雑談掲示板

みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】
日時: 2020/10/02 21:12
名前: ヨモツカミ (ID: HJg.2TAk)

略してみんつく。題名の通り、みんなでSSを書いて投稿しよう! というスレです。SSの練習、作者同士の交流を目的とした場所になっております。投稿された作品に積極的に感想を言い合いましょう。稚拙な感想だから、と遠慮する必要はありません。思ったことを伝えてあげることが大切です。

優劣を競う場所ではありません。自分が上手くないと思うそこのあなたこそ、参加してみてほしい。この場で練習をしてみて、他の参加者様にアドバイスを求めてみてはいかがです? お互いに切磋琢磨しながら作品投稿が楽しめると素敵ですね。

自分はそれなりに書けると思ってるあなたは、いつもの自分と違う作風に挑戦してみるのも楽しいかもしれませんね。または、自分の持ち味をもっと伸ばすのも良いでしょう。みんつくに参加することで、新たな自分を見つけるキッカケになるといいなと思います。

読み専の方も大歓迎です。気に入った作品があれば積極的にコメントを残していただけるとスレが盛り上がります。当然、誹謗中傷や批判など、人が見て傷付く書き込みはNGです。常に思いやりの精神を持って書き込みましょう。


*作品の投稿は最低限ルールを守ってお願いします。
↓↓
・お題は毎月3つ出題します。投稿期間、文字数の制限はありません。ただし、お題に沿ってないSSの投稿はやめてください。そういうのは削除依頼を出します。
文字数について、制限はありませんがどんなに短くても140字くらい、長くても20000文字(4レス分)以内を目安にして下さい。守ってないから削除依頼、とかはしません。
・二次創作は禁止。ですが、ご自身の一次創作の番外編とかIfストーリーのようなものの投稿はOK。これを機に自創作の宣伝をするのもありですね。でも毎回自創作にまつわる作品を書くのは駄目です。たまにはいつもと違う作品を書きましょう。
・投稿するときは、作品タイトル、使用したお題について記載して下さい。作品について、内容やジャンルについての制限はありません。
小説カキコの「書き方・ルール」に従ったものであればなんでもカモン。小説カキコはそもそも全年齢なので、R18ぽい作品を投稿された場合には削除をお願いすることもあります。
また、人からコメントを貰いたくない人は、そのことを記載しておくこと。アドバイスや意見が欲しい人も同じように意思表示してください。ヨモツカミが積極的にコメントを残します(※毎回誰にでもそう出来るわけではないので期待しすぎないでください)
・ここに投稿した自分の作品を自分の短編集や他の小説投稿サイト等に投稿するのは全然OKですが、その場合は「ヨモツカミ主催のみんなでつくる短編集にて投稿したもの」と記載して頂けると嬉しいです。そういうの無しに投稿したのを見つけたときは、グチグチ言わせていただくのでご了承ください。
・荒らしについて。参加者様の作品を貶したり、馬鹿にしたり、みんつくにあまりにも関係のない書き込みをした場合、その他普通にアホなことをしたら荒らしと見なします。そういうのはただの痛々しいかまってちゃんです。私が対応しますので、皆さんは荒らしを見つけたら鼻で笑って、深く関わらずにヨモツカミに報告して下さい。
・同じお題でいくつも投稿することは、まあ3つくらいまでならいいと思います。1ヶ月に3つお題を用意するので、全制覇して頂いても構いません。
・ここは皆さんの交流を目的としたスレですが、作品や小説に関係のない雑談などをすると他の人の邪魔になるので、別のスレでやってください。
・お題のリクエストみたいなのも受け付けております。「こんなお題にしたら素敵なのでは」的なのを書き込んでくださった中でヨモツカミが気に入ったものは来月のお題、もしくは特別追加お題として使用させていただきます。お題のリクエストをするときは、その熱意も一緒に書き込んでくださるとヨモツカミが気に入りやすいです。
・みんつくで出題されたお題に沿った作品をここには投稿せずに別のスレで投稿するのはやめましょう。折角私が考えたお題なのにここで交流してくださらなかったら嫌な気分になります。



その他
ルールを読んでもわからないことは気軽にヨモツカミに相談してください。


*みんつく第1回
①毒
②「雨が降っていてくれて良かった」
③花、童話、苦い

*みんつく第2回
④寂しい夏
⑤「人って死んだら星になるんだよ」
⑥鈴、泡、青色

*みんつく第3回
⑦海洋生物
⑧「なにも、見えないんだ」
⑨狂気、激情、刃

*みんつく第4回
⑩逃げる
⑪「明日の月は綺麗でしょうね」
⑫彼岸花、神社、夕暮れ

*みんつく第5回
⑬アンドロイド
⑭「殺してやりたいくらいだ」
⑮窓、紅葉、友情




*目次
マシュ&マロさん:青春ヤンデリズム(お題⑨)>>133
おまささん:(お題②)>>135-136>>87続き)
蜂蜜林檎さん:土竜(お題⑫)>>145
ヨモツカミ:夢オチです。(お題⑩)>>146
おまささん:ツキビト(お題⑪)>>149-150

*第1回参加者まとめ
>>55
*第2回参加者まとめ
>>107
*第3回参加者まとめ
>>131
*第4回参加者まとめ
>>153
*第5回参加者まとめ

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Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.146 )
日時: 2020/09/27 22:16
名前: ヨモツカミ (ID: zW4b453g)

夢オチです。
お題⑩

 夜道を全力で駆ける。目の前には若い女が同じくらいの速度で走っている。ヒールの靴では走り難そうだ。彼女はたまにこちらを振り向いては、怯えた顔で、とにかく走る。
 俺は包丁を片手に追いかける。
 何をしているのだろうか、と思う。彼女との面識はない。街灯すらない道。月明かりだけを頼りに、俺達は走り続けた。

 偶々、今日は嫌なことがあって酒を飲んだのだ。上司が俺に仕事を押し付けてきたとか、時間内に仕事が終わらなくて残業をしたとか、帰りの電車が人身事故で遅れたとか。嫌なことが重なって、珍しく飲めもしない酒をしこたま飲んで。美味しくもないし、頭がクラクラして、何だかよくわからなくなる。
 深夜を回った頃、俺は最後の酒を一気に煽った。強いアルコールの味。炭酸の弾ける舌触り。

「……美味くねえ」

 意識がふわふわするが、それだけだ。なんだか頭が痛いし、体は熱いし。それで嫌なことを忘れられるわけでもない。ムシャクシャする。
 明日だって普通に仕事がある。眠い目を擦りながらも、決まった時間に目覚めて、満員の電車に揺られてストレスをためて、胃痛に耐えながら会社に向かって。朝だけでこんなに辛いのに、上司はこちらの気持ちも事情も考えずに、とりあえず仕事を押し付けて。小言を言って。怒鳴りつけて。
 それが週五日続いて、二日しかない休みは睡眠に使われる。やりたいこともやれないで、仕事、電車、仕事、電車、ストレス、ストレスストレスストレス。

 台所に空き缶を捨てに行くときに、ふと、まな板の上に放置した包丁が視界に入った。その銀色の刀身が、艶かしく輝いているような気がして、思わず手に取る。
 包丁。刃物。深夜。

「…………」

 なんとなく、だ。特に理由はなかった。アルコールが俺をおかしくさせたのかもしれない。気が付いたら俺は、包丁を片手に外に出ていた。夜風がアルコールで火照った体に心地よかった。
 ああ。なんか、いいなこれ。
 そのまま俺は散歩をした。特におかしい事はない。片手に包丁を持っているだけだ。それだけ。酔った男が、酔い覚ましのために深夜の道を歩いているだけ、なのだ。
 月明かりを反射させて、包丁がギラリと輝く。人に見つかったら終わるな。そんなスリルが逆に心地よいのだ。

 そうして、フラフラと道を歩いていると、目の前から若い女性が歩いてくるのが見えた。こんな時間に、と思ったが、多分終電ギリギリに帰ってきた女性とか、そういうことなのだろう。スーツ姿にきれいにまとめられた髪の毛からして、仕事帰りか。
 ……そういえば俺は片手に包丁を持っている。すれ違うときに、どうすれば。
 急に心臓がバクバクと胸を激しく叩いた。見られたらどうなる。どうなるのだろう。夜道で包丁を片手に歩く男、なんて。女の立場からしたら、どうするものだろうか。
 そんなことを考えていたら、完全に女性が俺の手元を見ていた。

「ひっ」
「……あ、いや」

 女性がわかりやすく怯える。違う、俺はそういう危ないことをしたくて、そんなことで包丁を持ち出したわけでは。
 女性が踵を返して走り出す。
 やばい。警察に駆け込まれでもしたら、俺は。
 俺もまた、彼女を追いかけた。女性は悲鳴を上げて、更に速度を上げて逃げる。
 やばい、この状況何なんだ? 俺は何をしている。追いかけて、捕まえて、その後どうする。別に殺すつもりなんてないけれど、彼女は多分包丁を持った男に追いかけられるなんて、生きた心地がしないだろう。
 だから、逃げ切られてしまえば。後で間違いなく通報される。
 だったら。だったらいっそ、捕まえて殺してしまえばいいのではないか?
 いや。何を考えている。人を殺すなんて、何を。

「誰か助けて! 助けて!」

 女性が叫ぶ。くそ、そんなに騒いだら人が来てしまうだろう。くそ、くそ。
 もう仕方ないだろう。やるしかないだろう。ころせ。ころせ!

「ぎゃあああああああっ」

 追いついた。
 女性の腕を掴んだ。そうして包丁を振り上げる。恐怖に染まった彼女の顔がこちらに向けられる。
 ──その背中に、深々と包丁が突き刺さった。

「ぎゃああああっ、あああ!」

 引き抜く。纏わりついた血液が辺りに跳ねた。
 彼女の体が傾ぐ。地面に落ちた彼女の胴体に馬乗りになると、俺は包丁を無茶苦茶に振りおろして、顔とか喉とか、目とか、鼻とかを切りつけては突き刺して、引き抜いて、それを繰り返して。びちゃびちゃと血液が辺りに跳ねて、俺も彼女も真っ赤に汚れていく。血の臭いが充満して、頭がおかしくなっていく。いや、もっと前から頭はおかしい。でも、なんだかもう、俺は戻れないところに。

「はあ、はあっはあ……」

 あれ。
 あれあれあれ。
 目の前で穴だらけになって、ぐったりと動かなくなった女。それに跨って、俺は血に汚れた包丁を握っている。
 なに、
 して、なにしてる。おれは、なにをしている。
 殺す気なんて、なかったのに。なんで。俺は何をしているのか。
 心臓はもう、吐き出してしまいそうなほどに煩く鼓動した。そのくせ、脳は妙に冷え切っている感じがする。
 冷静に女性の亡骸を見下ろして、溜息を吐いた。

「……まあいっか」

 殺しちゃったものは仕方ない。俺は酔っていたんだ。そもそも、こんなに酔う原因になった会社が悪い、上司が悪い、包丁を持ち出そうと考えさせた酒が悪い、あんなところをこんな時間にあるていた女が悪い、包丁を見て叫んだ彼女が悪い、俺は何も悪くない、悪くないのだ。
 何も悪くない俺は、何事もなかったみたいに家に帰って。服や体に付着した血を洗い流して、そして眠ればいい。
 そうすれば、明日の朝。起きたら普通に会社に行くんだ。昨日のことは夢だったのではないかと、現な気分で。

 スーツを着て、朝食を食べて、玄関の戸締まりをして、電車に乗り込んだ。満員の電車は息が詰まるから、もうみんな殺してしまいたくなる。
 ここに包丁があれば、皆殺しにできたかな。
 あれ。俺はまだ酔っているのだろうか。
 なんだかどうでもいい。
 どうでも、いいや。

***
逃げる、というか追いかけるって話でしたけど。最終的には現実から逃げました。

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.148 )
日時: 2020/09/28 10:11
名前: ヨモツカミ (ID: 1T0bBlbE)

>>147謎の女騎士さん
参加ありがとうございます。ですが、ちゃんと>>0のルールを読んでから参加してほしかったです。わからないことがあれば聞いてください。

まだ「友情」というお題は出してないです。
そしてそのお題で書くならそれは三題噺になってるので、「窓」「紅葉」「友情」すべての要素を入れた作品を書くこと、がルールです。
それから。2次創作の投稿はしないでください、てちゃんと書いてあります。
せっかく書いていただいたのに申し訳ないですが、スレの趣旨とは大きくずれた作品なので、可能なら削除しておいてくださると助かります。

今度いらしてくださる場合は>>0に記載されている内容を守ってくださいね。

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.149 )
日時: 2020/09/30 19:29
名前: おまさ (ID: lQThmWck)

こんにちは。
9月中に間に合わせるため、2日で書きました。そのため少々ぎこちないかもしれませんが、よろしくお願いします。
なお、長くなったので2つに分けています。(続き:>>150)


**********

お題:⑪
題名:『ツキビト』












1(:Preamble)








「知ってる? 月って、同じ面を向けて地球のまわりを回ってるんだよ」





 今から結構前のことだ。当時小学5年だった私は、由依のその言葉に「えっ」と一驚した。
 由依はそんな私の反応に小さく笑うと、「えっとね」と楽しそうに説明を続けた。



「地球の周りを一回回る間に、月は一回自転するんだ。自転と公転の向きも地球と同じだから、地球から見える月は常に同じ面を向けていて、地球からは月の“表”しか見えてないんだよ」
 


 そうなんだ、と相槌を打つ。

 よく図書館に通っていた濫読家の彼女は、そうして本から得た知識を嬉しそうに私に話すのだが、私もその話を聞くのは好きだった。なんというか、見ている世界が広がるような気がしてワクワクするのだ。










「……奏ちゃんはさ、月って綺麗だと思う?」



 問いかけに少しだけ思案する。
 正直、月の美しさについてあまり考えたことがなかった。だからつい適当に返した。



「月? ……まぁ、綺麗なんじゃないかなぁ」



















「“表”しか見えてないのに?」












ーーその問いかけに私は、言葉を返すことができなかった。








【序章-奏の場合】








 早坂由依は、特技が多い人間だった。

 私のような、常に空気に溶け込むような存在に比べれば、由依にはまさしく「多才」という言葉が似合う。そんな少女だった。

 小学生のときには、男子よりも短距離走が速かった。
 中学生のときには、美術コンクールで金賞を獲った。
 高校生のときには、推薦で某有名私立大に進学した。

 華々しい経歴を持つ彼女はその後、大手の証券会社に就職した。


 顔立ちと気丈のいい彼氏と付き合うようにもなって、私が彼女に久しぶりに会ったときの笑顔は充実感に満ちていて、前よりも一層と華やかになった。
 


 そんな彼女に対し私は、ある種の羨ましさは感じてこそいたがーー嫉妬はしなかったと思う。
 だって嫉妬したところで、きっと由依には敵わないだろうから。他人と比べるのではなくて、自分はただ、自分のすべきことを確実にすれば良い。

 それに私は、由依のような人と友達になれたことにむしろ誇りを感じている。



 彼女の華やかな記憶の片隅に、少しだけ私の存在があればいいと、そう思うから。








【8月13日-奏】



 8月13日。由依から手紙が届いた。お盆近くだったので暑中見舞いには遅すぎるし、残暑見舞いにはやや早い。
 わざわざ手紙で寄越すなんて珍しいなと便箋を開けた。






***


ーーーー拝啓、名取奏様。

 ご無沙汰しております。今年の夏も茹だるような暑さですが、その後お変わりはありませんか。
 私は今、仕事の都合でひと月ほど仙台にいます。東京の蒸し暑い夏とは違って、少し爽やかです。
 その後、お変わりはありませんか。
 私の方は、先日悟の誕生日でした。彼は今は東京にいて、300キロくらい離れているけれど。


 数日後、東京に帰ります。その時にはお土産を贈りますね。仙台の食べ物は美味しいですよ。
 お互い、体調に気をつけて楽しく過ごしましょう。





早坂由依


***





 読み終えてふぅ、と息をついた。

 ……やっぱり、由依はすごい。ちょっと前は名古屋にいたと思ったら、いつのまにか仙台にも行っていたなんて。
 それだけ忙しいけれど、充実している。私は羨ましかった。由依みたいに、何かに貪欲に食らいつくなんてことは、私にはできない。
 

 悟というのは由依の彼氏で、気立のいい好青年だ。由依も顔つきが整っている方なので、ふたりとも美男美女。それもかなり仲のいい。傍らから見ても、理想的なカップルなのは間違いない。


 本当に由依はすごい。秀才で、真面目で、しっかりしている。
 ーー由依が頑張るのを見る度、私も頑張ろうという気概を持てる。それもまた、事実なのだった。







【9月4日-奏】






 9月3日。今年の夏は終わったとはいえ、残暑は未だこの街から抜けてくれない。

 最近何か変わったかといえば、仕事が少し忙しくなった。残業も少しだけ増えた。
 それは由依も同じようで、あの手紙以来LINEもEメールも来ない。もっとも彼女の場合、私なんかよりもいい職に就いているので繁忙の度合いも私とは全然違うだろう。

 数週間くらい、誰とも連絡を取らない期間はある。
 けれど由依の場合、普段なら週末にひとつやふたつくらいメールを送ってくれる分、最近の音沙汰のなさにはわずかな違和感を感じるのだ。



 ………やはりそれだけ忙しいということだろうか。
 つくづく、由依の勤勉さには驚く。学生時代からそうだったけれど、彼女の真面目さはかなりのものだった。どうしてもだらけてしまうような休み時間でさえ適度な緊張感を持っていた。授業で居眠りした姿など一度も見たことがない。
 そんな由依だからこそ、激務にも屈せず日々精進しているのだろう。

 ーー由依が頑張っているなら、私も頑張ろう。一緒に頑張って、働きを互いに労おう。







 夜景がちらほらと覗く、都会の黄昏に染まるプラットフォーム。残業が増えたから、いつもより一、二本後の電車を待ちわびる。



 「………、」

 ふと。
 空に向けた視線の先。夕陽の残滓が未だ残る夜空に、綺麗な満月が見えた。スーパームーンというやつなのか、普段よりちょっと大きくて明るい。

 都会の煌びやかさとは違う柔らかな月光。それを見ていると何となくだけれど、夜風も相まって少し落ち着いたような気がした。



 激務の合間に、少し一息ついてもらいたいなという、そんなささやかな願いはきっと、届くことはないけれど。

 それでも。







 ーーあわよくば、由依もこの月を見ていればいいなとぼんやり思った。

 

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.150 )
日時: 2020/09/30 19:29
名前: おまさ (ID: lQThmWck)

>>149の続きです


******



【9月29日-奏】


 9月29日。10月前になって急に冷え込んで、半袖だと少し寒く感じるようになってきた。日も目に見えて短くなったように感じる。


 2、3週間前と比べると、最近はだいぶ仕事の方も落ち着いてきた。今日に至っては3週間弱ぶりの定時帰りだ。
 少し高めのテンション。不思議と足取りも軽い。自分への労いとして今日は少し美味しいものでも食べに行こうか、そうだ同僚のと飲みに行くのはどうか……とか考えている自分がいるあたり、完全に舞い上がっている。



 未だ連絡はないけれどーーーー由依は今頃どうしているのだろう。
 ひょっとして悟さんの家にいるのだろうか。きっと由依は私と話すよりも、悟さんと話した方が楽になれると思う。これはお世辞でもなんでもない、心からの本音だった。
 
 実際二人はお似合いだし、悟さんは優しくていい人だと思う。もしかすると恋人と言わず夫婦になるかもしれない。仮にそうなった時、二人は生涯寄り添い続けるだろう。




 ……そうして幸せに、幸せに時が過ぎて。




 由依には、幸せになってもらいたい。
 悟さんには、由依を幸せにできる力がある。そして由依も、悟さんを幸せにできる。二人で幸福に、道を歩んでいって欲しい。
 そしてその道程にひとつ、自分の存在があってくれれば嬉しい。





 



 ーー幸せな旅路の中で時々、私のことを思い出してくれたらなと思った。


























































 
 電話で由依の葬式の話を告げられたのはその後すぐだった。





















【序章-由依の場合】










 名取奏は、器用な人間だ。




 私のような、自身を取り繕って他人の評価に寄生して生きているような人間にとっては、その自然さがとても眩しく思えた。


 小学生のとき、色々と自分に付き合ってくれた。
 中学生のとき、周囲に惑わされず自分を貫いた。
 高校生のとき、嫌味もなく進学を祝ってくれた。


 高校卒業後、彼女とは年に数回顔を合わせたりする程度の間柄にとどまっている。



 彼氏の悟は顔立ちがいいだけだ。奏の前では皮を被っているけれど、そもそも他人の前で偽りの自分を演じている人間なんて碌な奴じゃない。鏡を見せられているようで吐き気がする。それにあいつとの夜も退屈でおもしろくない。結局はあいつが格好つけたいだけで、私を使って自分を慰めているだけなのだ。

 ーーこんなことならいっそ、一生独り身の方がましだ。

 そんなことは彼氏のいない奏には言いたくないし、言えないし、知られたくない。




 ………嫉妬、しているのだろう。


 奏のまっすぐな生き方に惹かれて。けれどそんな生き方は私には眩しすぎて。無意識のうちに嫉妬していたから、いろいろなことをやった。
 美術コンクールだってそうだ。猛勉強して大学に推薦入学したのもそうだ。……躍起になっているうちは、ひととき煩悩を忘れられる。


 羨望もしていると思う。私も、奏みたいに正直に生きたい。
 けれどとっくに虚構に塗れた私はきっと、一生嘘を吐きつづけるのだろう。




 ーーそんな日々から脱却するような器用さは、私にはないのだから。









2(postscript)





 冷たい風が吹いていた。


 それは路肩の吹き溜まりを散らし、冷気となって耳を刺す。マフラーを押さえつつ、奏はある公園の前で立ち止まった。
 時刻は5時半を少し回ったところだが既に日は沈み、都会の喧騒と夜空の静謐が混じった不思議な雰囲気の余韻が、静寂な公園に微かに流れてくる。



 由依の葬式は、親族だけで静かに行われた。
 
 
 死因は、縊死による自殺だった。
 9月29日、由依の住むアパートで、クローゼットの中でこときれているのが見つかった。かなり腐敗が進んでいて、おまけに飼っていた猫が死体を喰らっていたとかで、現場は凄惨な状態だったらしい。







 ……何故、だろう。

 あれほど恵まれて、あれほど充実していて、あれほど幸福そうな彼女がーーどうして。









 自死なんていう道を、選んでしまったのか……!




 分かっているつもりだった。
 由依はすごくて、努力家で、明るくて、前を見据えて生きていて。
 だからこれからも幸せな未来が続くんだと、そう思っていて。

 その果てがこの有様だ。いつのまにか、分かっているつもりになっていた。




















『“表”しか見えてないのに?』


















 ぽつりと、いつかの言葉が蘇ってきた。
 今になってみると、それは奏を嘲り舐る嗤笑を伴ったものに聞こえる。






 


 由依の『裏』の存在を忘れて、『表』だけが由依の本質なのだと傲慢にも錯覚していて。そう思って接していた由依は『表』を演じていたのだろう。ーーそうして徒に、由依に心労を煩わせたまま今日までのうのうと過ごしてきてしまった。

 だからこれはきっと……そんな由依の演技に気付けなかった奏の罪なのだろう。



 由依の虚飾に気付けず、彼女の内の暗澹を看過し続けた愚行の果てがこの有様なら。それは最早、…………私が由依を縊り殺したのと同義ではないのか。
 断罪されるべきは、謗られ罵られ贖罪に苛まれるべきは奏であるのではないか。
 否、むしろその程度では足りない。奏は梟首に処されることすら厭わないような恥辱と後悔、罪悪感に苛まれていた。













「……ごめん」





 嗚咽にも似た謝罪が溢れる。




「ごめん。ごめん。……ごめん…………っ…」



「ごめん、ね………私、ぜんぜん………ゆい、のこと……分かって、あげられな、くて……ぇ………っ」





 滂沱が滲み出る。吐露される懺悔を、ただ風の音だけが聞いていた。
 返り言はない。当然だ。死者と生者は交われない。


 もし由依がいるならばせめて、「お前のせいだ」と罵倒された方が楽だった。
 けれど、死した者が二度と口を開くことはない。……死者に許しを乞うことも叶わない。
 
 ーー名取奏が早坂由依に懺悔する機会は、死を以て永久に遠ざけられたのだ。




 故にーー名取奏が、赦されることはない。













『“表”しか見えていないのに?』




 声がーー否、怨嗟が聞こえる。
 奏は半ば無意識に、天球に月を探した。今宵の幾望は夜の澄んだ大気に儚い光を落としている。



 月は、綺麗だ。………綺麗なところしか、見えない。




 だから。
























「明日の月も、綺麗なんだろうね」








 掠れた呟きは、闇と夜風に掻き消されて霧散した。








《了》





Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.151 )
日時: 2020/10/01 20:18
名前: ヨモツカミ (ID: 6s7WOz7I)

新しいお題の発表も感想などの返信も目次の編集も明日やります!!!
明日はスタバの新作を飲むので、その時やります!!!
大学芋のフラペチーノです。

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.152 )
日時: 2020/10/02 21:04
名前: ヨモツカミ (ID: egTI0EAc)


>>145みつちゃん
雰囲気を楽しむ作品って感じでしたね。私はとても好きですよ。不気味でそこはかとない狂気が含めれていて、ホラーみがあるけど、秋っぽい空気感が、あの秋の肌寒さを連想させるような、素敵な文でした。百合なのも最高ですね。
モグラそんなことあるんですか……だからタイトルが土竜なんですね。なんかエモい。

>>149おまささん
正反対の二人がしんどい……ゆいのこと、ずっと勘違いしていて、本当の相手のことなんてみえてなかったんだな……
お題が一番最後に回収されるのビビりました。そういう繋げかたするのか……! やっぱおまささんの作品て面白いですね。長いですけど、そのぶん、中身がしっかりしてるから読んでいて楽しかったです!

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.153 )
日時: 2020/10/02 21:09
名前: ヨモツカミ (ID: egTI0EAc)

*第4回参加者まとめ
マシュ&マロさん:青春ヤンデリズム(お題⑨)>>133
おまささん:(お題②)>>135-136>>87続き)
蜂蜜林檎さん:土竜(お題⑫)>>145
ヨモツカミ:夢オチです。(お題⑩)>>146
おまささん:ツキビト(お題⑪)>>149-150

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.154 )
日時: 2020/10/02 21:10
名前: ヨモツカミ (ID: egTI0EAc)

お待たせしました。10月のお題を発表します。

*みんつく第5回
⑬アンドロイド
⑭「殺してやりたいくらいだ」
⑮窓、紅葉、友情

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.155 )
日時: 2020/10/21 19:29
名前: ヨモツカミ (ID: rse76r/w)

私も書けてないけど、人があまりにも来なくて笑う……

Re: みんなでつくる短編集【SS投稿交流所】 ( No.156 )
日時: 2020/10/22 08:10
名前: 12 (ID: yRc/yJDA)

*>>129の続きです。どんどん、面白いお題が出てきて書きたいのに、いくら書いても終わらなくなくなってしまうの、この世のバグかな?と嘆いております。私だけ他の人より時の進み方遅くしてほしい。他の方々の作品も読みたい……それなのに終わらない……多分次で終わります。これはほぼ確実です……次を更新したら皆さんの作品を読んでいきたいと思います…アーメン( ̄+ー ̄)



 高校生になって、僕と君は公立の同じ定時制の高校に進学した。
 君は全日制の学校に行くのだと、僕とは違う学校に行くのだと覚悟していた僕は、君から僕と同じ学校に進学をするということを聞いて驚いた。
 もしかして僕のせいだろうか、僕が寂しい寂しいといつまで経ってもわがままを言い続けるから。もしそうだったら、僕は君にどう償えばいいのだろう、そんな不安が顔に出ていたのだろう。君は僕の心を読むように、半笑いでこう言った。

「高校には進学したいけど、今は、お金が足りなくて。だから働きながら行ける定時制にしたんだ」

 僕の不安は思い過ごし、というかとんだ思い上がりだったらしい。君には君ののっぴきならない事情があった。そして、僕はそんな君の事情を聞いて愕然とした。君の家庭がそんなにお金で困っているなんて、僕はこの時まで全く知らなかった。
 よくよく思い返せば、彼はいつも同じような服を着ていて、休日も何故かいつも制服を着ていた。靴も文房具もかなりボロボロになるまで使っていた気がする。僕はそれらの事実を認識しながらも、今の今まで、何も気が付かなかった。
 ショックだった。自分がどうしようもないやつだということは常々自覚していたけれど、唯一の友達のことですら、こんなにも何も気が付かずにいたなんて。

「……そ、そっか。そうなんだ」
「あ、そんな気にしないでくれよ!大したことじゃないんだ、本当に」
「……分かった。でも何か僕に助けになれることがあったら言ってよ」

 気にしないでくれ、そう言われてしまうと、心配することですら僕には不相応なのだと、そう言外に伝えられてるような、そんな気分になる。いや、君が無自覚であるだけで、事実そうなのだろう。僕ができることなんて、何もない。お金の援助だなんて君の望むことではないだろうし、第一それは僕の親ができることであって、僕にできることなんかじゃない。唯一できる話を聞くことですら拒絶されてしまえば、僕は、僕は。



 モヤモヤした気持ちを抱えながら家に帰り、何をするやる気も起きず、そのまま眠りにつくと、なんだかよく分からない夢を見た。
 夢の中で僕は植物で、君は僕を育ててくれている。水を与え、土を耕し、日に当て、それらのルーティンをこなさないと、僕はすぐに萎れてしまう。だから君は毎日この面倒なルーティンをこなし続ける。何も言わずに、僕のそばにいる。
 現実と何も変わらない、なんて酷い夢だろうと、そう思った。今の僕は植物となんら変わらない、いや植物だって話くらいは聞けるだろう。植物未満だ。ただ生きてるだけ。なんで生きているか分からない。生きるなら、君のために生きたかった。なのに、それなのに、僕にできることは何もないのだ。
 ぜえぜえと荒い呼吸と共に目を覚ます。
 じんわりと気持ちの悪い汗が身体中に纏わりついている。
 中学二年のあの夏から、なんら変わらず、僕は君のことが分からないでいる。分からせてもらえないでいる。
 君の内側に僕は入れない。あの優しい笑顔を向けられる度に、僕にできることは何もないのだと、そう思い知らされる。思い知らされる度に、苦しくなる。君とずっと一緒にいたい。だけど、それを口に出したことはない。出せるわけない。そんな資格、僕にあるわけないのだ。何もできないくせに、君を困らせてばかりの僕に。
 

 己の罪は自覚している。けれど未だ贖罪の方法は見つからないままだった。




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 ほどほどに平凡な時間が過ぎていった。
 僕は大きく体調を崩すこともなく、今も普通に学校に通えている。
 君は学校が終わると、すぐに働きにいってしまって、僕と一緒にいる時間は前より少なくなった。それでも仕事の時間になるまでは、ほとんど僕と共にいた。前より君は細くなった気がするし、顔色も悪くなった気がする。けれども、大丈夫?だなんてそう言うと、君は大袈裟に元気に振る舞おうとするので、変化に気付いても指摘することはしなくなった。
 多分、僕はずっとこうなのだろうと思う。
 生きていても中途半端、君への気持ちも中途半端、あーだこーだ言いながら、ラインの手前で二の足を踏んでいる。
 僕が病弱だからなんてのは理由の一要素でしかなく、僕が何もできない大元の理由は、ひとえに僕がどうしようもなく意気地なしだったからだ。
 僕の目の前にあるのは、そびえ立つ岩壁などではなく、やんわりと拒絶を含んだ冷風だけだった。
 ただ、一歩進めばいいだけ。
 僕には、その一歩が、難しかった。



 こんなのは、ただの言い訳にしかならないけれど。
 
 



#


 ある日、君は無断で学校を休んだ。
 おかしいな、だなんて先生が言って、お前は何か知らないか、だなんて聞かれても、何も分からない、何も知らない自分が恥ずかしかった。
 君はいつも体調が悪くて休むとき、先生には連絡しても、僕にそれを伝えることはけしてなかった。身体の弱い僕に万が一うつして体調を悪化させることが嫌なのだという。そう言われてしまえば、僕は、ああそうか、とそれを受け入れることしか出来ない。
 事実、君と初めて出会った時、僕はこの身体のせいで、君を傷つけてしまった。目の前で、さっきまで遊んでいた人間が倒れて、幼い君がどれだけショックを受けたか。ベッドの上で目を開けて、震えながら心配そうに僕を見つめていた君の表情が今でも忘れられない。
 僕が君の表情を忘れられないように、君もまたあの時の光景が忘れられないのだろう。
 君は優しいから。弱くて愚かで我儘な、どうしようもない僕を見捨てられない。
 嫌なくらいに鮮明な記憶が僕達を縛り付ける。
 いっそのこと君と出会わなければよかったのに、と何度も何度も思った。
 きっと君がいなかったら、僕はとうに死んでるだろう。君は僕の生命線だ。君の為に生きたいだなんて、大嘘だった。そんな大層なことを言いたい訳じゃない。ただ、僕が君と生きたいのだ。
 友情というには重すぎて、恋情というには苦すぎる。
 どうしようもない名前のつけられないこの感情を口に出すことは憚られた。
 ただ、君を愛していた。それだけは確かだった。



 それをもっと、もっともっと早く君に伝えれば良かったと、今になって思う。

 
 
 

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