお前だったのかー!ってなりました。未来の自分も昔、今の自分のように未来の自分が来てくれたのかな?今の自分も将来成長したら過去の自分の所に活を入れに行くのかな?ハリ○タかな?
個人的に人間から神様になるって部分が、日本の神話みたいで好きでした!
>>29
双子の兄弟(?)の名前に雨がはいっているから、雨を通してその兄弟を見ているのか。それとも本当に兄妹が雨になって慰めに来てくれたのか。ウッ、尊い兄弟!
文字数2000超えたので一旦投稿します。
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.127 )
- 日時: 2020/08/17 20:22
- 名前: ヨモツカミ (ID: cqzh0jfs)
>>124神崎慎也さん
絶望感とか、日常の辛さがよく伝わってくる描写で、ちょっと読んでてしんどかったです。ひどく追い詰められていて、精神疾患まで患って頑張っているのに報われない主人公。陰湿な会社でのいじめ。これが割とありえるから笑えないんですよね……。
内容は世にも奇妙な物語みたいな内容で楽しかったです。小説書くのは初めてと仰ってましたが普通に上手いなと思います。
そして最後は最愛の娘のために体を張って、なんとかやり直すことができた。メリーバッドエンド、なのかな。どうにも報われきらなくて辛いお話でしたがぶっちゃけ好きですね。大変面白かったです!
私は作品を読むときはストーリー性重視なのですが、描写も問題ないと思うので、磨けばめっちゃ上手くなると思いますよ。また上からはコメントをしてしまってすみません。でも応援しております。
>>126てぃむさん
続き楽しみにしてるので……ご自分のペースで大丈夫なので、まってますね。
毒のやつ感想ありがとうございます。おねショタは正義ですよふへへ。
私は悲しい結末が好きなので、二人がいい感じの関係になれることはないんじゃないかって思ってます。孤独な毒の娘と、彼女にわだかまりを残したままのノエル。そんな二人もまたいいんじゃないかって。
ひっそり死ぬ娘と、やがて彼女を忘れて大人になるノエル。それが私の理想だったり。
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.128 )
- 日時: 2020/08/25 17:34
- 名前: ヨモツカミ (ID: iYPK3NeA)
朱夏、残響はまだここに
④寂しい夏
大人になって、夏が来るたびに、またあの日々を思い出してしまうのだ。
友人たちに囲まれながら、僕は小さく笑って。そうして静かに語りだした。大切な宝物を、小さな箱に収めるときのように、丁寧に。
小学生の頃。僕の夏休みは田舎のおばあちゃん家で過ごすものだった。忙しい両親には普通の日も夏休みも関係なかったのだ。親の帰ってこない家で一人寂しく過ごすよりは、田舎の自然に囲まれたお婆ちゃんの元にいた方がいい。毎年そうしてきたから僕にとってはそういう夏休みが当たり前で、東京で両親と過ごせないことについては特に何も感じなかった。
そうして、毎年共に夏休みを過ごす友達が、いたのだ。
「キョウ、また会えたね! 遊ぼうぜ!」
「誰だ、お前」
怪訝そうな顔でそう言う彼を見ては、胸が締め付けられるような思いをする。だけど僕は、彼の前ではずっと笑顔でいたかったのだ。
「アサだよ。この夏もよろしくね」
キョウは目を瞬かせていたが、まあいいか、というように笑って、僕の手を握る。
毎年、僕らの夏はこうして始まるのだ。
まずは川で遊んだ。冷たい水に足を突っ込んで、泳いでいる小魚を追いかけ回した。キョウは服が濡れるのを嫌がっていたけれど、結局最後は二人とも全身水が滴るほどビショビショになってしまうまで遊び尽くすのだ。
捕まえた小さな魚の入ったバケツを覗いて、これはなんの魚だろうとふと疑問に思う。キョウが、ヤマメだよと教えてくれた。
「ほら、この側面の水玉みたいな模様が特徴的だろ。ちなみに、ヤマメは食べると美味しいよ」
「ホント? じゃあコイツ食べようよ」
「こんなちっこいの駄目だよ、こいつがもっと大きくなったら食べるんだ。だから、これは逃がす」
キョウに言われた通りにバケツの中身を川に流した。ヤマメが泳いで見えなくなるまで二人で見送る。
「……明日も遊ぼうね、キョウ」
思い出をできるだけ沢山作らないと。そんな思いから、少し焦りながら彼を誘う。キョウは笑って頷いていた。何も知らないから、そんなふうに笑えるのだ。同じように笑えないことに、チクリと胸がいたんだ。
今度は神社で虫を取った。お婆ちゃんの家から借りてきた虫取り網と虫かごを持って、木の幹にいるセミを乱獲する。キョウはセミを気持ち悪がって触れなかったので、彼の顔に虫を近付けては本気で怒らせたりなんてしてみて。
口を聞いてくれなくなったキョウを置いて、近くの駄菓子屋に走って行って、ラムネを二本買う。よく冷えたそれを持ってキョウの元に戻ると、彼は目を丸くして、それから呆れたように笑うのだ。
「許してやる」
「それは良かった」
彼がラムネを大好きなことは知っていた。中身のビー玉を集めるのが楽しいらしい。神社のよくわからない祠のそば、木陰で涼しい石畳に並んで座り込んで、二人ラムネの瓶を傾ける。冷たくて、シュワシュワした甘味が口の中を満たしていく。
「はー、やっぱラムネって最高だなあ」
瓶を握るキョウの笑顔が眩しくて、僕は少し目を細めてそれを見ていた。また、瓶を上に傾けて中身を煽る。青く透き通った瓶の中でビー玉がカラン、と音を立てた。去年も同じように神社の木陰でラムネを飲んだ。だから去年と同じように、瓶の中のビー玉はキョウにあげることにする。差し出された硝子玉を見て、彼がはしゃぐのが嬉しかった。
夕方になると、キョウは燃える空をビー玉越しに覗いた。
「すっげえ。真っ赤だ。アサも見てみろよ」
渡されたビー玉の中を覗くと、雲も空も、沈んでいく太陽に焼かれて茜に色付いていた。わあ、と思わず声が漏れる。遠い街に沈んでいく光が、こんなにも綺麗なんだ。
「そうだ、アサ。夕陽が赤い理由って知ってるか」
キョウが得意げな顔をしながら、不意にそんなことを言い出した。小学生の僕は、知らないことが沢山ある。でも、その理由は知っていた。知っていたのに、キョウの口からそれを聞きたくて、知らないよと答える。そうしたら、彼が嬉しそうに教えてくれるから。
「沢山ある光の中で、赤い光が一番遠くまで届くんだ。だから、夕陽は赤く見える」
「じゃあ、僕にとっての夕陽はキョウだね」
「……なんだそれ」
怪訝そうな顔をするキョウに、僕はただ笑いかける。悲しくて少し歪んだ笑顔になってしまったけれど。なんでもない、と告げた声が掠れた。
「もう帰る時間だ。また明日遊ぼう」
お互いに手を振って、夕焼けの中、別々の方向へ歩いていく。そういえばキョウはどこに住んでいるのだろう。一瞬足を止めて、彼の後ろ姿を見る。
でも、なんとなく怖い感じがしたから僕は走っておばあちゃんの家に帰った。
次に遊ぶときは家に誘って一緒に宿題をした。おばあちゃんが入れてくれた麦茶を飲み干して、窓から吹き付ける風で鳴る風鈴の音を聞く。
算数をしていたキョウが、問題につまずいているので、僕が教えてあげた。去年は確か、キョウが教えてくれていたのにな、なんて。僕がわからない問題を教えてくれる人がいなくなって、自力で解くしかなくなっているのは、中々辛いことだった。
二時間くらいは真面目に宿題に取り組んでいたと思う。少し冷たい風と風鈴の音。それからオレンジ色の光が眩しくて、僕は目を覚ます。
「……あれ」
どうやら僕らはいつの間にか眠っていたらしい。麦茶の中に浮かんでいた氷もすっかり溶けて、コップの中身を飲み干してみれば、気温と同じくらいに温まっていて、全然美味しくなかった。
「キョウ、起きて」
彼の体を揺すると、だるそうに体を起こして、目を擦る。全然宿題進まなかったねと笑いかけると、彼は算数のプリントを僕の顔の前に突きつけてきた。……ほとんど終わっている。
「お前が飽きて寝ちゃったあと、俺は真面目にやってたんだよ」
「うわ、ひどーい。なんで起こしてくれなかったの!」
「俺も眠くなったから、一緒に寝ちゃおうと思って」
へへん、といたずらっぽく笑う顔をみて、僕は頬を膨らます。まあいいか。宿題は程々に。僕ら小学生は遊ぶことが仕事だ。おばあちゃんもそう言っていた。本気で宿題に行き詰まったら、大人を頼っていいよと。僕に対して甘いおばあちゃんにそう言われていたのだから、素直に甘えてしまうだろう。
「もう遅いから、帰るよ」
キョウが荷物をまとめて去っていく後ろ姿を見送った。また明日ね、と声を掛け合って。本当に明日も会える確証なんかないけれど、まだ夏休みは終わらないから。
そうやって、来る日も来る日も遊んだ。
一緒に夜の森に入って捕まえたカブトムシ。相撲をさせて、どっちのほうが強いかなんて競い合った。
おばあちゃんの畑の手伝いをした帰り、畑で取った大きなスイカに、二人で夢中で齧り付いた。
ツチノコを探して山を駆け回った日もあった。見つかったのは全部普通の蛇だったけど、僕もキョウも、ツチノコの存在を信じて疑わなかったし、その日は見つからなかっただけだと言い聞かせた。
海に行った日もあった。浜辺で拾った貝殻は、夏休みの工作に使うことにして。僕はその日初めてナマコを触ったのだけど、あれは気持ち悪かったな、なんて。
家に帰れば日めくりカレンダーを一枚、また一枚と剝がしてゆく。明日を心待ちにしながら宿題の絵日記を書いて、でも夏が着実に終わりを迎えていくことに、確かな不安を覚えた。
夕暮れの茜に混じって、赤トンボが飛び始める頃。遠くの山からはヒグラシの鳴き声が物淋しげに響き出す。夏休みもあと少し。
近所のヒマワリ畑を観たときにハッとした。あの大輪は、頭が成長しすぎたせいなのか、みんな病気の患者みたいに項垂れて萎れている。僕は、何故かこの光景をよく覚えていた。
「夕方は結構涼しくなってきたよな」
キョウが何気なく呟く。夏がもうすぐ終わるのだ。
「アサがここにいれるのって夏休みの間だけなんだろ。ちょっと寂しくなるなあ」
キョウは萎れたヒマワリを見上げながら、そっと口にした。僕だって、寂しくてたまらない。だけどもう、そんなことを言ったって仕方がないのを知っていた。
鼻のあたりがツンとして、熱いものが込み上げて来る。僕だって、寂しいさ。言えない。言えないよ。
「おいアサ、聞いてるか」
「聞いてるよ、キョウより僕のほうがずっと辛いんだから、当たり前じゃんか!」
急に声を張り上げたから、キョウはちょっと目を丸くしていた。驚かせるつもりはなかったのだけど。
「ごめん……。もう遅いから、帰ろうか。また明日」
「おー、また明日な」
きっと、あと数えるほどしか言えないお別れに、僕はとうとう泣いていた。キョウに見られたくないから、顔を隠して走って帰る。
──夏が終わる頃。何故かこの友達は消えてしまうのだ。
毎年出会うのに、次の夏が来る頃にはキョウはそれを忘れている。彼は同じ夏に取り残されて、何度も同じ姿で僕の前に現れる。
「誰お前」って。毎年言われて、僕は何度でも君の名前を呼ぶのだ。
とうとう、夏の終わりが来る。キョウが消えることが、夏の終わりだった。来年も遊ぼうねって言って、でも来年の君は僕を覚えていないのだ。
八月三十日の夕暮れ。枯れたヒマワリを背景に、キョウの体が透けている。キョウ自身も、酷く驚いた顔をしていた。僕はこれを見るのは三回目。太陽が完全に沈む頃、その体は完全に透過して、最初から彼は存在しなかったみたいに、消えていなくなるのだ。
「俺……どうなっちゃうんだろう」
不安そうにこちらを見るキョウの手を掴む。まだ触れた。そのまま抱きしめる。夕暮れでもまだ熱の篭った空気の中、密着した肌は汗でベタついている。まだ。まだその感触がある。このまま離さなせれば。そんなことは去年か一昨年にもう試したこと。どんなに消えないでくれと泣き叫んでも、キョウはいなくなる。
「隠しててごめんね、僕、キョウが消えちゃうこと知っていた。でも、怖くて言えなかった、ごめんね」
「消える……俺、消えるって。どうすれば……」
「わかんない。ごめんね」
次から次へと溢れる涙を、片手で拭って。抱きしめたまま、彼を離しはしなかった。
また来年、沢山思い出を作ればいい。そう思うのに、胸が締め付けられる。お別れなんてしたくない。
息が詰まるほど寂しい。嫌だ。どうして毎年、違う夏を繰り返すのに、キョウは夏に取り残されるの。君だけ、夏が連れ去ってしまうの。
どうして。
黄金の光が見てる。陽の沈む空はなんだか寂しい。キョウと遊べる時間が終わって、少しずつ、確実に夏も終わろうとするからだ。
「……アサ。俺、この夏楽しかったよ」
「うん」
「初めはさ、誰だかわかんないお前が話しかけてきて、わけわかんないまま一緒に遊んでさ。でもすげー楽しくて」
「うん」
「消えるなんて、嘘みたい。明日もたま、アサに会えるって思ってた」
「……僕もだよ」
少しずつ、触っている感触がなくなっていく。
「行かないで」
「俺も行きたくないけど。もう、お別れだ」
「キョウ!」
「また。また来年な」
そんなことを言って。キョウは次の年僕のことを忘れるくせに。
太陽が山に沈み切る。瞬間、手の中にあった温もりも、跡かたもなく消えた。
僕はその場に崩れ落ちて、声を上げて泣いた。それを枯れたヒマワリが他人事みたいに見ている。
夏が、終わったのだ。
小学校を卒業して、中学に上がった頃に、おばあちゃんが亡くなった。必然的に、僕の夏休みは東京で過ごすものとなって、キョウには会えなくなった。だから少しずつ、彼のことを忘れていった気でいたのに。
大人になって、生活も安定してきた頃。急に思い立って、小学校の頃遊んでいたおばあちゃんのいた街に訪れた。森や川、山。あの頃駆け回った自然がそのまま残っていて。夏の噎せ返るような暑さもまた、変わらないなと辟易していたとき。
通りすがった神社の前で、若い男を見かけた。何故かお互いに視線が合う。暑さに参って、疲れた顔をした、僕よりもいくつも年下に見える男。
そいつが不意に目をパっと輝かせて、僕の名前を呼んだ。
アサ、久しぶりって。
「……キョウ?」
また、僕の夏は始まろうとしていた。
***
8月が終わろうとしています。
今回の投稿なんか少なかったな……でも9月になれば新しいお題が追加されるので、皆さんよろしくおねがいします。
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.129 )
- 日時: 2020/08/31 20:49
- 名前: 12 (ID: 26j1CGr.)
*>>34の続きです。二ヶ月ぶりの投稿で正直投稿すること自体を躊躇いましたが……図々しくも投稿しました。しかもまだ終わってないです……本当に、本当にアレなんですけど……とりあえず終わるまでは投稿します。次には終わります……終わる、はずです……
#
ニンゲンになりたかった。
#
ぼくはよくべっどのうえにいる。
げんきなときは、みんなといっしょにじゅぎょうをうけれる。
だけど、たいいくのじゅぎょうのときとか、おひるやすみのじかんとかは、そとにでれない。
ほんとは、あそびたいんだけど、くるしくなっちゃうから、でれない。
まえ、いっしょにあそぼ、っていわれたときも、げんきだったから、だいじょうぶだとおもったんだけど、すぐに、くるしくなった。
いきがくるしくて、あたまがいたくて、しんじゃいそうだった。
あそぼって、いってくれた、あのこは、あとでせんせいにおこられた。あのこは、わるくないのに。
……もう、ぼくのせいで、あのこがおこられちゃうのは、いやだから、もうあそばないようにしようとおもう。
ごめんね、ってあのこがあやまった。
ぼくもごめんね、ってあやまったら、あのこはないてた。
ぼくは、きっとわるいこだ。
ぼくといっしょにいたら、あのこも、あそべないのに、ずっといっしょにいてほしいなんて、おもってる。
こんなぼくでも、なかよくしてくれる?ってあのこにきいた。
そんなこといわないで、ってあのこはまたないた。
どんなことがあってもおれたちはともだちだよ、ってあのこは、そうぼくにいった。
#
「僕って何のために生きてるのかな」
ふと、そんな言葉が口に出た中学二年の初夏。
大して考えることもなく自然に溢れた言葉だった。誰かに伝えたかったわけでもない、それはまさしく独り言だった。
「……冗談でもそんなこと言うなよ」
読み進めていた本をパタリと閉じて、君は僕の方を責めるように見た。明らかに怒っていた。普段感情を大っぴらに出すことのない君が、こんな風にあからさまに怒ることはとても珍しいことで、僕を怒ることなんて今までなくて、刺すような視線で、胸のあたりがちくりと痛くなった。
温厚な君が怒るのはいつだって僕のためだった。そんなこと、分かっていた。分かっていたはずだった。すぐに謝ろうと思った。ただ、同時に、どうして怒られなければいけないのだろう、そんな風に思っている自分がいた。
あの頃、僕はまだまだガキだった。
君と出会ってから何度も、僕は理不尽に君を困らせ、八つ当たりのような言動をした。ある時、君が僕以外の誰かと一緒に遊んだという約束を聞いた日、僕は腹が立って、僕以外と遊ばないでと、君に怒鳴った。縁を切られても仕方なかったと思うのに、君は、分かったと、優しく微笑んで、その後本当に僕以外と誰とも遊ばなくなってしまった。
僕以外の誰かと過ごす君の時間を根こそぎ奪ってしまいたいと願っていた。それと同時に、そんなことを願う僕なんかいっそ見捨ててほしいと思った。
恐ろしいことに、君はこんな僕の理不尽な願い事の全てを笑顔で受け入れてしまった。だんだんと孤独になっていく君を見ながら安心と恐怖を覚えた。アンビバレンスな自分の思考回路にまた苛ついた。
相反する感情を抱えながら、結局、僕は君の優しさ甘え続けた。それは、今回も同じで、僕はまた君の優しさに卑しくも期待したのだった。君に初めて怒られて、今度こそ謝るべきだったのに、僕はいつものように理不尽を振りかざした。負け犬ほどよく吠えるとは言ったもので、僕はまさしく、その通りだった。つまるところ僕は君に初めて怒られたのがどうしようもなく怖かったのだ。
けれども、口に出たのは彼への謝罪ではなく、むしろ彼の気持ちを逆撫でするようなこんな言葉だった。
「……なんで?別にそんな目くじら立てるようなことじゃないでしょ。何怒ってんの?」
彼の目尻がぴくりと動いた。
彼のそんな様子を見て、あろうことか僕はこう言葉を続けた。
「こんな身体だ、君も知ってるよね?いつ死ぬか分からない。生きていたって人並みにさえ生きれない。健康な君には分からないよね、こんな僕の気持ち」
こんなこと、言うつもりなんてなかった。本当だ。けれども、僕の口は驚くほど自然にこんな言葉をすらすらと吐き出した。バクバクと心臓が大きく鼓動する。汗がたらりとつたってるのが分かる。気を抜けば震えだしてしまいそうだった。君の目が見れなかった。怖くて怖くて仕方ないのに、それでも僕の口は止まらなかった。もう止まり方が分からなかった。
「……今だって心の中で僕を馬鹿にしてるんだろ?」
そんなこと思ってないこと、僕だって分からないはずがなかったのに。
「……ずっと、ずっと面倒くさい、って思ってるんでしょ?」
分からないはずがなかったのに。
「嫌いだ、大嫌いだ。君なんて」
そこで初めて顔を上げた、こんな言葉を吐いてもなお僕は君にすがっていた。君なら、優しい君なら、分かってくれる。僕の本当の気持ち。嫌いなんて、嘘だ。大嫌いだなんて、そんなわけないんだ。分かって、分かって、分かってほしい。
君の気持ちなんて何も分かってないまま、僕は、そう思っていた。見苦しくも、そう思っていた。
「……そうか」
僕の言葉に、君は笑顔でそう言うだけだった。
そう言って、君はまた本に目線を戻した。
大嫌いだ、って言ったのに。
酷いことを、言ったのに。
君はまた笑った。笑うだけだった。
君のことが全く分からなくなった、夏の始まりの日だった。
#
身体全身に鈍い痛みを感じながら、俺は"いつものように"、俺を抱きしめながら謝罪の言葉を繰り返す彼女の温もりを感じていた。
彼女はまるで小動物か何かのように震えている。震えながら、俺の身体をぎゅっと握り締めて、泣いている。
俺はそんな彼女が愛しかった。
殴られても、蹴られても、どんな罵詈雑言を吐かれても、それでも嫌いになることなんてできない。それどころか愛しさは増すばかりだった。彼女には俺しかいない。こんな形でしか彼女は此処に在り続けることができないのだ。歪で、不器用で、醜悪なアイ。それが彼女で、俺で、俺たちだった。
この薄汚れた小さな部屋の中で、俺達は、最低に生きて野垂れ死ぬ。それが最上の幸せだ。
だから、俺は彼女に今日もこう言った。泣き続ける彼女を慰めたくて、歌うようにこう言った。
大丈夫だよ母さん、と。
#
彼を初めて見たとき、この世の何よりも美しいものだと思った。それと同時に、そんな彼に俺は触れてはいけないと思った。
けれども、身体と心は合致せず気がつけば、俺は彼に話しかけていた。一緒に遊ぼう、と。
突然現れた見知らぬ少年に彼は一瞬驚いて、でもすぐに満面の笑みを浮かべ、元気な声でうんと頷いた。美しい彼と一緒に遊ぶことができると、俺の心は弾んだ。触れてはいけないと警鐘を鳴らしていた理性は、本能で塗り潰され、何処へと消えていた。
それが良くなかった。
俺と一緒に元気に外へ飛び出した彼は、数分も経たない内に、その場で踞り、動けなくなった。覗き込んだ彼の顔は真っ青で、息が荒くて、ボロボロと涙を流していて、普通の状態ではないことは知識のない俺でも直ぐに分かった。
頭が真っ白になりそうになりながら、俺は走って近くの大人を呼びに行った。何も考えてはいなかった。彼をただ助けたくて、俺は必死に走った。
まともに説明なんて出来ていなかったと思うが、俺の尋常ではない様子を見て、大人はすぐに異常事態が起きたことを察して、彼の元へと駆けつけてくれた。
救急車に乗せられていく彼を、俺はぼんやりと見ていた。自然と涙が溢れた。不安で不安で仕方なかった。心臓がばくばくと鳴って、手は緊張で冷え切っていた。
ごめんなさい、ごめんなさいと何度も心の中で呟いた。
やはり彼は俺なんかが触ってはいけなかったのだ。
罪悪感がじわじわと心を締め付ける。責め立てる大人達の声を聞きながら、俺はもう一度自らの欲望に枷をした。
それなのに。
「ごめんね、ごめんね……ぼくといたら、きみは、またおこられちゃうかもなのに」
君の声に、表情に、俺はどうしても逆らえなくて。
「それでもなかよくしてほしい……っておもうんだ……おかしいよね、こんなの、おかしいよね……」
嬉しさと悲しさと名状し難い感情がぐちゃぐちゃに混ざり合って、涙になって、俺の瞳から溢れた。
俺は罪を犯した。間違っていると分かっていたのに、それでも自分の衝動を抑えることができなかった。
「そんなこといわないで。……どんなことがあっても、おれたちはともだちだよ」
気がつけば、そう口にしていた。
それは故意に起こした罪だった。
そうして、俺達は友達になって、俺の長い長い贖罪の日々は始まった。
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.130 )
- 日時: 2020/08/31 21:49
- 名前: 雪ちゃん◆EEpoFj44l. (ID: oYKf6i0Q)
お題:【海洋生物】
タイトル「地上の水族館」
海の中を、夏祭りに置き換えてみようと思う。
丁度、近くを通っていく子供たちの浴衣には金魚がいる。花火の一時間前に差し掛かって、辺りは海の中のごとく暗くなっていた。立ち並ぶ店の明かりが、通りを深海のチョウチンアンコウのようにわっと賑わせ、照らしている。
私たちは魚だった。
私は人混みの中でもがいた。ぬるい水の流れが、身体全体に伝わってくる。
光に誘われ、つどい、騒ぎ、何を求めているのかわからないままに泳がされていく。
色とりどりの女を捕食しようと、虎視眈々と見つめ、狙いを定めるものもいる。肩を抱き、爽やかな笑顔で惑わせ、海の底へ引っ張っていこうとする。
好青年に擬態してもしきれない、鋭い目つきをしている。喰って、喰われて、海の中と同じことが行われている。
「楽しいね」
ふいに、隣を歩く小学校からの友人が言う。私は現実世界に連れ戻され、頷くと、彼女ははぐれないように私の手を引っ張ってくれる。
白い指の銀色の指輪が、魚の鱗みたいにきらっと光って、この混雑を彼女は海の生き物みたいに軽快に駆け巡る。進んでいく。彼女はいつのまにか髪を染めて、肌を出すようになった。誰にも負けず劣らず派手な服を着ていた。
毎年来ている夏祭りだが、年々熱狂が増して思える。
昔の頃を思い出してみる。昔は、二人でよく神輿をかつがされて、スーパーボール掬いが好きで、一年に一度の行事にいつも夢中だった。夏祭りはそういう場なんだ、大人たちも遊べる日だからはしゃいでいるんだと無邪気に思い込んでいた。
気づけば私も愛を求めて、綺麗に髪を纏めて、薄く唇に紅を引いていた。こっそり、ナチュラルに見える化粧もするようになった。今着ているのは浴衣だけれど、それは派手すぎない服装を好む男も多いと知ったからだった。
進化している。精一杯美しく見えるようにグッピーの尾鰭を着けて、賑やかな輪に加わる。そして、ただ楽しかっただけの夏祭りは出逢いの場と変わっていく。
昔の夏祭り。幼なじみと親と一緒に来ていた頃。昔は、目白押しの楽しいことを全てやり尽くすことが目的だった。夜の街を歩いてみたかった。ベビーカステラをたくさんお土産に買って行った。せっかくとった金魚を、飼えないからと名残惜しく店に返していた。
今やったって、金魚すくいは楽しいかもしれない。でも違う。私たちは今日、一夜だけの恋をしに、浮遊するのだ。
無防備にたゆたって、誰か、男の目に留まって、そのまま誘われて行く。その先に快楽があるのかもわからない。そんなことをして、何か有意義なものを生むとも限らない。こんな小さな幸福、いや、幸福かもわからない……こんなもの、すぐに、泡となって消えてしまうと分かっている。いくつもそんな経験が重なって、今日のことなど、きっと時間が経てば覚えていないに違いない。
何のために私は、続かないと知っている恋を求めてしまうのか。快楽のため? 彼から呟かれる、建前と分かっている甘い言葉で安心したいから? いいや。きっと違う。強いて言うなら、性なのかもしれない。
……目と目が合った男を連れて歩く。友人とは、ここでお別れだ。彼は、男の人らしくない少し高い声で「浴衣が似合ってる」と褒めてくれた。清楚系の子がタイプなんだという。
彼が細い指を絡ませてくる。いきなり手を取るわけじゃない。偶然手が触れただけともとれる、やけに控えめなやり方で、私と一緒だ、と、鏡を見ているように切ない感情が心を貫いた。拒絶されないとはわかっていても、いきなり手を握るのが怖いんだ。彼もそういう人なんだ。
私たちはどちらからともなく、手を繋ぎ、肩を寄せ合った。私たちは上擦った声で話した。やはり似たもの同士、私たちは引きつけられ合ってしまうんだ。
目立つ服を着て誘惑するまでもなく、互いの心の奥底の欲望が、手にとるようにわかってしまうんだ。緊張しているのか、彼の手は汗に濡れていた。じっとりした手から痛いくらいに彼の不器用さが伝わってきて、ああ私と同じだ、と再認識させられる。臆病なのに、寂しくて仕方ないんだ。彼も。
彼に手を引かれていく。私たちは人混みから次第に離れていき、なんとなく、彼がどこに行こうとしているのかわかった。背が高い人だった。
「花火だ」
誰かの鶴の一声だった。地を揺るがすような大きな音がして、深海に一筋、花火が光っている。誰もがハッと立ち止まった。次々と咲いては散っている。よほど近くで打ち上げているのか、煙の香りがした気がする。光が空を泳いでいる。水族館の魚たちのようにたくさんの人がいるけれど、見上げる、花火に照らされる私たちの横顔は、みな美しい。みな同じように見惚れ、強く惹きつけられている。
夏祭りが海の中なら、花火は一体なんだろうか。脱ぐことになるであろう浴衣の袖の中を、生温い風が吹き抜けていく。上を見上げて、耳の横のピアスが切なく揺れた。
はじめまして。初参加させていただきます。名前もご存知ないかもしれませんが…笑
4,5年カキコにいるのにお話書かない状態もどうかなあ…と思ったので、大昔のリハビリとして書かせていただきました。一時期世に出さずに書いたりしていたのですが、その頃殴り書きしていた名残か、なんともまとまりのない文章になってしまいました。申し訳ないです。
昔は夏祭りも好きだったのですが、最近どうも息苦しくて、それが丁度海の中みたいだと思っています。後は華やかな女の子達の集団が、綺麗な魚の群れに見えたりとか。(自分はイメージ的には、大体チョウチョウウオという魚に見えます)それを投影した感じです。あと夏なので軽い恋愛要素も入れたつもり、です。因みにこの前の花火大会は、来賓席で一人で座って見てました泣 同性でも、一緒に来てくれる友達のいる主人公が羨ましいなぁとも思えてきちゃいます。こんな駄文ですが、読んで頂ければ幸いです。
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.131 )
- 日時: 2020/09/01 15:05
- 名前: ヨモツカミ (ID: tmrndZ0M)
*第3回参加者まとめ
心さん:記憶の果てに沈む。(お題⑧)>>109
神崎慎也さん:深淵の街(お題⑦)>>114
ヨモツカミ:お前となら生きられる(お題⑨)>>118
むうさん:サガシモノ(お題⑧)>>119
神崎慎也さん:幸せの景色(お題⑧)>>120-123
鈴乃リンさん:視力検査(お題⑧)>>125
ヨモツカミ:朱夏、残響はまだここに(お題④)>>128
12さん:(お題③)>>34の続き>>129
雪ちゃんさん:地上の水族館(お題⑦)>>130
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.132 )
- 日時: 2020/09/01 15:14
- 名前: ヨモツカミ (ID: tmrndZ0M)
9月になりました。皆さんお元気ですか!
8月はやや参加者が少なかったってか、私が個人的に読みたかったお題⑨を書いてくださった方がいなくて……是非9月でもお題⑨挑戦してみてください。私は血みどろな話が読みたい……。
さて、みんつく4回目のお題を発表いたします。
⑩逃げる
⑪「明日の月は綺麗でしょうね」
⑫彼岸花、神社、夕暮れ
是非気軽に参加してみてくださいね。
Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.133 )
- 日時: 2020/09/06 05:39
- 名前: マシュ&マロ (ID: DoGB3rKw)
お題(9)【狂気、激情、刃】
【青春ヤンデリズム】
狂気とは一種の表情である、人間の持つ激情という側面から誰しもが零れうる感情。
そして人間とは狂った生き物である、理性というものは狂気という人間の真実を隠すための単なる仮面と言える......。しかしながら仮にその仮面が外れたのならば人は、迷うことなく花束ではなく刃を手に取るだろう。
とある日、とある学校、とある少女。名は刃鳥ノア(はとり・ノア)、腰辺りまで伸びる黒髪を三編みで後ろへと纏め、自身の机に座り、愛用の黒縁メガネを掛け、お気に入りの本を読んでいる彼女の視線は突如として聞こえてくる教室のドアの開く音に奪われた。
入ってきたのは年若な男性教諭、名を花大喜(はな・たいき)という。爽やかな顔立ちに持ち前の明るさで生徒達からの信頼が厚い生徒想いな先生である。
しかし、今日は普段からは想像もつかない厳かな雰囲気のまま黒板の前に置かれた教卓へと歩み寄り、こう呟いた。
「皆、席に着いているな? 朝っぱらから悪いがお前達は今年で中学3年生、つまりは“受験生”だ」
そのワードに教室中が瞬くにピリつくのが手に取るように分かった、“ある一人”を除いての話だが......。
(あぁ、先生ぇ.....。今日も素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!素敵!)
そう心の中で呟く者はノア、何を隠そう彼女である。そして彼女からの先生へ向けられる視線は生徒としての尊敬の眼差しとは一味違う、異様なものであり、彼女はとろけたようにうっとりとした表情を浮かべているのであった。
「何度も言うようだが高校受験まであと半年を切った、だから今日は先生からお前達にアドバイスがある」
教室中がザワつく中、ノアだけは一言も逃さまいと机が倒れないかと心配になる程に前のめりな姿勢で先生の言葉に耳を傾けている。
「いいか、お前達。俺からの受験に向けてのアドバイスはただ一つ・・・・・・」
“この教室にいる奴ら全員が、自分の敵だ!!”
その言葉を聞いた瞬間、突然ノアは自身の神経が逆立つような感覚に囚われた。そして目を大きく見開くと周りを舐めるようにゆっくりと一人一人の顔を覚えていくような仕草を見せた。
「と、言ってもあくまで敵というのは先生の冗談なんだがな」
周囲からクスリと笑いが漏れる中、ただ一人ノアだけがそれを聞いてはいなかった。
(敵!敵!、あっちにも!?、こっちにも敵がいる!)
別に焦ったり恐怖したりしているのではない、ただ順番に迷っているのだ。
そう、敵をどう排除していくかという順番に・・・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時間は経ち学校が終わった、すると急いで教室を出ようとするノアの耳元にとある少女の声が聞こえてくる。
「ノアちゃん!、一緒に帰ろう!」
彼女の名前は菅本椿(すがもと・つばき)、ノアの小学校時代からの友人で少し天然気味であり、頭にある左右のおさげを揺らしながらノアへと走り寄ってくる。
しかし______。
「・・・・・・すみませんが、貴女は敵のため一緒には帰れません」
そうノアが言うとクスクスと笑う椿、思わず首をかしげるノアに椿はこう言った。
「それは先生の冗談であって本当ではない・・・・・・って、ノアちゃん!?」
ノアは椿の事などお構いなく自身の机へと戻り何かを探していた、そして机の中から安物のハサミを取り出すとそれを自身の鞄の中へと入れた。
「ノアちゃん?、何でハサミなんか入れてるの?」
「・・・・・・・・・・・・、そんなのは人の勝手です。さあ今すぐ一緒に帰りましょう」
「あっ!、待ってよノアちゃん~!」
こうして急に一緒に帰ろうと言い出したノアの先行く背を追って仕方なく椿は駆け出したのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
椿と共に歩く帰り道、ノアは何かをブツブツと呟いており、椿はそれに耐えきれずに思わずノアに声を掛けた。
「ねぇノアちゃん、どこか具合悪い?」
「・・・・・・??、いいえ.....それよりも私に着いて来てくれないでしょうか?、見せたいものがあるんです」
「うん!、良いよッ!」
二言返事でそう返す椿の表情は意気陽々としていたが、それとは打って代わりノアの方は何処かやけに冷めた表情であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここは帰り道から少し離れた近く森の中、そんな場所にある獣道を二人は進んでいる。
「うえ~、蚊に凄くいっはをい刺されちゃったよノアちゃん」
「・・・・・・ここ辺りまで来ればもう充分か......」
そんな言葉に眉をひそめてみせた椿であったが、そんな事よりも今から何が見られるのかという好奇心の方が勝ったようである。
「ねぇノアちゃん!、今から何が見れるの!?」
「・・・・・・貴女は教室で何故ハサミを鞄に入れているのかと聞きましたよね?」
唐突な質問返し、椿は一瞬訳が分からなくなりそうであったが取り合えず質問への答えを返した。
「う、うん......言ったけど」
「なら良かった、今からその答えが分かるので丁度良かったです」
「・・・・・・・えっ??」
手を後ろで構えているノア、そしてその様子に一緒の悪寒を感じてしまい喉から絞り出すようにこう呟いた。
「ノア、ちゃん?」
「ヤッアァアアァアッ!!」
ノアのそんな大声を発したと同時、椿は首に違和感を感じだ。
「何?、この生暖かいの?」
右手で首元に触れ、それを自身の肉眼で確認してみるとそれは真っ赤な鮮血であった。
「えっ?......ええぇえぇぇ~~~!!?」
椿を襲ったのは痛みよりも先にパニックであった、そして何よりも痛い!、椿は腰が抜けて地面に自身の体が崩れ落ちながらも無我夢中で逃げるように地べたを這いつくばり逃亡を図るも、ノアがその背に股がると誰かに叫び声を聞きつけられないよう暴れる椿の口元を押さえ、その小さな背中を左手に強く握られたハサミで滅多刺しにしていく。
「€▼&*?!§♭!#↑ッツ!!?」
声にならない叫び声、それに口元を塞がれており何を言っているのかももはや判別はできない。
すると最後の抵抗を見せる椿、ジタバタと暴れるその手足がノアの頬に軽く当たり、彼女自身を怒らせた。
「この!、静かに......しなさいッ!」
今の一撃で喉元が切り裂かれた、あとはもう1分もしない内に椿は死に、忌々しいこの叫び声もじきに収まる事であろう。
「ふぅ......さて、殺すという過程まではクリア」
快感というものは特になく、ノアの脳裏に浮かんだのは夏休みの宿題を終わらしたかのような達成感であった。
「んー、証拠となるものは血の付着したハサミと制服の2つ」
ノアは血塗れたハサミを鞄に仕舞う代わりに中から今日使った体育着を取り出し、揉み合いの末に多量の血を浴びてしまった自らの制服を脱ぎ手に持っている体育着へと着替えた。
「さて死体に関しては下手に触るよりは放置、証拠と言えば血の付着したハサミと制服の2つだけ。ハサミは処分として制服に関してはどうにか洗い落とさないといけないわね、流石に警察も中学生の制服を調べまではしない筈だし・・・・・・」
仮に椿本人に私の体液が付着していたとしても言い訳はいくらでも考えれば良い、あとは血を落とす方法だけどネットでは警察の情報網のせいで使えない、となるとそこは本とかで詳しくは調べるしかないがノア自身にそこまで影響はない。
「あとはどう私以外の他者の犯行に見せるかね、死体の様子からしても他殺なのは一目でバレる訳だから......」
変態の仕業にせよ、あれだけの状態ならば大人が相手でも体液の一滴ぐらいは見つかってもおかしくはない、なのにあるのはノアの体液だけとなると一旦森の木陰に隠して死体が朽ち果てるのを待つのが現状での最適解だろう。
「下手に物事を繕うよりはその物事を無かった事にする方が安全ね」
ノアは近くの木から葉っぱを十数枚か取ると、手袋代わりにそれを掌に乗せた上で椿の死体を森のもっと奥の方へと移動させ、地面に染み込んでいる血は土を被せる事で今回は済ませておいた。
「まずは一人目、全員まであと38人......」
ノアは元来た道を何事も無かったかのように歩いていく。後悔はなく、罪悪感にさいなまれる事もない。全ては先生の言葉を信じて敵を全て排除するためだけである。
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