二次なりきり掲示板

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・Seize the day『 中文 』
日時: 2015/10/23 08:00
名前: 寝退 ◆HyWhrnhVWU (ID: KVMT5Kt8)





【 prologue 】


時は中世、舞台はとある国の城塞都市。
希望を手にした者達は光へと続く門を開いた。しかしそれは結果として多くの人々を巻き込み苦しめる事になる。

『お前達が人間として生きる事を望まなければ、私達は人間として生き続ける事が出来たのに。』

ある者は隠された真実に一人涙を流し、白衣を脱ぎ捨てると決死の思いで拡声器を手にした。
真実を知った民衆達は悩み考え続ける事を余儀無くされ、多くの人々は未だ答えを求め続けている。




—— —— —— —— —— …




閲覧ありがとうございます。寝退と申します。初めましての方も日頃お世話になっている方も宜しくお願いします。当スレは城塞都市内の極秘研究施設で生み出された能力者達とそれに関わる人間達の、戦闘・恋愛・日常、割と何でもアリなスレとなっております。
今回は完全な中文スレとさせていただきます。その他の部分での変更もありますので、世界観やルールに一度目を通してから登録書を記入して頂けますよう宜しくお願いします。



 世界観 >>1
 ルール >>2
 募集枠 >>3
 登録書 >>4



【 参加者一覧 】>>5





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【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.111 )
日時: 2015/06/03 20:20
名前: JESSICA (ID: qJIEpq4P)

「……いえ、仕事上、このような怪我を見ることには慣れていますが……」

 どうやら相手は自分の目線に気付いてしまったらしい。女性が立ち上がったのを確認し、慌ててそう呟き距離を取る。見ず知らずの人間の、この不躾な視線は彼女を傷つけてきたのかもしれない。彼女の眼の端に溜まった涙に再び困惑してしまう。

「……申し訳ありません」

 彼女に心配そうに近づいてきた犬の頭を撫でながらも、苦笑を浮かべ、涙を抑えるように唇をかみしめる目の前の女性に対して、テオドールがかけられる言葉はなかった。こんな時に器用な励ましや、気遣いの言葉が思いつけたのならどれだけ良いだろうか。

 テオドールは一定の距離を保ったままそう言い深く頭を下げた。自分の守るべき人たちに、自分が不快な思いをさせてしまってはいけない。実際腕をなくすほどの怪我の理由を知りたいとも思ってはいたが、そんなことは口が裂けても言えるはずがなかった。

「……あなたに不快な思いをさせてしまった。……気持ち悪いとは思いませんが……苦労なされているでしょうね」

 彼女が失ったのが多くの人間が利き手としている右腕だったため、テオドールは思わずそう呟いていた。心にも相当な傷を負ったのだろう、と濁った紫色の瞳や酒の瓶を一瞥する。此処も一人で管理をしている様子だった。彼女の周りにいてくれるだろう犬をもう一度優しく撫でながら辺りを見回した。

「……此処は、あなた一人で?」

Re: 【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.112 )
日時: 2015/06/03 20:48
名前: ナタノ (ID: hNhLtowv)


>>108

ウィルフレッドは生まれついての王子である。幼い頃からいずれ王になるべく英才教育を施されてきたし、王子としてそれなりの暮らしを保証されてきた。ウィルフレッド自身も国を愛しており王になる事に不満や反発はなく、己の責任を果たすべく勉学や武道に取り組んだ。しかしどうしたことか王宮暮らしのウィルフレッドは城下に強い興味を持っていた。それは幼い頃からの事で、城で暮らす事を常とする王や王妃は、どうしてこの子は城下の事など知りたがるのだろうと不思議がったものである。

さて、三つ子の魂百までというように、幼い頃に形成された性格はそう変わる物ではなくウィルフレッドは今日もお忍びで城下へ降り、街を見回していた。絵筆をとり風景を模写し始めた所までは良かったのだが、おかしな連中に絡まれた。騒ぎを起こしたくないウィルフレッドはさっさと撤退して、門の開くのに紛れて城に戻った。もう2日は城下で過ごそうと思っていたのだが仕方がない。パーカーとジーンズを脱いでいつものスーツに着替えた所で後ろから年若い執事に声を掛けられた。

「おう、何かあったか?」

王子らしからぬ粗野な口調で答えたウィルフレッドは執事の手に握られた物を見て、次の瞬間全力で駆け出した。何としても執事に捕まるわけにはいかなかった。
城の長い廊下を素晴らしい速度で駆け抜けて二段飛ばしで階段を駆け下りる。途中立っていた見張りに執事が来ても絶対通すなと言い置いて、ウィルフレッドは一番近くにあった扉を乱暴に開けて中に飛び込んだ。そこで予想外の人物に出会ってウィルフレッドはこてん、と首を傾げた。

「ん…セリー?久しぶりだな」

ウィルフレッドの愛しい家族、双子の妹のセレーナだ。可愛い妹との再開に喜びかけたウィルフレッドはふと今いる場所を思い出してもう一度首を捻った。

「セリー、ここで何をしてるんだ?」

(絡んでみました!)

Re: 【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.113 )
日時: 2015/06/03 21:12
名前: 鯨 (ID: hNhLtowv)


>>111

「……申し訳ありません」

ポツリと呟かれた言葉にフィロメーナは顔を上げた。顔を上げると彼は深く頭を下げている。フィロメーナには男の言葉の意味がよく理解できなくて眉を下げた。どうして彼は謝るのだろうか。私のような人間に頭を下げるのだろうか。彼は悪いことなど何もしていないのに。
フィロメーナが声を出すよりも早く、男性が言葉を続ける。

「……あなたに不快な思いをさせてしまった。……気持ち悪いとは思いませんが……苦労なされているでしょうね」

「くろう…」

フィロメーナはおうむ返しに男の言葉を繰り返した。苦労は勿論してきた。利き腕が無いことには今だ慣れなくて食事もまともにとれないし、周りからは奇異の視線に晒されるし。けれど目の前の誠実そうな人に言われるほどの苦労ではなかった気がした。酒に溺れて、真っ当に生きていられなかったから。他人に慰めてもらえるようなことでは無いのだ。

「そんな事はないんよ。私、お酒がないとなんにも出来んし。…でも、でも…ありがとうございます」

男の言葉は多くはなかったがひどく優しく紡がれた。フィロメーナは卑屈になるのも馬鹿馬鹿しくなって素直に礼を述べた。それから問われた問いにこくりと頷く。

「はい。一人でやってます。元々は知り合いのお店じゃったんですけど」

フィロメーナが言うとクレメルヒェンが不満気にダサいモスグリーンのエプロンを引っ張った。フィロメーナはあははと笑みをこぼして頭を撫でてやる。

「ごめんごめん。クレールも店員さんじゃったね。
この子は『空文堂』の看板犬のクレメルヒェン言います」

それからフィロメーナは不意に思い出して、頭を下げた。

「申し遅れまして、私はフィロメーナ=キューンです。お客さんのお名前は?」

【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.114 )
日時: 2015/06/03 21:33
名前: JESSICA (ID: qJIEpq4P)

 お酒がないと生きていけない。その言葉を聞いてテオドールは思わず苦笑していた。苦労など、そんなことはないと言いながらも、目の前の女性の弱さが言葉の節々に感じられた。彼女は他人からの同情なんていらないのだろうか、それによって彼女は傷つくだろうか、と不安に思いながらも目の前の女性の様子を眺めていた。

「……クレメルヒェン、ですか。良い名前ですね」

 不満げにエプロンを引っ張っているクレメルヒェンを眺め、再び優しげに笑みを浮かべた。良い子だね、とそう話しかけながら体を優しく撫でる。彼女の笑みが見られたため、一安心もしていた。

「……フィロメーナさんですね。……俺はテオドール=バルツァーと申します……一応、騎士団に所属しています」

 テオドールもフィロメーナにならって頭を下げ、苦笑しながら常日頃身につけている騎士団の制服と細身の件を軽く指で示した。これを見るだけで緊張し、自分を嫌煙する人間にも少なくはなく、このような格好を止めるようにしようと自分で何度も思ってはいるのだが、やはりこの格好に落ち着いてしまっているのが現状であった。

「……いきなりこんな姿でお訪ねして申し訳ありません……もちろん騎士団の仕事には関係なく、一個人としてですので」

 慌ててそう言うとどうも言い訳をしたような気分になって思わずはにかんでしまっていた。こんな姿を見てしまえば、自分を警戒する人間もいなくなるだろうと感じながら。

Re: 【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.115 )
日時: 2015/06/03 22:07
名前: フレア (ID: ejGyAO8t)

「誰にももう頼みませんよ....こちらこそ、楽しいお話をありがとうございます」


ゆっくりと微笑んだセレーナは、やっと目を合わせてくれたキリルに微笑んだ。今言ったようなこんなことはもう誰にも頼まないだろう、今の会話でわかった。自分が素を見せることは多分、兄に何かあったときぐらいしかないだろう、と。

ふわっと香った匂いに目を細めれば、こちらに近づいてくる音とバンッと豪快に扉を開ける音に飛び上がって小さな悲鳴を漏らした。

「....って、お兄様じゃないですかぁ。お久しぶりデスねぇ」

その音の原因、自身の兄の姿を見てふわっと微笑めば、続けて言われた質問に固まってしまった。何をしに来たのか、と言われれば「遊びに来た」と言えばいいだけなのだが、セレーナは兄に嘘がつけない。ついても多分すぐにばれてしまうだろうから吐きたくはない。

そう考えながらも小さく溜息を着けば、諦めたように苦笑して口を開いた。

「兄様がいない間に、少し研究状況を把握しておこうかと思いまして〜。」

Re: 【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.116 )
日時: 2015/06/04 20:22
名前: 鯨 (ID: hNhLtowv)


>>114

クレメルヒェンの名前を褒められたフィロメーナは途端にへらりと相好を崩す。クレメルヒェンは可愛いフィロメーナの息子のようで彼が褒められるとフィロメーナも嬉しくて仕方がなくなる。

「可愛いおチビちゃんって意味なんじゃけど、すっかり大きゅうなってしまって。おチビちゃんじゃなくなっちゃったんです」

大型犬のクレメルヒェンは主人の言葉に首を傾げてから撫でてくれるテオドールの掌をピンクの鼻でふんすふんすとかぎまわる。それからテオドールの答えを聞いてフィロメーナはそれを口の中で転がす。

「テオドールさん」

サラリとした響きの名前は目の前の誠実そうな男にはよく似合っていた。フィロメーナは一人で満足そうに頷いてから続いた言葉にきょとんと首を傾げた。

「騎士団…?」

聞き覚えのない言葉にフィロメーナはしばらく眉間にしわを寄せて考えたが、やはり思い当たる節がなくて深く頭を下げる。酒が回りそうなのでさっさと顔を上げてフィロメーナは言った。

「物を知らんで申し訳ないんですけど、騎士団を知らんのんです、私。
ていうか、ここ十年くらい店からほとんど出てなくて、世のことには疎いんです。そういう方がおるんですね。お仕事は街の治安維持ですか?」

フィロメーナはひっく、と小さなしゃっくりをこぼして心底不思議そうに首を傾げた。もしかするときっちりとしたテオドールの服はその騎士団とやらの制服なのだろうか。

「……いきなりこんな姿でお訪ねして申し訳ありません……もちろん騎士団の仕事には関係なく、一個人としてですので」

はにかんでそう告げるテオドールにフィロメーナはいえいえと首を横に振る。どんな立場の人間が来ようがフィロメーナには関係の無いことである。この店の中の事しか知らないフィロメーナにとって彼が外でどんなことをしていようが店を出ていけと罵るつもりも追い出すつもりも毛頭ない。この店の中で狼藉を働くのなら話は別だけれど。

「どんなお客さんでもおもてなしするんが『空文堂』の経営理念ですけん、気にせんとってください。
ところでお探しの物はなにかな、小説?専門書?お望みのもんをさがしてみせますよ」

【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.117 )
日時: 2015/06/04 21:05
名前: JESSICA (ID: qJIEpq4P)

「……なるほど。……可愛らしい子ですね」

 名前の意味を聞き、すっかり大きくなったとのフィロメーナの言葉に笑みをこぼしながら、かがみこんでクレメルヒェンを優しく撫でる。こうやってゆっくりと動物にふれ合うのは久しぶりだったため、テオドール自身も嬉しげだった。

 クレメルヒェンを褒めたことで、フィロメーナの表情もより一層柔らかいものに変わった。彼女にとって彼がどれほどの存在なのかはその様子で察しが付くものだった。こんなにも愛されていればこの子も幸せだろう、と嬉しげにクレメルヒェンを眺めていた。

「……あぁ、そうでしたか」

 騎士団を知らない。その言葉を聞いてテオドールは思わず意外そうな表情を顔に浮かべたが、店の外には出ていないと聞き、納得して頷いた。騎士団を知らないと言うなら、ここ最近の外界のことも知らないのだろう。……知らない方がいいこともある。

「……治安維持……まぁそのようなものです」

 苦笑気味にそう呟き、何かあれば相談してください、と付け足した。此処が反乱軍との交戦の場になることはないだろうが、犯罪の取り締まりも街を守るためには必要なことだ。事実、愛犬が一緒とは言え、女性一人で店をしているフィロメーナが心配だったこともある。

「……あなたを驚かせてしまったかと思って。……それなら俺も気が楽です」

 騎士団の団員がこんなところをフラフラしているのを見られてはいけない気もしていたため、力が抜けたように苦笑してそう言った。腰に下がっている剣も何となく手で押さえていたが、もう必要もないだろうと力が抜けた様子だった。

 テオドールさん、と自分の名前をじっくりと呟かれて恥ずかしそうに微かな笑みを浮かべたテオドールだったが、お探しのもの、と聞かれて申し訳なさそうにそれが、と言葉を紡いだ。

「……此処をたまたま見て入ってみたんです。……普段は本を読む時間もなくて、何がいいのかあまり分からないな……」

 昔から勤勉ではあったが、勉学をする機会も理由もなかったテオドールは文字を覚えたはいいが、好き好んで本を読もうと考えたこともなかった。興味を持ったのもつい最近だった。

 周りの本棚をぐるりと見渡して、うなりながらそう呟く。

「……お勧めは、ありますか? ……その、あまり長いものは読めないのですが」

 

Re: 【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.118 )
日時: 2015/06/04 22:41
名前: 鯨 (ID: hNhLtowv)


>>117

フィロメーナはテオドールの言葉を聞いた途端、曇った瞳を一瞬だけ輝かせた。淡い藤色の瞳がその時だけ透き通り、昔の輝きを取り戻す。本と犬が大好きなフィロメーナにとってこの二つに関わる時は普段見せない表情を覗かせることがある。

「うわぁ、腕がなるなぁ。なんが良えかな」

フィロメーナはウロウロと本棚の間を行き来して本を物色する。色々とお勧めはあるがこの人に一番喜んでもらえそうなのはどれだろう。恋愛小説はあまり読まなさそうだ。でも武勲を立てた将軍の自伝もそう好きそうではない。鼻歌でも歌い出しそうな勢いのフィロメーナに、クレメルヒェンが走り寄って張り付く。迂闊な彼女が転んだ時に助けようとでもいうのだろう。本当に賢い犬だ。
フィロメーナはふと棚の上の方に目を留めて、しばらく動きを留めた。そこはファンタジー小説の置かれた棚で、フィロメーナはしばらくその棚の前で考え込んでいたが、やがてそこから一冊の本を抜き取りテオドールの前に戻って来た。恭しい手つきでフィロメーナが持ってきたのはそう太くない読みやすそうな厚さをした本だった。表紙の装丁は綺麗な青空で、銀色の糸で題名と作者名が縫いこまれている。

本の題名は『ひとりぼっちのツキ』
そして作者の名前はファミリーネームもなくひどく短かった。

「モニカ。私のお気に入りの作者さんなんです」

Re: 【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.119 )
日時: 2015/06/05 11:09
名前: 時谷 空 ◆AdKeSZp7eg (ID: o6x1qd73)

>>109


またお前か、とサラへと向けた短銃はサラの顔の横を過ぎる。彼を追い始め最初こそ彼の攻撃に焦りはあったものの最近ではサラにとって心地よいものへとかわっていた。
もちろん、殺されかけたことだって何度もあるがそれすらもスリル満点ね、と楽しんでいた。

何かを思い出すように視線を動かし口角を僅かに上げる彼は初めて見る表情で。いつも顰めっ面で悪態をつく彼しか知らないサラにとってそれはまるで芸術のように美しくまるで何かの絵画を見ているかのような錯覚に陥っていた。

その芸術作品は、すぐさま壊れてしまいいつもの彼に戻ってしまった。そして嫌いだと、消えてもらうとそう顔を歪めサラを否定する。

「あら、それは残念。でも嫌いだと言うことは少なくとも私の存在に少しでも関心があるってことね、」

今はそれでいいわ。と嬉しそうに笑い彼の狂気を受け止める。拒否されればされるほど燃え上がってしまう。それは対象がサラ自身興味のあるものに対してのみだが…。

先程の銃弾もあり、次の彼の攻撃に警戒するように後退り、周りの地理を頭にいれていく。
同時に彼を盗み見ていたがどうやら彼は彼でこの後のことを思案しているようだった。
ある程度の地理は把握したため彼の行動を見守るべく近くの倒壊した建物の瓦礫に腰掛け、じっくりと彼を見詰めていた。
何度見ても艶のよい健康的な髪に見惚れていたが考え事が終わったのか不意に視線が合う。その瞬間雲から月の光が漏れ彼を映し出す。
その姿を見てサラはゆっくりと口角をあげ狂気的な笑みを浮かべる。

「このまま消されるのも遠慮しとくわぁ!もっと美しいモノを眺めていたいもの。
…それに私、いまだに貴方の名前も知らないもの。いい加減教えてはくれないのかしら?」

こうは言ったものの彼はどうせ教えてくれないのだ。このやり取りだってこの二人には挨拶のようなもので彼の表情をさらに険しくさせることはサラには楽しみの一つでもあった。

【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.120 )
日時: 2015/06/05 20:24
名前: JESSICA (ID: qJIEpq4P)

 フィロメーナの瞳が一瞬、美しく透き通った。自分の発言のどこかに彼女の中の何かがはじけたらしい。藤の花のような美しい目に一瞬驚くが、テオドールは何やら楽しげなフィロメーナの様子と、その傍を手助けでもしようとするかのようについていくクレメルヒェンを眺めていた。

 正直本などを読んだこともないからどんなものでも勧められれば買うつもりでいた。彼女に自分の好みを伝えれば良かったと後でそう思ったが、あまりにも楽しげな彼女の足を止めてまで伝えることではなかった様子で、しばらくして彼女は一つの本棚の前で足を止め、其処から一つの本を自分のところへと大切そうに運んできてくれた。

 それは鮮やかな空色の中に銀色の文字が映える一冊の本で、あまり厚くなく、テオドールでも読めそうな本だった。覗き込むようにしてその本の題名と、作者の名前に目を走らせる。モニカ、ファミリーネームも何もないその名前をフィロメーナは気に入っている作家だと紹介してくれた。

「……これなら、俺でも読めそうです」

 おそらくそんなところも考慮してくれたのだろう。テオドールはフィロメーナの気遣いに嬉しげに微笑んでそう言った。そっとその本を手に取ると、脆い大切なものにでも触れているかのように、何処か危なげにページを少しめくってみる。

「お気に入りの作家ですか…………なら、最後まで読まないといけませんね」

 最後まで、とそう呟いた表情はどこか厳しいもので、今までのテオドールの表情から消え去っていた戦いに生きた人間の刺が含まれていたが、すぐにその気配も消え、気の抜けた笑みを浮かべて見せた。

「……わざわざありがとうございます……これをもらいます。いくらでしょうか?」


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