雑談掲示板

【開催】第14回 紅蓮祭に添へて、【小説練習】
日時: 2022/06/18 14:16
名前: 浅葱 游◆jRIrZoOLik (ID: bC2quZIk)

*
 
 執筆前に必ず目を通してください:>>126

*

 ■第14回 紅蓮祭を添へて、 / 期間:令和4年6月18日~令和4年7月31日
 白く眩む日差しの中で、水面は刺すように揺れていた。



 □ようこそ、こちら小説練習スレと銘打っています。


 □主旨
 ・親記事にて提示された『■』の下にある、小説の始まりの「一文」から小説を書いていただきます。
 ・内容、ジャンルに関して指定はありません。
 ・練習、ですので、普段書かないジャンルに気軽に手を出して頂けると嬉しいです。
 ・投稿するだけ有り、雑談(可能なら作品や、小説の話)も可です。
 ・講評メインではありません、想像力や書き方の練習等、参加者各位の技術を盗み合ってもらいたいです。


 □注意
 ・始まりの一文は、改変・自己解釈等による文の差し替えを行わないでください。
 ・他者を貶める発言や荒らしに関してはスルーお願いします。対応はスレ主が行います。
 ・不定期にお題となる一文が変わります。
 ・一作品あたり500文字以上の執筆はお願いします。上限は3レスまでです。
 ・開始時と終了時には「必ず」告知致します。19時から20時を目安にお待ちください。
 ・当スレッドのお題を他所スレッドで用いる際には、必ずご一報ください。
 


 □お暇な時に、SSのような形でご参加いただければと思います。


 ■目次
 ▶︎第1回 氷菓子を添へて、:今日、全てのテレビ番組がある話題について報道していた。
 >>040 第1回参加者まとめ

 ▷第2回 邂逅を添へて、:彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。
 >>072 第2回参加者まとめ

 ▶︎第3回 賞賛を添へて、:「問おう、君の勇気を」
 >>119 第3回参加者まとめ

 ▷第4回目 袖時雨を添へて、:手紙は何日も前から書き始めていた。
 >>158 第4回参加者まとめ

 ▶︎第5回 絢爛を添へて、:「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
 >>184 第5回参加者まとめ

 ▷第6回 せせらぎに添へて、:名前も知らないのに、
 >>227 第6回参加者まとめ

 ▶︎第7回 硝子玉を添へて、:笹の葉から垂れ下がる細長い紙面を見て、私は思う。
 >>259 第7回参加者まとめ

 ▷第8回 一匙の冀望を添へて、:平成最後の夏、僕こと矢野碧(やの あおい)は、親友の中山水樹(なかやま みずき)を殺した。
 >>276 第8回参加者まとめ

 ▶︎第9回 喝采に添へて、:一番大切な臓器って何だと思う、と君が言うものだから
 >>285 第9回参加者まとめ

 ▷第10回 鎌鼬に添へて、:もしも、私に明日が来ないとしたら
 >>306 第10回参加者まとめ

 ▶︎第11回 狂い咲きに添へて、:凍てつく夜に降る雪は、昨日の世界を白く染めていた。
 >>315 第11回参加者まとめ

 ▷第12回 玉響と添へて、:――鏡よ、鏡。この世で一番美しいものは何?
 >>322 第12回参加者まとめ

 ▶第13回 瓶覗きを添へて、:赤い彼女は、狭い水槽の中に閉じ込められている。
 >>325 アロンアルファさん
 >>326 友桃さん
 >>328 黒崎加奈さん
 >>329 メデューサさん
 >>331 ヨモツカミ
 >>332 脳内クレイジーガールさん

 ▷第14回 紅蓮祭に添へて、:白く眩む日差しの中で、水面は刺すように揺れていた。


 ▼第n回目:そこにナマコが置いてあった。
 (エイプリルフール企画/投稿期間:平成30年4月1日のみ)
 >>156 悪意のナマコ星さん
 >>157 東谷新翠さん
 >>240 霧滝味噌ぎんさん


 □何かありましたらご連絡ください。
 →Twitter:@soete_kkkinfo
 

 □(敬称略)
 企画原案:ヨモツカミ、なつぞら
 運営管理:浅葱、ヨモツカミ

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Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.103 )
日時: 2018/01/28 02:52
名前: 日向◆N.Jt44gz7I (ID: UPA0otlg)

*コメントするする詐欺卒業。

筆を折った折より、復帰まもなく拙い且つ少ない文字数ではありましたが、多くの方に反応頂けて大変嬉しく思います。
本音を言うとやびゃあめっちゃうれp((

個人的な所感と、私めの文章に反応下さった方には少し添え花程度ではありますが多めに。
文字書きならば文章について語らいましょうとな。

*最初にネタバレというかこういう読み方もあったよ的な
【私】と【先輩】の共通の認識にある【御兄様】は結局読み手次第ではありまして、私も深くは考えていませんでしたが一つの読み方としては以下のものを準備していました。

作中の【御兄様】とは【先輩】の年の近い実兄でした。
同じ大学の同好会にて知り合った【御兄様】と【私】は恋仲にあったのですが、件の小説発表前に【御兄様】は不慮の事故で亡くなってしまいます。
そこで以前より彼女に想いを寄せていた【先輩】は何とかして兄の後釜に納まろうと何度も彼女を飲みに誘います。
実兄を貶めたり、時には悼んだりして見せて、不器用に彼女の気を引こうしますがここで【私】の冷酷さが垣間見えてしまいます。
「何故そんなに拘泥なさるのか」と。疾うに彼女の中で【御兄様】の存在は大きいものではありませんでした。
彼女にとって、きっとあれこれ手不器用ながらを尽くす彼は哀れで滑稽なピエロにしか見えなかったでしょうね。
そして移り身の早い【私】は当時の女性美の象徴とも言える黒髪を勇んで巻いて、【先輩】の苦悩など一切知らんぷりで、二人でお酒を飲む関係にある男性からの愛の告白を待つのでした。

>>73 Alf様
文章が好みだと言って頂けてとても有り難く感じると同時に、第三回目初っ端から紡がれる眼前の重厚な世界にこれはえらいこっちゃと思うばかりでした(語彙力
試験的に文体を変えた結果、違和感しか無かったらどうしようかと落ち着かない気持ちだったのですが…ありがとうございます、少し自信になりました。
実は自分の体験し得ない非現実的な世界を描くファンタジーの描写が苦手でして、今回はAlf様の龍の描写に多くを学ばせて頂きました。
他の方々も言及されていらっしゃる通り、やはり最後の一文で落とされました笑
爬虫類の肉はよく鶏肉に例えられると言いますから、勇者一行はその淡泊な白身に舌鼓を打ったのでしょうね^^

>>78 メドゥーサ様
某所で挨拶させて頂いた際にも言及した通りに、着眼点が個性的でホラー風味なのが好きです(語彙力
感想を書かせて頂くために作品を読み返す現在丑三つ時、部屋の気温が平常よりも下がってきたように感ぜられます。
これは私の気のせいでしょうか。

>>81–82 何でもしますから!様
えっ今何でもしますって(何番煎じ
いつかの某所で申し上げたとおりに文章が女性的だなあ、と思いながら拝読させて頂きました。
いや勿論湾曲せずに通じるとは思いますが褒め言葉です(汗
食えるんですよねこうばりむしゃと、あ、厭らしい意味じゃありません、本当ですよ。
最後の台詞にギュンときました、彼の戦いは長かったでしょうね、本当に。

(思ったよりも長くなってしまいそうなので一旦切ります、申し訳ない)

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.104 )
日時: 2018/01/28 19:59
名前: あるみ (ID: nmwA0g6I)

再びお邪魔します。今度は感想をば。まだまだ感想を送りたい方がいるのですが、文字数が増え過ぎてもアレなので、とりあえず前半。

 >>073 Alf様

>>102で名前をあげて頂いて、ありがとうございます。物凄く嬉しいです……!)
それはさておき、感想失礼します。
地の文がしっかりと量があって漢字の量も多目なのですが、決して言葉選びが難し過ぎる事はなく、あまり突っ掛からず最後まで読み進める事が出来ました。読み終えた後の充実感が凄くて、まとまっている素敵な作品だなぁと思います。世界観が好きです。他の方も仰っていますが、龍の描写が丁寧で生き生きとしていて、Alf様自身が龍の姿をしっかり頭のなかで作ってから書いておられるのだろうなと感じました。人間と比べて龍という存在の強大さが際立っていて『その骸をして己より遥かな高みの存在であること』という表現がとても好きです(勝手に引用して申し訳ありません)キャラクターの数も文字数のなかで登場させるには多めかと思うのですが、決して誰が誰だか分からなくなる事はなく、最後まで話に置いていかれる事もありませんでした。それぞれのついている役職に馴染みがある事もあると思うのですが、それぞれ違う要素が振り分けられていて、同じようなキャラクターがいない事が一番の理由なのかなと思います。Alf様の書く他の話も読んでみたいなぁと思うような、とっても素敵な作品でした! 語彙の豊富さもそうなのですが、淡々としているようで無駄なく読んでいて疲れない文章の書き方や、目の前に迫るような表現力に憧れます。凄く丁寧で、こんな文章が書けるようになりたいなぁ、凄いなぁ、と読んでいる最中ずっと圧倒されていました。心から尊敬します! またいつか、Alf様のお話を読めたらいいなぁと思います。


 >>080 日向様

独特のリズムがある文章、凄く好きです。漢字の使い方も含めて少し前の小説のような、流れの良さは演劇か何かの台本っぽくて、これは是非とも読み聞かせで聞きたいなぁと思います。多分無限リピートで聞ける。『じーざす』のような文章の雰囲気のなかでは意外な砕けた表現がある事も、ちょっとおどけたような感じで面白いなぁと思いました。流れがあって気持ちいいぐらいテンポよく読み進められるのですが、先輩が泣いた辺りは打って変わって静かでゆっくりになった感じがして、気持ちが物凄く盛り上がりました。先輩のキャラが立っていて好きです。こういう口調?の文章は大好きなのですが、なかなか自分では書けないので、日向様のお話を読めて凄く嬉しかったです。


 >>083 透様

読み終えて一番最初に書こうと決めたのですが、発想力が凄いですね! 蓑田の描写も彼の持つ不穏さがしっかりと表現されていて、読み進めているとどんどん蓑田に対する不信感といいますか、コイツやべぇぞ……コイツ絶対駄目なヤツだぞ……感が蓄積されていって、『俺』が足りない文字に気付いた辺りで爆発して、ひとり画面の前で「ほらぁぁぁ!」と叫んで盛り上がりました。ホラーテイストですが、蓑田の言動に露骨さがないのも素敵です。あと、終わり方が凄く好きです。どうなったのか分からないエンド、でもどうなってしまったか予想出来てしまうエンド、絶望感があっていいなぁと思いました。


 >>086 三森電池様

複ファ板の方でも拝見したのですが、三森電池様の文章が凄く好きです。特に人物の考え方が好きだなぁと思います。考え方といいますか、自分に対する分析がしっかりしていて、だからこそ生きづらそうな感じといいますか……検討違いな事を言っていたら申し訳ありません。文章が凄く綺麗だなぁと思います。未来の自分(幻覚)と『僕』の会話は、生きる理由を探すというよりは、色んな可能性を考えて、心の用意が整えられていく過程を見ているような気持ちで読んでいました。悔しさで真っ当に輝ける人もいるけど、周りにショックを与える方法で見返そうとする人もいるよなぁ、と『僕』が飛んだ時思いました。好きです。どこが素敵でどこが素晴らしくて、と具体的に言葉に出来ないのですが、とにかく好きです! 外れた事ばかり書いてしまいそうで、三森電池様に感想を送らせて頂くかどうか大分迷ったのですが、本当に好きなので、それだけでも言わせて頂こうかと……。もう感想とも呼べない感じですが、どうかご容赦ください。

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.105 )
日時: 2018/01/29 00:19
名前: あるみ (ID: T/eVfNbg)

 >>092 ヨモツカミ様

両方の視点が読める事で、二人の考え方の違い、お互いに対しての認識の違いがはっきりと分かる分、どうしようもないもどかしさを感じながら読み進めました。これがヨモツカミ様の小説であり、その読み手である私は二人の思考が分かるけど、現実では他人の考えなど分からないものですから、コミュニケーションって難しいなぁ、と改めて感じるお話でもありました。立ち位置によって関係性の重みというか、友情への執着度というか、そういうものの感じ方が皆一緒ではない事が凄くリアルだなぁと思います。自殺を決行した『わたし』は言葉足らずだし他力本願だけれど、明確であろうとなかろうと何か理由があって自分の気持ちを伝えきれない性格なんだろうし、『私』は彼女に対して冷たい対応ではあるけれど、大して親しくもない人間に対してと思えば責められる事でもないし……お話し中にはっきりと悪い人がいる訳ではないので、絶妙なやるせなさを感じます。この誰も責められないけれど誰も支持出来ない感じ、凄く好きです。定期的に読んで虚無感を覚えたい。『私』の対応が悪かったからというよりは相性自体が良くないんじゃないかなぁと感じたので、『わたし』が助かる道があるとすれば『私』の手によってではないだろうなぁ、などと勝手に考えていました。きちんとその人物らしい一人称で心情が書かれていて、そういう書き分けがしっかりと出来るからこそ、この雰囲気が出るんだろうなあと思います。私は同じような思考の人間の一人称しか書けないので、キャラクターでお話を書ける人には凄く憧れます! これは読めば読むほどキャラクターに愛着が湧く小説を書くタイプの人だなぁと感じまして、ヨモツカミ様の書かれる長編を読んでみたいなぁと思います。確か複ファ板にありましたね、やったぜ……! あと、『わたし』が自殺を決行する部分の文章がとても綺麗だなぁと思いました。


 >>093 浅葱 游様

私は普段あまりこういう話を読まないのですが、読み終えてまず思ったのは、登場人物のきらめき具合が尋常ではないなぁという事です。誠実さ?直向きさ?なんと言えばいいのか、ひたすら眩しいなぁと感じまして。お題を映画の台詞に据える事で展開できる幅が広がって、そこから、しっかりと勇気に絡めながらお話を作っているのが凄く上手いなあと思います。彼らが生活している日々の延長にある休日のお出掛けというプチイベント、そのなかの一部分を切り取ったという感じで、こじつけ感が全くない自然なお話で凄く素敵です。読みながらとてもお話を作る力がある人なんだろうなぁと思いました。SS企画なのでこんな事を言うと失礼かもしれないのですが、この先が読みたいな、ほとんど告白のこの台詞を聞いて姫華ちゃんがどう反応するのかが見たいな、と凄く思います。なんていいところで終わっているんだ……! キャラクターもそれぞれしっかりと魅力的で、優大くんは名前の文字通り優しい性格なんだなと思ったし、姫華ちゃんは自分の優しさを自虐的に捉えがちな優大くんを引っ張りあげるような、屈託なくてその実芯のある女の子なんだなと伝わってきて、もう相性ぴったりだから付き合ってしまえよ!とじれじれしながら読み進めました。あと、文章も読み進めやすくて、それだけじゃなく、所々の表現にセンスが爆発していて素敵です。『相変わらず恋に落とされる』という表現が特に好きです。どうしたら思い付くのか分からないような綺麗な表現が散りばめられていて、内容も眩しいし(二回目)、色々とたまらないお話でした。好きです。

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.106 )
日時: 2018/01/29 19:06
名前: some bundle (ID: I07o/OQQ)

「問おう、君の勇気を」

 狭い独房に谺する、芝居の様に大袈裟な声。

「女王陛下はこう仰っている。『哀しき叛逆者よ。絶望の淵を抜け出し、私の手を取りなさい』と。果たして君には、女王陛下の御手を取る勇気が……」
「もういい、下がれ」

 一兵士の朗々とした語り掛けを遮り、闇の中から軍靴の音が響く。漆黒を縫う様にして現れた男は、これまた漆黒の軍服を纏い、瞳には針の様な光が浮かんでいた。兵士の慌てた敬礼に見向きもせず、冷たい眼差しで牢の中の『それ』を睨め付ける。

「しかしカートライト中佐、この者は……」
「下がれと言っている」
「……はっ!」

 小走りに去っていく兵を横目に、カートライト、と呼ばれた男は溜め息を吐いた。彼の目の前で、壁に繋がれた何かが動く。全く頑固だな、と『それ』を嘲る様に言う。

「拷問と説法を繰返し……いや、説法も拷問の一つか? まあいい。お前もよく気が狂わずに居られるものだ」

 男は喉の奥で低く笑う。そして、気分はどうだい? と問うように『それ』の顔を覗き込んだ。
 チャリ、と鎖が擦れる音。男の目の前に佇む『それ』をきつく拘束している鎖は太く、黒々と光っている。その鎖に喰い込み音を立てる体は、部分によって赤黒い谷が出来ていたり、酷いケロイド、或いは幾つもの注射痕、内出血して紫の花が咲いていたりした。無惨に、露になった『それ』の上半身。傷こそ大量だが、まるで柳の様にしなやかな体をしていた。
 更に、項垂れて表情は見えないが、顔は青くない程度に白く、その身体から想像できる壮絶な拷問の数々がまるで嘘の様に血色が良かった。薄く開かれた唇は些か荒れてはいるが、綺麗な紅色をしている。
 『それ』を舐めるような目付きで暫く観察した後、男が口を開いた。

「……成る程。貴様の担当者が拷問内容に全く紳士的ではないやり方……つまり性的虐待か。それを勝手に追加したのも頷けるな。中々いい男じゃあないか」

 それにしても紳士的な拷問か、と呟く男の声が心なしか弾んでいる。血の臭いが充満するこの空間が楽しいとでも言うように、にやりと笑って腕を組んだ。

「あれは悪かったな。彼だけでなく、軍人は皆飢えているのを忘れていた。しかし安心しろ、貴様の『元』担当者は、きっと今頃異動になっているだろう」

 全く悪びれる様子の無い口調。『それ』は何の反応も示さない。

「それにしても、貴様は大変な頑固者だ。これだけ虐げられても、口を割ろうとしない。自白剤を投与しても何一つ答えないというのは、流石に頑固の域を越えているがな」

 不意に男は腕組みを解き、つかつかと『それ』に近寄った。鼻を突く血と薬品の臭い。血溜まりを踏みつける黒い踵。男が近付いても、『それ』は未だ微動だにしない。男は口角を上げたまま『それ』の髪を掴んだ。無理矢理に上を向かせる。ぼうっとした虚ろな濡葉色が、男を捉えた。

「アルフレッド・スミス。歳は25。腕の良い靴屋の後継ぎ息子。両親は諸事情により既に離婚、別居……どうだ、合っているだろう?」

 呆けた様な視線が男に向けられる。何の感情も持たないその目を無視し、男は『それ』の左耳__正しくは最早只の穴__に顔を寄せ、低く呟いた。

「女王陛下に叛逆さえしなければ、呑気に靴を作っていられたのにな?」
「…………」

 掠れた笑い声。

 ……それは男の笑いでは無かった。男の得意気な顔が一瞬固まる。耳障りな雑音の様な、まるで声なのかすらも判別が難しい音が、男の鼓膜を震わせる。その声は、目の前の『それ』の発したものだったのだ。荒れた紅い唇の間から笑い声は絶え間無く漏れる。さも可笑しそうに。男の言動を、嘲笑うかの様に。

 男は反射的に『それ』の腹を蹴った。鈍い音がし、石のように硬い腹筋にべっとりと赤い足跡が付く。しかしそれをものともせずに『それ』はまだ笑っていた。

「……何が面白い」

 さっきまでの余裕とは一転して、不機嫌になった声が乾いた笑いに刺さる。

「……俺は……女王陛下に、叛逆、など……していない」

 男の顔に深い皺が現れた。彼が何か言いかけたのを遮る様に、途切れ途切れの、しかししっかりとした声色で『それ』は喋り続けた。

「今の……女王、陛下は言わば……人形だ。お前達の意のまま、に動く……傀儡人形……そう、だろう?」
「……間違ってはいないな」

 不意に『それ』が激しく咳き込むと、周囲に鮮血がほとばしった。男の軍服にも点々と跡を残す。男は舌打ちをし、『それ』の腫れ上がった右頬を殴った。床の赤色を、赤色がまた塗り重ねていく。
 『それ』は大きく息を吸い、再び話し始めた。

「……陛下は、囚われている。国を良くしようと……そういう、思念に。しかし……彼女にそんな事が、出来る筈無い。政治の『せ』の字も知らない、温い湯の中で育った、若い彼女には……」

 男は険しい表情で『それ』を見ている。

「お前達も……陛下を、下に見ている。力も、頭も無い只の女……唯一有るのは、先代が彼女に遺した巨大な玉座……つまり血筋。それ、のみ」
「……確かに、そうだ」

 肯定の呟き。『それ』はじっと男を見ているが、まるで何処か遠くを透かしている様な、空虚な目をしている。男は一呼吸置いて、うってかわって平然とした声で語り始めた。

「貴様の言う事は殆ど正しい。今の女王など、大き過ぎた玉座に潰された只のでくのぼうだ。しかしな、それが……」

 男は息を吐いた。

「……貴様が、女王を殺そうとした理由なのか?」

 『それ』は呟く。

「……違う、な」

 『それ』は奇妙に貼り付いたような無表情を崩さなかった。男の冷ややかな視線が注がれる中、口に溜まった血液を唾と共に地面に吐き出して続ける。何か白いものが同時に溢れ落ちたが、『それ』はやはり気にも留めなかった。

「……俺が、陛下の暗殺を企てたのは……彼女が無能だからじゃない。彼女が……『囚われていた』……から、だ」
「…………」
「国を良くしようという思想、だけじゃなく……お前達の糞みたいな思想にも絡め取られている……それに、自分自身が判断、し、国を導いているという幻想にも……」

 男の眉がぴくりと天井へ近付く。

「俺は、彼女を解放するため……彼女から伸びている、ぐちゃぐちゃに絡まった、思惑……と言う名のピアノ線を……断ち切る為に」

 『それ』は息を吸う。
 次の瞬間、初めて、『それ』の瞳に感情が灯った。底でぎらぎらと光る、射抜く様な感情。男の心臓がどくりと脈を打ち、目を瞬く。『それ』の唇は明らかに震えていた。

「俺は陛下を敬愛している」






一旦切らせて頂きます。

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.107 )
日時: 2018/01/29 22:31
名前: some bundle (ID: I07o/OQQ)

 『それ』は苦しげな、ざらざらした声で話し続けた。瞳の光は未だ消えず、虚空ではなくしっかりと男を捉えている。

「国の主、というものは……遥か崇高であるべき、だ。俺は幼い頃、先王の勇姿を、目にしている……先王は、偉大な方だった」
「……あぁ」
「戦争では敗北を知らず、民に、親身になって寄り添い、政治も至極真っ当なものだった……俺の、永遠の崇拝対象なのだ。彼は……」

 『それ』は腫れた片頬をひきつらせ笑った。自嘲を込めた笑みであり、どこか影のある笑みでもあった。その笑みが『それ』の内心をうっすらと象っていく。

「俺は傾倒した。先王に、先王の愛したこの国に……無論、陛下の為なら何だってする、つもりだ。陛下は既に他界されたが……陛下の際の言葉を、お前は覚えているか?」
「『娘を愛してくれ』……だろう」
「そうだ……俺はその言葉にしがみついた……キリストの信者にとって、の、聖書の様に。俺の、言わば芯だ、この言葉は……」

 消えかかった語尾を補完する息継ぎ。それを最後に、『それ』は押し黙る。男と『それ』の立てる音以外を、薄暗い牢の静寂が否定している。男は首筋を強く掻いた。そうでもしないと、この沈黙に耐えられなかった。『それ』の続きを急かす様に、男は右足に体重を移す。
 暫くして、『それ』は漸く口を開いた。

「……さっき、兵士が何時もの説法で、俺の勇気を問うてきた……先王の愛した、女王陛下を解放する為、彼女を……手に掛ける事を選んだ。それは、勇気なのだろうか」

 咄嗟に口を開こうとする男を、『それ』は素早く遮る。

「否、なんだろうな。しかし……その理由が俺には解らない……俺はただ、愛する陛下と、その娘に……傾倒し尽くしただけ……なのに、な」

 『それ』は今度こそ口を閉じた。頭を垂れ、ただゆっくりと呼吸を繰り返す。男は目を細め、『それ』の静かに上下する後頭部をじっと見詰める事しか出来なかった。しんとした空間に、足早に近付き、遠ざかっていく靴音が響く。衣擦れの音がやけに煩く感じる。

 沈黙の後。男は息を一気に吐き出し、言い放った。

「……まさか……最初から正気を失っていたとはな」

 男が静かに告げる。

「彼女の解放など口だけだ……お前はただ……失望した。それだけだ」

 元の冷たい目に戻った男を一瞬見上げ、何も答えずに『それ』は口角を上げた。

「……俺は、死刑だろう?」
「ああ。既に殺しの理由も聞き出せた。貴様の様な大罪人には、女王が直々に死刑執行の号令を出す」
「……ははっ」

 『それ』はゆっくりと、顔を上げた。再び光を無くした瞳が男を見据える。切れた唇を歪ませ、感覚の無い頬を動かし、鋭く、冷ややかに言い放った。

「聞け」

 男のはっとした視線を他所に、『それ』は囁く様に口を開いた。

「俺がかつて振り絞った勇気は……ただ、己の失望を埋める為のものだった」
「……ああ」
「今この瞬間、俺は再び勇気を問われている」

 肩の傷から、じわじわと新しい血が滲み出してきた。『それ』が吐息と共に身じろぎをし、鎖が小さく音を立てる。

「……公衆の憐れむ視線と……陛下の血が流れたあの女王の軽蔑の視線に射されながら……人生を終えるのだけは、御免だ」
「……命乞いか?」
「馬鹿な」

 『それ』はにやりと笑った。傷だらけの身体を震わす。

「俺が死んだら……彼方の陛下は、俺を赦して下さるだろう?」
「……もし、赦されなかったらどうする?」
「愚問だ。陛下は赦して下さる……俺は、死して償うのだからな」

 男は舌打ちをし、声を荒げた。

「俺を馬鹿にしたいのか」
「……とん、でもない……俺は、一刻も早く、陛下に赦されたい……それだけ、だ」

 『それ』が声を上げて笑った。纏う雰囲気が一変している。さっきまでの影の様な暗さは最早其処には無く、何処までも突き抜けた感情。吹っ切れた、とでも言えば良いのだろうか。一種の爽やかさが、場違いながらあった。

「赦しを望むなら……そうだな、ただ死を待つだけでは、生温い。陛下に捧げる、死は、もっともっと崇高なものでなく、ては」

 唐突に伸びる男の腕。男が『それ』の髪を再び掴んだ。ギチギチと音がし、頭皮が強く引っ張られる。男の顔には笑いではなく、驚愕と怒りが混じった様な、そんな表情が激しく浮かんでいた。荒くなる鼓動。息を飲み、半ば詰まった声を発する。

「お前、まさか……」

 『それ』は……アルフレッドは、たっぷりの嘲りを込めて犬歯を剥き出した。

「その為の、勇気だ」

 敬虔なる崇拝者は、男に向かって大きく『舌を出した』____










 はじめまして、some bundleです。
 私は短編そのものが苦手なので、こういったスレッドはとても勉強になります。
 そしてこれまた苦手な台詞運びを多くした事で、ちょっと急展開になってしまったなと反省しております。

 読んでくださった方はありがとうございました。またお邪魔させて頂きます。

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.108 )
日時: 2018/01/31 20:56
名前: かるた◆2eHvEVJvT6 (ID: zYPC.oko)

 「問おう、君の勇気を」

 私のことを「君」と呼ぶ兄さんは、にこやかな笑顔でそう言い放った。



 □

 兄さんが学校に行かなくなったのは中学二年の夏のこと。ちょうど私が数学のテストで三十四点を取ったときのことだった。これじゃあ高校に行けないわよ、とお母さんに一喝されたその夜、兄さんは私の散々なテストを見て鼻で笑った。
 兄さんが学校に行かなくなっても、お母さんは何も言わなかった。それくらいであの子の成績は落ちないわよ、とお母さんは私の渡したテストの点を見てまた大きくため息をついた。確かにいつもテストで満点を取ってくる兄さんのことだし何の心配もないのだろう。私は二十二点の国語のテストをお母さんに見せながら、隣でスマートフォンをいじっている兄さんに少しだけ嫌悪感をいだいた。

 兄さんがメディアで騒がれだしたのは高校一年生の時だった。ずっと何かしら部屋でガタガタやってたのが作曲だったのだと気付いたのは、クラスのみんなと同じタイミングだった。

「香菜ちゃんのお兄さんってあのシロなんだね」
「まじで? 友達のお兄ちゃんって自慢してもいい?」

 兄さんの芸名である「シロ」が売れ始めると同時に、私は劣等感に苛まれた。この感情の醜さに嫌気がさす。その感情に心が支配されるたびに、吐き気がした。



 喉が渇いたから自動販売機に小銭を入れてどれにしようかと人差し指を左右に振らした。不意に目に入ったミネラルウォーターを押してみたけど、手に取って蓋を開けて飲んでみても結局ただの「水」だった。
 兄さんならきっと自動販売機でミネラルウォーターを買うけど、私は水道水でいいと思う。私のような凡人にはその違いなんてわかりっこないんだから。
 だけど、兄さんはその違いが判るからこそ高いお金を払ってどこかの山奥でとれた自然の水を買うのだ。これが私たちの大きな違いなのだと思った。

「ねぇ、兄さん。――入るよ?」

 音楽関係の仕事で忙しくなり、部屋を空けることが多くなった兄さんの部屋を覗いてみたとき、私は自分がいかに凡人だったかということに気付かされた。
 部屋中に散りばめられた楽譜に、CD。その中でも一際目立っていたのは古びたアコースティックギターだった。兄さんと一緒に小学六年生の時にお年玉とお小遣いを全部使って買ったそのギター。私は存在すら忘れていたというのに、兄さんはいまだに大事にこのギターを持っていたのだ。

「どうして、こんなのまだ大事にしてんのかな」

 ギターを嫌いになったきっかけも兄さんだった。格別に上手い兄さんのギターに嫉妬して、自分の限界を決めつけてやめた。半年頑張っても結局兄さんよりは上手くなれなかった。そう言い訳を作って私は満足したのだ。
 自分は平凡だから、どうやったって兄さんには勝てない。どれだけ努力したって無駄なのだと。

 ベッドの上に転がっていたリモコンでテレビをつけると、そこには兄さんが映っていた。音楽番組の司会の男性が「それではお聞きください」といった瞬間に、兄さんの顔がアップで映された。上手くなった作り笑顔が一瞬で消え、アイドルグループの画像に切り替わる。テロップの作詞作曲の部分に兄さんの名前があった。
 流れ始めたその曲は、この部屋からよく聞こえる曲。いつの間にか私は自然と口ずさんでいた。

 

 
 画面が切り替わり、また次のグループが司会者と話し出す。いつの間にか歌い切っていたのだと気付いて、馬鹿らしくなった。なんていうか、兄の作った曲を歌う自分がひどく滑稽に思えた。
 ドアが開いて兄さんが入ってきた瞬間、私はその兄さんの表情を見て思わず気持ち悪いと言ってしまいそうになった。満面の笑みといわんばかりのその表情は、私の背筋を一気に凍りつかせる。

「……いまの、俺の曲だよな」
「……え、まぁ、そうだけど」
「そっか」

 兄さんの部屋に勝手に入ったことは一切咎められなかった。何故か嬉しそうなその顔のまま兄さんは私に手を差し伸べた。「なに」と汚物でも見るような目つきで兄さんをを睨み付けると、小さな声で彼は「こいよ」と言った。正直、何が何だか分からなかった。
 どこに、どうして? 心の中で思ってることは言葉にはならない。兄さんの手を取っていたことに気づいた時には、私は録音スタジオでマイクの前に立っていた。
 防音ガラスの窓の向こうに、兄さんの姿が見える。業界の人みたいに大きな黒いヘッドフォンを片耳に添えて、じいっとこちらを見つめてくる。


「歌えっていうんだ、あんたが。私に」


 自分の作った曲を、と短く付け足して、私はため息をついた。兄が喜んだのは理想の歌声を見つけたから、ただそれだけだった。

「君の声は今回の俺の曲とあうから」

 吐き捨てられたその言葉で、私の存在価値の低さに気づく。自分の楽曲のためなら、どうしようもない妹ですら利用するんだ、この人は。
 兄さんが私のことを「君」というたび、私は劣等感で死にたくなる。天才と凡人の違いを突き立てられて、恥ずかしくなる。

 「問おう、君の勇気を」
 ここで歌えるかどうかが勇気というなら、そんな勇気はいらない。必要ない。
 それでも兄さんについてきた理由はたった一つだった。

 きっと他人なんだ、私たちは。そう思うと胸がスッとした。ヘッドフォンをつけて、世界の音を遮断した。流れてきた兄さんの音楽に、私が「声」をつけることは、もうこの先二度とないだろう。私は大きく口を開けて、叫ぶように歌い出した。兄さんが欲しいと思ったその声が永遠に兄さんの心の中に残りますように。私のこの声を忘れませんように。
 私の勇気は弱い自分を、卑屈な自分を否定するために。この先劣等感で苦しまないために、きっといま歌わなければいけないのだ。
 兄さんの口が小さく動くのはわかったけれど、何を言ってるのかは分からなかった。



 「もっと歌って、香菜」




 
 音楽が終わり、ふぅと小さな息を吐きながら私はヘッドフォンを外した。これで卑下してきた自分を少しでも肯定できただろうか。
 ヘッドフォンを外したあとの兄さんの表情は、やっぱりあの時と同じように気持ちの悪い笑顔だった。やっぱり嫌いだなとスタジオを出て、私が飲めない無糖のコーヒーを渡してきたときにそう思った。




***

 初めまして、又はお世話になっております。敬愛する浅葱さんとヨモツカミさんの企画ということで、ずっと参加したいと思っておりました。ようやく参加できてとても嬉しいです^^
 素敵な作品がたくさんあるので、是非また感想を書きにきたいなと思います。拙い文章ではありましたが、私なりの勇気を書き上げることができました。ありがとうございました。

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.109 )
日時: 2018/02/01 18:59
名前: ヨモツカミ (ID: 1Pyxzdts)

誰かに文を読んでもらって、何かを思って貰うってステキなことですね……! 長くなりそうなのでまとめて返信します。
『わたし』と『私』の関係について色々考えて下さったり、文章褒めて下さってありがとうございました。自分では私らしさとかわからないので、なんだか不思議な気持ちです。文章綺麗っていうのはあんまり言われないので嬉しかったです(>ω<)
複ファで書いてる長編はファンタジーなので、倦厭される方も多いかもしれませんが、私がめっちゃ楽しみながら書いてるのでお時間があれば是非(ダイマ)

今回の添へては、加藤智大の「俺にとってたった一人の大事な友達でも、相手にとっては100番目のどうでもいい友達なんだろうね。その意識のズレは不幸な結末になるだけ」という発言を思い出しながら書いておりました。
一応『わたし』が助かる話も考えていました。「問おう、君の勇気を」という電話を入れて、「今どこ? 5分で向かう」って言われて、10分待っても来なかったから「何やねんアイツ、チクショウ死んでやる」と『わたし』が踏み出す寸前に現れる『オレ』。
「ジャーン! 主役はいつも遅れてやってくるのさ! またせたな魔王!」「で、お前死のうとしてんの? 馬鹿みたいだな! 帰って冒険の続きしよーぜ!」「……そうだね。わたし、馬鹿みたい」という感じの。やはり助けに来るのは『私』では無いんですけどね。『私』はヒーラーだから。
これはそもそも『オレ』のような明るい友達がいたら飛ぼうとすることもなかったと思うので没にしました。
都合よく誰かが来てくれることなんて当然無いし、どうしようもなかったのでしょう。人はゲームの主人公みたいに簡単に強くなれないから、彼女の弱さもどうにもできなかった。どうしようもないのに、何かが胸に引っかかり続ける。そういうものが書きたかったので、読んで下さった方が何かしら感じてくれたなら幸いです。
ちなみにあの電話に『私』がでなければ、『わたし』は肩を竦めながら帰路に付いていました。そうして色の無い日常に戻って行ったはずでした。

>>あんずさん
初参加ありがとうございます。
私、今回あんずさんの文章初めて読みましたが、めっちゃ好きだなと感じました。
共犯っていいですね。彼女と私の関係性とか、修学旅行のしおりを見て逃げる準備するところとか、悪いことをしているのに私は幸せだって言えた主人公と、勇気の形とか、歪んでいるかもしれないけれど、なんだか清々しい感じでした。犯罪をおかした時点で主人公は世間的な悪役になってしまったかもしれませんが、彼女のなかではヒーローだったってところとか、すごく好きです。
ちょっと、駅ですれ違うコートを着てる人のコート下の服に、血跳ねが付いてたらとか想像するとソワソワしますね。
どうか、二人には何処までも何処までも逃げていってほしい。

>>浅葱さん
感想書くと語彙力なくなっちゃうから大勢の人に見られる場所で書くのは正直嫌なんですけどね、とてもTwitterの140文字じゃ収まんないしなぁと思って諦めてこちらに書きます。
やっぱり葱さんの描写のしかた凄く好きだなあと感じました。選ぶ単語とかテンポとか、心理描写とか。映画を集中して見てるときの不意に現実に戻ってくる瞬間とか、ああーってなりましたし、雄大君の気持ちとか考えるとしんどくなりますね。めっちゃ大好きじゃん、何この二人可愛い、無理つらい、その終わらせ方も卑怯かよいくらでも待つぞ。って思ったのですがホントに語彙力駄目になってきちゃって恥ずかしい。元々ないけど。個人的に相変わらず恋に落とされるってところ、一番ぎゃぁってなりました。
何が言いたいか自分でもわからなくなってきちゃいましたがもう、好きです、とだけ伝えておきます。

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.110 )
日時: 2018/02/03 03:04
名前: 日向◆N.Jt44gz7I (ID: YS9eomT6)

続きです

>>80透様
恥ずかしながら透様の書かれる文章を此の度初めて拝読させて頂きました。
古びた日本家屋の旅館の一室での二人のやり取りが目に浮かんでくるようで、ジャパニーズホラー独特の【間】の表現に読み進めたいような見たくないような、そんな魅力を感じました。
手入れのされていない畳って、水分を失って歩く度に藺草の層が軋んでうるさいんですよね。
荒れ狂う曇天と対照的に居心地の悪く鈍痛のするような部屋、静と動の対比がよりこの物語を不気味にさせているのだと思います。
一人称視点に不明瞭な動機、過程と結末に非常に引き込まれる物語でした、透様の作品に出会えたこと非常に嬉しく感じます。

>>83月白鳥様
私め平生のボキャ貧にて、どうにも頭の悪い事しか言えないのですが……。
"メイデイ"と蟲にどのような関係があったのか、はたまた蟲とは何なのか。そして、博士はどんなに大きな十字架を背負ってこれからを生きていくのか、その全てが気になりひたすら続編が読みたくなりました。
酸鼻を極める描写に目が行きがちですが、垣間見得る博士の逡巡や悔恨の念に心臓を鷲掴みされる感覚を覚えずにはいられませんでした。
今回は月白鳥様の文学的でいて理系的精緻を持つ描写に圧倒されるばかりで、このサイト内の短編にて正直こんなに完成度の高いダークノベルに出会えるとは思っていませんでした。

>>86三森電池様
結末に驚いた勢です←
未来から来たと言う理由付けをされた幻覚に説得され、屋上を後にする……なんて三森様がされるはずないよなぁ、と良い意味で期待を裏切られた、というかやはり三森様の世界を見せつけられたというか。読者にその痕を残していくようなラストでした。
本当は死にたくなくてそれを全て未来の自分と銘打った幻覚に止めてもらいたかったのでは、と想像してみたのですが、そこまで強い念があるわけでもなくただ突発的になんとなく死にたくなって、いわゆるところの脳死状態で飛んだのだろうと解釈するに落ち着きました。
個人的な所感ではありますが、青年期にある【スレた】若者の描写においてこのサイト内で三森様の右に出る者はいないと思っています、

>>090-091あんず様
某所では衝動的にあれよこれよしか出てこなかったので改めて苦笑
一緒に逃げる彼女らの関係性を、姉妹、友達、幼なじみ、はたまたひみつの恋人か、思いを巡らしてもいたのですが結局答えは出ませんでした。否、名付けることすら野暮な関係なのでしょうね。
しかしいずれ彼女らは逃避行の甲斐なく捕まってしまうことは想像に難くありません。
悪役に相応しい結末を迎えたとしても、共にいることを選んだ彼女らは最後のさいごの瞬間まで幸せなのかなと思います。
今回、あんず様の作品は最も私の心に刺さった作品の一つでもあります、素敵なSS有り難うございました。

>>92ヨモツカミ様
普段の文体やジャンルとのギャップという点で最も驚かされたのは今回のヨモツカミ様の作品でした。
視点の重ね合わせにより見えてくる歪な答え合わせ、中盤あたりでは本当に救いようの無い話だと思ってただ【わたし】の不憫さに胸を痛めるばかりでした。
私はこんなに大切にしていたけれどあなたの中ではほんの些末なことだった、なんて現実でも十分起こり得ることで。
読み進めていくことにより【私】に非は無く、それでも空しく反芻される【わたし】と世界を救っていた日々に思わず喉が熱くなりました。
しかし【私】がどのような言葉を【わたし】に伝えたとしても、【わたし】の抱えていたものを全てぶち壊して現実世界から救い出すことは出来なかったと思います。
平時はアクティブな文章で読者を魅了されるヨモツカミ様でしたが、このような繊細でいて静かに心に鉛を落とし込む文章も書かれるのか、と舌を巻くばかりでした。


*宵っ張りなのも大概にせねば、と独りごちながら。
*申し訳御座いません、切らせて頂きます。

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.111 )
日時: 2018/02/03 17:43
名前: 波坂◆mThM6jyeWQ (ID: EH1Na5LM)

「問おう、君の勇気を」
「……どうしたの? 大丈夫?」

 僕こと剣軒一差(けんのき/いっさ)の目の前には、ハエたたきでこちらを指す幼馴染みのりんちゃんこと李川花音(りかわ/かおん)がいた。名前の最初と最後を取ったあだ名の彼女の真剣な眼差しが、段々と歪み遂にはため息を着いてしまう。

「もうノリが悪いなぁ剣軒君は……」
「それよりどうしたの? りんちゃんそんなキャラだっけ?」

 そこまで言って、僕は重要な事に気がつく。そう言えば僕らは現在中学二年生。りんちゃんが例の流行り病にかかってもおかしくない……はず。

「ねぇ剣軒君。何か勘違いしてない? してるよね?」

 しまった。表情に出ていたらしい。慌てて首を振ると彼女は暫くしてため息を着いた。ふっ、流石のりんちゃんでも僕のポーカーフェイスを見破ることは出来なかったようだ。

「……バレバレなんだよなぁ……」

 りんちゃんが何て言ったか分からないや。

「で、何があったの?」
「単刀直入に言うね。部屋にゴキブリが出たの」

 タントウチョクチュウとかいう言葉の意味は分からないけど、とりあえず僕は何気なく自然な動作でリビングから出て玄関へと行きそのまま李川宅を出ようと

「はいストップ。逃げない」
「離してりんちゃん……! 僕は行かなきゃ……!」
「私の部屋にね……!」
「嫌だ! ゴキブリの居る部屋ならとにかく、ゴキブリをわざわざ見に行って退治するのは嫌だ!」
「だから言ったでしょ! 問おう、君の勇気を。って!」
「それは勇気じゃない! えっと! ……なんて言うんだっけ?」
「蛮勇?」
「そうそれ! それは勇気じゃなくてバンユーなの!」
「まあそんなことはどうでもいいの! 剣軒君。ほら! 早く行こうよっ!」
「どうでもよくないやい!」

 結局僕は力負けしてしまい、りんちゃんにズルズルと引き摺られる事になる。僕より力が強いりんちゃんはどうして自分でゴキブリを退治しようとしないんだろう……。

「嫌だぁ! 誰か助けてくれぇ!」
「足掻いても無駄だよ剣軒くん。大人しく付いてきて」

 りんちゃんがただの悪役なんだけど……。
 ズルズルと引きずられて身を呈して廊下掃除をさせられる僕。幸いな事に李川宅は掃除が行き届いているのか、そこまで汚れることは無かった。いやそういう問題じゃないけど。

「付いてきてって言うならまず引きずるのをやめ痛い痛い痛いぃ! 僕を引きずったまま階段を登るのは止めて!」

 そのまま僕は引きずられて──いや流石に階段からは自分で歩いたけどさ──必死の抵抗も虚しくりんちゃんの部屋の目の前に立たされている。『花音』とりんちゃんの本名が可愛らしく書かれたプレートがぶら下がる扉も、今では魔王の部屋の入口にしか見えない。なんか扉が凄く威圧感を放っている(気がする)。

「問おう、君の勇気を」
「分かってるから! 急かさないで!」

 そのセリフがりんちゃんのマイブームであることを頭の片隅に入れつつ、その魔王の部屋のドアノブに手をかけ、回す。特に重圧感とか無い扉はすんなりと開き、逆に僕に心の準備をさせる暇を与えなかった。

「こんな所に罠が……!」
「いや罠とかじゃないからね!?」
「そもそも僕がりんちゃんの家に来た時点で僕は罠にかかっていたのかも……?」
「そうじゃな……いや……そうかもね……?」

 そこは僕的に否定して欲しかったと心の中で叫びつつ、開かれた入口から部屋の中を覗く。
 ぬいぐるみとかピンク色の時計とか可愛い系のものがある一方で、分厚い本とか辞書とか僕が見たら発狂しそうなものが沢山並んでいる。個人的に本はあまり好きじゃない。
 そして部屋を暫く息を殺して見回していると、遂にソレの姿を目の当たりにする。ツヤツヤと光る背中を持った、ゆらりゆらりと先っぽの細い触覚を揺らす、例のアレことゴキブリである。見た瞬間、ゾワッとしたものが背中に走る。

「でかっ!?」

 全長約10cm位あるソレが、かなり綺麗に整理整頓された、薄い色のピンクのマットが敷かれた、ちょこちょことぬいぐるみがある部屋の、丸テーブルの下あたりに、触覚を揺らしながら佇んでいた。その姿は見るだけで嫌悪感を抱かざるを得ない。というか普通に気持ち悪い……。

「剣軒君、これ」

 りんちゃんから渡されたのは、薄ピンク色の棒の先に、穴が等間隔に空いた正方形がくっついた形のもの。つまりは、

「なんでハエたたき……」
「これしか無かったの!」
「新聞紙とかなかったの……?」

 そう言いつつも、りんちゃんからハエたたきを受け取り、ゴキブリに気が付かれないように、慎重に慎重に足を出す。ゆっくりゆっくりと上げ、バレないようにそーっと下ろす。

「…………」
「…………」
「…………」

 沈黙が続く中、足を床に付けた瞬間だった。
 その黒光りするソレが疾走。いち早く気が付いたりんちゃんがそれを言うがもう遅い。僕が慌てて少し跳ぶようにして距離を詰めて、ハエたたきを床に叩きつけるが、大きな音が小さな部屋に響くだけで、ゴキブリは相変わらず疾走を止めない。

「くそっ! ちょこまかと!」

 まさかこんな悪役みたいなセリフを言う日が来るとは思わなかった。などと思いつつ、一心不乱にハエたたきを振り回す。それはもう、人生の中で一番ハエたたきを振るったと思えるくらい振った。
 それから何回かソレにハエたたきで打ち込もうとするが、コレがなかなか当たらない。ところで異性の幼馴染みの部屋でゴキブリを追いかけ回しながらハエたたきを床に叩きつけまくる僕って一体なんなんだろう……。
 なんて考えていたスキに、ゴキブリが何を思ったのか、入口の方に逃走経路を変えた。その先にいるのは──泣きそうな顔のりんちゃん。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 僕が急いで追いかけて、ハエたたきを振り下ろす。一際大きい音が響くが、黒いソレはそれをひょい、と回避してそのままりんちゃんの方へと走る。正確には、りんちゃんを通って逃げようとしている。

「来ないでぇ!」

 無意識の行動だったのだろう。自分に迫る外敵を倒そうとする、動物の本能的な何か。だから多分、仕方ないことだったと思うんだ。
 りんちゃんが、目を瞑ってその足をゴキブリの方に出したかと思えば、もう僕が声を挙げた頃には遅かった。

 その足が、着陸すると同時に、何かが潰れるような、そんな音がした。

「──あ」

 僕の無意識に漏れた声に、りんちゃんが振り返ろうとして、カクカクとした、まるで整備が行き届いていない機械のように、首をガタガタを回してこちらを見た。

「け、けんののきくんん、ど、どうしよう……やだ……え……?」
「りんちゃん落ち着いて! まずは現状を確認しよう!」
「無理無理無理! 絶対無理! 直視できない!」

 両手で目を隠して、座り込んで無理無理と弱音を吐き続けるりんちゃん。さっきまでの僕を引きずっていた強いりんちゃんはもうどこにもいない。いやほんとどこに行ったんだろう……。
 何か声をかけようとするが、なかなか言葉が見当たらない。こんな時に何を言えばいいんだろうなんて、使い慣れていない頭を必死になってこねくり回していると、ふと、先ほど頭に入れたばかりの言葉が頭に浮かぶ。
 この時、僕はどうかしていたと思う。なぜなら、りんちゃんが気に入っている言葉を言えば、元気を取り戻してくれるはず。なんて思っていたのだから。
 僕は深呼吸をして、りんちゃんを真っ直ぐに見る。そして、こう言った。

「問おう、君の勇気を」
「うわぁぁぁぁぁん! 剣軒君のバカぁぁぁぁぁぁぁぁ!」





*投稿させて頂きました!

 皆様が深い話とか暗い話とかシリアス系が多い中でこんな話を投稿するのは多少気が引けましたが、うるせぇ私はほのぼのを書くんだ精神で投稿させて頂きました!
 他の方にも後ほど感想を投稿させて頂きます!

Re: 賞賛を添へて、【小説練習】 ( No.112 )
日時: 2018/02/04 19:15
名前: 浅葱 游◆jRIrZoOLik (ID: TdoLu25w)


*
>>083→透さん

 今回のお題をメッセージのように利用するという発想は、一文を決めた時から想像もしていなかったものですから、驚きました。上手く勇気とも絡めて落とし込めることが出来ているなという印象です。
 普段は異なる筆を持っている方でしたので、良い意味で期待を裏切られました。主人公はどうなったんでしょうね。読後の謎を考えられるような作品で、楽しく読ませていただきました。

*
>>084→月白鳥さん

 はじめとお話が変わっている様子でしたが、個人的にどちらも好きです。「勇気」は簡単に相手に要求できて、自分に課さずにいる事も出来る便利なものなのかなと思います。その取捨選択をどうするかによって、人の行為は善と呼ばれたり悪と呼ばれたりするのかな、と。
 そうした、どちらかの選択を根っこでは求められていたのかなと感じました。いつ読んでも、月白鳥さんらしさを感じる作風でありながら、少しずつ変化しているのがすごいと思います。

*
>>085→三森電池さん

 三森さんらしさを残したファンタジーを読むのが、非常に新鮮で面白かったです。普段書かない雰囲気の作品を生むのに苦労されたかもしれませんが、現在と未来の自分が話し合い、それぞれの未来を考えるのは良いなぁと感じます。自分もそういう経験をする機会があれば、と思いました。
 未来の僕が現在の僕に対して、未来での良い事を話していくシーンが個人的に一番好きです。望みたくても望めない未来を知る人がいるって、うらやましいなと思いました。読んでいて楽しかったです。

*
>>88→hiGaさん

 ええと、まずですね、最終的にご自身の名前で投稿するなら名義をまとめていかがかな、と思うんですよね個人的に。投稿制限を設けているわけではありませんから、名義はそのままで、何度投稿してくださって構わないですよ。

 どんなに相手を憎んでいても、どうしたって自分の手で相手を懲らしめるだの、罪を与える出のということは難しそうですよね。どうしようもない憎悪も、後から思うであろう罪の意識とかと少しでも比較してしまったら、なおのこと。
 妹は苦しかったんだろうなと、思います。相手の男には彼なりの倫理観とか、モラルに近い何かがあったのかもしれないですね。もちろん、苦しんでいたのかもわかりませんが。面白く読ませていただきました。

*
>>094→NIKKAさん

 ご参加ありがとうございます。
 たぶん感想とか必要ないのかな、と思ったりもしてました。読ませていただいて、やっぱりすごいなぁと感心ばかりしました。作風が違うというのもありますが、自分も頑張って文字の羅列を小説に昇華していけるように努力しようと思わせていただける作品でした。とても面白かったです、ありがとうございました。

*

 皆様の勇気を楽しく読ませていただいています。多くの方に参加していただき、皆様にとっての「勇気」とは何かを見る機会があり、運営として大変光栄です。

 お礼と合わせ、開催期間についての連絡に参りました。
 現、第3回賞賛を添へて、ですが【2月10日】での終了となります。時間につきましては遅くとも【2月11日】に日付が変わる前には告知させていただくつもりです。
 何卒よろしくお願い申し上げます。


 浅葱

*

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