雑談掲示板

【開催】第14回 紅蓮祭に添へて、【小説練習】
日時: 2022/06/18 14:16
名前: 浅葱 游◆jRIrZoOLik (ID: bC2quZIk)

*
 
 執筆前に必ず目を通してください:>>126

*

 ■第14回 紅蓮祭を添へて、 / 期間:令和4年6月18日~令和4年7月31日
 白く眩む日差しの中で、水面は刺すように揺れていた。



 □ようこそ、こちら小説練習スレと銘打っています。


 □主旨
 ・親記事にて提示された『■』の下にある、小説の始まりの「一文」から小説を書いていただきます。
 ・内容、ジャンルに関して指定はありません。
 ・練習、ですので、普段書かないジャンルに気軽に手を出して頂けると嬉しいです。
 ・投稿するだけ有り、雑談(可能なら作品や、小説の話)も可です。
 ・講評メインではありません、想像力や書き方の練習等、参加者各位の技術を盗み合ってもらいたいです。


 □注意
 ・始まりの一文は、改変・自己解釈等による文の差し替えを行わないでください。
 ・他者を貶める発言や荒らしに関してはスルーお願いします。対応はスレ主が行います。
 ・不定期にお題となる一文が変わります。
 ・一作品あたり500文字以上の執筆はお願いします。上限は3レスまでです。
 ・開始時と終了時には「必ず」告知致します。19時から20時を目安にお待ちください。
 ・当スレッドのお題を他所スレッドで用いる際には、必ずご一報ください。
 


 □お暇な時に、SSのような形でご参加いただければと思います。


 ■目次
 ▶︎第1回 氷菓子を添へて、:今日、全てのテレビ番組がある話題について報道していた。
 >>040 第1回参加者まとめ

 ▷第2回 邂逅を添へて、:彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。
 >>072 第2回参加者まとめ

 ▶︎第3回 賞賛を添へて、:「問おう、君の勇気を」
 >>119 第3回参加者まとめ

 ▷第4回目 袖時雨を添へて、:手紙は何日も前から書き始めていた。
 >>158 第4回参加者まとめ

 ▶︎第5回 絢爛を添へて、:「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
 >>184 第5回参加者まとめ

 ▷第6回 せせらぎに添へて、:名前も知らないのに、
 >>227 第6回参加者まとめ

 ▶︎第7回 硝子玉を添へて、:笹の葉から垂れ下がる細長い紙面を見て、私は思う。
 >>259 第7回参加者まとめ

 ▷第8回 一匙の冀望を添へて、:平成最後の夏、僕こと矢野碧(やの あおい)は、親友の中山水樹(なかやま みずき)を殺した。
 >>276 第8回参加者まとめ

 ▶︎第9回 喝采に添へて、:一番大切な臓器って何だと思う、と君が言うものだから
 >>285 第9回参加者まとめ

 ▷第10回 鎌鼬に添へて、:もしも、私に明日が来ないとしたら
 >>306 第10回参加者まとめ

 ▶︎第11回 狂い咲きに添へて、:凍てつく夜に降る雪は、昨日の世界を白く染めていた。
 >>315 第11回参加者まとめ

 ▷第12回 玉響と添へて、:――鏡よ、鏡。この世で一番美しいものは何?
 >>322 第12回参加者まとめ

 ▶第13回 瓶覗きを添へて、:赤い彼女は、狭い水槽の中に閉じ込められている。
 >>325 アロンアルファさん
 >>326 友桃さん
 >>328 黒崎加奈さん
 >>329 メデューサさん
 >>331 ヨモツカミ
 >>332 脳内クレイジーガールさん

 ▷第14回 紅蓮祭に添へて、:白く眩む日差しの中で、水面は刺すように揺れていた。


 ▼第n回目:そこにナマコが置いてあった。
 (エイプリルフール企画/投稿期間:平成30年4月1日のみ)
 >>156 悪意のナマコ星さん
 >>157 東谷新翠さん
 >>240 霧滝味噌ぎんさん


 □何かありましたらご連絡ください。
 →Twitter:@soete_kkkinfo
 

 □(敬称略)
 企画原案:ヨモツカミ、なつぞら
 運営管理:浅葱、ヨモツカミ

*

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Re: 漆黒の添へて、【小説練習】第n回開催 ( No.156 )
日時: 2018/04/02 19:56
名前: 悪意のナマコ星 (ID: S.H6XK8I)

悪意は消えました。

読みたければ彼岸花までご相談ください。

Re: 添へて、【小説練習】 ( No.158 )
日時: 2018/04/04 19:13
名前: 浅葱 游◆jRIrZoOLik (ID: xIX0I71A)

 ▷第4回目:手紙は何日も前から書き始めていた。
  参加者まとめ。

 >>129 浅葱 游さん
 >>130-131 電子レンジさん
 >>132 通俺さん
 >>133 月白鳥さん
 >>134 ちん☆ぽぽさん
 >>135 refrigeratorさん
 >>136 Phallus impudicusさん
 >>137 葉鹿 澪さん
 >>139 あんずさん
 >>140 扇風機さん
 >>141 ヨモツカミ
 >>142 雛風さん
 >>144 黒崎加奈さん
 >>146 メデューサさん
 >>147 三森電池さん
 >>148 月 灯りさん
 >>149 フランベルジュさん
 >>150 かるたさん
 >>152 日向さん
 >>153 藤田光規さん

絢爛を添へて、 ( No.159 )
日時: 2018/04/04 19:22
名前: 浅葱 游◆jRIrZoOLik (ID: xIX0I71A)


 これより第5回:絢爛を添へて、を開催させていただきます。
 お題:「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
 期間:4月4日~4月30日

 皆様のお時間があります時に、参加していただけたらと思います。
 よろしくお願いいたします。

*

 また、併せまして新たに質問が来てありましたので(>>126)にてお返事させていただいております。
 何事も過度でなければ許容することはできますので、やりすぎにだけお気をつけてくださるとありがたい次第でございます。
 皆様が快く参加できるよう、今後も尽力してまいりますので、よろしくお願いいたします。


 運営

Re: 【第5回】絢爛を添へて、【小説練習】 ( No.160 )
日時: 2018/04/04 20:05
名前: 河童◆KAPPAlxPH6 (ID: A/CBOApM)

「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
「元の頂点がフビライハンで、フライの頂点がエビフライだよ」

 僕とテーブルを挟んで相対するこいつは、馬鹿な癖に勉強が好きで、すぐに学んだ知識がとっちらかってしまう。多分、このファミリーレストランのメニューのエビフライを見て、フビライハンが混ざったのだろう。
 今日は日曜日。僕はまったりと過ごそうと考えていたのだが、こいつは違ったらしく、明日社会の小テストがあるからと勉強に精を出したいらしい。
 そのため、僕を呼んでこのファミレスで勉強会をしよう、とのことだった。
 しかし、まさかいくらこいつが馬鹿だからと言って、『フビライハンひとつ!』と店員さんに注文するとは思ってもいなかった。
 店員さんは30秒ほど固まったあと、

「……あっ、エビフライですね。かしこまりました」

 と、やっとのこと解読して厨房の方へ向かっていった。
 そしてこいつがエビフライとフビライハンを間違えたことに気がついて、冒頭の質問に至る。

「いや待ってくれ、じゃあフランスパンとフライパンは何が違うんだよ」
「フランスパンは食べにくいパンでフライパンは食べられないパンだ」

 するとこいつは何をとち狂ったのか、テーブルの上にそれをメモし始めたのだ。おいおい、フランスパンもフライパンもテストには出ねえよ。と言いたいところだが、面白そうなので放置しておく。

「エビフライはフライで、フランスパンがパンなら、フライパンは揚げ物を挟んだパンということにはならないか?」
「そうか、フライパン美味しいよな」
「うん、美味い!」

 そろそろこいつは救いようのない馬鹿なのではないかと思えてきた。僕は店員さんが運んできたエビフライを1口食べる。うん、美味しい。

「このフライパン美味しいな!」
「そうだな、美味しいな」

 ついに、フビライハンすら飛び越えてフライパンとエビフライの違いすらわからなくなったようで、エビの尻尾まで食べておきながらそんなことを言う。もうどうしようもない。
 まあそんなことはさておいて、こいつの勉強に付き合ってやる。

「だから、まずチンギスハンがモンゴル帝国を統一してだな……」
「うん、うん……」

 僕がチンギスハンについて説明しているあいだに、こいつは寝たようだ。人に付き合わせておいて、よくもまあ寝られたものだ。
 ファミレスに来た時には昼だったはずなのに、もう午後4時である。そろそろ帰ろう。
 こいつの頼んだエビフライの代金を何故か僕が払って、家路につく。さあ、明日のテストが楽しみだ。

「それでは今日のテストを返します。名簿順に並んでください」

 月曜日の帰りの会。先生のその言葉で、全員が立ち上がり、教卓の目の前に並ぶ。僕は名簿番号1番なので、最初にテストをもらう。

「赤野くん、あなたらしくないミスですね。次は注意するように」

 ……? 何かミスをしてしまったらしい。答案を見返してみる。そこには『問一、元の初代皇帝を答えなさい』と書いてあって、その下に、『エビフライ』と書いてあった。
 ははは、本当の馬鹿は僕だったようだ。

《馬鹿話》

Re: 【第5回】絢爛を添へて、【小説練習】 ( No.161 )
日時: 2018/04/15 12:04
名前: さっちゃん (ID: sxer4YYk)

「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
「美味しい、美味しくない。魚類か哺乳類か。共通点もあるよ、赤っぽいし、揚げる前のエビとフビライハンのヒゲは黒いし!」
「はあ」
どこから引っ張ってきたんだ、それは。意味のわからない理論を広げる君に、心の中で質問を飛ばす。
「主観だ、です!」
「勝手に読むなよ、心を!」
「ごめんにゃさーい!勝手に聞こえてきちゃったの!なんかのバグかなあ?とりあえずどうなってるのか調べるね」
快活な彼女はすうっと目を閉じ、それはなんていうか、神秘的で奇妙で、彼女以外いらない気がした。そして機械が喋る。『スリープモードにはいります』
エビフライを見るたびフビライハンとエビフライは似てると言った、誰かの言葉を思い出すのだ。誰かの言葉は何故か同意され、その日の歴史の授業以降、フビライハンの肖像画にエビフライを描きたすが流行った。なんで?おかしいだろ!笹原さんが、そう、あの言葉は人気者の笹原さんが言った言葉だったけど、それにしたって、なんでエビフライなんだ。当時からテレビニュースになっていた宇宙人が、頭まで侵攻した。あの、円盤からくる光線が、みんなをおかしくしたんだ。訳の分からないギャグであろうなにかをまともに受け入れる空間なんかなかったのに。怖くなった。笹原さんは宇宙人によって改造された。謙虚で可愛くなんかない、人を操る裏切り者だ!僕が人型アイフォンを買うのも時間の問題だった。
ぐさり。ざく。銀色に光るフォークをエビフライに突き刺して、一口かじる。エビフライはずっと好きだった。ファミレスは偉大である。
『起動します』
「なんかね前回のアップデートの時に仕様が変わったみたい!」
「そうなんだ。まあとりあえずオフにしといてよ、アップルが地球を征服しそうで怖いし」
エビフライをまた齧る。フビライハンを齧っても、多分なんの味もしないだろう。強いて言うなら、塩っぽいのかも。汗臭そうだし。

**
『エイリアンまたはインベーダーによる思考破壊』

このままだとアップルが地球征服しそうです。かくいう私もiPhoneユーザーですが。さっちゃんでした。

Re: 【第5回】絢爛を添へて、【小説練習】 ( No.163 )
日時: 2018/04/06 09:57
名前: 羅知 (ID: t5PG.DHI)

「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
 
 君がそう言ったのは小学校五年生の遠足で僕がお弁当のエビフライを食べようとした、その瞬間だった。やけに真面目な顔で僕のエビフライを凝視しているなと思ったら、唐突にそう言ったのだ。突然のことで、その言葉を理解できなかった僕は、まずそのまま掴んでいたエビフライを、口に放り込み、もぐもぐと二、三回、咀嚼した後、ごくりと飲み込んだ。そして言葉が脳味噌に辿り着いた次の瞬間には僕は大声を上げて笑った。何を可笑しなことを言っているんだと腹がよじれるほど笑った。食べたエビフライが腹から戻ってきそうな程だった。君は僕のそんな態度が不服なようで、むすっとした表情で抗議する。
 
 
「何がおかしいんだ」
「あははっ!何がって──全てだろ?お前急にどうしたんだ?」
 
 
 エビフライは食べ物で、フビライハンは歴史上の人物だ。あまりにも違う。違いすぎて何が違うのか言い尽くせないくらいに違う。
 
 
「思ったから、思ったことを口にしただけだよ……何でそんなに笑うのさ」
「それは勿論面白いから笑うのさ」
「僕は真面目に言ってるんだぞ!」
「君が真面目にしてるからって、僕が真面目にならなきゃいけない理由なんてないからね」
 
 
 僕がそう揶揄うと君はうぐぐと悔しそうに呻いた後、言葉にならない怒りをぶつけるみたいに自分の食べようとしていたミニトマトをぐちゅりと潰した。トマトからは赤い汁がみるみるうちに溢れていって、お弁当の箱はどんどんそれで満ちていった。見るも無惨な姿になったミニトマトをしゃくっとフォークで刺すと、君はひょいとそれを口の中にいれて苦虫を潰すような顔でそれを飲み込んだ。僕はその一連の流れを楽しい気持ちで見ていた。君を見ていると、僕はいつだって楽しい。君は昔からよく突拍子もないことを言う。そのどれもが僕の考えてることとは何処かズレていて、でもそんな僕の見えない世界を見ている君は素敵だった。
 
 単色の世界は、つまらない。
 色はあれば、あるほど面白いだろう。
 

「……僕は"おかしい"のかな」
 
 
 トマトの汁でぐちゃぐちゃになった弁当のおかずを食べながら君は、ぽつりとそう言った。まあ"おかしい"だろう。僕がそう返すと、君はほんの少しだけ悲しそうな顔をした。
 
 
「でもそれが君だよ。僕の好きな君だ」
「…………」
「君が変わってしまったら、"変わっている"のを止めてしまったら僕は悲しい。そうやって自分を殺して生きる君を僕は見たくないよ。ずっとずっと変わらないでいて。僕が何処かへ行っても君を見失わないように」
「……君は何処かへ行ってしまうの?」
「分からない。……でもずっと一緒にはいられないよ」
 
 
 まだ十年しか生きていないのだ。分からないことだらけだった。僕と君はいつか離ればなれになってしまうのかもしれない。僕はいつか君を忘れてしまうのかもしれない。将来のことを考えると不安になる。君のいない世界で僕が生きること。君のいない世界で息をすること。それは想像もつかないことだった。
 
 だけど、そんな世界はきっと泣きたくなるだろう。
 
 
「大丈夫、きっとずっと一緒だよ」
 
 
 君が僕を励ますように笑った。そうかな、そうだよ、そうだよね。何となくそう思えるような気がした。先生の呼ぶ声がして、僕は残っていたお弁当を急いで口に掻き込んだ。
 
 
 
「ずっと、一緒にいようね」
 
 
 ぐしゃぐしゃになったエビフライからは、青臭い匂いがしていた。
 
 
 
 
 ∮
 
 
 
『シネ!!』
『帰れ!!ゴミカス!!』
『学校来んな』
 
 
 机に書かれた罵詈雑言を君は唇を噛み締めながら見つめている。泣きそうになりながら、それでも堪えようとして、血が出る程に唇を噛んでいる。教室の誰もが君を無視していた。いないものだということにしていた。僕はそれを何も言えずに見つめていた。君が恨みがましそうにこちらを見る。助けてよ、辛いよ、何で僕がこんな目に合わなきゃいけないの。そう目が訴えていた。その目を見るのが辛くて、僕は君から目をそらした。
 
 
「うそつき」
「僕は変わらなかったのに、君は変わっちゃったんだね」
 
 
 君がそう言っているような気がした。教室の皆と同じように、僕は君を無視したのだ。
 
 
 
 
 
 それから程なくして、君は死んだ。
 そして、僕は、この学校を転校した。
 
 
 
 僕が、君を殺した。
 
 
 
 君の亡骸をここに残して、僕は逃げ出したのだった。
 
 
 
 
 中学二年生の、秋のことだった。
 
 
 
 
 ∮
 
 
 
 
 
 僕は大人になった。
 あの日のことは今でも忘れない。
 君と過ごした日々を忘れたことなんて一度もなかった。
 
 
 
「約束守れなくて、ごめんね」
 
 
 
 ずっと一緒にいるって言ったのに。
 守れなくて、ごめんね。
 
 
 君のいない世界で僕はまだのうのうと生きている。大人になって案外君がいなくたって生きていけることを知った。大切なモノを亡くしても、人は生に固執してしまうことを思い知った。就職活動をする為に、都会に出た僕は独り暮らしをすることに決めた。まだ引っ越してきたばかりで、物は届いておらず、部屋がとても広く感じた。
 
 
「…………」
 
 
 物がなさすぎて、とにかく時間が余っているので、今のうちに就職先への履歴書を書いてしまおうと思った。
 
 
「…………」
 
 
 ペンを持つ。
 
 
 
「…………」
 
 
 
 時間が経った。
 
 
 
「…………」
 
 
 
 何も書けなかった。
 
 
 
 
 書けるはずがなかった。
 
 
 
 
 あの日、自分(きみ)を殺してしまった僕に、僕が語れる訳が、なかったのだった。
 
 
 
 
 
 ぼろぼろと涙が溢れて、履歴書がぐしゃぐしゃになっていく。
 
 
 
 
 
 大人になって向かい合った僕は、この何もない部屋みたいに空っぽで、すっからかんだった。
 
 
 
 
 
 僕は君がいなきゃ、駄目だったのに。
 
 
 
 
 

 死んだ君は、もう二度と帰ってこない。
 
 


*

*青春は一瞬で二度と帰ってこない。
*イマジナリーフレンドの話
 

Re: 【第5回】絢爛を添へて、【小説練習】 ( No.164 )
日時: 2018/04/14 16:17
名前: 奈由 (ID: NCx6S3O2)

「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
「………は?」
私は流石に理解ができなかった。いくらこいつが馬鹿で、意味のわからない発言を色々としていて、その割には短編の物語をそれなりにかけるぐらいのやつだとしても、理解ができなかった。
「みー、聞いてるー?だからー」
「フビライハンとエビフライの違い?ググれ」
なんでエビフライ食べながら聞くのよ!?
うちの近くのスーパーのお惣菜コーナーでお買い得だった1本100円のエビフライ食べながら聞くの!?
しかも6本買うってどう言う神経してるのよ。
いや、そもそもなんて女子高生がエビフライ食べながら人の家でフビライハンとエビフライの違いについて問うのよ?謎すぎる……
「ワーカーンーナーイー!教えろー!」
「エビフライが食べるやつ、フビライハンが死んだ人」
この子見た目は可愛いんだけどなー。脳内お花畑なのがなー。
ていうかなんで私の家でエビフライ食べながらフビライハンとエビフライの違いについて聞いてるのよこいつ………
「わかった!フビライハンが食べるやつで、エビフライが人ね!」
あーもうやだ。突っ込むのすらめんどい。
「そうだよーすごいねー」
なんでエビフライとフビライハンがごっちゃになるかなー?逆だよ逆!
……もう6時かー。早いな……どうせなら…………
「エビフライあと何本残ってる?」
「4本!」
「わかった、チャーハン作るからエビフライ皿に取り分けておいて。あんたも食べていくでしょ?」
「りー!」
♢ ♢ ♢
ついでに、後日こいつがスーパーのお会計でエビフライとフビライハンを間違え、
挙げ句の果てに先生の質問に自信満々に
「エビフライ!」
と答え、クラスで大爆笑が起こったのは言うまでも無いだろう。
「みー、なんでみんな笑ってたんだろーね」
「さーね?」
やっぱこいつ、馬鹿だなぁ
そもそも最初に違いを正さなかったわたしがわるいきもするけど

Re: 【第5回】絢爛を添へて、【小説練習】 ( No.165 )
日時: 2018/04/08 20:55
名前: ジャンバルジャンなんじゃん!? (ID: IWgS0jCQ)

「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
「いきなりどうしたんだ?」

 パソコンのマウスを鷲掴みにして妄言を吐いたタカシに、僕はどうしたものだろうと目を丸くした。
 ここは我らが文芸部の部室。我らがとは言っても部員は僕とこのタカシしかいないんだけど。部室棟4階。割と眺めは良く、野球部がグラウンドで所狭しと駆け回ってるのが見える。女子テニス部員の汗に濡れたTシャツと短パン姿を目で追ってる時の出来事だった。

「いやさ、ほら聞きたくなって」
「どんな心境だよ」

 僕達2人が放課後にダラダラと駄弁るのには大きすぎる部室。その端っこにかなり古い型のデスクトップのパソコンが所在無さげに置いてある。これは視聴覚室から勝手にパクってきたものだった。このパソコンで僕達は小説を書いてウェブ上にアップしたり、ユーチューブで適当な動画を見たり、時には18禁のサイトとかをヨダレを垂らしながら検索している。ほぼ帰宅部状態の僕らの文芸部だ。

「ほれ、マサちょっとこっち来いよ」

 タカシがそう言ってパソコンのディスプレイの上から手だけ出して僕を呼ぶ。「なんだよ」と僕は窓から離れてタカシの方まで歩いて行く。折角テニス部の可愛い娘が頑張ってたのに。

「ほら、これ見てみ」

 パソコンの画面をタカシは僕に示した。そこに映ってるのは、僕らが気まぐれに小説を投稿している小説カキコというサイトの見慣れたページ。

「どうした?お前の書いてるクソみたいな小説が賞でも取って頭おかしくなったの?」
「クソみたいって言うなし。大体今は大会の時期でも無えだろ。──ほら、添へてだよ添へて」
「あーなるほど」

 添へてとは、サイト内のある個人が運営する小説練習用のスレッドである。不定期にお題が変わっていって、そのお題の一文から始まる短編を書くというものなんだけど。

「今回のお題さ、『フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ』なんだけどさ、マサなら何て書くよ?」
「うっわ難しいね」

 僕はしばらく考える。フビライハンとエビフライの共通点とかあっただろうか?

「こんなんはどう?」
「おう、どんなんだ」
「モンゴル統一の旗を挙げるのがフビライハンで、油で揚げるのがエビフライ」
「面白くねえわ却下」
「なんでだよ」

 僕は軽くタカシの肩を小突く。痛え痛えと大袈裟に彼は笑ってるけど、多分全く効いてない。こいつは実家が八百屋で、その手伝いをしてる内に文化部の癖に変に筋肉が付いてるのだ。実際僕の拳がジリジリと痛む。

「じゃあタカシならどうすんの?」
「そうだな、権力にまみれてるのがフビライハンで、タルタルソースにまみれてるのがエビフライって感じだな」
「お前も面白くねえじゃんか」

 僕の言葉にタカシはカハハと乾いた声で笑った。やっぱり僕達は物書きにはあまり向いてないみたいだ。文章力だってまだまだ稚拙。そんなものだ。もともと僕は小説を読むのは好きだったけど国語の点数だって赤点ギリギリの低空飛行だ。タカシに関しては10点台。このスレッドに先に投稿してる人たちみたいに上手いこと書けたら良かったのに。

「うおっ、もう5時じゃん!帰らねえと!」

 腕時計を見たタカシは驚いたような声を上げた。僕は首を傾げる。

「ん?まだ5時だぞ」

 いつもは6時過ぎまでこの部室でダラダラ駄弁って、日が落ちる頃に2人で帰路に着くんだけど、どうしたのだろうか。

「今日さ、家族と一緒に外食に行く予定だったんだよ。お母がジンギスカンが好きでな」
「ジンギスカンか、美味しそうじゃん。じゃあ僕ももう帰るか」
「おっけおっけ、そうしようぜ」

 言って、タカシはいそいそとディスプレイの右端の赤いバツまでマウスポインタを動かす。カチリとクリックの音。小説カキコの画面が消える。それからスタートを開いてから、パソコンをシャットダウンした。

「マサも何か良いの出来たら投稿しようぜ。俺も飯食いながら考えっからさ」
「うん、オーケー。どっちが上手いやつ書けるか勝負しよう」
「んじゃ帰んぜ」

 タカシは床に置いてある学生カバンとリュックを掴んで立ち上がった。僕も彼に続いて、窓際に置いてる自分の荷物を持って部室を出た。


 そしてその日の夜。
 風呂上がりに携帯の電源をつけて、小説カキコの雑談掲示板を見たら、『絢爛を添へて、』の最終更新の欄に見慣れたハンドルネームを見つけた。無論、タカシのものだ。もう出来たのか、早いなと思ってスレッドを開く。

「ん?」

 スレッドの1番下にタカシの文章を見つけた。1000文字ほどの短いSSたが、どこかに違和感。どこかがおかしい。そして気付いた。彼の文章の一文目はこうなっていた。

『チンギスハンとジンギスカンの違いを教えてくれ』

「改変しちゃダメだろ……」
 僕はタカシのアホな顔を頭に思い浮かべた。

Re: 【第5回】絢爛を添へて、【小説練習】 ( No.166 )
日時: 2018/04/09 20:48
名前: 通俺◆QjgW92JNkA (ID: 8LE2hO/.)

「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」

 彼は確かに、自信満々に述べて見せた。
 それに対して俺は、てっきり彼が下手な冗談でも言ったのかと思う。鎮まりかえる部屋で二人、居心地が悪くなって「悪い、聞いてなかった」と誤魔化した。

「……で、結局タイトルは何て言うんだ?」
「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
「――気でも狂ったか!?」
「ああ略称はフビエビって感じで行こうかと」
「んなもん聞いてないわっ! これほんとにお前が人生掛けて書き上げた小説の話だよな!?」

 編集者稼業をしている中で、こんなことは初めてだ。
 驚天動地ともいえるこの状況。子供のころから仲の良かった幼馴染からの突然の呼び出し。
 焦る気持ちで辿り着いたら小説家になるといわれ、挙句の果てにそんなふざけた名前を聞かされたら発狂してもしょうがない。
 むしろ何故、今俺が叫び問いただすだけで済んでいるか不思議でしょうがない。
 目の前に手渡された原稿を即座に破り捨てたい衝動に駆られる。

「そうだ、俺が練りに練ってついに完成した最高の一作だ。ちなみにペンネームは海老原 進」
「ド本名じゃねぇか! その勇気を褒めも称えもしないからな!?」
「ジャンルは異能学園バトルものでな、子供受けするために玩具展開も考えてきた」
「まじか、このまま小説の説明入るのか。
……しかも玩具ってお前、これただのエビフライじゃん」
「凄いだろ、衣をつけてアツアツの油放り込むだけでこんな美味しそうになるんだぜ」
「完全なるエビフライじゃねぇか。うわっ、手に油が」

 どこに隠していたのか、紙袋からエビフライが二本入ったタッパーを渡してきて奴は戯言をのたまう。
 今ここで全てうそだといわれても、もはや引き返せないところまで来ていることに彼は気づいているのだろうか。気づいていないのだろう。
 
 もうこの原稿を破るしか……友人の凶行を止めるべく手を伸ばし、気が付く。
 この紙、良く油を吸う。

「――クッキングペーパーじゃねぇか!?」
「お、よく気が付いたな。いやーその用紙に書くの大変だったんだけどさ、やっぱ揚げ物がタイトルに入ってるしこだわりたくてさ」
「いや、マジ意味わかんないって。仮に、宝くじが当たるよりも低い可能性だけど出版するときは普通の紙だぞ?」
「……」
「そうか、みたいな顔すんじゃねぇ!?」

 もはや訳が分からない、いったい何がここまで彼を狂気の道に走らせるのだ。
 エビフライなのか、彼はエビフライ神に取りつかれたというのか。何度叫んでみても彼は正気に戻らない。
 混乱しているこちらをよそに、彼は原稿を取り返しパラパラと捲り中身を見せてくる。
 その中には、挿絵らしきものも存在しておりキーキャラと思わしき二人がいた。

「まずこの赤く頭にとんがりがあるのが、主人公の燕尾 飛行(えんび ふらい)君。日本一エビフライとフビライハンが大好きな小学生」
「突っ込みたい箇所が大渋滞起こしてるんだが」
「ちょっと待ってくれ。彼が毎日毎日フビライハンの伝記を読みながらエビフライを食べていたところで物語が始まるんだ」
「おい待て」
「もう少し待ってって……まあ色々省くけど、彼はエビフライをフビライハンにする能力を得て戦いに巻き込まれていくんだ」
「どんな絵面だそれ!?」

 髪型はまぁいい。子供向けばありがちかもしれない……エビフライの尻尾にしか見えないそれはどうかと思うがまあいい。
 だが、飛行と書いてフライ。エビフライとフビライハンが好きという謎設定。まぁ、まぁ……よくないけどスルーする。

 しかし、どう好意的に解釈しても、エビフライがフビライハンというおっさんに変容していく様が格好いいとは思えない。性癖としてもニッチすぎる。
 挿絵にはエビフライを敵に投げつける少年、そしてエビフライの先っぽから既にフビライハンが顔を出している。
 シュールという言葉すら生ぬるい、もはやホラーだこれは。

「そしてこっちはヒロインの腐美雷(ふびらい)・ハンちゃん」
「その当て字どうにかなんねぇの。というか女の子なんだ、髭生えてっけど」
「滅びゆく民族の最後の一人なんだ。それで彼女の能力が……この絵の通り、フビライハンを美味しいエビフライにしてくれるんだ」

 どう見ても顎髭たくましい、モンゴロイド。お世辞にもかわいいとは思えない。というかやたら顔がでかい。
 そして挿絵の中で彼女は、真顔でこちらを睨みつけてくるフビライハン達をエビフライに代えて……。

「まじでなんなんだよこの絵面! というかフビライハン増殖してるんだけど!?」
「そりゃ元になるエビフライを増やしたらフビライハンも増えるよ。みんな快く力を貸してくれるし、頼りになるよ」
「すんごい不服そうな顔なんだけど。この恨み決して忘れぬ、みたいな顔してっけど」
「けど最後はおいしいエビフライになって主人公が食べるから大丈夫だよ」
「大丈夫っ意味知ってるか?」

 その後も続く続くふざけたストーリー展開、敵キャラの設定、世界観。
 あまりに馬鹿らしくなった俺はとうとう聞くのを止めて部屋を出て行こうとする。
 それを察したのか、彼は俺の足に縋り付いてせがんでくる。

「まて、まてっ! せめてお前の会社に持って行ってくれよ! 絶対に売れるって、なんならこのエビフライ上げるから!」
「いらんわ! そんな作品持ってってみろ、俺が会社に居られなくなるわ。責任取れんのか!」
「頼むよ、これ書くために仕事も何もかも止めたからこれが上手くいかないと俺、俺……!」

「――エビフライ職人になるしかないんだ!」
「なってろ!!」


 後日、彼がエビフライ職人を雇えるほど裕福になるのはまた別のお話。



******

ちなみにライバルキャラはフライパンをフビライハンにします
 

Re: 【第5回】絢爛を添へて、【小説練習】 ( No.167 )
日時: 2018/04/10 23:13
名前: ねるタイプの知育菓子 (ID: 41n/O0sI)

迷走しました。起承転結 #とは…(;´・ω・)
_____

「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」

父の一言で、食卓は静まり返った。母と姉はお小遣いについてちょっとした喧嘩をしていて、私はそれを煩いなぁと思いつつ夕飯のエビフライをもぐもぐしていたのだけれど、それがビデオの一時停止みたいに全て止まって、どこかから救急車のサイレンが聞こえて、それも遠ざかっていった。随分長いこと沈黙が続いたような気がするけれど多分それは気のせいで、ほんの数秒だったのだろう。
何事も無かったかのようにまた母と姉は喧嘩を再開して、父と私は黙々とご飯を食べ続け、結局お小遣いは上がらず、機嫌を悪くした姉はいつものように私に八つ当たりして、部屋に籠ってゲームをしていた。
私はその日、寝るまで「ふびらいはん」について考えていた。まだ小学校低学年だったので、そんな単語は聞いたことがなくて、料理の名前なのかもしれないと思っていた。カレー、シチュー、フビライハン、みたいな。もしかして今日お母さんが作ったのは「エビフライ」ではなく「フビライハン」で、私は「フビライハン」を口に入れたのかもしれない、とも思った。その途端口の中に残った油の味がなんだか汚いもののように思えて、あわてて歯みがきをした。
今なら、「フビライハン」が人名だと言う事が分かる。父が言ったのは「フビライハン」と「エビフライ」をかけた(?)冗談で、母と姉はそれが分かっていたけれど笑わなくて、つまり父は盛大にスベったのだ、ということも。
ちなみにこの冗談と同じようなもので、「中臣鎌足生ハムの塊」という早口言葉があることも、エビフライのしっぽとゴキブリの成分が同じだという噂も知っている。数十年間で私はいらない知識を沢山身につけた。エビフライのしっぽは残すようになった。
今は2ヶ月に1度は姉も私も実家へ帰るくらい仲が良いけれど、当時は母と姉の喧嘩が絶えず、父は我関せずという顔でどちらかに味方することも仲裁することもせず、それがまた母の癇に障り、家族の雰囲気はなかなか最悪だった。そんな空気の中で、何を血迷ったのかいつもは無口な父があの言葉を呟いたのだ。冗談としては全く面白くないけれど、そう考えると少し笑ってしまう。

「ねぇ」
「どうしたの、あぁ、明日帰るんだっけ」
「あぁ……うん、仕事残ってるし」

何気なく返したつもりが、言い訳がましく聞こえる。寂しくなるねぇ、と母も呟いた。母が茶をすする音だけが響く。

「……またすぐ帰ってくるよ」
「そうだねぇ、待ってるね」

父が死んだのは4日前の事だった。急性心筋梗塞で、母が買い物から帰ってくると、既に冷たくなっていた。私はそれを会社の帰りに駅のホームに電話で聞いて、周囲の喧騒で何も聞き取れず、メールで聞き返してやっと理解した。咄嗟に、半年前に別れた元彼を思い出した。今日お父さんが死んでしまうと分かっていたら、誰でもいいから早く結婚すれば良かった。「運命を感じない」なんて理由で別れて、バカみたい。孫も見せたかった。もし私が彼を連れて実家に帰っていたら、お父さんはどんな顔をしただろう。「娘は渡さん」なんて言うのだろうか、彼の頬を思い切り殴るかもしれない、それとも……。
考え出したらキリがなかった。産まれた瞬間に神から力を与えられて、予知夢を見て父を助ける所まで妄想して流石に現実に引き戻された。父はもう居ないんだ、そうか。

「ねぇお母さん」
「何?」
「フビライハンとエビフライの違いって知ってる?」
「……どういうこと?」
「冗談だよ。全然笑えないよね、意味分かんないもん」

父はあの日、なんであんな事を言ったのだろう。ただの気まぐれだろうか。それとも、いつか言ってみようと温めていた冗談なのだろうか。そうだとしたら、さぞガッカリした事だろう。誰も笑ってくれなかったのだから。父が生きている間に聞きそびれた。座右の銘とか人生の目標とか、そういうのも聞いておけばよかった。後悔するのは、いつも何かが終わってしまった時だ。自分の人生が終わる瞬間、後悔なんてしないように、これから生きていこうと決めた。生き甲斐と愛する人と沢山の幸せを見つけて、大好きな家族に囲まれて息を引き取ったら、また父に会いに行く。幸せなエピソードをいっぱい聞かせて、「幸せだったよ、ありがとう」って言う。それから、あの冗談のことも話そう。結局、父はまだ、あのことを覚えているだろうか。私が突然そんな事を言い始めたら、驚くだろうか。

「お父さん、エビフライとフビライハンの違いって知ってる?」

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