雑談掲示板

【開催】第14回 紅蓮祭に添へて、【小説練習】
日時: 2022/06/18 14:16
名前: 浅葱 游◆jRIrZoOLik (ID: bC2quZIk)

*
 
 執筆前に必ず目を通してください:>>126

*

 ■第14回 紅蓮祭を添へて、 / 期間:令和4年6月18日~令和4年7月31日
 白く眩む日差しの中で、水面は刺すように揺れていた。



 □ようこそ、こちら小説練習スレと銘打っています。


 □主旨
 ・親記事にて提示された『■』の下にある、小説の始まりの「一文」から小説を書いていただきます。
 ・内容、ジャンルに関して指定はありません。
 ・練習、ですので、普段書かないジャンルに気軽に手を出して頂けると嬉しいです。
 ・投稿するだけ有り、雑談(可能なら作品や、小説の話)も可です。
 ・講評メインではありません、想像力や書き方の練習等、参加者各位の技術を盗み合ってもらいたいです。


 □注意
 ・始まりの一文は、改変・自己解釈等による文の差し替えを行わないでください。
 ・他者を貶める発言や荒らしに関してはスルーお願いします。対応はスレ主が行います。
 ・不定期にお題となる一文が変わります。
 ・一作品あたり500文字以上の執筆はお願いします。上限は3レスまでです。
 ・開始時と終了時には「必ず」告知致します。19時から20時を目安にお待ちください。
 ・当スレッドのお題を他所スレッドで用いる際には、必ずご一報ください。
 


 □お暇な時に、SSのような形でご参加いただければと思います。


 ■目次
 ▶︎第1回 氷菓子を添へて、:今日、全てのテレビ番組がある話題について報道していた。
 >>040 第1回参加者まとめ

 ▷第2回 邂逅を添へて、:彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。
 >>072 第2回参加者まとめ

 ▶︎第3回 賞賛を添へて、:「問おう、君の勇気を」
 >>119 第3回参加者まとめ

 ▷第4回目 袖時雨を添へて、:手紙は何日も前から書き始めていた。
 >>158 第4回参加者まとめ

 ▶︎第5回 絢爛を添へて、:「フビライハンとエビフライの違いを教えてくれ」
 >>184 第5回参加者まとめ

 ▷第6回 せせらぎに添へて、:名前も知らないのに、
 >>227 第6回参加者まとめ

 ▶︎第7回 硝子玉を添へて、:笹の葉から垂れ下がる細長い紙面を見て、私は思う。
 >>259 第7回参加者まとめ

 ▷第8回 一匙の冀望を添へて、:平成最後の夏、僕こと矢野碧(やの あおい)は、親友の中山水樹(なかやま みずき)を殺した。
 >>276 第8回参加者まとめ

 ▶︎第9回 喝采に添へて、:一番大切な臓器って何だと思う、と君が言うものだから
 >>285 第9回参加者まとめ

 ▷第10回 鎌鼬に添へて、:もしも、私に明日が来ないとしたら
 >>306 第10回参加者まとめ

 ▶︎第11回 狂い咲きに添へて、:凍てつく夜に降る雪は、昨日の世界を白く染めていた。
 >>315 第11回参加者まとめ

 ▷第12回 玉響と添へて、:――鏡よ、鏡。この世で一番美しいものは何?
 >>322 第12回参加者まとめ

 ▶第13回 瓶覗きを添へて、:赤い彼女は、狭い水槽の中に閉じ込められている。
 >>325 アロンアルファさん
 >>326 友桃さん
 >>328 黒崎加奈さん
 >>329 メデューサさん
 >>331 ヨモツカミ
 >>332 脳内クレイジーガールさん

 ▷第14回 紅蓮祭に添へて、:白く眩む日差しの中で、水面は刺すように揺れていた。


 ▼第n回目:そこにナマコが置いてあった。
 (エイプリルフール企画/投稿期間:平成30年4月1日のみ)
 >>156 悪意のナマコ星さん
 >>157 東谷新翠さん
 >>240 霧滝味噌ぎんさん


 □何かありましたらご連絡ください。
 →Twitter:@soete_kkkinfo
 

 □(敬称略)
 企画原案:ヨモツカミ、なつぞら
 運営管理:浅葱、ヨモツカミ

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Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 第二回開催 ( No.53 )
日時: 2017/11/01 21:15
名前: 波坂◆mThM6jyeWQ (ID: 3f9/AMeY)

 お久しぶりでございます。波坂です。今回は小説を投稿するわけではなく皆様の小説への感想を持ってきた次第でございます。

>>41
 奈由様

 初めまして! 感想を書かせて頂きます!
 一人称視点から視点キャラの思っている事をそのまま出した小説でしたね。読んでいて文章から楽しげな雰囲気が伝わってきました。
 ただ、文の中で顔文字は使わない方が良いかなって思いました。それと誰が何してるのか少しわからないところがあったので、それを改善したらもっと良くなると思います。
 登場人物にはそれぞれ可愛らしい個性があって良かったと思います。あ、個人的には百合好きです。どうでもいいですね(

>>42
 アロンアルファ様

 初めまして! 感想を書かせて頂きます!
 一人称視点でしたが背景描写がとても厚い作品でした。
 地の文からキャラクターの愛情がちょっとドロっとした感じに伝わってくるのがとても好きです。
 文章的に少し分かりにくいかなって思いました。刺創って何……とか思ってしまいました。私の語彙力の無さが露見する。
 肉体とか色々と変わってしまったけど、それも彼らなりのハッピーエンドなのかな。と読んでて思いました。彼らはきっと幸せを掴めたんじゃないかと思います。

>>44-45
 流沢藍蓮

 何週間ぶりですね! 感想を書かせて頂きます!
 一人称視点でした。心理描写と背景描写のバランスが程よくとれている文だと思いました。なんでダフネさん死んでしまったの……幸せそうだったのに。
 なんか一番最初にダフネさんが死ぬって言っちゃったせいで意外性が薄れました。その一文を消したら良くなると思います。あと花言葉のくだりとか無理にねじ込まれた感じが半端なかったです。
 最後はクローバー君も復讐のクローバーにってしまって豹変ぶりに驚きました。復讐シーンも見たかったかも……なんて思いました。

他の方の感想も読み終え次第書かせて頂きます!

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】  ( No.54 )
日時: 2017/11/01 22:14
名前: 流沢藍蓮◆50xkBNHT6. (ID: 1eFhKVRw)

>>50
 ヨモツカミ様

 あー、最初が良くなかったですか。
 そうですね。後から読み返してみると、最初に結末を書いたので興ざめな感じになってしまいましたね……。
 勢いに乗って、よく見直さないままに投稿してしまいました(汗)
 ……次からもう少し、自分の文章に気を使ってみるようにします。
 ご指摘、ありがとうございました!

>>53
 波坂様

 お久しぶりです。これまで書いた短編はすべて、どこかしらで必ず死ネタが入っております。
 やはり最初の一文が不要でしたか。そうですね、そこで結末を明かしたら後がつまらないですよね。
 花言葉が強引……。言われるまで気づきませんでした。そう言えばカンパニュラとか、わざわざ名前を明かす必要すらないですね。読み返せば読み返すほど、無駄な要素もたくさん見つかりました。
 復讐シーン、書こうとしたのですが流石に長すぎるかなと思ってカットしてしまいました。
 必要な部分の描写が足らず、無駄な描写が多い……。もっと精進せねば。
 自分だけで書いているとこういったおかしなところには気づきにくいものですからね、勉強になりました。感想、ありがとうございました!
 

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 ( No.55 )
日時: 2017/11/01 23:29
名前: ヨモツカミ (ID: hJGv9Kiw)

>>流沢藍蓮さん
期間は12月末くらいまであったので、もし次回も参加いただけたらゆっくりじっくり書くっていうのもありだと思おますよー。

>>浅葱さん
一回目投稿無かったから次もないと思ってたので、びっくりしました。一回目のお題の葱さんが書いたやつも読みたかったな、と思ってみたり。
一応感想はいらないとは言ってたけれど、やっぱり切ない感じの文書くの上手いなあって、胸にとすんってきますね。て、ことだけ伝えておきます。

>>壱之紡さん
二回目からの参加って入りづらいのかなと思ってたので、新規さんが増えて嬉しいです。はじめまして。複雑ファジーでお名前見かけた事ございます。
登場人物が書いた小説の一文目って設定、なんだかお洒落ですね。全体的に好きです。不思議とひきこまれる感じです。会話とか文中の言葉選びとかストーリーとかキャラの雰囲気等、ドストライクでした。
ついでに「隘路を征く者」も読ませて頂いて、壱之紡さんの文章好きだなあと感じたので、お時間ありましたら次回もよろしくお願いします(^^)

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 ( No.56 )
日時: 2017/11/02 10:53
名前: 雪姫 ◆dh1wcSF7ak (ID: fZnZlJg6)

*ウミホタル



彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。

「――なんてどうや?」

茜色に染まる教室、黒板の前で目を輝かせて力説している彼は私の幼馴染 海空(ウミゾラ)蛍(ホタル)。
深海のような藍色の自然任せに伸ばした髪と男の子なのにくりっとした大きな目と標準より低い背と細い体系で一見すると女の子なのか男の子なのか分からない中性的な見た目をした、腐った縁で結ばれた幼馴染
海空 蛍と、覚えてくれたらいいわ。 
蛍の事は好きでも嫌いでもどちらでもないわ。だから私はいつも彼への返事は、そうねいいんじゃない、と頬杖をついて手に持っていた本から視線をうつさないで、そっけなくあいづちをうって何処か遠くへ流してしまうの。そしていつも蛍は頬はむくっと膨れ上がらせてこう言うの。

「何言ってるんや! 文化祭のやでっ真面目にしいや」

ってね。こんな会話いつもの事過ぎて飽きてしまったわ。
高校生活二度目の文化祭、私達のクラスの出し物は舞台劇をやることになったの。私はそんなのやりたいなんて一言も言っていないはずなのだけど。
言い出しっぺはもちろん蛍。放課後残って二人で劇の内容を決めようと言い出したのも蛍。凄く面倒くさいことだけれど、家に帰ったところでなにもないから別にいいっかと言うことにしておきましょうか。私は心の広い女だからね。優しいのよ。とてもね。
クラスメイトは私と蛍だけしかいない小中高一貫の田舎の学校の文化祭。そんなもの村の人たち以外に誰が見に来るっていうのかしら。家はおはぎを大量に持った祖母の姿しか思いつかないわ。きっと去年の文化祭、もしかしたらそれ以上に大量のおはぎを作ってくる気よ、あの人お祭りごとが大好きだから。
……なんてもういない祖母との思い出話に浸っていたら、

「なーなー見てみ? こんな風にお前が甘ーい匂いをまとってやな。こうっクルクルーと回ってな」

いつの間にか舞台を黒板の前から、窓側に移動して夕日で茜色に染まった空をバックに華麗なターンを披露、その舞い姿はまるで白鳥の湖を踊るバレリーナのよう。本当なんでもそつなくこなせる天才肌なのね。

「茜色の夕日と蛍か」

ぼそりと無意識で言葉が口から零れた。――夕日は嫌い。――赤は嫌い。――血は大嫌い。
茜色に私の見える世界を染める夕日が嫌い。夕日を見ると幼い頃の苦い思い出が甦るから嫌いなの。茜色赤色赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤……世界が真っ赤に彩られて、生暖かい液体が私の体を塗り付けるの。ああ……気持ちが悪い。思い出したくないと、甦ろうとする記憶を蓋をして奥底へ封じ込めようとしているのに、あの幼き日に体験した赤の世界は私を開放してくれない――甦る十二年前まだ私がこの村に越して来たばかりの頃のこと。

あの日私は街に出かけた帰り道に偶然立ち寄った岬で両親とはぐれてしまったの。まだ五歳の女の子、独りでは心細いわ。はぐれてしまった両親を探すために岬中を歩き回っていたところで出会ってしまったの。

「アタマがゴロゴロー♪ メダマはドコへイッター♪ ユビはキッチャウゾー♪ ナイゾウはブッチュー♪」

能天気な子供の声で歌われる残酷な歌と時折聞こえてくる、グヂュリ、ブヂュリ、肉と肉が擦れるような、引きちぎられるような、ナニカを潰したり、ナニカが弾け飛んだような、音はなんの音?
まだ五歳の女の子。好奇心と探究心が強い子供。だから私はミテハイケナイものを見てしまうの。岩山の向こうで行われていた、

「アタマがゴロゴロー♪ メダマはドコへイッター♪ ユビはキッチャウゾー♪ ナイゾウはブッチュー♪」

私と同じくらいの男の子が楽しそうに縦に真っ二つ引き裂いたハサミを持って、くるくると踊るように回っている姿をね。
彼の顔には赤い液体が飛び散ったようについていたわ。
彼が着ている白いTシャツは飛び散った赤い液体で真っ赤になっていたわ。
彼が両手に持つハサミの刃の部分は真っ赤なドロリとした液体が滴り落ちていたわ。
五歳の私でも分かった、彼はきっと。

[下校時刻となりました。まだ校舎に残っている生徒は速やかに下校しましょう]

「ええっ!? もうそんな時間なんっ!? まだ何にも決めてないでっ」

苛立ちの声をあげる蛍。
ああ……もうそんな時間なのね。下を向いて見ると握りしめた拳がぶるぶると小刻みに震えて頭からは首筋をそって冷やりと冷たい汗が流れる。これが冷や汗というものなのね。
はあっと大きくため息をついて、帰り支度をしましょう。まだ教室に残っていることが先生にばれると酷く面倒くさいことになるの、だからさっさとお暇した方が身の為ね。
まだ帰りたくなと、駄々をこねる蛍を無理やり引きずって連れ出し校舎を出て来て校門前、

「散る花見たいっ」

引きずられていた蛍が急に立ち上がりそんなことを言いだしたの。
もう太陽は沈みかけ。今の時期は日が沈むのが早いからうら若き乙女としては早く家路につきたいのだけど、と言ってみたけれど無意味だったわ。
今度は私が引きずられて散る花が見れる場所に連れて来られてしまうのね。本当わがままで面倒くさい幼馴染ね。

「綺麗やなー」

そうね、とここは返しておきましょう。
蛍が言っていた散る花と言うのは寄して返しす海の波が白い花びら散っているように見えるとのことよ。私にはただの波にしか見えないのだけど。

「おっ。おったで」

嬉々とした表情で蛍が指さす方向にいるのは長い黒髪をなびかせた背の高い女の人。彼女の足取りは重たく、右へ左へとよろよろとして真っ直ぐ歩けていないわ。それに真冬だというのに白いワンピース一枚でいるのは白装束の代わりなのかしら。
ここは彼岸岬。地元では有名な自殺スポットで毎日沢山の人が母なる海にその命を帰そうとやってくるの。
だから蛍にとっては最高の狩場と言えるのね。
隣に立っていたはずの蛍。気づけば遠くに見える女の人の傍にまで近づいて、

「お姉さん綺麗だね」

と声をかけて女の人が振り返った瞬間

「――――っ!」

学生服の中に隠し持っていた果物ナイフを取り出して、女の人の喉をを掻き切った。頸動脈を断ち切られて、盛大な血飛沫が吹き上がるの。……綺麗な噴水ね、とでもいいのかしらね。

「…………っ!?」

声を出すことの出来ない女の人は見開いた瞳孔だけで驚愕を表していたわ。それもそうよね。死ぬために岬に来て、まさかその岬で殺人鬼に出会って殺されるなんて、誰が思いつくかしら。
苦しみに喘いで暴れようとするのを蛍は許さない。つかさず脇腹を一刺しそれだけで女の人は大人しくなったわ。致死量を超えてしまったのね。死因は出血死と覚えていおくわ、覚えている限り。

「ふんふーん♪」

鼻歌まじりにナイフをこと切れた女の人に突き立てワンピースを引き裂いていく蛍。……私はお邪魔なようね。背を向けて行為を見ないようにするの。それに人の行為なんて見たくないわ。
もう分かっていると思うけど、海空 蛍は殺人鬼。しかも生まれ持っての殺人鬼。生粋の殺人鬼。私が呼吸しないと生きられないように、蛍は誰かを殺さないと生きられないの。だから蛍は一日一人は殺すの。死んでも困らないような人を殺すの。そして肌を合わせ愛し合う行為をするの、蛍は屍姦(しかん)愛好者、ネクロフィリアだから。
初めて蛍が殺人を犯したのは五歳の時。相手は父親が再婚して連れて来た新しい母親。
蛍は新しいお母さんを好きにはなれなかった、でもお父さんは好きになれと仲良くなれと蛍に言ったそうよ。だから蛍は殺したの。新しいお母さんを好きになるために。まずはぐちゃぐちゃんの肉塊にして内に秘めている物を全部露わにしたの、この岬でね。凶器はたまたま持っていたハサミ。
私はそれをたまたま通りがかって見てしまった目撃者ってわけ。幼い頃、両親とはぐれた女の子が見たのは自分の母親を殺すイカレタ殺人鬼が歌い踊って遊んでいる姿と言うわけ。
殺されると思った。犯人にとって目撃者ほど厄介なものはないと幼いながらに知っていたから。でも殺されなかった、何故だと思う?
「キミはボクのタイプじゃナイからイラナーイ」だそうよ。とりあえず命は助かったけどいつ口封じに殺さるかわからない恐怖、あの日見た脳裏に焼き付く光景は、死ぬまで消えないでしょうね。
精神科医にも行けない、誰にも治す事が出来ないのなら、恐怖に震える日々を送るくらいなら、

「――犯罪の片棒を担いだ方が余程マシよ」

その後私は蛍といくつかの約束事を交わしたわ。
殺すのは蛍の好みに合った女の人で自殺志願者または死んで当然の犯罪者。
一日に殺すのは一人だけにするとこ、それ以上殺すとさすがに隠し切れないわ。
殺しは絶対に私が一緒にいる時に行う事。用済みになった死体をバラバラに処理するのは私の仕事なのだから、勝手によそで殺されたら処理しづらいわ。
幼い頃から物を隠すのは大の得意なのよ。その証拠に過去十二年間で蛍が殺してきた死体は誰も見つかっていないわ。どう? 凄いでしょう?

「ンンンッ!!」

遠くにいる蛍の大きな声が聞こえてきたわ。きっと絶頂を迎え終わったのね。

「さて。お仕事の時間かしら」

振り返り軽やかな足取りで遠くにいる蛍と女の人だったもの近づくとふわり潮の香りと

「――――甘い」

蛍と女の人だったものはいつもと変わらない、噎せ返るような甘い匂いをまとっていた。




                                          *fan*





*はじめまして雪姫と申します。今回初めて参加させてもらいました。この話は昨日夢に出てきたお話でして、今朝忘れないうちにとメモ用紙に走り書きした内容なので可笑しな点……しかないなあ……うん。これじゃない感が凄い。今回は失敗してしまいましたが、次回はもっといいものが書けるように頑張りたいと思います! ありがとうございました。

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 ( No.57 )
日時: 2017/11/02 21:51
名前: 浅葱 游◆jRIrZoOLik (ID: gqRO0hfI)

*

 思っていたよりも初週からの参加者が多くて驚いている次第です。ありがてえ。
 12月15日以降までこのお題で行くので、一度書いた方も、少しもう一回違う雰囲気でやってみようと感じられたりしたら、何度でも参加してくださってだいじょうぶですからね。

 全体的に感想、という感想でもないなって思うのですが、これから感想にも慣れていこうと思います。
 ひとまず、羅知さんまで。

*

 全体的な感想としては「甘い匂い」=「香水・花」が多くなるかと思いましたが、「甘い匂い=その人らしさ」「甘い匂い=血など相手を表す一因」という案もあり、書き手らしさが表れるのだなと感じました。浅葱自身が香水を題材にしたから、というのもあります(笑) 楽しみに、他の作品を待っております(ω)


*
>>041⇒奈由さん

 ご参加ありがとうございます。
 
 花の名前がモチーフになっているのですね。全体的にテンポも良くて、スムーズに話が流れていく印象でした。百合って素敵な世界ですよね。個人的にヘテロセクシャルもホモセクシャルも、どちらも素敵な恋愛だなと感じたりしますb
 少し気になった点は、①文章が途中で途切れてしまう事、②文の頭が1マス分空いていないこと、③途中で誰の会話か分からなくなってしまう事、ですね。
 地の文での説明や、分かりやすい視点固定を行う事でもっと改善できるのではないかなと思います。今後が楽しみです(ω)
 あ、あととても大きなお世話と思われるかもしれませんが、花の名前をそのまま使ってしまうのではなく、少しアレンジを加えると人名としても使いやすくなるのではないかなーと思います!

 今回はありがとうございます。
 また次回も参加していただければ、と思います(ω)

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>>042⇒アロンアルファさん

 ご参加ありがとうございます。

 前回同様、良い意味で胸糞悪くなるような作品だなと感じます。ただ、前回と比べると視点主の考えていることが分からない印象があるので、作品の中にどっぷり浸かって話にのめりこむ、というのが難しかったです。
 ただやはり文章の力がとてもある方だなと思うので、ひそかに参考にさせていただいたりしています(ω) 最後の文章、敢えて冒頭の文を使うことで、僕の思う対彼女への思いを可視化させなかったのかな、と感じたりもしています。勝手な解釈なのですが(д)
 僕は僕らしく生きられているのだろうなぁと思いながら読みました。メリーバッドエンドに近いもの、という印象です。

 次回はトップバッターを取れるよう、陰ながら応援しております(笑)
 また次回も参加していただければと思います。

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>>044-045⇒流沢藍蓮さん

 ご参加ありがとうございます。

 地の文が劇のような調子だなと思ったりしながら見ました。意識されていたりするのでしょうか。
 ダフネやクローバー等々、花が題材でしたのでまとめるのが難しそうだなと感じたりします。意外と花言葉に沿うとまとまりが良いのかな、とも思ったりもするのですが、つじつま合わせにばかり意識が向くと内容がおろそかになってしまいますよね。それでもクローバーとダフネの関係や、それを見守るカンパニュラとの関係性が上手に描けているなと感じました。
 少し気になったのは、①地の文が三人称なのか一人称なのか、②必要以上に句点で文章を区切っている事、③地の文に話し言葉と書き言葉とが混じっていること、になります。①と③で上げさせていただいた内容は重複する部分もありますが、統一したほうが読みやすい気もしたので、ご指摘させていただきました。

 あと、他の方が出だしで結末が出ている点についてお話ししていましたが、浅葱としてはありだと思います。ただ、結末を頭に描いてしまうなら、結末をさらに盛り上げる必要があるのではないかな、と。評論文での双括法(漢字が違ったらすみません)と似た考え方をすると良いのかもしれません。中盤での盛り上がりを結末まで持続していくか、それとも結末で大きく盛り上がるか。他にも方法はあると思いますが、少し工夫してみると良かったのかなと思いました(ω)

 今回はありがとうございます。
 また次回も参加していただければと思います!

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>>047⇒壱之紡さん

 初めまして、ご参加ありがとうございます。

 言葉の繰り返しや、読点で数個繋いでから句点で止める手法が多く用いられていたような感覚がします。繰り返すことでその内容が分かりやすかったり、人物が何に時間をかけていたのかっていうのが分かりやすくなっていた気がします。
 個人的に一伊達さんと方伊義さんの関係性が気になる次第です。小説家と編集、というわけではないのでしょうか。「また会えるといいね」という発言から察するに、必ず会える関係性ではないのだろうなと思うと、作家-編集間の関係ではないのかな、とも思っています。

 今回はありがとうございます。
 次回もまた参加していただければと思います(ω)

*
>>049⇒羅知さん

 ご参加ありがとうございます。

 仰られていた通り、前回よりも視点主の気持ちが分かりやすくなっていて、若者の吸収速度と成長速度ってすごいなと思います(笑)
 視点主が見える世界を感情と結び付けてみたり、敢えて「僕は○○と感じた」と明記するより背景描写だけで感情を表すと、もっと視点主の侘しさや苦悩を表現できたのかな、とか――とっても上から目線な感じですが――思ったりします。
 「僕」は意外と若い子なのかな。一人称が初めに与える印象って、人それぞれですよね。浅葱は「僕=少年、若者」「俺=青年、若者」「私=年上」といった印象が先入観としてあったりします。一人称が与える印象っていうのも、作品を引き締める一因なのかもしれない、そう感じたりする人もいるのかなって思いました(ω)
 少し気になったのは、①三点リーダーの多用、②“”で流れが少し途切れてしまうこと、です。どちらも使う回数を減らせると、読み手が視点主の世界にすっと入りやすいなと思ったりしました。

 今回はありがとうございます。
 次回も参加していただければと思います!

*

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 第二回開催 ( No.58 )
日時: 2017/11/10 09:27
名前: ぽんこってぃー (ID: xkiki2bI)

 彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。
 薄紫色の霧に覆われた世界にまた、彼女はそこに現れる。薔薇の香水のような甘い匂いが僕の意識を朦朧とさせる。酒類による酩酊とは少し違う、頭がくらくらとする心地よさに僕の目は、耳は、鼻は、たちまち鈍くなって目の前の景色が霞んでしまう。
 すりガラスの向こう側の世界にいるかのように、彼女の輪郭はまたもやぼやけてしまう。右手を伸ばすと彼女の煌く髪に手が触れる。滑らかな感触を指で楽しみ、この蜂蜜色の輪郭は彼女の毛髪であったことを知る。彼女の首元に手が届く。とても、温かい。
 彼女が、笑ったような気がした。顔は見えない、いつもそうだ。霧が薄い日でもなぜか彼女の顔は真黒く塗り潰されていて、僕は彼女の尊顔を拝んだことは無い。声にしてもそうだ。彼女の声も聞いたことがない、今も聞こえなかった。けれど今、僕が首を触れた後に肩を少し震わせたのが、どうにも笑いかけてくれているように思えてならなかった。

「××さん」

 その声は紛れもなく僕の口から飛び出ていた。どうしてそう呼びかけたのかは分からない。だけど、不意に飛び出したその名前は、彼女の名前だということは疑いようもなかった。しかしすぐに考える、今僕は彼女に何と言って呼びかけたのだろうか、と。
 ああ、まただ。彼女のことを何一つ知りもしないまま、別れの時間がやってくる。分かるのだ、別れの時間は決まって、この甘い匂いが感じ取れなくなるその時だから。もう香りの残渣は幾何とも残っていない。霧が晴れていく代わりに、彼女の姿が遠ざかる。あっ、と声を出した時には彼女はもうとっくに水平線の彼方へと消えていた。
 そして、自分が立っている場所の正体に気が付く。彼女の甘い匂いに包まれているときはずっと花畑の真ん中にいると錯覚していたのに、その姿が消えてしまうと、草木一本住まわぬ荒れ地でしかなくなっているのだ。
 彼女の正体は、名前は、顔は、声は、背丈は、国籍は……知りたいことはいくらでもある。だけど僕は彼女について、匂い以外は何一つ分からないまま今日も夢へと別れを告げる。
 そして、願うんだ。いつか彼女と出会う“その時”を。



 目覚まし時計のアラームを止め、重たい上体を起こす。窓から差し込む朝日を感じて僕の頭は完全に覚醒する。またこの夢かと僕は弱々しく声を漏らした。いつからだったろうか、こんな夢を見始めたのは。物心ついた時からずっとだったように思う。幼いころからずっと、夢の中の彼女と一緒に成長してきた。僕が中学の頃は彼女はブレザーを着ていたし、高校生になるとその服はセーラー服に変わった。大学に入ったかと思うと私服になり、社会人となった今、スーツと私服を行ったり来たりしている。
 二十四にもなってまだこんな夢を見るのかと僕は打ちひしがれる。と同時に、急ぎの要件を思い出した。充分間に合うだけの時間に起きれてはいるのだが、今日の十時からは新規の契約先との打ち合わせが待っている。それほど大きな仕事ではないのだが、そのために先方もこちらの会社も、一人で仕事をするのが初となる新米のぺーぺーを送ることになっている。そう、それこそが自分なのである。
 うちの会社でこんな時期から一人で仕事をさしてもらえるだなんて大したものだと先輩は笑って褒めてくれた。確かに入社してから真面目に働き続けてきたし、大きな失態も犯していない。期待を背負っている実感は確かにある。
 しっかり朝食をとってスーツの袖に腕を通すと、先輩からの着信が来た。何だろうかと思い、メールを開く。真面目な話だろうかと少し身構えたが、どうということはない話で、今日の契約先から来る社員さんはハーフの美人だということ、羨ましくて変わってほしいくらいだということだけが書かれていた。
 全くしょうがない先輩だなと嘆息し、僕は家を出る。美人、その言葉が少しちくりと、棘のように僕の胸に引っかかる。今まで自分は、美人というものに心が躍ったことは無い。この人がきれいだ、と感じることはあってもそれに魅力を感じたことがないのだ。それを知ってか知らずか、よく先輩は僕に対して営業の何某が美人だとか、広報のあの子が可愛いとか伝えてくる。
 彼女は、美人なのだろうか。薔薇の花を思い浮かべながら僕はとある女性のことを頭に浮かべる。気持ち悪いなと、自分の発想を自分で消極的に否定する。遅刻してはならないのだから、そろそろ家を出ようと思いいたる。

 とりあえず、僕が遅刻することは避けられた。少々電車が遅延してしまったものの、先方の会社にはどうにか打ち合わせの十分前にはたどり着いた。電車が遅延してしまったときにはどうなることかと不安になったが、大事に至らなくて済み、一安心だ。
 ただ、電車の遅延は違うところに問題を引き起こした。僕の取引相手の女性が電車の遅れに巻き込まれて出社が遅れているらしい。それは仕方ないと、適当に自販機で缶コーヒーを購入し、受付で「これだけ予めお受け取り下さい」と手渡された資料に目を通しながら啜った。相手の名前を確認する。鈴木ローザ。そういえばハーフだと先輩が言っていたなと思い返す。ローザ、イタリア語で薔薇という意味だっただろうか。年はどうやら同い年のようである。
 薔薇、という響きに件の彼女を思い出すが、すぐにその考えを打ち消す。仕事の場にそれを持ち込むわけには行かない。首を軽く横に振り、景気よく残ったコーヒーを飲みほした。
 “その時”だった、後ろから、声がした。

「申し訳ございません! 鈴木です!」

 目の前にスーツの女性が現れた。ハアハアと息を切らせて何とか呼吸を整えている。座ったままでは失礼だと思い、胸ポケットから名刺を取り出しつつ僕は立ち上がった。

「いえいえ、さっききたばかりです。私は田中と申します」

 彼女と目が合う。甘い香りが、からかうように僕の鼻腔をくすぐった。

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 ( No.59 )
日時: 2017/11/04 18:05
名前: ヨモツカミ (ID: eVmimBZU)

>>羅知さん
再び参加ありがとうございます。
死んだ魚の目をした女の子の甘い香りの意味が、最後にわかるんですね。彼女なりに幸せな最期を迎えられたなら、良かったのかな。彼も大切な人との約束を守るために自分の気持ちを押し殺して、彼女を食べて。切ないお話でしたね。
何故幼き日の彼女が急に「おにいさん、おなかすいてるの?」と訊ねたのか、何故死にたがってたのか、とか、少しだけ疑問が残りました。過去に出てきた彼女と今回食べた彼女の関係も気になります。前世と来世なのでしょうか。
前から気になってたんですが"生き物"とか、"本物"とか、アポストロフィで囲うのって、どういう意味があるのでしょう?羅知ちゃんの小説には囲ってある言葉多いなと思ってたので。

>>三森電池さん
ここでは始めまして。まさか三森さんも来てくださるとは思ってなかったのでびっくりしました。嬉しい。
僕はどうしたら彼女を救えたのか……。別れて無関係になってしまった時点でどうしようもなかったのかな。やっぱり自分が一番大事で、面倒な事に巻き込まれると思うと逃げてしまって。彼女もきっと、部屋に一人残されたあと死ねなかったんだろうな。死ねずに独り、泣いてたのかもしれない。僕の去り際に彼女が口にした一言がとても胸に刺さります。最後の一文が、あの日の時間が戻ってこないんだって言っているみたいで、読み終えた瞬間に虚しさとしんどさが残りますね。
三森さんの文章は、胸に真っ直ぐ殴り掛かってくる感じがしてとても好きです。

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 ( No.60 )
日時: 2017/11/09 17:28
名前: 壱之紡 (ID: oOvvJxmo)

返信遅くなりました、申し訳ありません。

>>55 ヨモツカミさん

 初めまして、ご感想ありがとうございました。今まで自分の文章に感想など貰ったことが無かったので、非常に嬉しい限りです。
 あの雰囲気を壊さないよう、一つ一つ言葉を選ぶのが大変でした……もう少し私に語彙があれば、もっと違和感の無い文章になったかなと反省しております。
 小説の方も読んで頂けたとあり、もう本当に嬉しいとしか言えません。私も「継ぎ接ぎバーコード」、ずっと前から愛読していました。あの殺伐とした、なんというか甘さを許さない世界観にとても痺れます。
 また次回も、参加させて頂きたいと思います。本当にありがとうございました。


>>57 浅葱 游さん

 初めまして、ご感想ありがとうございました。
 特に意識はしていなかったのですが、技法のところはご指摘頂いて初めて気が付きました。何となく、今まで書いたことのないような文を書こうと思っていたらああなりました。
 方伊義は作家志望の青年で、舞台となったカフェの常連です。一伊達は、精神病を患い、現在入院中の青年です。このカフェで一回相席してから意気投合(?)し、以後一伊達の外出許可が出るたび、一伊達が方伊義に相席を吹っ掛けているような関係です。
 正直この短編は「パンケーキの描写がしたい!」と思い立ち、その勢いで書いたものなので、人物設定はガバガバです。次回はそこをしっかり練って挑戦したいと思います。

 浅葱さんの短編も読ませて頂きました。私はどうしても文の密度が低いというか、濃い文章が書けないので、その点とても参考になりました。アダルティックで濃密な雰囲気がとても素敵です。人物の心の揺れ動きがストレートに伝わってきました。

 今回は本当にありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 ( No.61 )
日時: 2017/11/10 19:55
名前: 塩糖 (ID: 0ePFjTAk)

 彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。
 それは、とある森の中にある小さな木造建てのお店。
 森の住人と付近の村との調停役が住まう場所。
 その横に置かれた木のベンチとテーブルに彼らはいた。

「んー……実をいうと僕は甘いのは得意じゃなくてね、ココアに蜂蜜って合うかい?」
「ええそれはとても! いい甘さの暴力……、やっぱりあなたの入れるココアは最高ね」
「それはどうも。こっちは毎日来てはココアをせびるキミへ、腹いせで砂糖の量をこれでもかと増やしたんだけどね」

 少女の両手で収まり切れないくらい大きいマグカップ、そこになみなみとついだココア。
 一体、何杯の砂糖を溶かしたかも分からないそれを彼女は喜々として飲んでいる。
 見ているだけで胸やけを起こしそうだ。そう森の調停役は零したが、彼女には聞こえなかったようだ。
 これまた少女の胴体程に大きい壺に木の匙一つ、潜らせ黄金色の液体を口いっぱいにほおばった。

「ちなみに聞いておくけど、もしかしてそれがお昼ご飯なのかい? 流石に無いと願いたいけど」
「? 何かいけないの?」

 不思議そうにに首を傾げながら、口元についた蜜の残りを人差し指ですくってなめる。
 彼は顔に手を当て天を仰ぎ、少女の行く末を案じた。
 その後、それを見張る役目であるはずの人(?)を軽く睨む。
 被疑者は、焦げ茶色の熊である。 

「いえ、私も止めはしたのですが、こちらが用意したものを食べてくれなくて……」
「だってくまきち、鮭とか木の実とかばっか渡してくるんだもん」
「むしろ森にすむのなら当たり前どころか中々豪華な気がするんだけど、あとその子はジョージね」
「森の住人って花の蜜を吸いながら生きてるって思ってたわ」
「妖精じゃないんだからさ」

 勝手にくまきちと命名された知人の健闘がなんとなく目に浮かぶ。

「はぁ……っと」

 さて、と自分の分のコーヒーを飲み干した調停役は席を立つ。
 そうしてちらりとあたりを見回して、姿こそ見えないが確かに他のお客さんの存在を感じ取った。

「ジョージ、悪いけどそろそろお嬢さんを連れて帰ってくれるかい?」
「あぁ、そうですねそろそろ……」
「あらどうして?」

 小皿に注がれた蜂蜜をなめ切った熊に促す、だがまだ私が食べているのにとそれを違和感としてそのまま出した彼女。
 説明を求められると少々困る事柄だったために、調停役は少々困ってしまった。
 知人に助け船を出すために、ジョージは綺麗になった皿を器用に調停役に渡しながら答えた。

「ほらお嬢さん、私は少々大柄で恐い顔をしているでしょう? そうするとこの森の住人が少し怖がってしまって相談をしに来ることができないんですよ」
「なにそれ、くまきちだってこの森の住人でしょ」
「そうはいっても、流石に大きさが何十倍も違えば怖くなるのは当然なのさ。僕だって子供ころからずっといる。だから怖がられていないだけ」

 じゃなきゃ調停役にはなれないよ、そう彼は言った。その目はどこか悲しげにも見えた気がしたが、少女にそんなことは関係ない。
 友人が、見た目を理由に怖がられているから憩いの場から追い出されてしまう。到底許せるものではない。
 だが、ここで反論しようにも彼女には手札がない。

「……つまり皆が怖がらなくなればいいわけね?」
「え?」
「まぁ、それが一番いいことなんだけど」

 出来るわけがない、そう続ける前に少女はジョージにまたがり、さっさと森の奥へと消えていった。
 その際、調停役はなんとなく嫌な予感を覚えたが、直ぐにやってきたリスのカップルやら引っ越してきたらしいウサギの一家の対応に追われ、結局何もしなかった。
 せめてこの時に止めておけば、そう調停役は深く後悔したそうだ。




--次の日

 彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。
 ついでに熊も従えて、
 しかも複数、こりゃ勝てない。
 あと普段よりも熊たちがふくよかな気がするし、少女の服装も普段より綺麗になっている。

「流石にこれはやめてほしいんだけど」
「え、なんで?」
「なんでもって、昨日言った通り熊がいると他のお客さんが来ないんだよ。というか、ジョージはともかくどうやってフレッドやイザベラ、ノマク達まで……、一応全員僕の知人だけどもこんな風に集まってくれることは……」
「あら知らなかったの? 蜂蜜があれば大抵の言うことを聞いてくれるわよ?」
「僕の長い付き合いは蜂蜜以下か……」

 かなりへこんだ様子を見せて、調停役はベンチに座り込んだ。
 それでも一応頭数分のポタージュ、少女だけはココアだが用意する元気はあるようだ。

「それで?」
「?」
「いや、ハテナで返されても困るよ。君がこんなことするってことは、まぁ何か言いたいことがあるんだろう」
「あ、そう! ココアを飲みに来ただけじゃないのよ!」

 一応はそちらも理由なのか、ここまでのことをするのなら出来れば理由は一個に絞るくらいの意気を見せてほしかった。
 ココアを飲み干した少女は調停役に近づき、指を眼前近づけた。
 蜂蜜の壺に指でも入れたのか、指の香りはもはや甘ったるい程で少し顔をしかめる。

「少なくとも森の皆にコンタクトをとって色々するには調停役の貴方の力が必要……だから私は思いついたの。
さぁ、この森にすむ熊5頭、それが森の皆にも受け入れられるようにしなさい! さもなくば……」
「さもなくば?」
「毎日ここに張らせるわ!」

 少女の宣言と共に、5頭はそれぞれ鼻息を吹く。ジョージは少し申し訳なさそうにだったが。
 最悪なことを思いつきおってと調停役は少し頭を掻く。
 とにかく、何とか説得しようと言葉を探し始める。

「あー、それをされると確かに非常に困るんだけど……それはきっと君たちも一緒だよ?ここは動物たちだけじゃなくて人間も来るから。それが熊で埋められて近づけなかったら、人間たちも何をするかわからない」
「そこは安心しなさい、既にパパのところへ皆でお願いしに行ってここしばらくは入れないことを伝えたわ!」
「待て、村長の家に押し掛けたの? しかも皆ってことは」

 とんでもないことを言い始めたと混乱する調停役。
 少女の父親は近くの村の長だということは少女が森にいきなり住み始めた時、てっきりどっかから誘拐でもされてきたかと思った際に確かめている。 
 だが、距離的に言えばそう簡単に行って帰ってこれる距離ではない。
 普段ならたまに通る馬車などに乗って、と考えたがいま彼女の周りには……。
 そう思って視線を向けるとジョージ以外は少し誇らしげな顔をした。

「もちろん、この子たちも一緒に! 普段は小うるさいパパだけど、なんか静かだったわね」
「……もしかして、その時いろんなものもらわなかった?」
「あれ、そんなこと教えたっけ? なんか村の皆が食べ物とかいっぱいくれたの。応援してるってことなのかしら」
「多分平和な村に突如として現れた山賊扱いされてたんだと思うよそれ」
「ならいっそのことまた明日にでも蜂蜜をもらいに行こうかしら。森のは大体取りつくしちゃったし」
「一日でも早く解決するから絶対にやめてね! あと蜂の巣をそんなに襲っちゃ駄目だよ!?」

 調停役は頭を抱えた。
 彼はこの後、その日のうちに村の住人に熊に対する恐怖心を取り除く方法を考え始めた。
 だが、よくよく考えてみると熊の方を懐柔した方が早いのでは? と気が付き、調停役は他の森にいる蜂たちに頭を下げ、大量の蜂蜜を獲得。
 騒動は何とか収まった……が、二度とこんなことが起きないように、少しずつみんなを慣らしていくことを少女に誓った。

「すいません調停役さん、私があの子を森に止められなかったばかりに……」
「いいんだよジョージ、この問題を先延ばしにしてきたのは確かなんだから。それより今度は直ぐに僕に報告してね……」

 それ以降、調停役はいつもの甘い匂いがする度に顔をしかめたというし、甘いモノ嫌いがさらに深まったとさ。






*****
 なんかシリアスが続いていると流れぶっ壊したい病である私です。
童話風にしめたかったのですが、ここで実力のなさが浮き彫りに……!
 ちなみに元ネタは森のくまさんなんですが、碌に要素無いですねごめんなさい。

Re: 邂逅を添へて、【小説練習】 ( No.62 )
日時: 2017/11/11 12:59
名前: 凛太 (ID: XQfUe5jY)

 彼女はいつもと変わらない、甘い匂いをまとっていた。彼女の身体は、花で覆われていた。細いつるは彼女の脆弱な体躯ををからめとり、四方からは濃紺の花が綻ぶ。彼女から摘み取った花を煎じれば、妙薬となった。みなが彼女を愛おしむ。だから、僕は彼女を厭わしいと思った。
 父さまがとおつ国に旅立たれた日、僕は冠をいただいた。齢15になる妹の蒼白な泣き顔や、母さまのひっそりとした黒いドレス。何もかもが腹立たしかった。ゆえに僕は一人きりになりたくて、夜の庭園に躍り出たのだ。星々は夜の天幕を飾り立て、つめたい夜風は身を打ちつける。冬の庭園は、物寂しい。けれどもそこに似つかわしくない、したたるほどの花の匂いを感じて、僕は後ろを振り向いた。

「王子さま、どうかお力落としなさいませんように」

 彼女だった。肢体に瀰漫したつるを隠すために、ゆったりとした装いをしていた。それでも袖から零れ落ちる蔓を見やれば、うっすらと花を咲かせている。彼女は切々とした表情を浮かべて、こうべを垂れた。拍子に、はしばみ色の髪が揺れる。

「もういい、お前が慰めたところで、どうにもならない」

 うんざりと吐き出した声に、彼女は面を上げた。ひどく鬱屈とした調子だった。

「どうして、父さまは亡くなったのだろう」
「王さまは、長患いでしたから」
「違う、そのようなことではない」

 かぶりを振ると、彼女は痛々しげに目を伏せた。祈りをささげるように、胸のあたりで手を組む姿は、ある種のひたむきさを感じた。その振る舞いに、何か美しいものを見い出した気さえする。

「お前にまとわりつくものは、万病に効くのだろう。ならば、なぜ父さまは」
「王子さま、それは大きなあやまりでございます!」

 彼女は珍しく声を荒げた。髪と等しい色をしたまなこは、大きく見開かれ、僕に注がれていた。そのことに、僅かばかりの優越感に浸る。国中が欲してやまない娘を、この夜ばかりは手中に収めているのだ。いまいちど、彼女に目を凝らす。木の枝ほど痩せ細った体躯だけれど、顔立ちは悪くない。何よりも、あちこちを這う蔓は、一層彼女を儚くさせていた。

「わたくしの花弁は、痛みをやわらげ、死期をのばすものです。しかし、病を絶つものではございません」
「だから自分を責めるなと、そう言いたいのか」
「そのようなつもりは、決して」
「お前は、本当に浅ましい娘だ。父さまの寵愛を、その身に受け止めておきながら」

 彼女ははっとしたように、口を薄く開いた。そうして楚々とした足取りで近づくものだから、僕は思わず後ずさる。

「王子さま、王子さま。きっと、さみしかったのですね。貴方さまのお父上は久しく床に伏して、共に語らうことなどついぞ叶わなかったから」
「わかったような口を聞くな!」

 力任せに叫ぶが、彼女はひるまなかった。それどころか、彼女はそうっと僕の手を取ってみせる。

「わたくしは、この国に身をささげたいのです。ですから、王子さま。わたくしにできることがあるのならば、この花弁をいくらでも差し出しましょう」

 彼女はそう言って、指のあたりに咲いた、あでやかな花弁を摘んだ。そうして僕の手のひらにのせるのだ。ひとひらの花弁は深い青色をしていて、先端の方にかけて淡く白が滲みでている。

「お前の奇妙な花は、心にまで働きかけるとでもいうのか、馬鹿馬鹿しい」
「そうです、王子さま。もとより、花の香は心を和らげてくれます」

 訝しげにとった花片を、顔の近くまで持ってくれば、抗いがたい欲求に襲われた。蠱惑的な香りがして、酩酊とした心地に陥る。僕は衝動のままに、それを口に含んだ。砂糖の味がした。
 父さま、この国を統べた王さまよ。何故、彼の人は僕をおいて旅立たれたのか。父らしいことを何一つせず、この眼前に佇む甘やかな娘に縋った。僕は彼女が嫌いだ。しかし、今ならわかるのだ。砂糖菓子のような甘美な味を咀嚼し、飲み込んだ時。魔性めいた力が働き、僕を虜とする。

「本当ならば、ジャムなどにして召し上がるのが良いのですけれど。ねえ、王子さま、泣かないで」

 彼女に言われて、はじめて頬を垂れる露に気がついた。それを乱暴に指で拭う。

「僕は冠をいただいた。夜が明ければ、王となる。お前は、僕に忠誠を誓えるのか」

 この問いかけに、彼女は瞳を数度またたかせ、そうしてしとやかな笑みを見せた。

「それが、わたくしの至上の望みです」

 堕ちていくのだ、と思った。彼女が身に宿すものは、妙薬などではない。毒だ。僕を、堕落させる。幼い頃から求めて止まなかった父さまの背を追懐し、皮肉なものだと自嘲した。たまゆらの彼女と、いつかとおつ国に招かれるその日まで、花の香に浸ろう。



はじめまして、凛太です。
面白そうだなあ、と思い参加しました。
匂いにまつわる話を書くのははじめてだったので、すごく新鮮で楽しかったです。

個人的には、壱之紡さんの話が好きでした。
儚げな雰囲気と会話のテンポに惹かれます。

それでは、ありがとうございました。

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